カオス転生異聞 デビルズシフター   作:塵塚怪翁

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続きました。

今回は、富士山に移動して着くだけになってしまった回。

二人の現状認識も、ちょこちょこと。


第四話 Q、自分の足元はちゃんと確認していたつもりだったのか?

  第四話 Q、自分の足元はちゃんと確認していたつもりだったのか?

 

 

 8月になり、出発の日になりました。

 

 掲示板経由で申し込んだ【第×回・富士山覚醒体験オフ会】の案内状が郵送されて来たので、合流地を目指し新大阪から静岡へ新幹線で現在移動中である。

 隣の席の花蓮が、今に至って無言のままなのが大変恐ろしい。

 原因は、あれしかない。

 地元の駅の見送りで、衆人環視の中で雫ちゃんが真っ赤な顔で頬にキスをし、葵さんは濃厚なのを唇にし二人で「いってらっしゃい」と言ってくれたことだろう。

 近くにいた花蓮の眼差しが、氷点下になっていたので間違いない。

 花蓮は二人から色々と話しをされていたようなのだが、この調子ではどこまで納得したのかも聞けない状態である。

 彼女の機嫌が治るのを待ちつつ、これからの事などいろいろ考えることにする。そうしよう。

 

 女神さまの視線を感じる中で約定を取り交わした日、所長さんは葵さんのご両親に早速連絡したそうだが、最初は訝しげだったのが、それが説明後にはつつがなく大変喜ばれたらしいのだ。

 何でもご両親は帝都の商社に出向したのではなく、組織の代表としてヤタガラスと根願寺の指示で帝都の結界の維持作業をしていたとかで、持ち回りの結界担当も落ち着いたようなので一度婿殿の顔を見に戻ってくるとか。

 雫ちゃんは今回の件について、裏の事情を含めて葵さんと「女の話し合い」をし両親とも電話で相談した上で決めたそうである。

 彼女には妹の友人なので、失礼にならない様にふくよかな大きすぎる膨らみを見ない様にするなどの態度で接していたのだが、どこでどう好感度を稼いだのか分からない。

 長年一緒の地元で暮らして情も湧いているので断るという選択肢はもうないが、葵さんもご両親も乗り気で二人姉妹をまとめて娶ってくれというのがそもそも解らない。

 前と今を合わせて70年近くのヘタレ童貞には、難解過ぎる疑問である。

 

 さて、気分を変えるために修行の方に考えを切り替えよう。

 そのためにも、まず能力のことを知るべきだろう。

 

 第一に花蓮であるが、【ハマ】、【ブフ】、【ディア】、【パトラ】が使えるのは相当に優秀であろう。

 基本的に自分が前衛で、花蓮が後ろから援護する形になる。傷薬とか殆ど無いのでこうするしかないだろう。痛みや怖さにはもう慣れているし問題はない。

 そして葵さんが使える【見鬼の術】で強さもわかるらしいが、花蓮は葵さんよりやや強く自分は葵さんの倍近く強いらしい。大まか過ぎである。

 

 第二に自分であるが、これも能力が大まかにしか判っていない。

 まず、発動方法である。

 神戸に来た最初の子どもの頃は発動するやり方も判らず、試行錯誤した。

 自分の内側から何かが変わる感覚なので【ペルソナ】かと思い試してみたが、【ペルソナ】関連で思い出せるのが【番長】【屋根ゴミ】という単語とゲームの戦闘画面で「ペルソ~ナ」と言いつつ変なポーズを取っていることだけである。

 それなので、ジョ○ョのス○ンドのようだと考えいろいろなジョ○ョ立ちをしつつ「ペルソ~ナ」と言っても変化がない。ポーズが悪いのかと、母がいない内に部屋の姿見を見ながらやるとなんと成功した。

 そこでようやく気がついたのだが、どうやら【ペルソナ】ではなく【自分にそっくりの悪魔の姿に変わる】のが能力なのだ。

 他の姿に変われないか母の写真を見ながら【変われ】と思うと、母の姿になったので服を脱ぎ下着を取り裸になった。小さい頃に見たままの姿であり、触覚や味覚もそのままで体格の変化による動きの変化も感じない。そして、もとに戻ると脱いだ服などが消えてしまった。

 これ以降、手鏡を持ち歩き写しながら【変身】とやると成功するようになったので、気分が乗るので今でも続けている。

 

 次に、耐性とスキルである。

 これは敵がいないとわからないので、近所のお化け屋敷で幽霊で試すことにした。

 【変身】後に相棒のマイケルくんバットで殴り掛かる。もちろん、反撃が来るので躱すが子どもなので避けきれない。

 しかし、当たったと思ったのに相手の方が痛みを訴えている。

 避けるのを止めてみると、そのまま勝手に怪我をして消えてしまった。

 【物理反射】の耐性である。

 これは強い武器となると喜んで天狗になり2年ほどあちこちに突撃を掛け続けだが、体に羽がない首が骨になっている変な鳥の【アギ】の魔法をモロに喰らい、怪我をして怒られてからは慎重になるようになった。

 怪我が治りしばらくして次の場所に行った時、またあの鳥に【アギ】を喰らい咄嗟に手を掲げ【喰らいたくない】と考えると、体から力が抜けて光の壁が出てそれを跳ね返したのである。

 たぶん、【マカラカーン】のスキルである。と、同時に他の種類の何かを防ぐ光の壁を出せるようになったが判らなかった。

 それが分かったのが花蓮を連れ出すようになってしばらくしてからで、慎重に奇襲をすることを前提に隠れて異界付近を行動している時に、悪霊に怨念の塊を投げつけられている葵さんに出会った時だった。

 とっさに彼女を庇い、夢中で光の壁を出すとそれが防いでくれた。

 そして、悪霊は花蓮の【ハマ】で倒すことが出来た。

 【呪い防御】と呼んでいるスキルの発見である。

 あと、感覚的にもう一つスキルがありそうなのだがよく分からないのが現状である。

 それに、自分の攻撃手段が現状、人並み外れた力任せにバットの【マイケルくん14世】の殴打しか無い点もかなりの問題点である。

 

 そして、あと問題なのが花蓮がシスターを続けて行くつもりであることと、生まれがアメリカだったので、二人とも一神教の洗礼を受けているのがどう作用するか分からない点である。

 メシア教と天使という頭の痛い存在が、これでもかと影を差しているのが不安でしょうがない。

 

 これら全部の事を、向こうで何かヒントだけでも聞ければよいのだが。

 

 

 

 静岡から電車を乗り換え、迎えの車が待つ最寄りの駅まで移動する。

 もちろん、着替え等の入った大型の荷物は全部自分が運んでいる。

 移動する時はこちらを見るが、相変わらず無言で移動する花蓮。

 座っている間は、携帯電話をいじっている。そう、携帯なのである。

 確か、今の時期はポケットベルとただのガラケーの過度期だったはずだが、花蓮と自分には、月城家からそれぞれネットにも対応している最新期のガラケーを贈られているのである。

 ネット対応のそれは10年以上早いと思ったのだが勘違いだろうか?

 

 

「なぁ、花蓮。少しいいかな?」

 

「………何です? 重婚お兄様。何か弁解でも?」

 

「そこが疑問なんだが。

 葵さんと婚約するのはいい。嫌じゃないし、年齢的には早すぎるとは思うけど。

 だけど、何で雫ちゃんも一緒に娶ることになるんだ?

 もちろん、雫ちゃんが魅力的ではないと言うわけではないけど」

 

 

 ため息を付いて、呆れたように顔を上げる花蓮。

 

 

「戦い方だけは異様に上手いのに、その辺の事情は何も知らないんですね、お兄様。

 私も葵さんから聞いて気づいたので、あまり悪くは言えませんが。

 強い力に覚醒した人の側にいる覚醒していない人は、霊障にかかり命を落とし易いのだそうです。

 ですから、当人の力を抑える護符や霊障避けのお守りや結界が必須なんです。

 学校や幼稚園、うちの実家や葵さん家にも結界がありましたし、雫は覚醒していませんからお守りを持っていましたのよ」

 

「うちの実家にも?」

 

「ええ、落ちぶれたけどうちの間藤家も一応、月城家の分家なんだそうですよ。

 もっとも、ほとんど繋がりは消えていたそうですが。

 そして、今回お兄様が重婚されることになって雫にも祭神様の加護が降りて、霊障に悩まされることは無くなるという事なんですの。

 だから、個人的にはひじょーに複雑ですが、雫が死ぬかも知れないことから開放されるから今回の重婚約にOKを出したんです」

 

「知らなかったんだが、何も聞かされてはいないし」

 

 

 そこでハンッと鼻で笑う、花蓮。なんかイラッと来るな、今の表情。

 

 

「私だって、今回の件で葵さんから聞かされるまで知らなかったんですもの。

 お兄様が知っているわけがありませんわ。

 帰ったら正式に結納もするでしょうし、この辺のことはその時に説明されるんじゃありませんの?

 そろそろ着きますわよ。

 ああ、それと先程も葵さんとメールして浮気はさせないようにとの事ですので、見張らせて頂きますからね、お兄様。うふふふ」

 

「ちょっと待てぇ!人聞きの悪い事は言うんじゃありません!」

 

 

 ニコニコと笑う花蓮を追いかけて電車を降りる。

 大量の登山客に混じって、ポツポツと変わった容姿の人が紛れているのに気づく。

 登山客とは違って軽装で、下は小学生から上は中年の人まで外国人ぽい人まで混じっている。

 案内状の指定するレーンのバスに乗り込むと、車内がすごい光景になっていた。

 変わった容姿の人だらけである。しかし、周りの人は一様に無言だったり友人と話していたりするが、興奮しているのは変わらない。

 そういう自分や花蓮も楽しみにしながら、目的地のロッジまで着いた。

 

 案内係の腕章の付いた人に先導され、ゾロゾロと歩いて行くとロッジの奥に大きな鳥居があり、皆そこをくぐっていく。

 くぐった先には驚く光景が広がっていた。足は止められないが、周囲の人と一緒に驚きながら歩いていく。

 

 霊地らしいとても澄んだ空気、遠くに見える社と家屋。急ピッチで道沿いにいくつも建設されている建物群。

 空やその辺を飛び交う一反もめん、修行をしているらしい擦り切れた格好の修験者や僧侶やコスプレの集団、奇声を上げながら走っている白衣の男を、制圧しているガタイのいい白スーツの男性と白饅頭のような男性。

 すごいカオスな光景です。

 

 そうこうするうちに、他の人は案内の人が来たらしく散り散りになっていく。

 花蓮と二人でどこに行こうか探そうとした時、いつの間にか側に少年とも青年とも取れる男性が立っていた。

 

 

「やあ、ようこそ。日本最大の霊地である富士山を預かる日本最高の神社、【星晶神社】へ。

 君のことは噂で聞いているよ、神戸の【撲殺鬼】くん」

 

 

 

 

 

 

  自分たちを転生させた神様がいるのなら、こう言いたい。

 

 

「人のことをとんでもない二つ名で呼ばないで欲しい」、と。

 

 

 

 

 




あとがきと設定解説


・星晶神社 (せいしょうじんじゃ)

世界線がズレた結果、この名前になりました。
将来、ガチャを大体的にやるのでこの名前でいいかな、と。

霊能組織関係は、独自の設定ですのでご了承下さい。


次回は、いよいよ富士山での修行開始。
勢いがある内に、続けたい。

勢いで設定をもりもり作り、勢いで続きも投下しています。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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