今回は、幕間で夢枕に立つのも考えて欲しいお話。
第三十二話 幕間その七・夢という名の厄介事を見たことによる変化の記録
夢を見ている。
わたしは、王族出身の旅人だった。
わたしは、旅先でその国一番の美女とされる女性と懇意になり、一夜を共にした。
わたしは、その後、見聞を広めるため各地を旅をして廻った。
わたしは、数カ月後、もう一度その女性に会いに行った。
わたしは、その女性に子どもを身籠ったと言われた。
わたしは、一夜だけの関係で子どもがそうそうできるのかと問うた。
わたしは、その女性に自分はあなた以外の男性とは関係を持っていないと言われた。
わたしは、思案した。
わたしは、それを確かめるために女性を閨に連れ込み、甘やかしながら聞くことにした。
どこかで膝を叩きながら笑う男性の声と呆れた女性の声を聞くと、場面が切り替わった。
わたしは、王から信頼された武将であった。
わたしは、地方を平定したある日、王から話を受けた。
わたしは、王の娘を娶り息子にならないかと問われた。
わたしは、喜んで了承した。
わたしは、嫁入りの日、部屋には二人の女性がいるのを見た。
わたしは、醜女と評判の姉の方を見る。
わたしは、美女と評判の妹の方を見る。
わたしは、二人共に来るとは王から聞いていないと問うた。
わたしは、二人にこれが王の意志だと言われた。
わたしは、これが醜女の姉かと見ながら噂は駄目だなと思案した。
わたしは、とりあえず初夜なので二人とも閨に連れて行き共に可愛がることにした。
どこかで笑いながら噎せている男性の声と女性の長いため息を聞きながら、目が覚めた。
目を開くとまだ夜明けも来ていない自分の寝室だと分かる。
仰向けで寝ている自分の両脇には、今日の順番だった葵と雫が寝ている。
夢の内容を思い出し、二人を抱き寄せると再び眠りに落ちていった。
視界がはっきりすると、前にも見かけた光景が目の前にある。
前と同じ様に上からそれぞれにスポットライトが当たっており、自分はパイプ椅子に座り、マーメイド、モー・ショボー、ナジャ、ユキジョロウ達が左右に座り、正面の一際豪華な椅子にはアリスが座っている。
これも夢を利用した物なのだろうと思い、話しかけることにする。
「こんばんわ、みんな。いつも力を貸してくれてありがとう。
それと、初めましてアリス。友達にはなるけど、死なないからね」
「おにーさん、わたしの定番のネタを潰すのはよくないと思うの。
もう、【魔人アリス】よ。今後ともヨロシク」
「うんうん、他の子達も可愛いけどアリスも可愛いね。
赤城さんから貰った君の絵は、今も家に飾ってあるよ」
「もー、赤のおじさまったら恥ずかしいことをしないで欲しいわ。
今日はね、わたしの他にもご挨拶したい娘がいるから呼んだの。
おにーさん、後ろを向いてくれる?」
「後ろ?」
そういうと、椅子ごと床が回転し自分は後ろを振り向く。
そこにはそれぞれ豪奢な椅子が3つあり、右には黒髪をツーサイドアップにしビキニ水着のような衣装に身を包んだイシュタル、左には青い布地に金色の模様の衣装を身につけた紫髪のパールバティー、そして正面にある赤いいつも乗っている騎獣を模したソファにそれはいた。
よく見ると自分の知っている姿とは少し違い、赤い紐水着と赤いサンダルはそのままだが金色の王冠を被り白い薄絹を羽織り右手に豪華な杯を持っている大淫婦バビロンである。
左右の二人は不機嫌そうだが、彼女はこちらを笑みを浮かべて見ている。
それなので、二人の方から話し始める。
「よくぞ、来……」
「とりあえず、こうして会うのは初めてだね。
イシュタル、パールバティー、それとも桜や凛と呼んだ方がいいのかな?」
「イシュタルでいいわ。お父様。
私たちはあの子たちの力が姿を取っただけだから」
「そうです、お父さん。私もパールバティーと呼んで下さい。
勝手なことをしたのは私たちなのですから」
「でも、助けてくれたことには違いないよ。ありがとう。
だけど、何故本来のではなくその姿になったのかを聞いてもいいかい?」
呆気にとられているバビロンを視界の端に置きつつ、当然まず娘の一部でもある彼女らと話す。機嫌を直し、笑みを浮かべて答えてくれる二人。
「それはもちろん、夢を通してお父様の記憶を見たからよ。
向こうではよくしていたゲームの姿なのでしょう?
それに今の私たちも成長したら、ほぼこの姿になるからちょうどいいし」
「向こうのお父さんてば、私と同じ顔の娘にばかり力を入れて全部集めて全部成長しきっていたのは照れてしまいます。
そんなに私が大好きだったなんて嬉しいです」
「ああああ、お願いだから前の時の話はしないでね。
映画も最後まで見れなかったのが悔しいくらいだよ、これでいいかな!?
理由は解ったから、これ以上は禁止で」
「マスター!余が一番ここでは強いんだぞ!
最初にあれだけ熱い視線を捧げながら、この美この体に何か言うことはないのか!?」
顔を赤くして和やかに談笑している自分に、若干、涙目になって近くに来て服を引っ張りながら言うバビロン。
この分霊、ガワの性格に引っ張られすぎていないだろうか?
「はいはい、とても扇状的で色っぽいよ。
これでいいかな?」
「おざなり過ぎではないか、マスターよ。
せっかくお主に合わせて創られた余なのだから、もっと褒めても良いのだぞ?」
「まあ、わざわざ来てくれたことには感謝はするけれど、そもそも君の本体は何を考えているのかい?
オーナーも迷惑がっていたよ?」
「うむ、簡単に言うと南極のシュバなんとかが駄目になったのでこちらに来る機会を探していたら、宰相閣下の息抜きのここをちょうど見つけただけだぞ。
おまけに、お主のような面白い契約者もいるのでな。
暇でもあったのでこうして余を創って送り出したのだ!」
ふんすふんすと得意げに言っているバビロン。
その割には、どうしようもない理由で来られたこちらが迷惑である。
しかし、この場にいるということは契約済みなのは間違いない。
けれど、これだけは言っておかないといけない。
「ねえ、バビロン」
「何かな? 我がマスターよ」
「この場における本来の契約は、アリスたち五人が正式な相手なんだよ?
特別な事情のある自分の娘であるこの二人とは違って、君は本来無理やり来たんだ。
おまけに、君だけは強すぎて姿も変えれないしサバトマでも呼び出せないんだけど」
「な、何だと、マスターよ。本当なのか!?」
「本当だよ。だから、自分が強くなるまで待っていて欲しい。駄目かな?」
葵直伝の雫や白乃の機嫌の取り方に従って両手を握って目を見て話しかけてみると、驚いた顔をして視線をそらして頷くバビロン。
周囲の視線は痛いが、彼女は大人しくソファに戻ってくれた。
背後から、不機嫌そうなアリスの声がする。
「おにーさん、話がついたならそっちに座って」
「? ああ、わかったよ」
答えると左側にどこでも売っていそうな一人用のソファが現れる。
それに座るとパイプ椅子は消え、相変わらず周囲は真っ暗で椅子のある場所にライトが当たってるのだが椅子の並びが変わった。
時計でいうと、6の位置に自分が、1の位置にモー・ショボー、2の位置にユキジョロウ、3の位置にアリス、4の位置にナジャ、5の位置にマーメイド、7の位置にパールバティー、9の位置にバビロン、11の位置にイシュタルが配置される様になった。
何だろうこれは? 意味がわからない。
12時の位置の暗闇を指差しながら、アリスが説明を始める。
「いい、おにーさん。
わたし達はここを【召喚の円座】と呼んでいるわ。要するに、待機部屋ね。
で、この並び方は契約したわたし達の関係を表しているの。
これは、円場博士曰く、あの女が来たからアプデをしたらしいわ。
今までは変身すると、こちらのステータスに上書きされて行動していたの。
でも、わたし達は契約時のレベルで強さが固定されてるの。
だから、わたし達よりおにーさんが強くなるとかえって弱くなる欠点があったの。
だけど、今回から変身した時のみおにーさんの強さに合わせてわたし達も強くなれるわ。
サバトマでも呼び出せるけど、その時は固定された本来の力しかないから注意してね」
「だいたい分かったよ。だけど、そこの闇の中に誰かいるのかい?」
「そこにはおにーさんを乗っ取りかねないものが鎖に繋がれているわ。
自分が肉体を得たいのではなく、おにーさんと一つになりたいと望んでいるの。
そんなこと許すはずないじゃない。
契約は有効だから消せないけど、行儀が良くなるまでは椅子は渡さないわ」
闇の中から赤い目の光が見える。
こちらを認識したようで、近づこうとしているのかガチャガチャと金属の音がする。
泣いているのか女性の声で押し潰したうめき声もしてきた。
周囲を見渡し視線を合わせていると、パールバティーだけが視線を逸らす。
何となく『彼女』の正体がわかり、声をかけてみる。
「いいかい。
自分が強くなって必ず扱いこなせるようになるからね。
それまでいい子にして待っているんだよ、【桜】」
「………!」
闇の中から何かが喜んでいる様子が分かる。
力が抜け、座り込むと視界がぼやけてくる。
誰かの「また会いましょう」という声を聞きながら意識が薄れていった。
目が覚めると、朝になっていた。
葵と雫はもう起きたのかここにはいない。
自分もシャワーを浴びて起きなければと思い、上体を起こし出かける用意を始める。
ふと思い立ち出かける前にもう1歳になる子どもたちの顔を見ることにし、葵と白乃がご飯をあげている横から顔を見る。
自分に気がつくと二人ともに笑い、「ぱぁぱ」と言ってくれる。
それを見て一緒に笑う大事な家族である皆、守らなければという気持ちが湧いてくる。
皆に行ってくると挨拶し、自分はジャネットと共に神戸セクターに出かけて行った。
その日の午後、「魂の融合」というスキルに目覚めているのが判明した。
それは悪魔変身者が人のままで変身する悪魔のスキルを一つだけ使えるという物らしかったが、そのスキルを認識した瞬間、脛毛と脇や腕の毛が消えおまけに全身の肌のほくろや黒ずみが消えてしまった。
医師の六堂さんには、自分の契約相手によるとても羨ましい副作用だと言われてしまった。
鏡で自分の顔を見ながら考えてしまう。自分はどこに行こうとしているのかと。
あとがきと設定解説
・最初の夢
主人公を神話時代の婿に見立てたとあるご夫妻の試験。
夫のほうが爆笑して合格を出し、加護としてスキルに目覚めさせた。
男性には女性を理解するのは難しい。
次回から第四部の予定です。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。