カオス転生異聞 デビルズシフター   作:塵塚怪翁

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続きです。

今回は、最近の彼の日常と新しい事件の話。


第三十七話 Q、日々のお仕事は順調だと思っていますか? ぱーと5

 

 

  第三十七話 Q、日々のお仕事は順調だと思っていますか? ぱーと5

 

 

 あの事件から時も経ち、10月になった。

 

 結局、あの大陸から来たテロリストと一緒にいた女の術者は行方不明のままだった。

 耐性を貫通するスキルを持つ屍鬼を作れる術者など放って置けるわけでもないので、ショタオジにも報告しガイア連合でも注意喚起と情報の提供を呼びかけている。

 無論、警察でも本名不明ではあるが似顔絵付きの指名手配を行っている。

 何しろ、あの事件の生き残りは逮捕された男と手配中の女性のみであり、物証は倉庫の中には遺体もなく中途半端に組み立てられた武器類のみが見つかっただけで他にはなく、彼らを手引した大陸人のブローカーが何人か捕まっただけだった。

 術者の男や関係者の自白から、オカルトも用いられようとした武装組織の蜂起未遂として警察や根願寺では結論が着いたようで自分たちも報酬を貰い神戸に帰ることになった。

 

 

 

 あれからこちらは変わりのない日常を送っている。

 

 恒常的に出る異界の討滅や新人の育成、プロマイドの新規撮影などの依頼をこなし、レベル上げのため数日掛けて大型異界へと遠征し、家に帰って畑や漬物作成の手伝いや子どもたちと過ごし、夜には皆に代わる代わる搾り取られる何気ない日常である。

 

 ただ、変わった事といえばいくつかある。

 

 例えば、山梨セクターでPVの撮影をしたことだろうか。 

 

 以前の事件で死にかけて蘇生した【TS魔人ネキ】とTS悪魔化してAV撮影した【自衛隊ニキ】、そしてマーメイドの姿になり上着を着た【TSマスオニキ】こと自分たち3人が、TSした事による周囲の反応や意識の変化や困ったことなどをお茶を飲みながら話す座談会という需要がどこにあるのかよく分からない健全なPVだった。

 もともと自分の5人の悪魔娘の姿のプロマイドのプロモーション会社の取締役が、あの自衛隊ニキのAV作製の関係者だったことから始まった企画らしくそれなりにお高い報酬もあり実現したのだ。

 個人的にも、この方面で相談や話ができる相手ができたのは助かっている。

 ちなみに、その後に全員で一人ずつ何枚かプロマイドを取り3人のそれぞれの物をランダムに一枚ずつ封入して売られる形で販売され、かなり売り上げを伸ばしたというのだから業の深い話である。

 

 例えば、人生相談された事だろうか。

 

 山梨セクターでPVの撮影後、「マスオニキでしょうか?」と思い悩んだ顔の男子高校生に呼び止められて相談を持ちかけられた。

 彼曰く、一般人の幼なじみの女の子を終末から助けるべく強くなろうとしているが、彼女には信じてもらえず怪しげな冊子に踊らされた地方霊能組織のお嬢様に押しかけられて困っているということだった。

 真剣に困っているようだったので、助けるのはその彼女だけか家族も助けるのかどこまでかはっきりと決めてから全部打ち明けて話す方がいいと答えた。

 ただ、力になれるかもしれないから何かあれば神戸へ連絡しても構わないと言ったらとても喜ばれたが、自分はそのお嬢様が幼なじみで結婚して子どももいると答えたらとても微妙な表情をされたのは納得がいかない。

 

 例えば、娘たちに関する神託があったことだろうか。

 

 葵から聞かされたのだが、将来、凛と桜には運命の人である士郎(仮)くんが現れた場合、二人共に好きになり、争いの末に刃傷沙汰の未来があり得るので注意しろという祭神様から神託があったらしい。

 信じ難いが一応は神託でもあるためどうしましょうと相談されたので、もしそうなって信頼できる男なら自分のように姉妹で共有するように教えればいいと言ったら嬉しそうに頷かれ、そういう事になった。

 いずれ現れるだろう士郎(仮)くんには、大事な娘を預けるのだし自分には出来たことなのだから是非とも頑張って貰いたい。

 

 例えば、夫婦の寝室のことだろうか。

 

 ふと気づくと、色々な仕事の制服や学生服に革製の服や専用の下着が増え、布団を敷く頭の近くに簡易式の拘束用の留具があったり、いろいろな多用途の小道具が増えたり、参考映像資料や参考文献が増えたり、多人数のためそれらを保存するために押入れの下段が埋まったりと子どもたちには見せられない有り様と化していた。

 自分も受け入れて楽しんでいるのでそれに不満はないが、それらの定期的な手入れのために洗ったり磨いたり陰干ししていると、これらがほとんどガイア連合系企業の製品である事に気づきそっと見ないことにした。

 

 

 

 そういった事を色々と思い出しながら掲示板を見ていると、いくつかの掲示板では色々と論議が続いている。

 春先に起きた井の頭公園の殺人事件についてである。

 資料によると、この事件を切っ掛けに【真・女神転生】の物語が始まりやがて核ミサイルが東京に落ちる大破壊に繋がるらしいが、現在は悪魔召喚プログラムはばら撒かれてはいないため主人公と思わしきメンバーは補足し監視している状態だという。

 他にも、既にミロク法典は始末済みのため東京受胎は起きず、平崎市と天海市の騒動は処理済み、後は核ミサイルを防げれば真2と真4の歴史は実現しないという。

 東京封鎖は関係者や関係組織が存在しておらず起きる可能性は低いため、後はペルソナと南極に関してだけだという事らしい。

 自分もそれらの考察スレに「帝都なら根願寺より公にお伺いを立てた方がいい」と打ち込んだ所で、声をかけられた。

 

 

「お兄様」「お義兄ちゃん」「旦那」

 

「やあ、珍しいな。学校帰りでこっちに顔を出すなんて」

 

 

 そこには、制服を着たままの花蓮と雫、革ジャン姿のクーフーリンがいた。

 最近は自分ほどレベル上げに積極的にならずに普通の生活を楽しんでいる花蓮は、レベルの差がついて別に行動していたのだが、今日は雫と一緒に学校から帰ってきたようだ。

 二人は地元にあるそこそこ大きな歴史だけはある私立蛍原学園に通っている。

 葵と白乃もそこの卒業生で、自分も通っていたが特に思い出はない。

 今日は依頼もなく定時で家に帰るつもりだったのだが、3人は相談したい事があるとかで応接室で話を聞くことにした。

 

 

「お兄ちゃん、ごめんね。急に話を聞いてもらって。

 実は、うちの学校にいる妖怪の人から頼みを聞かされたの。

 それで、出来れば会ってあげて欲しいのだけど」

 

「そうなのです、お兄様。出来れば同行して頂きたいのです」

 

「花蓮たちだけでは駄目なのか?」

 

 

 そう聞くと、クーフーリンは顔をしかめて答えた。

 

 

「あのな、旦那。

 異界や戦場ならいくらでも花蓮の側についているがよ、女子トイレは無理だわ」

 

「じょしといれ?」

 

「なんでもそこに出る妖怪とやらが関係あるんだと」

 

「そうなんです、お兄様。

 私たちだけでは不安でしょうがないのです。

 何しろ、数だけは多いようなので」

 

「とにかく詳しい説明をしてくれないか?」

 

 

 そこで、雫と花蓮から説明を受けることになった。

 もともとは下級生の女子生徒から受けた相談が始まりだった。

 夜遅くなった部活の帰りにその子が複数の男子生徒と学校内の人物でない人影が、誰もいない教室内で奇声を上げていたのを見たのだと。

 彼女の訴えで教師陣が調べたが何も出ず、件の男子たちも何も憶えていないと証言してその一件は片付いたが不安になった彼女は花蓮に相談したのだそうだ。

 それと同じ頃に、雫の方も3年生の教室がある3階の女子トイレのいる花子さんに自分が見えることが分かり、助けて欲しいと相談を持ちかけられたのだという。

 夜な夜なスマホを片手に、自分を探して回る男子生徒がいて気味が悪く迂闊に姿も現せないそうだ。

 二人ともこういう相談を受け、解決するのに自分の力を頼りに来たという事だった。

 

 

「話はわかった。今夜にでも行けばいいのかな?」

 

「それでね、お兄ちゃん。

 出来れば学校には内緒で忍び込む形でして欲しいの」

 

「学校には何か言えない理由でも?」

 

「お兄様。今の校長先生と教頭先生はオカルトは信じませんし、学歴や社会的地位で物事を判断される色々と面倒な方々なので秘密しておかないとトラブルになります」

 

 

 そういうことならと準備をして夜に行くことになった。

 夜になり中に入り込むことにしたが、最近は神戸市内でも行方不明になる事件が多いため防犯カメラが設置している正門は避けて塀を乗り越えて入ることにした。

 今回は久しぶりに花蓮とクーフーリン、そしてジャネットと自分の4人組である。雫もついて来たがったが、危険なので家で待っていてもらうように説得した。

 塀を乗り越え、カメラを気にしつつ順調に進んでいく。

 校舎の裏側にある非常用出口の金属製の扉に着くと、花蓮がヘアピンとドライバーであっという間に鍵を開けて中に入ることが出来た。

 音を立てないように進みながら、声を殺して花蓮に聞く。

 

 

「なあ、花蓮。ピッキングだなんて誰から教わったんだ?」

 

「誰からって、山梨の先輩方からですわ。

 “ピッキングは乙女の嗜み”なので、他にも色々と伝授して頂きましたの」

 

「花蓮さん、花蓮さん。後でわたしにも教えて下さいね」

 

「ええ、もちろんですわ。犯罪に悪用しないのならば、他の事もお教えしますわ。

 だって、【All's fair in love and war. 】ですもの!」

 

 

 横を歩いていたクーフーリンに視線を送るも、すっと逸らされる。

 そういえば、以前は「嬢ちゃん」と呼んでいたのに最近は「花蓮」と呼んでいると気づき、槍を持っていない左肩を軽く叩くと複雑な表情のクーフーリンと進み、目的地である3階の女子トイレの前に着いた。

 入り口で警戒するというクーフーリンを置いて、中を覗き込むと花蓮とジャネットが一つだけ閉まっていた扉の前で中の人物に話しかけている。

 返ってきた声は小さい女の子のようだった。

 

 

「エネミーソナーの反応はここですね」

 

「ねえ、花子さん。ここにいるのでしょう? 出てきてくださいな」

 

「な、何ですか、あなた方は?

 あなた方みたいな強大な方があたしなんかに用事があるのですか?」

 

「あなたが相談された雫さんの友人の花蓮です。

 何か男子生徒に付きまとわれているとか?」

 

「えーと、あの大人しそうな顔をして、時々すごい色気を出してる胸の大きな髪の短い娘の雫ちゃん?」

 

「ええ、その雫さんです。

 こちらにいるのが私のお兄様とシキガミのジャネットさん。

 廊下にいるのが、私のパートナーのクーフーリンですわ」

 

 

 扉が開いて顔を出したのは、白い服に赤い吊りスカートを着たおかっぱの小学生くらいの女の子である。イメージした通りの『トイレの花子さん』である。

 話をしようとした所で、バタバタと足音がして誰かが近づいて来た。

 振り返ると、最新式のスマホを持った大人しそうな顔をした男子生徒がこちらに来ていた。

 そして、こちらを指差すと話し始める。

 

 

「何やってるんだよ、お前ら。そこにいる花子さんは俺のもんにするんだから、そこをどいてくれ」

 

「何の話だ?」

 

「男なんかに使いたくはないけど、『廊下の端で大人しくしてろ』」

 

 

 そう言うと、彼は怪しげなピンク色の瞳のマークをした画面を見せてきた。

 その画面を見た途端、クーフーリンはふらふらと廊下の端まで歩きぼうっと立ち止まっている。身構えて黙って見ていると、不審げにこちらを見て同じことを繰り返したので近寄ってそのスマホを取り上げた。

 取り返そうと殴りかかってきたので、とっさに変身して反射するとダメージを受けて顔を押さえて痛い痛いと転がっている。

 女子トイレから中の面々が慌てて出てきた。

 花蓮がディアムリタを掛けるとクーフーリンも正気に戻る。

 床で転がっている男子生徒を見て、花子さんがこの男だと騒いでいる。

 自分の方を見たジャネットがアームターミナルに何か反応があったようで、持っているスマホを指差して言い出した。

 

 

「あの、マスター。その手に持っているの、悪魔です。

 アナライズでレベル1【怪異サイミンアプリ】と出ているんですが」

 

「これが?」

 

 

 疑問に思い、スマホを見るが操作しても画面も変わらずよく分からない。

 皆で取り囲み、この生徒から話を聞くことにしよう。

 しゃがみ込んでスマホを示しつつ、座り込んでこちらを震えながら見ているこの男子生徒(花蓮によると田中と言うらしい)に話しかける。

 

 

「色々と話を聞かせて欲しいんだが、まずこれはどこで手に入れたんだ?

 そして、花子さんを狙った理由は?」

 

「な、仲間内でオカルトに詳しい佐藤のやつが変な機械を手に入れたんだよ。

 家族旅行で関西に行った時に教会から持ってきたとかで、それがあれば漫画に出るような美少女悪魔が呼び出せるってあいつが言ってて、部室棟のオカルト研の部屋で動かしたんだ。

 そしたら、男の天使が出てきて俺たちと約束したんだ。

 “好みの美少女を自分の物に出来るようにする”って」

 

「それで、好みの美少女が花子さんなのか?」

 

「そうだよ。好みの小さい女の子に言うことを効かせられるそれを貰ったけどさ。

 非合法な本物に手を出したら犯罪じゃん。なら、ここにいるって分かっている花子さんなら合法ロリだからいいと思ったんだよ」 

 

「戯け者! あたしだって嫌なものは嫌よ。

 しかも、言うに事欠いて『合法ロリ』とか呼ぶんじゃない!」

 

 

 今まで黙って見ていた花子さんが我慢しきれずに田中に怒っているのだが、当の田中は「本当にいたぁ」と喜んで話している。

 まだこちらの話の途中なので、花子さんには後ろに下がってもらって話を続ける。

 

 

「それで、他の仲間はどこにいる?」

 

「毎晩集まっていたから、他は幽霊部員しかいない部室に今も皆いると思う。

 鈴木と高橋は好みの娘を貰えたから、部室で楽しんでいるじゃないか?

 佐藤はあの天使に細かい注文をつけていたから、まだ交渉してんじゃないかな?」

 

 

 色々と頭の痛くなる話が聞けた。

 つまり、その佐藤という生徒が関西の教会から天使を呼び出すCOMPを盗んでこの事態を引き起こしている上に、何故かその天使はこんな変な怪異を呼び出している、と。

 おまけに、この田中は花子さんが見えているという事は覚醒していると言うことで、とにかくどちらにしろ全員覚醒していようがいまいが、保護しなければならないという事だ。

 ここは二手に別れた方がいいだろうと思い、花蓮に話しかける。

 

 

「花蓮。すまないけど、この田中くんを保護して神戸セクターに行って応援を呼んで来てくれないか?

 自分とジャネットは今からそこに乗り込むから」

 

「でも、お兄様。お二人だけで大丈夫ですか?」

 

「ジャネットやカードの娘達もいるし、大丈夫だよ。

 天使に踊らされているとは言え、ただの高校生を3人ほど保護しに行くだけだからね」

 

「大丈夫ですよ、花蓮さん。マスターは私が守りますから」

 

 

 新調した鉄の棒を振るって勇ましく答えるジャネット。

 ここで自分たちは二手に分かれ、場所を聞いた部室棟の部屋に行くことになったのだった。

  

 

 

 

 

 田中が抜け出す時に開いたままだった部室棟の入り口を通り、『オカルト研究会』とプレートの扉を開けてジャネットと呆然としてしまった。

 その中は、ただの部室ではなく異界と化してしまっていたのだから。

 

 

「異界の入り口がラブホテルの入り口ロビーなのはどういうことだよ」




あとがきと設定解説


・【怪異トイレノハナコサン】

最近の急激な伝承の変化で、特に萌え化の著しい個体。
レベルは、7。耐性は、銃無効、破魔弱点、呪殺無効。
スキルは、タルンダ、スクンダ、ラクンダ、パニックボイス。

・【怪異サイミンアプリ】 

契約者の言う通りに動く自我のない悪魔。
レベルは、1。耐性は、電撃弱点、衝撃弱点、呪殺耐性。
スキルは、マリンカリン。


次回は、事件の続き。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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