カオス転生異聞 デビルズシフター   作:塵塚怪翁

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続きです。

今回は、依頼で請け負った事件の後編回。


第三十六話 Q、日々のお仕事は順調だと思っていますか? ぱーと4

 

 

  第三十六話 Q、日々のお仕事は順調だと思っていますか? ぱーと4

 

 

 舌打ちした男の術者がこちらを指差して叫ぶと、悪魔たちが襲いかかってきた。

 

 

「アナライズ、そこの変な悪魔はレベル26【妖鬼トケビ】、衝撃吸収、破魔と呪殺耐性です!

 それと、その男は異能者で破魔と呪殺は効きません。気をつけて!」

 

「【サバトマ】、ユキジョロウ。ぶっ放せ!

 ついでに、マハラギストーンも喰らえ!」

 

「了解、【マハブフーラ】!」

 

 

 火炎と氷雪が敵全体を覆う。

 群れをなした屍鬼たちは数を減らしたが、ダメージを気にせずトケビはジャネットに、リビルドゾンビはこちらに襲いかかってくる。

 中華拳法らしい独特の移動法で近づいたリビルドゾンビは、素早くこちらに右拳を打ってくるのを避けきれずに当たりダメージが来る。やっぱり、反射も無効化して攻撃できるようだ。

 横合いからユキジョロウが【ブフーラ】を撃ち込むも意に介していないリビルドゾンビ。

 

 ジャネットは組み付いてくる屍鬼の群れの影からトケビに攻撃され、錫杖で打ち払うも【マモリクズシ】と叫んだトケビに掻い潜られ強かに殴られ悲鳴を上げている。しかも、その後に一本足で器用に距離を取り、わらわらとやって来る屍鬼たちの後ろに回りニヤニヤ笑っている。

 

 男の術者の方もさっきの全体魔法を屍鬼たちに隠れてやり過ごしたようで、向こう側から【アギ】を打ち込んでくる。

 動きの鈍い屍鬼の群れを盾に使うかなり慣れた戦い方からも、この男の術者も侮れない。

 

 攻撃用のストーンはさっきので使い切った。パールバティーは回復主体、イシュタルは攻撃が衝撃のみ。奥の手を切るか。

 

 

「ユキジョロウはジャネットのところへ。こっちは何とかする」

 

「え? わかりました。気をつけて!」

 

 

 最近になって、かろうじて変身だけは出来るようになった彼女に力を借りよう。

 

『Warning,Warning. NON-REGULAR FUSION』

 

 腹部から胸元に背中まで肌を露わにした夜の色をした赤いラインのある全身金属鎧の女性の姿に変わる。自分が頼られた事への歓喜と敵への憤怒が湧いてくる。これは【妖鬼ベルセルク】の彼女の感情だろう。

 

 

「…アアアアaaaaa!」

 

 

 自分の姿が変わった事へは興味も示さずにリビルドゾンビがこちらに打ち込んだ右腕をそのまま掴む。

 【狂気の暴虐】。掴んだ左腕はそのままに、衝動のまま右腕を振りかぶり何度も殴りつける。

 

 

「これでも喰らいなさい!【天罰】!」

 

「【マハブフーラ】!」

 

 

 向こうで、屍鬼の群れとトケビを巻き込んだ氷雪と破魔の光の範囲魔法が炸裂し、屍鬼の群れが全て崩れ落ちる。

 焦った表情をしているトケビが、ジャネットに向けて魔法を唱える。

 【ドルミナー】。抵抗しようとするも崩れ落ちるジャネット。

 何か叫びながら、ユキジョロウに【アギ】を打つ術者の男。しかし、彼女は火炎が弱点ではなく耐性になっている。

 倒れないながらも、怪我を負っているユキジョロウを見て猿のように騒ぐ男たち。

 それを見て、その愚かさに笑みが浮かぶ。

 

 しつこくこちらの防御を抜く攻撃をするゾンビの顔面を右手で思い切り掴むと、男たちに投げつけた。

 符の付いた仮面が砕けながら飛んできたゾンビに驚きこちらを振り向くのを見つつ、魔法を使いながら駆け寄りジャネットの錫杖を拾ってそれを振り抜いた。

 

 

「【ラスタキャンディ】。これで終わりっ、【月影】!」

 

 

 振り抜いた錫杖が、投げつけたリビルドゾンビと視界を塞がれたトケビの胸部を破壊しながら貫通する。モータルジハードと遜色ない威力を持つスキル【月影】により完全に死亡し動きを止めたリビルドゾンビと崩れて消えていくトケビ。

 完全に壊れた錫杖を放り、尻餅をついてガタガタ震えてこちらを見上げる男の術者の腹を加減して撫でることで痙攣して動けなくしてから小脇に抱える。

 ユキジョロウに起こされたジャネットが近づいてくる。

 

 

「錫杖を壊してしまってごめんな、ジャネット。さあ、脱出しよう」

 

「あなたは、マスターですか?」

 

「ん? 自分以外に誰がいるのかな?」

 

「ふう、どこかで見覚えのあるエッロい格好した女性ならここに」

 

 

 答えようとしたが、振動が起き異界の崩壊が始まったので来た道を駆け戻ることにする。

 さあ、急いで脱出しよう。

 

 

 

 入り口を飛び出し、抱えていた男を地面に放る。ユキジョロウは途中で既に戻っていて、ジャネットと二人で息を整えている。 

 ゴゴッという音がして振り返ると、中が普通の古びた倉庫に変わっている。異界が消えたのだろう。

 終わったようなのでカードを戻し、変身を解除しアイテムで傷を治す。

 

 そういえば、放り出した男は向こうの符術使いだったなと思い出し、ジャネットに押さえつけて貰って下着以外は剥いで調べることにする。

 ハンドベルや服のあちこちにある隠しポケットの札の束などを確認していると、周防警部とお坊さんが警官隊と共にやって来た。

 警官隊の多くはそのまま倉庫の中に入っていき、残った数人がマニュアルでもあるかのように手早く手錠と猿轡でただの禿げたおっさんになった男を拘束すると、渡した色々な物を持ったお坊さんも連れ添って連行していった。

 それを見送った周防警部が、会釈をしながら話しかけてくる。 

 

 

「ご苦労様でした、月城さん。

 入ってからまだ3、4時間しか立っていないのに実行犯を拘束してくるとは、ガイア連合さんはすごいんですねぇ。

 だてに、破廉…露し…痴じ…色っぽい女性の姿に変わるだけではないんですねぇ」

 

「そういう物なので、気にしないで下さい。

 とにかく、気にしないで下さい。

 それより、この入口からチャイナドレスを着た女が出てきませんでしたか?」

 

「いえ、監視班からはそういう報告はありませんが?」

 

「そうですか。これでひとまず終わりなら、休ませて貰えませんか?」

 

「こちらで押さえたホテルがあるのでそちらへどうぞ」

 

 

 かなり疲れていたので、車を廻してもらいビジネスホテルに着きダブルの部屋に入る。

 お互いに汚れを落とすためにシャワーを浴び、室内着に着替えて座ると備え付けの冷蔵庫から飲み物を取り出したジャネットが話しかけてきた。

 

 

「マスター。緑茶です」

 

「ああ、ありがとう。それにしても、外国の術者の上澄みって侮れないな。

 あんなモノが出てくるなんて思わなかった」

 

「確かに、あれには驚きました。

 でもそれより、私とナジャが二人がかりで倒したあの屍鬼を一人で倒したマスターの変身の方が驚きです。

 喧嘩殺法な動きじゃないあれは、マスターの戦い方じゃないですよね?」

 

 

 鏡に向かって結っていた髪を梳いているジャネットに、冷たいペットボトルのお茶を飲み笑って答える。 

 

 

「基本的に自分の変身は、彼女らの姿になって自分の意志で力を振るっているんだ。

 でも、彼女たちにも意志があるからね。時々は、彼女たちがこうしたいというやり方でやってもいるんだ。

 今回のも、ベルセルクのあの娘のやりたい動き方で殺っただけだよ」

 

「結局は、『娘大好き』が理由ですか。

 ん? 今、何か発音が変じゃありません?」

 

「おかしくないよ。ああ、ちょうどいい。

 ちょっと待ってて」

 

 

 ケースからカードを取り出し、サバトマで呼び出した娘達にマッカや魔石を渡す。

 変身している間はHPとMPは自分自身のものを消費するが、サバトマで呼び出すと彼女たち自身のものを消費することになる。

 その消費した分は、こうして補填しないと回復に時間がかかる。

 戦闘時の手段と手数は増えるが、こうして支出が増えるのも痛し痒しである。

 出てきた子がジャネットと視線だけでする意味の分からないやり取りは気になるが、渡し終えるとカードを覗き込みながらジャネットが隣に座る。

 

 

「そういえば、あの警部さんも言いかけていましたけどベルセルクのあの鎧のデザインは扇情的すぎません?

 誰がデザインしたんでしょう?」

 

「ふうむ。さあ、分からないなぁ」

 

 

 自分も知らない作品ものなので、気になったので変身して詳しく見よう。

 

『ABSORB DEVIL. Warning,Warning. NON-REGULAR FUSION』

 

 変身して立ち上がり、夜の窓に全身を写しながら見てみる。

 

 基本的に狂戦士のランスロットなのだろうが、全体的に肌が出すぎで扇状的な出で立ちである。

 頭部は兜と言うより仮面やバイザーと言う方が合っているが、左側で髪の一部をリボンでサイドテールにしているのはおしゃれであろうか?

 長い髪と黒い飾りの付いた赤い紐をかきあげて後ろを見ると、背中が丸出しである。

 胸と両脇を覆っている部分はかなり可動的で、ぐにゅぐにゅと動く大きな胸に合わせて零れそうに動いている。

 お腹には何か赤いラインが描いてあり、履いていないように見えるが腰の鎧の隙間を覗くとちゃんと黒い革かゴムのような小さめのパンツもちゃんと履いている。

 

 確かめている内に、どんどん顔が紅潮している。

 おむつも替えたうちの可愛い桜はこんなにもスタイルの良い美人になるだなぁと考えていると、顔が熱を持ったように赤くなったので悪い事したなと思いカードを抜きもとに戻った。

 ジャネットにもやり過ぎだと叱られたので、朝になるまで寝ることにした。

 

 

 

 夜の闇の中を一人の女性が走っている。すでにその姿は、目立つチャイナドレスなどの派手な物ではなく隠れ場所に用意しておいた洋服である。 

 今の日本でメシア教以上にとんでもない戦績と技術力を示しているガイア連合、あそこにいた男は間違いなく、自分が作り上げたあの2体を潰したのだから幹部クラスの奴だろう。本当についていない。

 

 代々大陸の田舎で他の術者に僵尸を作って売り細々と暮らしていた家で生まれたわたしは、成人してまもなく父が一山当てると言って莫大な借金とその金で買った高名な武術家の脳を二つ残して死に、それらを抱えて途方に暮れていた。

 そこへあの神父服の男が、地元の軍を引き連れて話しかけてきたのだ。

 

『そこに抱えたもので2つ君が操るモノを作り仕事をすれば助けようじゃないか』、と。

 

 頷いたわたしはそれから上海に連れて行かれ、そこであの二つの脳を埋め込んだ最高傑作の僵尸を作ることが出来た。他の体の部分の調達費や用意された設備の費用や生活費で借金が高級車一台分買えるくらいに加算されてはいたが。

 そして、それらが完成した日にあの男はまた現れてこう言った。

 

『日本に渡り、かの国にいる同胞たちを救ってはくれないか?』、と。

 

 今になって冷静に考えれば、本当に馬鹿だろう。根拠もなくあの男の言葉を信じ切っていた為に、迂闊にも自称名門術者の男と黒社会の連中と組んだことで、今こうやって逃げ惑っているのだから。

 秘蔵の転移の札で逃げ込んだ隠れ場所で着替えている時に、あの僵尸との繋がりが消えた。

 どんな耐性の化け物でも貫き殺す僵尸を倒すあそこにいた男は本物の化け物だ。

 今はとにかく行方をくらませて、大陸に逃げ込まないと。

 倉庫街を抜けてもう少しで繁華街に入るというところで、体がしびれ動けなくなり転倒してしまった。

 周囲にメシア教の武装した者達を引き連れ、あの長身の神父服の男がそこにいた。

 そして動けなくなったわたしの顔を覗き込むように、妙に響く低い声で自分にも分かる大陸語で話しかけてきた。

 

 

『やれやれ、どこに行こうというのか。

 借りた金は返しなさいと教わらなかったのかね?』

 

『こ…ど…わか…なに…』

 

『ふむふむ、質問かね? 答えてあげよう。

 身体に埋め込んだ機械式の発振器は便利にできているし、ガイア連合産のシバブーストーンは実に優秀だ。

 君の父親が死んだ事から今に至るまで、私が全て計画を立てて進めたのだからこの結果は必然だとも。

 理解したかね?」

 

『なん…こ…わた…』

 

『ふむふむ。

 ただの小娘にすぎない君に大量の資金を投じたのか、かね?

 単に君に才能があり、かつ運が悪かっただけだとも。

 残念ながら浸透勁を会得した武術家の保存した脳はもう手に入らないが、君にはもっと僵尸を作ってもらわないといけない。

 君の作品群には是非とも海外で活躍してもらうのでね』

 

『こ…の…げ…ど…う』

 

『褒めてくれてありがとう。

 こういう時はこう言うべきだな。“この魂に哀れみを”

 連れて行け』

 

 

 近くに黒塗りのバンが止まり、僵尸術者の女性を乗せると走り去った。

 黒いカソックを着たその鋭い目つきの男は、カズマたちが眠るホテルの方角を見るとニヤリと笑みを浮かべこう言った。

 

 

「神の声は聞こえるが愛するが故、ただの小娘と化しつつある大天使が見初めた男か。

 人の世を守る中庸たらんとする組織に属し、地獄の宰相に力を授かり、己が小さな家族に固執する道化。

 貴様や周囲の者たちの懊悩や苦悩、この【神の悪意】が愉しませてもらうぞ」

 




あとがきと設定解説


・【妖鬼トケビ】

お隣の半島の民間伝承によく登場する一本足の鬼。
レベルは、26。耐性は、衝撃吸収、破魔耐性、呪殺耐性。
スキルは、ドルミナー、ラクンダ、ショートジャブ、マモリクズシ。

・【妖鬼ベルセルク】

彼の娘の桜が、その重い愛情の発露として生み出したもう一人の彼女。
外見は、某作品のサクランスロットを検索して下さい。
レベルは、53。耐性は、物理耐性、火炎弱点、氷結耐性。
スキルは、狂気の暴虐、月影、ラスタキャンディ、物理ハイブースタ、火炎反射、勝利の雄叫び。


次回は、次の事件へ。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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