カオス転生異聞 デビルズシフター   作:塵塚怪翁

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続きです。

今回は、真のラスボス登場の回。


第五十一話 決戦

 

 

  第五十一話 決戦

 

 

「主よ! 敵を打ち砕く力を!」

 

「充分、馬鹿力だろうに!」

 

「マスター!」

 

 

 レベルではこちらが上回っているはずなのに、この栗色の髪をした金色の瞳の女性は小柄な体つきにも関わらず重く鋭い一撃をしてくる。

 飛んできた右の拳をジャネットの横槍でかろうじていなし、次に来た膝蹴りを右腕で受けながら彼女の腹を蹴り数メートルほど下がる。

 そして、動きが止まった所へ自分たちとメアリー・スーが諸共に潰すように振り下ろされる赤い蛇の尾を全員で飛び退って避ける。

 

 少し、やっかいなことになっている。

 挑発し頭に血が上った隙を突くはずが、引っかかったのは眼の前のメアリーだけである。

 サマエルは殺してやると宣言したのだが、感情の読めない緑の目の蛇の頭でじっと見ながら時々こちらを潰すように尾を叩きつけるだけしかしない。

 メアリーとの撃ち合いで消耗し、こちらの動きを読んでいるのだろうか?

 今の奴について解っているのは、電撃が弱点で破魔と呪殺魔法を反射し、様々な状態異常をばら撒く全体万能魔法の【神の悪意】、洗脳毒を使う、物理攻撃をカウンターする【猛反撃】、メアリーと打ち合っていた時に使っていた回復魔法の【メシアライザー】である。

 

 つくづく思うが、回復役のジャネットに毒と麻痺を無効化する【頑丈のピアス】を渡しておいてよかった。これで、シキガミの精神状態異常無効化で防げる魅了や睡眠や魔封などと合わせて無力化する状態異常はほぼ無くなるのだから。

 

 そう考えていると、メアリーが回し蹴りを放ちこちらを重く打ち据える衝撃波が自分とジャネット、サマエルに叩きつけられる。

 物理耐性持ちの自分でも辛い一撃がガードした腕の上からキツく入る。

 

 

「悪魔よ打ち砕かれよ! 【断末波】!」

 

「マスター、【メディラマ】!」

 

「今! 【メギドの……、くっ、卑怯だぞ!」

 

「そんな事を言ってられるか、ぶっ」

 

 

 距離が離れ、右手を突き出し前に放ったレーザービームのような電撃を撃とうとしたので斜線上にかく座したままの天使ケルブが入るように動く。流石に、大事な「お父さん」諸共に撃たないのは助かる。

 口に溜まった血を吐き捨て、眼の前のメアリー・スーを見る。

 

 こいつは、銃に耐性があり電撃を反射し衝撃が弱点で破魔と呪殺は効かない。

 スキルは、さっきも撃とうとしたビームのような電撃で薙ぎ払う【メギドの雷火】、物理耐性でダメージを軽減していたので物理属性の衝撃波を撃つ【断末波】、傷の回復とどうも能力の向上もしているらしい【ライトハンド】を使っている。

 ただ、ゼレーニンと同じなら不可思議な力を持つ『天使の歌唱』も使えるはずだ。敵対した傭兵たちを従順に従わせ、周囲の人物の傷を癒やし、あの隠されたメムアレフの実体も浮かび上がらせる驚異の歌を。

 それを、性格的に使えないか使わないのかそれは分からない。

 

 力は籠もっているが、ただ払い除けるようなサマエルの尾の横薙ぎを避け考える。

 まずいのは、格闘戦に持ち込まれてカーマのスキルの起点である弓を引く隙がない事である。

 かと言って、距離を離して闘うスタイルのガブリエラでは躱しきれないしバビロンは自身の消耗がでかすぎる。騎獣の鸚鵡を出して空を飛んでも、すぐに撃ち落とされるのが目に見えるようである。

 しょうがない、切り札を切ろう。

 カードを抜き、ドッペルゲンガーに変える。

 男の姿に変わったことに、メアリーの方が赤面して罵ってくる。

 

 

「悔い改めなさい、そこの男!

 さっきからコロコロと破廉恥な女性の姿で、男性としてのプライドはないの!?

 ご家族は何も言わないの!?

 そんな不道徳な姿に変わる能力など捨てて、主に祈りなさい!

 必ず主は、そんな貴方でも見捨てずに救って下さるでしょう!」

 

「ぶふっ、小娘も中々の煽り方をするじゃないか。クックッ」

 

 

 ははは、急に正論で煽って来るとはな、この直情女が。

 サマエルも笑っていられるのも今のうちだ。

 

 

「【サバトマ】、バビロン。ブチかませ!

 ジャネット、援護開始。アイテムの使用は制限なし。いくぞ!」

 

「援護します。【ラスタキャンディ】!」

 

「余を初めて呼び出すのが褥ではなく戦場とはな、マスター!

 よいぞ、【バビロンの杯】!」

 

 

 号令と同時に、【デカジャの石】を投げつける。

 切り札とは、家に入れるのとは別の今まで個人で貯めてきたマッカと貯金を変えたアイテムの大放出である。

 今回の事件は大規模な地震を起こすような相手なので、今まで溜め込んでいたアイテムと買えるだけのアイテムを総浚いして持って来ている。

 

 ガイア連合では、生産したアイテムは需要と供給の関係で値段が大幅に変わる。なので、生産者保護のために取引最低価格があり相場により上限が時価になるアイテムもある。

 例えば、レベル10~20の異界の攻略をして収入が500~3000マッカ位だとして、自分が主に使用するMP小回復薬のチャクラドロップが500マッカ、MP全回復のチャクラポッドが3000マッカ、技術部の努力によるチャクラドロップと効力が同じの廉価品のチャクラドリンクでも250マッカする。

 ちなみに、魔石は5マッカでマッスルドリンコが25マッカである。

 使い捨てのマジックストーンならだいたい300~500マッカで、卑劣ニキが持っていたメギドストーンも最低でも750マッカするのだから彼もそれだけ本気だったのだろう。

 

 しかし、デカジャの石(250マッカ)なんて使う相手がガイア連合員以外にいるとは思わなかった。

 この石だって、今度山梨のクソ猫にリベンジする時に使うつもりだったのだが。

 ただ、メアリーにはよく効いたようだ。見るからに動きが鈍り、まともに食らって吹き飛ばされている。

 ダメージを負ったサマエルもこちらに尾を振り下ろしてくる。

 

 

「この、あああっ」

 

「ちいっ、潰れろ!」

 

「蛇よ、余とマスターは物理反射だぞ。MPが心許ないのか?」

 

「ぐっ」

 

 

 弾き返した一撃で怯むサマエル。 

 こいつの持つスキルはMP消費の激しいものだから、調子に乗って使っていればそうもなるだろう。

 

 

「ほら、もう一度だ。【バビロンの杯】」

 

「ぐおっ」

 

「くっ、ううう。主よ、【ライトハンド】」

 

「強化はさせないよ、デカジャの石だ」

 

 

 こうして、しばらくこのパターンの状態が続くことになった。 

 サマエルもメアリーもボロボロになり、順調に進む戦闘にどこか油断していたのだろうか?

 苦し紛れの【神の悪意】や【断末波】により怪我や状態異常を受けても、すぐにアイテムも使って治療することで途切れることなく放つ6度目の【バビロンの杯】で彼女のMPが尽きる時にそれは起きた。

 

 

「マスター、余はもうMPが切れるぞ。どうする?」

 

「彼女たちに因縁のあるガブリエラに止めを任すよ。ご苦労さま」

 

「ほう、粋な計らいではないか。うむ、気持ちよく放てて満足だ。ではな」

 

「【サバトマ】、ガブリエラ。出番だよ」

 

「マイロード、御前に。これはこれは、中々に愉快な状況ですね」

 

「……! マスター、敵の反応がっ!」

 

 

 ジャネットの声に振り返ると、今まで後ろにいて動けないものだとばかり考えていた天使ケルブが、自分たちの背後に浮かんでいた。

 中央の男の顔がこちらを睨んでいる。

 

 

『主よ、我が娘を助ける力を授け給え! メアリー、生きろ。Amen』

 

「お父さんっ!?」

 

 

 メアリーが叫ぶのと同時にケルブは閃光に包まれ、自分たちを巻き込んで大爆発を起こした。

 それを見たサマエルは好機とばかりに動き出す。

 

 

「はは、ははは。

 扉に力は集まりきった。今こそ、お前たちも消し去ってくれる!」

 

 

 そう叫ぶとサマエルは空を飛び、扉の上空で回転し今までマガツヒを扉に集めていた石柱に絡みつく。

 石柱が赤い光を放ち、サマエルの傷がみるみる内に治っていく。

 哄笑を放つサマエルは、こちらに向けて赤い竜巻のようなスキルを解き放つ。

 

 

「今度こそ、死ぬがいい。【神の悪意】!」

 

 

 元は優しかった父が吹き飛んだ方向を見て、メアリー・スーも絶叫する。

 そして、その彼女からも黄金の光が衝撃波と共に辺りを薙ぎ払う。

 

 

「ああああああああっ、ア、a、Laaaaaaaaaa!!」

 

 

 サマエルの放つ赤い竜巻とメアリーの放つ黄金の光がぶつかり合い、先程の爆発よりも大きい爆発が周囲を吹き飛ばす。

 ジャネットやガブリエラの安否を気にする間もなく自分も吹き飛び、意識を失った。

 

 

 

 ふと目が覚めると、12の席のあるいつぞやの彼女たちの部屋にいた。

 周囲を見ると、アリス、バビロン、カーマ、ガブリエラがこちらを心配そうに見ている。

 自分はどうなったんだろうか? ジャネットは?

 そう考えると、ガブリエラが答える。

 

 

「彼女は大丈夫です、マイロード。

 私が【リカームドラ】を使い、マイロードと彼女の蘇生は出来ています」

 

「余も気づけておれば、すまぬ。マスター」

 

 

 ぼんやりした頭で頭を下げるバビロンに首を振る。

 自分があいつらを倒せると思って、油断したせいもある。

 ただ、「ピンチで隠された能力が目覚める」みたいな真似をされたのではこちらはたまらない。

 どう対抗したものか、そう考えているとアリスが神妙な顔でこちらを見ている。

 どうしたのかと聞くと、彼女は答え始めた。

 

 

「マスター。今のままでは彼らに対抗するのは難しいわ。

 だけど、一つだけ方法があるの。

 その仕掛けをこの機械にセットしていると、円場博士は教えてくれたわ。

 ただ、それをすると普通の人には戻れなくなるわ。

 どうする、マスター?」

 

「どういうことだい、アリス?」

 

「マスターも薄々判っていたでしょう。

 私たちの姿に多く変わるに連れて、マスターの身体も人間からは離れていくことを」

 

 

 そこまで言って、顔を真っ赤にして話を続けるアリス。

 

 

「マスターが、その、女の人を多く抱いて子供を残そうとしているのも、本能的に身体が判っているからなの。

 今のままでは、いずれ『男の自分という自我』が失われかねないから。

 だから、普通の感覚ならおかしいと思うはずでも、真摯に女性に求められれば受け入れて自分のものにしようとするのもそう」

 

「…………」

 

「それに、彼らだけじゃないの。

 扉の向こうからとても『恐ろしいモノ』が、こちらに来ようとしているわ。

 これを追い返すのも、今のままでは難しいの」

 

「それをすれば、家族は、君たちや家で待つ葵たちは助かるんだね?」

 

「可能性はかなり上がるわ」

 

「なら、やってくれ」

 

「いいの?」

 

「家族のアリスなら悪いようにはしないだろう?」

 

 

 そう言って笑うと、アリスも微笑み手に持っていた書を広げる。

 すると、ページが光り7枚のカードが空中に浮かぶ。

 パールバティー、イシュタル、ベルセルク、マーメイド、ナジャ、モー・ショボー、ユキジョロウのカードである。

 

 

「ねえ、マスター。

 私が悪魔合体で生まれた時に、おじさまたちが積み上げていた財宝はどこに消えたと思う?

 私の能力を整えるのに使ったのは微々たるもので、殆どはこの書に使われたわ。

 この書は、この機械を使うマスターだけの【悪魔全書】。

 だから、相応の代価を払えば、登録された私たちが呼び出せる。

 こんな風に」

 

 

 彼女の周りでカードから実体化したマーメイドやナジャ、モー・ショボーにユキジョロウが笑っている。

 今度はイシュタルとパールバティーのカードを翳す。

 

 

「この2つのカードは本来、マスターの娘さん達の力なのは分かっているわ。

 だから、この2つのオリジナルはもう神戸のあの家に届いているはずよ」

 

「どうやって届けたんだ?」

 

「ジャネットと相談して、彼女のライバルの力を借りて。

 あの家にいる文香さんは、書物を自分の手に取り寄せるトラポートが使えるわ。

 だから、マスターが寝ている内に事前の取り決めていた通りに合図をして送ったの。

 ごめんなさい。

 だから、ここにいる2人は姿と能力は同じでも違う彼女たちよ」

 

「どう違うんだ?」

 

「基本的には同じよ。でも、マスターの娘さんに転生した彼女らとは違う分霊よ」

 

 

 そう言うとアリスはカードを渡してきた。

 カードには中央に赤い宝石のある円形の模様と両側に『WILD』と描かれている。

 

 

「起きたらこのカードをスロットに差し込んで、そうすれば完了よ。

 分からないことがあったら、呼んでねマスター。頑張って」

 

 

 そう言って、彼女に頬にキスをされるとまた意識が遠くなっていった。

 

 

 

 ふと目覚めると、頭が柔らかいものの上にあり見上げると大きい胸とジャネットの顔が見える。そして、横を見ると卑劣ニキの遺体が転がっている。

 自分が起きたことに気づいたジャネットが、声を潜めて話し始める。

 

 

「よかった、マスター。気を失ってから目を覚まさないので心配しました」

 

「あれからどうなった?」

 

「それは……」

 

 

 ジャネットが答えようとした所で、地響きと共に爆発音が聞こえる。

 2人で陰からそっと覗き込むと、サマエルとメアリー・スーがまた戦っている。

 しかし、今回はお互いにブレスのように赤い霧を吐き出すサマエルと直径1メートルはありそうな黄金のビームを放つメアリーが濃密な殺意を持って殺し合っている。

 炸裂した場所が吹き飛んだり、黒く変色しているのはまともに喰らいたくない攻撃のようである。

 そんな様子を見ながら、ジャネットは言う。

 

 

「あの時、身体がバラバラになるような痛みを感じたのですが、起き上がると傷はありませんでした。

 ただ、かなり吹き飛ばされてあの男の所まで飛んできたようです。

 それから、見つからない内にここの建物の影まで引っ張ってきました」

 

「そうか、とにかく無事で良かった。さて、あれをどうにかしないと」

 

「どうにか出来るんですか、マスター?」

 

「どうにか出来る手立ては用意してくれたよ。アリスたちが…」

 

 

 そう言った所で、今度はバタンと地響きのする扉を開ける音がする。

 また、そっと覗き込むと扉が片方開き、焼け爛れた巨大な女性の左腕が中から突き出されメアリーを掴んでいる。

 

 

「い、いや、主よ、助けてください。主よ!

 嫌、嫌だ。助けてっ、おとーーさーーー!!」

 

 

 身動きできないまま悲鳴を上げながら、扉の中に連れ去られるメアリー・スー。 

 そして、程なくしてバリバリと何かを噛み砕く音が絶叫と共に聞こえてきた。

 上空の石柱に絡んだままガタガタと震えていたサマエルは、その音を聞き逃げようとしたが遅かった。

 扉の中から伸びてきた腕が、石柱ごとサマエルを握りつぶすように掴む。

 サマエルもまた、そのまま扉の中へと消えていく。

 

 

「待て、俺は神のアク、ぎゃあああああああ!!

 喰うな、喰うんj……」

 

 

 途中で消えた絶叫と、中からブチッと何かを引き千切る音とガリゴリと噛み砕く音が聞こえてくる。

 ジャネットが、また聞いてくる。

 

 

「あのマスター。

 本当に、あれをどうにか出来るんですか?」

 

「どうにかするんじゃなくて、どうにかしないと生きて帰れないよ。

 場合によっては、メムアレフやシェキナーとも殺り合う必要があるんだし」

 

 

 そう言いつつ、自分は『WILD』と描かれたカードを取り出しデビルズアブゾーバーに差し込んだ。

 

 

「変身!」




あとがきと設定解説


・【審判者メアリー・スー】

マンセマットが使徒に選んだ「天使の歌唱」の唱い手。
在日米軍ヘリパイロット。
レベルは、63。耐性は、銃耐性、電撃反射、衝撃弱点、破魔無効、呪殺無効。
スキルは、ライトハンド、メギドの雷火、断末波、咎歌。

・【天使ケルブ】

メアリー・スーの実父。
天使人間の実験に娘を守るために自ら参加した信仰心篤き軍人。
4枚羽根で腹部に正面が父親の顔、右が雄牛、左に獅子の顔があり両足が機械の鷲の姿。
レベルは、50。耐性は、電撃弱点、衝撃反射、破魔無効、呪殺無効。
スキルは、メギドラ、マハンマオン、天扇弓、自爆。

・【邪神サマエル】

人間として転生した分霊。他人が苦しむのを愉しむ趣味があり、虚言癖持ち。
「言峰綺礼」の姿は、『彼』の知識を知って以降はかなり気に入っていた。
レベルは、75。耐性は、電撃弱点、破魔反射、呪殺反射。
スキルは、神の悪意(敵全体に万能属性大威力攻撃・各々低確率で毒、麻痺、魅了、魔封付与)、神の毒(戦闘時は使用不可)、メシアライザー、猛反撃、勝利のチャクラ、火炎無効。


次回も、決戦の続き。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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