今回は、少し短い幕間です。
ガイア連合の支部開設の際の地方組織との合併に関する話で、
こんなものではないかというのでふわっとしていますのでご留意下さい。
第九話 幕間その二・とある地方の零細霊能一家の入婿の記録
第九話 幕間・とある地方の零細霊能一家の入婿の記録
それは年が明け正式に葵さんと結婚をして、離れの改装と【神戸セクター】の完成を来月に迎えたある日の事だった。そしてその日は、雲ひとつ無く春もまだなのに暖かったよく晴れた日だったことを今だに鮮明に覚えている。
この家にまつわることを直接伝授する家族会議を行うというので、奥座敷に葵さんと雫ちゃんを両隣にして入って行った。
そこには、こちらを頼もしげに見る義父にあたる恭也さんとひたすらニコニコとしている義母にあたる忍さんがいた。
あと、奥にある神棚から期待の籠もった視線を感じる。
二人の態度が疑問だったが3人で席につくと、おもむろに恭也さんが頭を下げ話し始めた。
「今日は来てもらってすまない。
まずは私たち夫婦が数年間も留守にしている間、娘たちを守ってくれたことに改めてお礼を言いたい。本当にありがとう。
そして、多大な貢献をしてくれた上、祭神様の認めた娘たちの良き伴侶となってくれたことは私も肩の荷が下りる思いだ。重ねて、本当にありがとう」
「お父さんも大げさですね。
でも、母親のわたしとしてもお礼を言いたいわ。
ありがとう」
恭也さんの足に手を置いて、話し出す忍さん。
葵さんによく似て淑やかな御婦人といった風情で上品に笑っている。
心なしか、恭也さんの表情が固い。
「まず、これからのことだけど、あれだけの力と技術を持った組織の下につくのだから組織としてのやすつきは終わりにすることにして、非覚醒の総代と白乃ちゃんには完全にNPOの方をお願いすることにしたわ。
現地組織の人員を雇ってもらえるとの事なので根願寺での経験も生かして、恭也さんはガイア連合の張る結界の維持と補修の技術者として雇ってもらえたわ。
そして、わたしと葵は事務の資格をいくつか持っているので、【ガイア人材派遣神戸支社】の事務員としてこれからよろしくお願いするわね。支社長さん。
私たちの補佐をしてくれていた二人は、それぞれ夫の実家に戻ったわ。
それと、立花の家には絶縁状を送ったので知っておいて下さい」
「あ、ああ、彼らは本当にやり過ぎた。ここの場所にはもう関わって欲しくないな。
それでは、本題に入るとしようか」
忍さんが手元の桐箱からいくつかの古い書物を取り出し、机に並べて見せながら説明を始める。メシア教から守り抜いた、ざっと戦国時代より前の資料らしい。
「私たちの家は東のカヤノヒメを祀る神社の一族の巫女が始まりで、本家の庭にあった分け御霊を祀るのとヤタガラスから頼まれた都市部の結界の維持が代々の役割だったの。
直系の家は代々女の子しか生まれなくて女系の家長が物事を決めてきたのだけど、戦後のGHQとメシア教に祖母を始めとして大人たちは連れて行かれ、本家の家屋敷もカヤノヒメ様の異界ごと買い上げられてしまったの。
当時、わたしはまだ幼くて、総代にはこの家の事と言い本当にお世話になったわ。
あの時に風見鶏でしかなかった立花を始めとした親戚連中は、これを機会に縁を切らせてもらったわ。法的にも、弁護士の先生にお願いしたから内容証明も届いているはずよ。
本当に、せいせいしたわ」
葵さんも雫ちゃんもうんうんと頷いている。よほど、嫌いだったのだろう。
個人的には自分の母や花蓮に手を出さずに正面から妨害に来ていただけ、まだ憶えている前世のクソ同僚よりははるかにマシに思える。
恭也さんが話しを続ける。
「話しを戻そう。
カヤノヒメさまは家の屋根にカヤの草を用いていた頃に生まれた神様だ。
権能は、【家の守護】と【草野】を司っている。
だから、我が家に伝わる結界術は【家の守護】の権能からカヤの草で編んだしめ縄で要所の結界石を飾り、各所に配置するのが要点だ。
別の地の神社では、漬物やタバコ、農業や着物や染め物の守護神として祀られている。
だから、うちにも秘伝の漬物があってね。
忍のそれはとても美味しいぞ。葵や雫にも少しずつ教えているようだから、カズマくんも楽しみにしているといい」
「お父さんったら、照れるじゃない。いやだわぁ。
そんなに言われたら、この子達にもちゃんと教えておかないとね」
「大丈夫よ、お母さん。
わたしがしっかりと作るから」
「そうだよ、お母さん」
雫ちゃんも頷く葵さんに負けないとばかりにやる気になっている。
葵さんと食事をしていると、やけに美味しい漬物が時々出ていたのはこれかとようやく分かった。
そういえば前世を思い出して覚醒してから、洋食より野菜多めの和食に好みが変わったのをふと思い出す。子供の好きそうなものを食べなくなって、母に変な顔をされたなぁ。
前世でもよく読んでいた転生物を実体験すると、思い出す前の自分と後の自分はどちらが本物の【間藤カズマ】なのか分からなくなる。
その変なこだわりが作用して、この変な能力に覚醒めたのだろう。
ショタオジの地獄訓練でもその辺はよく理解させられたし、頭が痛くなるので思い出すのは止めよう。
気づくと、長い間考え込んでいたのだろう。
周りの人たちが全員、こちらの顔を見ている。
「どうかしたの、カズマくん。
何か嫌なことでも?」
「そうだよ、カズマさん。どうかしたの?」
心配そうにこちらを見ている葵さんと雫ちゃんに言う。
「何でも無いよ。
ただ、強いて言うなら漬物は茄子や大根のものが好みだと思っていただけだよ」
「よかった。なら、漬物はそれを中心にして夕食に出さないとね。
メインは、カキフライとアボガドのシーザーサラダね。
それと、薬味のたっぷり入ったしらす入りのだし巻き卵も用意するわ」
ん?あれ?
「お姉ちゃん、ほうれん草とオクラの和え物と山芋のすり下ろしたのと麦飯も用意しないといけないよ」
おや?ヤケに豪勢ですね?
「葵、雫、朝ごはん用のブルーベリーのスムージーとバナナとオートミールも冷蔵庫に入れてあるから頑張ってね。
みんな休日だし、わたしもお父さんと久々に市内に明日の夜までお出かけするから。
雫用のお薬とアレ(ゴム)はいつものところだからね?
カヤノヒメさまからも応援の神託来ているからしっかりね」
「わ、わかったわ。お母さん」
「う、うん。あたしはまだ駄目だけど、こっちは頑張る!」
あの、二人とも?
確かに明日は休日ですし嫌じゃないし拒否はしませんが、そこまで真っ赤な顔で気合を入れなくともいいんですよ?
そこにポンと肩を叩き、同朋を見る目でこちらを見る恭也さん。
「わたしも入り婿でね。気持ちはよく分かるよ。
男親としては複雑だが、伝統のある霊能者の一族の家はこういうものなんだ。
あと、部屋に焚く香は吸いすぎると止まらなくなるから気をつけて。
自分は娘二人が限界だと思っているんだが、うちの家系の女性は火が入ると収まりがつかないからお互い生き残れるように頑張ろう」
神棚から親指を立て素敵な笑顔のイメージを送ってくる女神様。
諦めた顔で忍さんと出ていく恭也さん。
二人に引っ張られていく自分。
生き残れるように頑張ろう。
記憶が飛び飛びになり、気がつくと翌日の正午ごろで三人とも裸で部屋の中がすごいことになっていた。できれば、DT気分が抜けていないのでもう少しお手柔らかにして欲しい。
後日、転生者掲示板のスレで霊視ニキのある書き込みを見た時は、励ましのメールを送っておいた。
「頑張りましょう」、と。
あとがきと設定解説
・月城恭也 (つきしろきょうや)
月城姉妹の実父。
二〇代の時に、ヤタガラスからの報告で根願寺から神戸市の結界の調査に来た。
そして、その時にその能力も見込まれて忍に捕まった。
・月城忍 (つきしろしのぶ)
月城姉妹の実母で現当主。現在は、お淑やかな御婦人風。
雫の今の年には葵がもうお腹にいたらしい。
ちなみに、第一話の時点で、葵22歳、雫16歳である。
・ヤタガラス
この世界線だと、ただ分解されたのではなく中途半端に情報機関の部分が残ったため、地方と中央を結ぶ連絡相互会のようになっている。
ただ、情報の行き来はあってもなくてもそんなに変わらないのが実情。
次回は、多分また幕間です。
一応、プロットを組んだのですがネタが浮かぶといろいろ考慮中です。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。