カオス転生異聞 デビルズシフター   作:塵塚怪翁

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続きです。

今回の事件のようやくの決着の回。


第五十二話 決着

 

 

  第五十二話 決着

 

 

「変身!」

 

 

 立ち上がって思い切りよくするためだが小声で言い、『WILD』と書かれたカードをデビルズアブゾーバーのスロットに入れる。

 

『EVOLUTION』

 

 その音声と共に12枚のカードが自分の頭上で宙に浮き、円形の輪を作ったかと思うと自分へと降り注ぎそのまま身体の中へ消えていく。そして、淡い白い光に全身が包まれたかと思うと、それは終わったようだ。

 文字通り「俺は人間を止めるぞ」案件なのだが、元々この左腕の機械が仮面ライダーのアイテムを真似て作られたと聞いていたので若干は期待して全身を見てみたが、左腕の機械のプレートの赤地に金色のハートだった物が緑地になっているのと右手の甲に赤い3つの欠片で出来た手裏剣のような模様くらいしか分からない。

 鏡が無いので、ジャネットに聞くことにする。

 

 

「なあ、ジャネット。何か変わったように見えるか?」

 

「マスター、冷静に聞いて下さいね。

 いま、ドッペルゲンガーに変わっている訳でもないのに、髪が銀色になって瞳が金色になっています。あと、肌が少し浅黒くなっています。

 あと、アナライズした結果なのですが……」

 

 

 ジャネットによると、自分のアナライズ結果がこうなっていたそうだ。

 

『種族:覚醒人 名称:カズマ レベル:測定不能

 耐性:物理反射・銃反射・破魔耐性・呪殺耐性

 スキル;サバトマ・テトラジャ・マカラカーン・精神状態異常無効

 特殊スキル:悪魔変身・魂の融合』

 

 結局、よく分からないのでアリスを呼んだ。

 彼女の説明から、だいたい判った。

 つまり、ドッペルゲンガーと1つになり悪魔人間っぽい何かになって今までと同じような事が出来るようになったけど、容姿の変更などは無しにしたようだ。

 アリス曰く、かなりあっさりしているように見えるが、カードの娘たちが自分との将来的な事や死後の魂の行方的な事を考慮して色々と頑張ったらしい。

 この件が終わってから、聞いているジャネットと彼女たちに何を要求されるのかが少し怖い。

 

 

 

 こちらで自分たちが色々としている間に、向こうも変化があったようである。

 扉の向こうで何かを飲み下す音がし、声が頭に痛いほど響く。

 

 

『まだ滋養は足りぬが、まあよい。

 こちらに来よ、ニンゲン。妾との対面を許そうぞ』

 

 

 無視しても埒が明かないため、ジャネットとさっきの腕がギリギリ届かない位置の扉の前まで移動する。

 扉の向こうから、赤い鱗の肌をした栗色の長髪の女性が皮膜の羽根を羽ばたかせてその巨大な身体でこちらを覗き込んでいる。

 金色に光る爬虫類の目でこちらを見ると、声を発した。

 

 

『妾を呼びしは、汝ではないな。疾く、来よ』

 

 

 声が響くと、門の前に一人の男が立っている。

 確かに、殺したはずの卑劣ニキである。

 

 

「殺したのに、どうしてって顔をしているな?

 元々この扉は俺が望んだものだ。

 あのクソ蛇野郎は黙っていたが、この扉は過去へも行ける『異なる世界へ行く扉』だ。

 大方、俺が行った後で大口を開けて笑うつもりだったんだろうな。

 『間抜けが行き先を選べないのに、信じて行った』ってな。

 大笑いだぜ。あの天使女共々、『母』の滋養になったんだからな!」

 

「お前は何を呼び出した!?」

 

「死んだ俺の魂を救い上げてくれた『母』さ。

 俺の望みは、【この世界の転生者の抹殺】だ。

 それで、『母』によって生まれ変わって気づいたんだ。

 【俺のように全ての日本人を母が悪魔に産み直せばいい】ってな!

 そうすりゃ転生者共はいなくなるし、『母』も新たな国生みが出来るだろう?」

 

『妾はこのモノが呼び出した大霊母の影。

 この異界が地球の記憶を留めるフォルナクスに繋がる故、こうして深淵より妾は来た。

 このモノが勝てば、望みどおりにこの世界に降り立ち新たに全てを産み直そうぞ。

 汝が勝てば、この仮初の姿は消え、妾はまたあの地で眠ることだろう』

 

 

 楽しそうに哄笑し始めた彼に、無数の炎が集まってきて周囲を焦土と化した。

 そして、炎の中から彼が現れた。

 身の丈3メートルはあろうかという偉丈夫な黒い肌の体躯と、身体のあちこちを紅く光る模様があり彼の顔もまたその紅く光る模様で構成されている。

 その彼が笑みを浮かべ、話しかけてくる。

 

 

「力が溢れて、い~い身体だろう?

 お前もかなり悪魔に近づいたようだが、そんな華奢な体じゃまだまだだな。

 俺に勝てるはずがないのだから、いい加減、お前もそんな中途半端な状態じゃなく俺みたいに悪魔になっちまえよ。

 まだ、ニンゲンに未練でもあるのか?」

 

「あるに決まっているだろう。

 家族の安否だって気になるし、あの地震の中で駆け回っている身内や友人がいるんだ。

 自分にだって、戻って片付けないといけない事が山ほどあるんだよ。卑劣ニキ」

 

「何だ、そんなちっぽけなつまらない物に拘泥していたのか。

 それと、その名で呼ぶな! 今の俺は、【大地人マコト】だ!

 さあ、決着をつけようぜ!

 俺の爪でお前とその人形を引き裂き、俺は使命を果たすんだ。

 間違って、ニンゲンに生まれちまった連中を救う使命をなぁ!」

 

 

 そう叫ぶと、卑劣ニキではない悪魔人間マコトは襲いかかってきた。

 物は試しと言わんばかりにかぎ爪を振って、2人に衝撃波を叩きつけてくる。

 

 

「ほうら、まずは軽くいくぞ。お前の力を見せてみろ」

 

「きゃっ」

 

「そらっ」

 

「ぐっ、そういやお前は物理反射だったな」

 

 

 まずは、態勢を直さないといけない。

 サバトマでバビロンを呼び出し、本日4つ目のチャクラポットを使って彼女のMPを全回復する。

 MP回復薬は一番多く持ってきたが、一番安いドリンクとドロップはもう無くポッドも残り少ない。卑劣ニキの荷物から拝借していなければ、もう無くなっていただろう。

 

 

「アナライズ。【大地人マコト】、銃耐性、火炎吸収、氷結弱点、破魔無効、呪殺無効です!

 援護します。【ラスタキャンディ】です」

 

「【サバトマ】。バビロン、頼む」

 

「うむ、余に任せよ。

 しかし、悪魔としては珍妙な名よな、お主。【バビロンの杯】!」

 

 

 万能魔法を喰らった事よりも、名前について触れられた事が勘に触れたらしい。

 怒りと共にスキルの攻撃が飛んでくる。

 

 

「これは俺の元々の名前だ!

 俺をお人形のように扱うここの世界の母親を名乗るクソ女の付けた名前じゃない!

 俺の名を馬鹿にするな! 【ケイオスタック】!」

 

「ぐむっ、いかん!」

 

「バビロン!」

 

 

 彼の左手に穴が空き、突き出された腕から黒い鉄球のような弾が連続して打ち出される。

 銃属性なのか数発喰らったバビロンの負傷が酷い。

 ジャネットは自分の後ろにいるので、こちらに来た分は跳ね返して痛打は与えたが。

 アイテムはまだあるので惜しまずに使う。

 

 

「ジャネットは援護の後、治療待機。

 まだ出来るな、バビロン? マコト、お前が持ってたブフーラストーンだ」

 

「了解です、【ラスタキャンディ】」

 

「余を甘く見るなよ、マスター。【マハジオダイン】!」

 

 

 石の氷結魔法と電撃魔法がその大きな体躯に撃ち込まれる。

 ニヤリと笑うと、彼は左腕を掲げる。

 

 

「おっと、強化魔法なら俺も使えるぜ。【レフトハンド】。

 俺は頑丈でお前らよりも剛力だ。いつまでその華奢な体で耐えられるかなぁ。

 ほら、攻撃してこいよ。ははははは」

 

「余を甘く見るなよ。【女帝のリピドー】!」

 

「もう一つ、ブフーラストーンだ」

 

「はっは、お前みたいなアバズレに魅了されるわけがないだろうが。

 それと、俺の荷物を漁ったのか? 

 いいぜ、ハンデとしちゃ充分だろう。ほら、【レフトハンド】だ」

 

 

 こちらの攻撃が堪えていないのだろうか?

 今だに笑ったまま、左腕を上げている。

 アバズレと言われたバビロンが少しキレたようだ。

 彼に言い返しながら、魔法を唱えている。

 

 

「余は、本霊みたく誰にでも股を広げるような女ではないわ!

 次の一撃を喰らうがいい! 【コンセントレイト】!」

 

「はっは、そんなアバズレ同然の格好で面白い事を言うなぁ。

 おっと、こんなのはどうだ? 【シャッフラー】!」

 

 

 こちらも最後の攻撃魔法石のジオンガストーンをぶつけているが、一顧だにされていない。

 彼が右手を突き出すと、赤い霧が周囲を覆いバビロンの首に爆弾のついた首輪が現れる。

 慌てて、ジャネットに彼女を指差して言う。

 

 

「ジャネット、爆弾化だ。治療を…」

 

「遅いぞ、【地獄の業火】!」

 

「喰らうがいい、【バビロンの杯】!」

 

 

 強力な威力の万能魔法が彼に炸裂するが同時に放たれた範囲火炎魔法が自分たちを包み、バビロンの首に現れた爆弾が爆発する。

 その爆発で致命傷を負ったバビロンの姿が消えていく。

 

 

「バビロン、すまない!」

 

「あれはまだ立っているぞ。隙を見せるな、マスター。

 余は、そなたの勝利を願っているぞ」

 

 

 そう言って、カードへと戻り帰っていくバビロン。

 バビロンの攻撃で深手を追うも、彼は笑い続けている。

 

 

「アバズレにしちゃあ、いい攻撃するじゃねぇか。

 俺をこんな風にした奴の女なんだ。それくらいじゃねぇとなぁ!

 ハハハハハハッ!」

 

 

 さて、この状況をどう切り抜けるか。

 バビロンが倒れ、ガブリエラは【リカームドラ】を使い死亡したまま、アリスではこいつの攻撃力は強烈過ぎる。

 そこへ自分を使えと言わんばかりに、デビルズアブゾーバーのカードホルダーが展開しカードが姿を表す。黒いドレスを纏った少女の姿のカードである。

 奴を相手では確かにカーマやベルセルクでもきついとなれば、選択肢はないだろう。

 そのカードをスロットに差し込む。

 

『EVOLUTION FUSION』

 

 薄い紫の髪、左の髪にある赤いリボン、赤いハイライトのない瞳、左頬から全身の肌にある赤い血管のような模様、体のラインがそのまま出る裾が幾つも枝分かれしている赤い縦縞の服と「マキリの杯」「黒桜」とも言われているガワの姿に引っ張られた悪神アンラ・マンユの愛人にして母でもある【鬼女ジャヒー】であった。

 もとより娘の桜の中にいたこの闇の部分は、彼女の中に戻さずにいずれ自分が連れて逝くつもりではあったが、こうもストレートにこの姿になったのは自分としては複雑である。

 

 笑っていた彼がこちらを見て感心したようにしている。

 ジャネットの方は、自分がどんな姿になってももう慣れたと言わんばかりに【メディラマ】をかけてくれている。 

 

 

「ハハハッ。

 おいおいおまえは、一体、何人の女悪魔を従えていやがるんだ?

 コロコロと変わりやがるが、その姿で何人目だよ。

 変わり過ぎだろうが? 

 そんなに女の姿がいいなら、女の悪魔に生まれ変わりなぁ!

 そら、【ケイオスタック】!」

 

「確か、こう」

 

 

 彼の左腕から放たれた弾丸を、スカートの裾が広がり幾つもの影の帯となって防御する。 

 幾つか食らうものの無視して、ジャネットに持っていた石を投げて彼に走り寄る。

 彼女が投げたデカジャの石とこちらのスキルを重ねる。

 

 

「【ランダマイザ】!」

 

「なんだと、体が!?」

 

 

 強化されていた身体が一気に鈍り、動きが止まる彼。

 そこにスキルを込めて右腕の裾の影帯を彼に伸ばす。

 

 

「これで、【夜桜の舞い】!」

 

「ぐはっ、まだだ。【地獄の業火】!」

 

 

 槍状になった影の帯で身体を複数貫かれながらも、こちらに豪炎を放つ彼。

 それならばと、右腕の帯を引き抜き今度は左の帯で貫く。

 

 

「もう一度、【夜桜の舞い】!」

 

「ぐほっ、ああ、楽しぃなぁ! 【ケイオスタック】!」

 

「がはっ。なら、【ランダマイザ】」

 

「もっと攻撃してこいってんだよぉ! 【ケイオスタック】!」

 

「これでどうだ。【夜桜の舞い】!」

 

 

 後で聞いた話だが、この時の凄絶な殴り合いにジャネットは手が出せなかったという。

 その殴り合いが数分ほど続いた後、ボロボロになった自分と彼が相対していた。

 こちらが攻撃の起点になっているため潰した左腕と全身から燃えるような熱を持つ赤い血を流す魔人と、躱しきれずに数か所にいいのを貰いかろうじて動ける状態の自分。

 本当に楽しそうに笑い出す彼。

 

 

「ククッ、ハハハハハッ!

 こうしていると生きているって実感が湧いてくるぜ。

 さあ、これでラストだ!

 生き残りたきゃ、せいぜい抵抗するんだなぁ! 【ダークマター】!!」

 

「自分は生きて帰るんだよ! 【オーバードレイン】!」

 

 

 彼から放たれたこちらを全て押し潰す大きさの黒い球体状の万能魔法と、こちらが放った足元の影から溢れ出た全てを押し流す勢いの影の奔流の万能魔法がぶつかり合い、辺り一帯を吹き飛ばした。

 自分の姿を見失ったジャネットが叫ぶ。

 

 

「マスター!」

 

 

 周囲の視界がひらけた時、そこには身体が崩れ始めた彼と傷がある程度癒えている自分が立っていた。

 こちらを悔しそうに見た彼は、振り返って扉の向こうの『母』へと祈る。

 

 

「…完全に、…悪魔になった俺が…こんな中途半端な奴に…敗れるなんて…な。

 いや…まだ…『母』がいる。…終わりじゃ…ない…。

 頼むぜ…大霊母…よ。…貴女の眠る地で…蘇らしてくれ…。

 今度は…最初から…悪魔として…。グオォォォッ」

 

「もういい加減に眠れよ、マコトさんよ」

 

 

 そのまま赤い光の粒となって消えていく彼。

 それを見届けた扉からこちらを覗くその『母』は、こちらに声をかけて来た。

 

 

『妾はその男との約定通り、彼の地へと戻り眠るとしよう。

 されど、忘れるな。いずれ妾は南極の地より目覚め、地球を取り戻すでしょう。

 地球を我らが席巻する時、また会おうぞ。今だニンゲンであろうとする者よ』

 

 

 そして、扉は地響きを立てて閉じられたと同時に、地面が揺れ崩落が始まった。

 傷と体力の消費で身動きが出来ない自分たちは、せめて別れないようにと抱き合い崩落により落ちてゆく地面と共に奈落へと落ちていった。




あとがきと設定解説


・【覚醒人カズマ】

オリジナルのアイテムの彼のように、悪魔変身のやり過ぎで不安定化した彼の肉体を、ドッペルゲンガーと同化することで何とか安定化させて4割悪魔6割人間くらいにした悪魔人間。
体質が悪魔よりになったけど、出来る事は変わらない。
要は、カードの娘たちが自分たちの番を人修羅やナホビノっぽく強くして色々と仕込んだのが今の状態で、もちろん彼女たちからは聴かれなければ何も言わない。

・【大地人マコト】

一度死に冥府に落ちる彼の魂の強烈な願いが『母』に届き悪魔として生まれ変わった姿。
炎を全身に纏う固まった溶岩の肌を持つ偉丈夫の魔人。
レベルは、70。耐性は、銃耐性、火炎吸収、氷結弱点、破魔無効、呪殺無効。
スキルは、ケイオスタック、地獄の業火、レフトハンド、シャッフラー、ダークマター。

・【鬼女ジャヒー】

ベルセルク、カーマと来てある意味闇の部分である彼女の本当の姿。
メガテン世界に合わせているので、原典のような極悪な強さやデメリットはない。
レベルは、75。耐性は、物理耐性、衝撃無効、破魔無効、呪殺無効、全状態異常無効。
スキルは、夜桜の舞い(敵全体物理大威力・魅了付与)、マハムドオン、ファイナルヌード、オーバードレイン(敵全体に万能大威力・HPMP吸収)、ランダマイザ、不屈の闘志。


次回、最終回。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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