今回は、主人公サイドでの今回の事件の裏側の話。
キャラに勝手に会話させているとプロットがズレていく。
第二十九話 Q、女難の相も幸せならまだ良し悪しだと思いませんか?
「久々に会ってみたら、こんな事になっているなんてね。
君、かなり酷いことになっているよ。
初めて会った時はそうでもなかったのに、今では女難の相も色濃く出ているよ」
星晶神社でデスマーチに追われているはずの久方ぶりに顔を会わせたショタオジから、出会い頭にこんな事を言われてしまった。
あの事件があった日から数日後、自分はまだ神戸セクターの地下にある転生者以外は入れない治療施設の一室にいた。あの事件の背後調査に合わせ、自分は身体の調査のためにここ数日の間泊まり続けている。
回復魔法でも治癒しきれないのか全身が激しい筋肉痛になり動くこともままならないため、付き添っていたジャネットに着替えや食事、果てはシモの世話までに任せることになった。
とても上機嫌の彼女に世話をされるのは、かなり羞恥を覚えるため彼女には口止めしなければならない。
さすがにテロと言っても過言ではない一連の事件の調査のため、事態を重く見たショタオジを中心とした調査チームが跳んで来ているらしい。
面会に来て早々に冒頭のような事を言い椅子に座ったショタオジと、介助付きなら体は起こせるようになったがベッドの上で話をすることになった。
「さて、どこから話そうか。
まず、今回の一連の事件の生きた物証でもある君が救助に向かった彼女の事からかな?
眠らせてから記憶や残留マグネタイトも含めて隅々まで調べてみたんだけど、色々なことが分かったよ。
彼女を始め色々な人間が悪魔化していた原因は、身体に埋め込まれたフォルマが変質を促して悪魔化させていたんだ。原理としては、海外の天使が羽根を人間に埋め込んでするアレと同じだよ。
それで今回のはそれをものすごく雑にしたものだから、失敗すると屍鬼や外道の悪魔に変わり成功するとそれ以外に変わるというものさ」
「それで、今は彼女はどうしていますか?」
「ああ、彼女かい?
君が意識を失っている間に、何度も殺されて蘇生してを繰り返したらしくてね。
発見された時には、覚醒はしているけど悪魔の力は失っていたよ。
今回に関する記憶はこっちで記録した後に全部消して、体内の残留物も回収してから治療して眠っているよ。
自衛以外でこっちに危害は加えられない様に契約で縛ったから、こちらとしてはもう用はないよ。
あとは、君たちの方で何とかしてね」
「それであの、白乃ちゃんに埋め込まれていたのは何だったんですか?」
「自分たちでも最初はよく解らなかったんだけど、たまたまそれに詳しい人が来ていてさ。
彼曰く、【輝くトラペゾヘドロン】の欠片だってさ。
解りやすく言うと、古代の邪神の祭具の一部だよ。
彼自身はここで情報を得たらすぐに中東に向かったから、決着は着くんじゃないかな?」
その彼とは自分は面識がないが、ショタオジと古い知り合いでその邪神を追っているペルソナ使いの幹部の人らしい。数人の仲間とその邪神を追って世界中を飛び回っているのだそうだから、とてつもなく強いのだろう。
ペットボトルの緑茶を一口飲むと、ショタオジは話しを続ける。
「それで中東人の彼らですけど、わざわざ日本に来て彼らは何のためにこんな事をしていたんですか?」
「彼女の中に残っていた物や星見で視たんだけどね。
彼らのリーダーから暗示による指示を受けていたみたいなんだ。
『ここから逃げた先でこの黒の書の通りにすればメシア教への復讐の力が手に入る』って、わざわざ神戸付近に行くように言い含めていたんだからねぇ。
まあ、今回の件で死んだ男が日本まで来れた最後の奴だからもういないよ。
こっちにしてみれば迷惑な話だよ。本当に」
もうこんな事件に巻き込まれる事は無くなるようで何よりである。
ただ、何故自分の周りで連続して起きたのかまでは判らなかったらしい。
そして、ショタオジは横のサイドテーブルの上の物を指さしながら、雰囲気を変えて話し出す。
テーブルの上にあるのは、ケースに収められたデビルズアブゾーバーである。
「あれを使い続けるのはもう止めた方がいい。
今、体が動かなくなったのも無理な変身による反動だよ。
あの夏の特訓で体の変化は止まったはずなのに、また進行、いや浸蝕が進んでいるよ。
そのうち、戻れなくなるかもしれない」
「自分はあの時一度死んだはずです。けれど、こうして生きている。
何があったんですか?」
そう言うとにこやかな表情になるショタオジ。
何か寒気がする。
「君の上役だとして自宅を拝見したよ。
なかなか広い家で、霊地としてもしっかりしたものじゃないか。
それと君の奥さんたちと娘さん、美人ばかりとか羨ましいよ。
“生まれて間もないのに君の死を感じ取って、祭神の力添えも受け、血縁という契約の穴を突くような形で自分の意志を実体化させた”んだからすごい才能だよ、君の娘さん達」
「凛と桜が?」
「そう、『君の娘さんたちがあの彼女たちによく似ていた』、『俺たちに匹敵する才能がある』、『FGOに関する知識を何故か知っていた』、そして、『君に干渉する手段や条件が揃い過ぎていた』。
だから、あの機械を使って君を助けに行けたんだ」
そこまで言うとショタオジは懐から3枚のカードを出してきた。
【女神パールバティー】、【女神イシュタル】、【妖鬼ベルセルク】。
それぞれ、FGOの彼女たちと狂戦士になった湖の騎士の鎧を着た女性の絵が描かれている。
そして彼は、それを渡してきた。
「今回は君を助ける結果になったけど、こんな事が続いたら君も娘さんたちも死ぬことになる。
事後承諾で悪いけど、君の家のカヤノヒメとも話をつけてこうさせてもらった。
彼女たちは【女神の転生者】でもあったから、その早すぎる覚醒めた意志はこのカードに封じたよ。
彼女たちが充分に成長した後で手に持たせれば力は戻るはずだけど、それが何時かは父親なんだから君が判断してやるんだ。
それまでは、そのカードは使おうと思えば使えるが君が封印しておくといい。
あと娘を玩具として売り渡したくないなら、あの研究所の悪魔たちには見せようなどとしない方がいい」
カードを手に見続けていると、涙がポロポロと溢れてくる。
どんな形であれ、今世ではなんと家族に愛されているんだろう。
そう思うと、嗚咽が出て泣き出してしまった。
そして、しばらくした後にジャネットからタオルを貰い、泣き止むことが出来た。
優しい笑みを浮かべて見られると、余計に恥ずかしくなる。
「すいません。見苦しい所を見せてしまって」
「いや、いいよ。
君はどうも成長が早い代わりに、死に急ぎすぎるような所があるからこれでいい。
家族は君を繋ぎ止める鎖にちゃんとなっているようだし、そこのジャンヌ・ダルクも懐いているようで何よりだ」
「ジャネットが何か?」
「うん? もしかして、ただ新婚家庭に女性を送りつけて楽しんでいるとでも思っていたのかい?」
「はい、少し」
「そう思われるような言動が多いからですよ、神主殿」
ジャネットもそう思っていたのか、頷いている。
憮然とした顔のショタオジ。少し置いて、ため息を付いて話し出す。
「偶然とはいえ、もともと造魔からの合体で作る英傑は並の幹部よりもレベルが大きいんだ。
そこにいるジャンヌ・ダルクは合体成功時、レベル42だった。今は少し上がっているね。
いくら契約で縛っても、本来は悪魔というのは自分の力量より下の相手には従わない。
行き先としてはちょうど良かったから、あの研究所の悪魔達へのカウンターとしてこっちが主導して君のシキガミとして契約させたんだ。
万が一の時は、彼らを監視し相手取って戦えるように」
「でも、ジャネットは今はそんなことはしないで済んでいますよ。
戦場では背中を守ってもらえる大事なパートナーですし」
「マスターってば、もう」
「いや、赤面して甘い雰囲気出さないでもらえるかな?
たとえ、そういう行為で人の側に引っ張り返せるとは言えね。
まあ、マスオニキの愛が重いタイプの女性ホイホイな所はもういいから。
じゃあ、今まで言ったことは他言無用で頼むよ。少し喋りすぎたし」
そう言って立ち上がり、帰ろうとするショタオジ。
そこで思い出し慌てて聞く。
「待った。デモニカの事は聞いていませんよ。
掲示板で自衛隊に渡すことは知っていましたけど、ここにいるなんて聞いてませんよ。
それに一人だけ、やけにあのオリジナルにそっくりなのを着ていたのは?」
「ん? 彼らの事かい?
彼らはあのゴトウさんの部隊の生え抜きで、これからは神戸の埋立地にある基地に居留してレベル上げのためにこの辺の異界に挑むそうだからその際は協力してあげてね。
それと、他の人がアポロ宇宙船の宇宙服みたいなのに比べて一人だけ最新式のやつを着ていたのは、彼が【タダノヒトナリ】だからだよ」
「もしかして、ストレンジジャーニーの主人公?」
これ以上無く、ニッコリと笑うショタオジ。
聞かなきゃよかった。
「デモニカやAIは例え出来ても、レッドスプライト号みたいな超兵器の船は作れないからね。
彼のデモニカには他のとは違ってオリジナルに近くなるように、ヘルメットは高性能化して疑似ハーモナイザーも付いてあるから彼が強くなるように手助けしてあげてね。
もし、南極のアレが活性化した時の保険は多いほうがいいからね」
判らずにきょとんとしているジャネットと青ざめている自分を置いて、ショタオジはくすくすと笑いながら帰っていった。
その後、自分が自宅に帰れたのは、今回の会話が切っ掛けで盛り上がったジャネットに病室で上に伸し掛かられた所を見つかり、六堂さんに強制退院として放り出された翌日のことだった。
場面は移り、家に帰ったその日の夜のことである。
夜も遅く、月明かりだけが部屋を照らしている。
こちらに都合のいいように脚色されてはいるが今回の件の通知で、自分が死にかけたことまでは誤魔化し切れずにいたようで戻るなり半泣き状態の二人に寝室に引っ張り込まれ先程まで相手をしていたのである。
ちなみに、ジャネットは抜け駆けの罰として子どもたちの側にいるためここにはいない。
2戦交えて荒く息をしている葵を頭を撫でながら体の上で寝かせ、仰向けの状態になった自分は布団の周りを見る。
雫は、左側に敷いた布団の上で眠るというか気絶している。
右側を見ると、部屋の隅の板床の上で下着姿の首から『わたしは祭神様に手を貸した愚か者です』という看板を首からかけた文香さんが正座で座っている。
そしてその隣には、いつの間にか家に戻っていた真っ赤な顔をした全裸の白乃ちゃんが正座をして座っていた。
この二人は自分が部屋に来たときからこの状態であり、じっと無言のままでこちらを見ていたのは葵の決定だという。
息を整えた葵がこちらを見て話しかけて来る。
「ごめんなさいね、あなた。何も言わずにここへ連れ込んでしまって。
こうでもしないと、わたしも雫も不安でどうにかなりそうだったの。
先日いらしたあなたの上役だという方から、あらましは全て伺いました。あの子たちや白乃の事も。
結果的にあなたを助けることにはなりましたけど、わたしの知らないうちに祭神様があんな事をするとは思わなかったんです。
そしたら、あの上役の方に同席頂いてカヤノヒメ様とはお話をつける事が出来ました」
「引っ張り込まれたのは、まあ理由も分かるからかまわないよ。
それより、どうつけたんだい? 簡単なことじゃないだろう?」
「今回の件は善意とはいえ、わたしの子どもたちが利用されたんです。
確かに、代々信仰して氏子にはなってきましたがその事だけは許すことは出来ません。
そこで上役の方特製の呪的契約用紙を複数枚、頂いたので使いました」
両手をついて上体を起こし、ちらと文香さんを見てから言葉を続ける。
視線に気が付き、ビクッとして冷や汗を流している文香さん。
「子どもたちについては、上役の方が何とかしてくださったと聞きました。
実際、あの子たちもそれ以来、普通の子と変わらない様子を見せていますので安心です。
カヤノヒメ様には、子どもたちに成人するまで直接強く干渉するのを禁止させて頂きました。
文香さんには、あなたと同じ強さの命令権を改めて頂きましたのでヤンチャは控えてくださいね?」
ニコリと目の笑っていない笑みを浮かべて見る葵に、ブンブンと首を縦に振る文香さん。
これが正妻の貫禄かぁと、他人事のように経産婦とは思えない美しさの葵を見上げて考える。
そして、視線が隣に移る。真っ赤な顔が真っ青になる白乃ちゃん。
人の顔色がこんなに激しく変わるのは初めて見たなぁと、ぼうっと考える自分。
「白乃、邪悪な術師に唆されたとはいえあなたが彼に死にかけるようなことをしたのは、月城家の当主としても個人的にも罰を与えないといけません」
「葵、彼女が何をしたのか聞いたのかい?」
「ええ、邪悪な術師の手先として彼女の兄のアレが手引きし、操られた彼女があなたの不意を突いて背後から刺したと。
そして、それを察知した祭神様が子どもたちの力を使ってそれを助けたのだと」
間違いではないが、微妙に違う内容を知らされているようだ。
白乃ちゃんを見ると、こちらを見て何か思い出したのかビクッと震えている。
「白乃ちゃん、何をしたのか覚えているかい?
怒らないから言ってごらん」
「は、はい。うろ覚えですけど、
クソ兄貴が扇動して親戚を集めたりわたしを誘拐したこと。
自分の気持ちを伝えてカズマさんを刺したこと。
クソ兄貴やクソ家族たちや親戚が皆いなくなっていたこと。
何か恐ろしいものに叩きのめされて気を失ったことです」
ふーむ、記憶処理はして傷は癒やしたけど、心の奥底にはトラウマが残ったままのようである。
演技をつけて、少し問いかけてみる。
「これは憶えているかな?
『だって、嬉しいじゃないですか。
こんなところまで来るなんて、わたしを助けに来てくれたんでしょう?
そして、こうやって覚醒してすごい力を持ったわたしを見せられるんですから。
どうです、すごい綺麗になったでしょう?』とか、
『月城家の人たちには感謝していますけど、さんざん非覚醒の出来損ないと影で言われたわたしがこうしてすごい力に覚醒めて、変わったわたしを変わらずわたしだと見てくれる人と一緒にいようとして何が悪いんですか!?』とか」
「あーーー、あーーーー、ああああああぁぁぁ!
わたし、そんな恥ずかしいことをぉぉぉぉ!?」
「へぇ、そんな情熱的なことを言ったんですか? へぇ。
それに、よく憶えてましたね? あなた」
真っ赤になって顔を覆い叫ぶ白乃ちゃんと真顔になる葵。
あ、これは彼女への意趣返しどころか失敗したかも知れない。
また、ニッコリと怖い笑顔を見せる葵。
「家を差配する当主として、契約書の罰を決めました。
白乃、助力は惜しみませんから、あなたは分家としての誰もいなくなった立花家を再興させなさい。
そのために、最低4人はこの人との子どもを産みなさい。
いいですね?」
「ま、待って下さい。
カズマさんの事は好きですけど、わたし、男の人とは誰も付き合ったことはなくて…」
「文香さん、サポートしてあげて下さい。ただし、あなた自身はしばらく接触禁止です。
祭神さまの加護は、家内安全、諸病免除ですから大丈夫です。
それじゃあ、今から早速始めましょう。
今退きますから、自分で旦那様をその気にさせてから貰いなさいね」
「ええ、そんな!?」
「……せ、接触禁止」
立ち上がり、いつぞやの酷いことになった家伝の香【金蛇精根】を焚く葵。
香の匂いで目覚め、自力で回復スキルを使いムクリと起き上がる雫。
目がグルグルとしているが真っ赤な顔で近づいてくる白乃ちゃん。
絶望した顔でこちらを見る文香さん。
生き残るためには筋肉痛がどうのと言っている場合じゃない、上体を起こし迎い討つ。
さあ、来いやぁ!
無事撃破に成功するも、明朝まで複数人で搾り取られ、部屋の臭いと皆の状況が前以上に酷いことになったは言うまでもない。
なお、動けないのが仇になり代わる代わる絞りに来るため、復帰には1週間かかったのを追記しておく。
あとがきと設定解説
・【輝くトラペゾヘドロン】
小箱と宝石。宝石は、黒光りして赤い線が走る多面結晶体。
この宝石が、箱の内面に触れることなく、金属製の帯と奇妙な形をした7つの支柱によって、箱の中に吊り下げられている。
箱は不均整な形状をしており、異形の生物を象った奇怪な装飾が施されている。
凝視すると、心に異界の光景が浮かび上がってくる。
星の智慧派が崇拝した「闇をさまようもの」=ナイアーラトテップを召喚する道具である。
・【タダノヒトナリ】
原作において、1号艦「レッドスプライト号」に搭乗する日本出身の兵士であり主人公。
厳しい戦闘訓練と幹部教育中に見せた能力を買われ、国連から指名されて調査隊に抜擢されたというエリートとなるのは未来の姿で、今は新人の隊員にすぎない。
タダノヒトナリを敢えて漢字表記にするなら「唯野仁成」らしい。
次回は、今回の事件への悪魔サイドでのお話。
一応、次で第三部終了予定。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。