カオス転生異聞 デビルズシフター   作:塵塚怪翁

40 / 53
続きです。

今回は、一話で収めたかったのでかなり長いお話です。

仕事が忙しい。


第四十話 Q、日々のお仕事は順調だと思っていますか? ぱーと8

 

 

  第四十話 Q、日々のお仕事は順調だと思っていますか? ぱーと8

 

 

 秋もそろそろ終わり、寒さも目立ち始めるようになる11月になった。

 

 先日の一件での細かい状況を纏めた報告書は山梨に報告したが、ショタオジから苦言を呈する内容のメッセージを受け取った。

 

 シキガミとの契約に抵触した例の内容と山梨に送った田中一郎くんの件では、極めて稀なケースでシキガミの五感によるユーザー認識の隙をつくような事になったのだが既に対抗処置は施したと言う。だからショタオジは現在、電化製品のリコール対応と同じように技術班と共にデスマーチに突入していると、同じように対応で追われている神戸セクターの技術担当である六堂さんと氷室さんから目のクマの目立った顔で愚痴混じりで知らされた。

 今度彼女らに何か賞与のようなものを用意しようと思う。

 

 ショタオジが苦言を呈したのは、もう一つの事である。

 ガイア連合はもともと同じ転生者たちが集まって終末を生き延びようという目的を持って寄せ集まった互助組織である。ショタオジ自身、仲間の転生者の死は歓迎できないと公式に発言してもいる。

 そして今回の件で問題なのは、悪魔に変わり果てたとはいえ幹部の転生者が未発見だった転生者を殺したのは見過ごせないのだと言う連中だ。

 状況が状況であるからショタオジ自身は沈黙を守るが、情報をどこからか入手した自分を敵視している連中からは絶好の叩くネタになるそうだ。

 

 彼らからすると自分は、ショタオジに取り入り神戸セクターの支部長に大抜擢された若造であり、地方の潰れかけの霊能組織に潜り込んで若い女を多数侍らしていて、地元のメシア教会のシスター達にいい顔をする好色者であり、外部の得体の知れない連中から貰った機械で多数の女の悪魔に姿に変える危険人物であり、女の悪魔に姿を変えて自分の写真を売り出すような淫売の変態だと言う事になっているそうだ。

 加えて、今回の件で自分たちガイア連合に多大な不安と迷惑をかけたので、幹部クラスの恩恵は取り上げるべきだと周囲を煽っているらしい。

 

 そう言われてしまえば自分自身も若干心当たりがあるので家族に手を出さないなら陰で何を言われようが構わないのだが、そういった声を沈静化するのも仕事の内だと言うのならば拒否するつもりもない。

 そこで、基本的に中立であるショタオジ付近ではない上層部からその辺の発言を払拭するため、幹部級でないと扱えない難易度の高い仕事を何件か処理して功績を上げて黙らせるようにとの正式の依頼が来たのだった。

 

 

 

 現在、自分はジャネットと共に依頼の現場に向かう船上にいた。

 船と言っても小型のクルーザーではあるが、今後の海外への進出する際の霊的な装備を施した技術試験船であり生え抜きの現地能力者達チームを率いている幹部級転生者の【卑劣ニキ】が拠点にしている船との事である。

 ここには今、自分とジャネットの他に卑劣ニキことチームリーダーの【アルファ】と『チームフォネティック』のメンバーが3人ほど乗っている。相変わらず、彼らは以前のホテルで会った時のように目出し帽と警察の特殊部隊によく似た装備で統一されているために個人の識別が難しい。

 久しぶりに会ったからか、笑みを浮かべたように話しかけてきた。

 

 

「よう、いつぞやの大量に屍鬼が現れた事件以来だな。

 改めて、自己紹介しておこう。俺は掲示板では【卑劣ニキ】で今は【アルファ】だ。

 そう、呼んでくれ」

 

「よろしく、アルファ。

 自分はこれから異界の攻略に向かうから合流するように言われて来たんだが?」

 

「説明しようか。

 俺はお前さんが受ける今回の複数の案件の仲介とサポートをするように言われている。

 拘束期間は最大12月の上旬まで。件数は、充分だと判断されるまでだ。

 行動中の記録では、お前さんは【ゲスト1】で、そっちのシキガミは【ゲスト2】だ。

 お前さん達のプロフィールと能力は概ね把握しているが、達成したと判断するのは上の方なので理解してくれ。

 使用した道具などの経費は報酬から天引きするが、必ず手に入るので安心して使ってくれ」

 

 

 そう言うと彼は日本地図を取り出し、四国と紀伊半島の間にある伊島という島を指で示して話を続ける。

 

 

「まず一件目だ。これを見てくれ。

 この島はちょうど四国と紀伊半島の間にあり船の航路の直ぐ側にある。

 この島の東端に数日前、洞穴が出来て異界になった。

 通報を受けて、調査員が調べたところ異界の主が船を難破させる逸話の【妖精ローレライ】だと分かった。

 レベル30以上の大物ということでお前さんの出番だ」

 

「マスター。妖精ローレライはデータによると、レベル31。

 耐性は、火に弱く氷結と破魔や呪殺に耐性があります。

 主なスキルは、子守唄にマリンカリンと回復魔法です」

 

「ゲスト2の言う通りだ。

 お前さんは精神状態異常無効があるし、そっちはシキガミだ。

 当事者なんだから、例のアプデももう受けているんだろう。

 封鎖は俺らがやるから、突入してきてくれ」

 

「わかった、準備は出来てる。何時でもいいぞ」

 

 

 船はそのまま洞窟近くの岩場の海岸に着くと、ゴムボートを用意して上陸した。

 そして、洞窟まで案内すると、異界の中でも使えるビデオカメラを付けたドローン型のステルス式神をこちらのお供につけて自分たちを異界内に送り出した。

 

 ジャネットと慎重に奥へと進む。内部は明るく自然洞窟が続いており、奥から唸り声のようなものが小さく響いている。そのためか、中に進むに連れて内部の様子がおかしくなっていた。

 たぶん、ここの異界に湧いたのだろうジャックフロストやジャックランタン、ゴブリンといった妖精たちがあちこちに倒れている。死んだのならマグネタイトに戻り消えるのだが、こちらに気づいているようだがそのまま痙攣して倒れたままである。

 アナライズでも状態異常の麻痺だと出ているのでちょうどよいので手早くとどめを刺しながら奥へ進んで行くと、奥に進むに連れて唸り声のようなだみ声のような音は大きくなっていき、とうとう最奥だと思われる両開きの扉が奥にある広間に着いた。

 

 妖精郷を模したのだろうか中央にきれいな泉があり花畑と集まって騒げる空き地や木々も生えている空間であるが、そこかしこに麻痺して動けなくなったかなりの数の妖精たちが転がっているのはシュールである。

 自分たちが広間に着き覗き込むのと同時に唸り声も止み、扉から女性が顔を出した。美女ではあるが、緑の髪に青い衣のここの主のローレライその者であった。

 

 

「ちょっと~、わたしの練習した歌を聴きなさいと言ったのにぃ、起きれないなんて根性がないわよ~。

 起きなさいってば~」 

 

 

 どうやらあの唸り声は練習した歌だったらしい。

 一緒に覗き込んでいたジャネットが、微妙な顔で小声で話す。

 

 

「マスター。あのローレライ、スキルが【子守唄】じゃなくて【バインドボイス】です。

 音痴でスキルが変わるなんて初めて聞きました」

 

「あれが歌声かぁ。唸り声にしか聞こえなかったぞ」

 

「誰!? 今、わたしを音痴って言ったのは!?」

 

 

 耳ざとく聞かれてしまったらしい。ジャネットと共に部屋に走り込み、戦闘を開始する。

 

 

「【サバトマ】、アリス。お片付けをお願い」

 

「は~い。お片付けするね。【死んでくれる?】」

 

「私はあいつを」

 

「何てものを呼び出すのよ、あんたたちは。…へぐっ」

 

 

 呼び出したアリスの呪殺で周囲の妖精を一掃し、驚いていたローレライに走り寄ったジャネットが振りかぶった鉄の棒で側頭部を殴り飛ばした。なまじ開けた扉から覗き込む態勢だったのが災いし、そのまま扉に頭を叩きつけられてふらつくローレライ。

 ローレライも根性を見せて自分に魅了の魔法を放つが、自分は新スキル【魂の融合】で変身時でも【精神異常無効】が効いているので無効である。

 その後はさして抵抗もなく、そのまま3人がかりで囲んで叩いて消滅させ脱出した。

 

 外の時間でも数時間ほどだったのだろう。

 脱出して来たこちらを見て、少し驚いた様子で見ているアルファ。

 連れているアリスを見て、何故か納得した感じで出発の用意を始める他のメンバー。

 何か釈然としないが、船に戻り出発した。

 船内でアリスを戻し休憩を取っていると、船室にアルファがやって来て話し始めた。

 

 

「よう、ドローンの映像も確認した。成功のようだな。

 それじゃあ、次の地点に向かうからしばらくここを使え。

 ああ、それとここで盛るなよ」

 

「まだ、次があるんだろう?

 仕事中にそんな事をするわけがないだろう」

 

「そ、そうです」

 

「お前の女はその気みたいだぞ。ハッハッハッ」

 

「ジャネット?」

 

「からかうのは止めて下さい。その分はまた後にしますから」

 

「そうか。ま、頑張れよ」

 

 

 そんな会話の数時間後に船は日が傾きつつある大阪港に着き、驚くことに今度は大型トラックの荷台にある拠点車両に乗り換えて次の地点に向かうことになった。

 車内は空調も効いており、狭いが複数人が泊めれるようになっている上に装備もいくつか積んでいるようだ。互いに椅子に座り、車内を見ていると自慢気にアルファは話し始めた。

 

 

「驚いたか? うちのチームはこういう車両をいくつか所有している。

 ゲスト1みたいに地元は無いが、全国を飛び回る緊急対応もこなすからな。

 俺が個人的に集めたチームだから装備もしっかりしているし、俺以外は現地人だが、メンバー全員これでもレベル12は越えているんだぜ」

 

「まあ、俺たちは個人事業主みたいなものですからそれぞれだと思いますよ。

 それで、次はどこに行くんです?」

 

 

 今度は、秘書役のメンバーが持ってきた大阪北部の地図を広げて見せる。そして、ある一点で指を指してみせた。

 

 

「ここは阪神高速道路の大阪側に一番近い入り口だ。

 で、そこの近くで彼氏とデート中だった女子高生が行方不明になった。

 ここからが問題でな。その女子高生はお金持ちのお嬢様で、ガイア連合と大きい取引のある会社の重役の娘で橘優香と言う。

 彼氏曰く、『並んで歩いていて大型車が通り過ぎたら突然彼女が消えた』。

 付近のカメラからも確認したら本当にすれ違いざまに引っ張り込まれていたが、非覚醒者の彼氏にそう見えていたんならその車は悪魔だという推論が成り立つ」

 

「警察はどうしたんです?」

 

「その車が悪魔なら非覚醒の人間には見えないように出来るからな。

 目撃情報は集まっても捕まえられないから、こちらに話が来た」

 

「それじゃ、一番目撃されている場所で囮でもしますか?」

 

「ああ、話が早くて助かるな。ぜひ、やってくれ」

 

「はい?」

 

 

 そういう事になった。

 

 いくら強いとは言え自分が嫌なので、囮役は自分がやることにした。

 姿は、以前に自宅の寝室で写真を撮ったとてもあざとい『JKブレザージャンヌ』でいくことにする。ちなみに、この服装は『エイプリル・マジカル』と共に実際にガイア連合製の霊装として販売中である。

 顔を真っ赤にして抗議するジャネットを宥めて近くに待機してもらい、頭上に式神ドローンを浮かべ人通りの少ない目的の地点に立つ。

 アルファ達の大型トラックは少し離れた駐車場に停まっている。

 

 ここに立って、もうすぐ日付が変わるくらい経過しただろうか?

 ナンパや売春と勘違いしてくるサラリーマンをさばきながら立っていると、運がいいのか悪いのか情報にあったグレーのハイエースが近づいてきて扉が開き、無数の手によって車内に引っ張り込まれてしまった。

 

 勢いよく走り出す車。

 

 車内を素早く確認すると、運転席に1人、写真にあった橘優香と思しき女性を代わる代わる弄んでいるのが3人、そして自分にのしかかって服を脱がそうとしているのが1人の男の影の集団がいる。

 多分、低レベルの実体化も出来ない悪霊だろうが、触れるなら簡単だ。

 のしかかっている奴とは力が違うのでそのまま持ち上げ運転席の方に放ると、ハンドルを切り損ねて電柱にぶつかった。

 車内の全員態勢を崩しているので、目的の女性を掴んで抱えそのままドアを2、3度思い切り蹴って壊し車外に出る。そこへ、怒り心頭で走ってきたジャネットの【天罰】が掛けられとどめを刺してしまった。

 後には、大破したままの車と魅了を掛けられたのか意識のはっきりしない裸の女性だけが残された。

 

 解決してみれば、あっけないものだった。

 程なくして、警察とアルファたちが到着し、警察に彼女を預けると自分たちはお役御免となった。

 今日、宿泊となるホテルに向かう車内でアルファが話しかけてくる。

 

 

「ご苦労さん。

 後処理のことは、警察の周防警部に任せておけばいいから休んでくれ。 

 しかし、運が良かったのか食いつきが良くなるほどあの姿が良かったのかどちらかねぇ」

 

「どちらでも構わないだろう?

 レイプ魔の集団の悪霊が取り付いた車の悪魔とか早めに潰しておいた方がいい」

 

「そうだな。あの車自体、盗難車だったようだ。

 大方、事故か抗争で死んでも同じことを繰り返していた馬鹿どもだろう。

 こっちとしては、橘優香が生きて確保されればそれでいいからな」

 

「そもそも今回の件、簡単過ぎて自分が出る必要があったのか?

 ジャネットのあざとい姿になっただけだぞ」

 

「マスター!?」

 

「簡単だ。

 俺のチームに女はいないし、俺は女は式神でも信用しない。

 それに、今回の件みたいな事件に名乗り出る女の能力者はいないし、お前さんがしてみせた様にシキガミでも自分の女にそんな事をさせる奴はそうそういないってことだ。

 ああ、次の件は2日後になるから、その間は休んでくれ」

 

 

 その言葉を聞いて、ジャネットが黙ってはいるがアルファを睨んでいる。

 自分としてもその辺ははっきりしておきたいので聞くことにする。

 

 

「わかった。一つだけ聞いていいか?」

 

「何だ?」

 

「チームに女性を入れない理由は?」

 

「ああ、仕事の邪魔になるからだ。

 俺個人は性欲なら専用の娼婦で済ますし、お人形遊びにも興味はない。

 部下たちには個人で好きにさせているが、仕事の邪魔になるなら部下も含めて切り捨てるだけだ」

 

「そうか、もうこの話は止めにしよう」

 

「そうしてくれ。ほら、ホテルに着いたぞ」

 

 

 アルファはくだらなそうにそれだけ言うと、ジャネットの方は興味もないという様に顔も向けずに車で去って行った。

 その辺はもう個人の信条の問題だから、自分はもう口にしない。

 だが、自分のパートナーを『お人形遊び』と言った事は忘れない。

 結局、この言葉のお陰で荒れるに荒れたジャネットを宥めるため、一日中ホテルの部屋に籠もることになった。

 

 

 

 予定の期日の朝になった。 

 休みの間にいろいろとしてジャネットを落ち着かせていたので、観光に出かける気分にもならなかったので食事はルームサービスでご飯だけ頼みレトルトガイアカレーだけで済ますことになった。

 指定の場所で待っていると、彼らの大型トラックがやって来たので乗り込む。

 相変わらず目出し帽と特殊部隊服のアルファたちが出迎えた。

 座る時に無表情のジャネットの肩を軽く叩いて着席すると動き出した。

 こちらを見るとアルファは、前置きなしで地図を出して話し始めた。

 

 

「体調は問題ないようだな。

 今回は大阪市内の6階建てのビルにある異界の攻略だ。

 このビルはヤクザのフロント企業の通信会社の物だが、あるターゲットがそこにいてマークしていた。

 しかし、突入する期日になって突然に異界化した。

 目的はそのターゲットの確保だ」

 

「そのターゲットとは誰です?」

 

「こいつだ。【氷川】だ」

 

 

 見せてくれた写真には、30前後位の白いスーツを着たM字の前髪が特徴的なインテリヤクザが写っている。

 『氷川』というと、ガイア連合でも原作に関わる重要人物として捜索されていたはずだ。

 それが見つかったとでも言うのだろうか?

 

 

「ようやくこいつを見つけ出した。

 とにかくゲスト1と2は、正面からの陽動だ。

 自分たちは屋上と裏口から突入する」

 

「向こうの戦力はどうなんだ?」

 

「異界になったのが数時間前だから、まだ分からん。

 だが今のGPから考えても、お前たちならそうそう負けることはないだろう」

 

「わかった。やるだけやってみよう」

 

 

 大型トラックを近くの路地裏に停め、朝方の人のいないオフィス街を二手に分かれて移動する。

 もちろん、自分は正面から乗り込んでいく。

 入口横の『サイバース・コミュニケーション』と書かれたパネルを確認し、ガラスの扉を開ける。周囲には誰もおらず、受付とソファに自動販売機と普通の入り口である。

 振り返り、ジャネットに確認する。

 

 

「ジャネット、ハニー・ビーの反応は?」

 

「普通のビルの間取りじゃなくなっているので異界化は間違いないです。

 エネミーサーチに反応が無いのが不気味ですが」

 

 

 自分たちは陽動役なので敵が来ないと困るのだが、とにかく誰かいないか探し回ることにした。そして、2階にあったサーバールームでそいつを発見できた。

 部屋の中でコンピューターを操作していたスーツの男は、あのM字前髪から見て氷川に間違いないだろう。

 部屋に入っていくと、氷川はこちらを振り向いて機嫌悪そうに話し始めた。

 

 

「なんだ、貴様らは?

 今、私は忙しいんだ。黙って出ていくなら殺さないでいてやる」

 

「氷川だな?

 高尾裕子はどこだ? ナイトメアシステムは完成したのか?」

 

 

 メモを見ながらそう言うと、ぎょっとした顔でこちらを見てサーバーの方に後ずさる。

 

 

「貴様ら、何を知っている?

 まあいい、私はこれで世界を作り変えるためにボルテクス界に渡るんだ。

 お前らの強そうなその力、足りないマガツヒの足しにしてくれる!」

 

 

 そういうと後ろの扉が閉まり、氷川は緑のマントと白い下帯だけ身につけた豹頭の獣人に姿を変えると、両手に剣を持ち襲いかかってきた。

 正面に自分が立ち、アナライズを終えたジャネットが叫ぶ。

 

 

「うそっ、レベル41の【堕天使オセ】!?

 破魔耐性と呪殺無効です!」

 

「よし、【サバトマ】、ユキジョロウ!」

 

「マスター、おんぶはしませんからね。【ブフーラ】!」

 

「ぐぬっ、おのれ。反射とは、くだらぬ真似を」

 

 

 両手の剣でそれぞれ切りかかってきたが、それを受け止めた反射したダメージと顔を赤くしたユキジョロウの放つ氷雪の魔法で傷を負い距離を置くオセ。

 2人をかばうように動く自分を見て、ニヤリと笑うともう一度斬り掛かって来た。

 

 

「ジャネットは回復優先。ユキジョロウは攻撃を。防御はまかせろ」

 

「ククッ、女たちをかばうつもりでも、もう高価な物反鏡はあるまい。

 喰らうがいい、2連【ベノンザッパー】!」

 

「くっ、毒は無しです。マスター」

 

「これで、【ブフーラ】!」

 

「ぐふっ。おのれ、反射は貴様自身の能力か!」

 

 

 両手の剣で同時にスキルを込めた攻撃を放ったのは驚いたが、ユキジョロウのみはかばうことが出来た。その際に、最初の攻撃で壊れたいつも持っているドッペルゲンガー用の鏡の欠片を、大事そうに地面に撒いたのに騙されたようだ。毒を付与する全体攻撃は経験済みだが、後は単体物理か魔法か分からない。

 次にどうするか伺っていると、何やらブツブツと呟いているオセ。

 

 

「こんな連中にバレて深手を負うなど、役に立たないサマエルめ!

 情報操作は任せろと言ったのは出鱈目か!?

 シジマの思想に共感したのではなかったのか!?

 くそっ、余力を残して向こうに行けぬとは」

 

 

 よく分からないが、今のうちに火力を上げて短期決戦としよう。

 

『Warning,Warning. NON-REGULAR FUSION』

 

 腹部から胸元に背中まで肌を露わにした夜の色をした赤いラインのある全身金属鎧の女性の姿、サクラベルセルクに姿を変える。

 そして、霊木を削り芯の部分に鋼鉄を加えた新しいバットいやスワッターの【ザ・マイケル・スラッガー】を構えて彼女の感覚に任せ走り出す。持った手から赤い線が走り、力が組み込まれていくのが分かる。

 上段に打ち据えた力づくの攻撃を、こちらに気が付き両手の剣で防ぐオセ。

 こちらの姿が気になるのだろうか、受けた体勢で全身を確認すると叫んできた。

 

 

「貴様も悪魔の姿になれるのか。

 バットを振り回す鎧を着た夜魔か鬼女など聞いたこともないぞ」

 

「妖鬼ベルセルクだよ」

 

「ふざけるな!

 そんなに露出度の高い胸をブルンブルン震わせながら、バットを振るうベルセルクなどいるものか!

 声まで女の声に変わっているようだが、貴様に羞恥心はないのか!?」

 

「この姿に恥じる要素などどこにもない!

 お前こそ、人のことが言えるのか?」

 

「この筋肉美とただの痴女を一緒にするな!」

 

「もとよりそのつもりだが、死ね!【月影】!」

 

「貴様が死ね!【怪力乱神】!」

 

 

 それぞれの大技が激突し、双方に大きなダメージが入る。

 だが、自分には仲魔がいる。

 

 

「マスター、今治療します。【メディラマ】!」

 

「この、【ブフーラ】!」

 

「くそ、この私がぁ。貴様だけでも、2連【怪力乱神】!」

 

 

 こいつの必殺技だろうそれを、物理耐性と体力を信じて踏み込む。一撃を紙一重で受け流すがそれでマイケル・スラッガーは砕けもう一撃は避けきれず兜状のバイザーが砕けるが、両腕を掴み抱え込むことに成功する。

 

 

「捕まえたぞ」

 

「離せ、痴女ベルセルク!」

 

「【月影】」

 

「ごふっ、貴様…止め…」

 

「【月影】、【月影】、【月影】、…【月影】」

 

「…………」

 

 

 両腕を固定したまま、頭突きで相手の顔面を目掛けてスキルを連続で放つ。

 血まみれになりながら相手の顔面を潰し、最後に動かなくなった所をスキルを加えた前蹴りで蹴り飛ばした。

 奥にあったサーバーや機械を大破させて倒れ込んだオセいや氷川が、こちらに顔を向けて言う。

 

 

「欲にまみれた人間など世界の歯車として生きるのがお似合いだ。

 天使どもの言う唯一神の恩寵の一部になるのとは違う世界の一部だ。

 この世界を作り変える私の夢が。…ぐふっ」

 

 

 そう言い残すと、大量の血を吐きマグネタイトになって消える氷川。

 奥にあった機械やサーバーが火を拭き、爆発音と共に止まると周囲が異界から普通のビルに戻っていた。その途端、激しくドアに大きなものがぶつかる音がして、ドアに体当りしていたチームフォネティックの面々がなだれ込んで来た。

 それを見ながらユキジョロウを戻し、ジャネットに怪我の治療を受け変身を解除した。

 アルファがゆっくり入って来て周囲を見渡し、ため息をつくと話し始めた。

 

 

「上手く行ったようだな。

 こっちが異界にもなっていないビル内を、3桁はある死体のそれぞれを氷川を探して確認して回っていたのは無駄になったようだが。

 まあいい。後始末は警察に任せて引き上げるとしようか」

 

「あの氷川って奴は、確保でなく殺すことになったが良かったのか?」

 

「どちらでも構わない。この分だと、どちらにしろ殺すことには変わらないからな」

 

「そうか。なら、引き上げよう」

 

 

 こうして自分たちはビルの裏口から大型トラックに乗り込み、ここを後にした。

 そして、その後にいくつかの異界の攻略を終え依頼は完了と判断され、神戸に戻ることが出来たのだった。

 

 

 

 

 

 大阪のガイア連合の所有のビルにその男はいた。

 出資しているチームフォネティックからの報告を受け取り、山梨向けの報告書とメシア教向けの報告書を作りメールは信用出来ないので文書の形で送り出す。

 

 彼の名前は、【利根川幸雄】。財界起業家の俺らの一人である。

 あの漫画の人物そっくりだった彼は、冗談交じりで『帝愛金融』を立ち上げ前の世の知識を利用して業績を上げていた時に、同じ転生者たちと知り合いガイアグループに参加した。

 微妙な覚醒具合もあり彼は、水が合っていたのだろうやはり金儲けが大好きになった。

 現在は表の本業の金融業はそのままに、山梨の黙認のもとに同じ転生者でもいわゆる『福本モブ』のような連中の管理を一手に引き受ける裏の『人材派遣』を手掛けていた。

 

 今回の神戸セクター長の月城カズマの風評の処理の件もこれに絡んでいた。

 彼が氷川を始末したことで、色々と彼に関して騒いでいたクズどもを処理する口実が出来て日本に来た外様神にレンタル名目で売り払うのと、内々に情報を回してくれた言峰司教からの礼金でかなりの利益を上げることが出来た。

 彼が姿を変えたと言われる悪魔っ娘倶楽部のプロマイドの数々を前に、利根川は祝杯を上げた。

 

 

「これからもぜひとも活躍して目立ってくれれば、もっとマッカがもっと金が私の手に入るだろうな。

 これも彼のおかげだろう。貧乳の幸運の女神に乾杯!」

 

 

 ちなみに、利根川の嫁のシキガミはグラン○ルーファン○ジーのカリオストロでありプロマイドの会社にも出資している。

 業の深い裏事情ではあるが、終末後に彼が生き残るのかモデルのように消えるのかは彼次第といったところであろう。




あとがきと設定解説


・【妖精ローレライ】

珍しい音痴の個体。
レベルは、31.耐性は、火炎弱点、氷結耐性、破魔耐性、呪殺耐性。
スキルは、マリンカリン、メディア、バインドボイス。

・【怪異ハイエース】

チンピラ紛いの集団の悪霊が車に取り憑いた付喪神に近い個体。
レベルは、10。耐性は、電撃弱点、破魔弱点、呪殺耐性。
スキルは、突撃、マリンカリン、取り込み。

・【堕天使オセ】/氷川

サマエルから教えられたオセの召喚法と簡易ターミナルの情報で、準備を進めていたこの世界の氷川。
両手で同時にスキルを放てたのは、彼自身の戦闘センスの賜物。
レベルは、41。耐性は、破魔耐性、呪殺無効。
スキルは、怪力乱神、ベノンザッパー、デクンダ。

・サイバースビルの異界

氷川が向こう側への一方通行のターミナルで展開した疑似異界。
ビル内の社員をマガツヒに変換し、世界の穴を開けようとした。
主人公たちだけが入れたのは、レベル40以上の対象だけが異界に入れる様にしたサマエルが仕掛けたバックドアのおかげ。

・利根川幸雄

あの漫画のキャラにそっくりな覚醒転生者。老け顔だが40代。
ガイアグループの金融会社「帝愛金融」の社長で、裏人材派遣「地下帝国」の社長。
あの会長もいないし、社員も黒服でなく普通のスーツの真っ当な会社。
金を儲けること自体が大好きで、それに合わせて生活や性癖すらもコロコロ変えている拝金主義者。


次回は、幕間か次の章に。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。