かつて北の地から後の時代魔王と呼ばれることになる怪物がやってきた。
その名をノスグーラ。フィルアデス大陸と呼ばれることになる大陸で彼は殺し、殺し、殺し血に沈めていった。ある日いつものように村を血の海に変えていると一人の少女を見つけた。いつものように頭を掴んで握りつぶそうとしたとき不意に疲れたという感覚に襲われた。彼は少女を下ろして立ち去った彼とその軍団は北に帰っていった。
後に北の地にヒュペル王国と呼ばれる国が誕生する。魔王とその配下の子孫によって生まれた国だ。
中央歴1639年7月15日 ヒュペル王国 ダレルグーラ城
「パーパルディアからなんの返信もないのかえ?」
ヒュペル王国通称魔王領と呼ばれているこの国は近年魔王討伐隊の子孫の国エスペラント王国と魔族の防壁のため生まれたトーパ王国との連合国家である連合王国の猛威にさらされていた。
連合王国の目的はグラメウス大陸をヒトの勢力圏に加えることと再び魔族の侵攻がないように彼らを根絶することである。技術力と武勇を誇る彼らに長年の平和によって弱ったヒュペル王国軍は連敗を重ね多くの領土を失った。
その脅威に対抗するために連合王国をけん制できる存在であるパーパルディア皇国に頭を垂れ属国にしてもらったのだがその頼みの綱はオミ沖海戦以降こちらの支援要請に応じないばかりか皇国からの大使すら帰っていく有様だった。
「陛下、救援要請のために派遣した大使によると共和国の大使を優先するために謁見が後回しにされているとのことです」
「また共和国じゃとあの国は妾達の国に災いしかもたらさぬな。パーパルディアもパーパルディアじゃ!
あ奴らの要求に応えるために姉様は妾としてわたっていったのじゃぞ!!!」
側近は彼女の怒りを諫めた後に海外に助けを求める選択肢を話し始めた。結論としては絶望的な内容だったが。
「パーパルディアが役に立たないとなればほかの国を頼るしかないでしょう最初に候補に挙がるムーとミリシアルですが両国とも我が国を支配下におさめるつもりはないでしょう」
むしろ両国は連合王国を支援してパーパルディアに代わる第三文明圏の新たな列強にしようとするのではないかという話は主をを怒らせるだけなので省いた
「レイフォルはパーパルディア対抗心から我が国の属国化に応じてもらう可能性はありますがいかんせん第二文明圏にあるため遠すぎます。また連合王国軍に対しては弱体です。」
「エモールはエモールです。はい、あの国は他国に興味を示すことは滅多にないです」
他国の支援を当てにせずに王国のみで対処するほかないでしょうという前に
「そうなると我が国を助けてくれる国はないと言いたのじゃな・・・いや、あるぞ妾の国を助けてくれる国あるぞが共和国じゃ」
得意気に語る主を見ながら側近はどうしてこの家族は国のためにその身を簡単に捨てられるのかと嘆いた。
前々魔王だった父親は連合王国軍の攻勢に対してしんがりを務めて戦死、前魔王だった姉はパーパルディアからの防衛条件として皇国貴族との結婚を了承し国から離れた。そして主も幼い身ながら社会主義を掲げ王族や貴族を処刑する国を招こうとしている。
「なに、共和国の属領支配について悪い噂はとんと聞かん、パーパルディアよりも良い宗主国じゃないかのう」
共和国は属国をよく扱うという話は第三文明圏に広まっているもの自主的に属国になる国が皆無なのは王族や貴族に都合が悪いからだろう
「主、共和国は確かによい宗主国になりえましょうが主にとっては悪い宗主国です。かの国が属国にした国々で王族がどのようになっているかはご存じのはずです」
「じゃからなんじゃ、このままでは王国は滅びる。妾も父様や姉様と同じように身をささげる時が来ただけじゃ」
主との押し問答の末折れた側近はエストシラントにいる外交官に日本大使館を尋ね属国化の要望するようにと命令を下した。
中央歴1639年7月19日 日本社会主義共和国 仙台 外交省
共和国の外交というのものは一般的にスパイ活動の隠れ蓑というイメージが強いがそれは西側諸国や
権威主義国が情報部の外交官しかみていないからだ。社会主義諸国に派遣される外交官は外務省から派遣される本物の外交官であり彼らの役目は社会主義諸国同士の折半交渉を主な役目としていた。
一人の外交官がクワ・トイネ大使からのロウリアへのパイプライン工事を拒否するとの返答が書かれた書類を見ながら黄昏ていた。
クワ・トイネのロウリアへの憎悪はなかなか消えないな。クイラからの石油パイプラインはロウリアの工業に必要不可欠なのに。同じ社会主義国として生まれ変わったのだから古い憎悪は捨ててくれというのは三か月前に戦争して両国に求めるのは酷な話かもしれないけど。
ロウリアとクワ・トイネ双方の対立は政府上層部に広く知られているが社会主義国である以上高圧的に事態の鎮静化を要求するのはかつてのソ連のように反発を生むので避けたいのが本音だ。最悪の事態ロウリアとクワ・トイネが供与した武器で武力衝突しない限りは穏便な処置が外交部に求められていた。
軍部にクワ・トイネ、ロウリアの訓練を一緒に行うように要求しよう、それと教育部にルムンバ大学(共和国の政治留学生用の大学)の寮の部屋の割り振りで両国の生徒を一緒にするように要求すれば今のところは大丈夫でしょう。
「同志アフマド、あなた宛ての指令が届きました。至急ヒュペル王国に向かいかの国からの属国化要請に応答するようにとのことです。」
ヒュペル王国?名前からして社会主義諸国ではない国になぜ外務省の私が?という疑問は脇に置いといて
出国する私の代わりにロウリアとクワ・トイネ間の友好港を高める方法を上に提案するように同僚に頼んだ。
船で本土から北に進みグラメウス大陸へ向かう途上。私宛に上司からのメッセージが届いた。
政府は君の身に何か起こったら戦略原潜のSLBMで相手の王都に核攻撃をすると決めたらしい
それだけ相手の出方がわからないということだ。警戒しとけよ
私はそれなら諜報部の外交官をつかってよと言いそうになった口をを何とか閉じることができた
社会主義とそれに続く共産主義社会の到来によってユートピアができると信じている彼らは自分の命を捨てることなど安いものだと本当に確信している。私は彼らが苦手だけどもこの任務は彼ら向きだ。
私の不安と共に船はヒュペル王国の港トゥーレに停泊し
私は一路交渉相手の待つダレルグーラ城に向かっていくことになる
中央歴1639年7月23日 ヒュペル王国 ダレルグーラ城
「お前が共和国から来た外交官じゃな、妾はリリス・ノスグーラこの国の魔王いや王といった方が分かりやすいかのう」
私の目の前にいたのは頭にヤギのような角をはやした色白少女だった。
「そうです。あなたの国からの属国化要請に基づいて私が派遣されました。その回答に前にお聞きしたいことがります」
魔王直々に共和国に要請をしたと聞かされていたが私にはこの子供が要請をしたとはとても思えなかった
「私たちの国は属国は求めていません。しかし社会主義の名のもとに王政を廃止するのはごぞんじですよね?」
私の予想を覆して彼女は知っておると得意げに答えた。その答えに混乱した私は
死ぬかもしれないですよと口を滑らしてしまった。
「それもしっておる。じゃが国が亡ぶときに王族のみが生き残ってもむなしかろう」
私はその言葉を聞いたときに彼女守ろうと思ってしまったのだ。
中央歴1639年7月25日ヒュペル王国は王政を廃止しヒュペル人民共和国に名前を変え社会主義連盟に加盟この出来事に共和国は声明を発表した
・ヒュペル人民共和国に対する攻撃は日本社会主義共和国および東京条約加盟国全体への攻撃と解釈する。
その声明は連合王国に衝撃を与え戦争計画の見直しを余儀なくされた。対する共和国はフィルアデス大陸への陸路を確保することによって、第三文明圏の非社会主義国に対する戦争の条件の一つを達成することができのだ。