日本社会主義共和国召喚   作:おは

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革命の代償

中央歴1639年7月5日 パーパルディア皇国 工業都市デュロ

 

皇国の工業の中心地であるこの街はパーパルディア皇国のみならず第三文明圏に製品を輸出している産業の中心地だ。しかし繁栄の裏には労働者に対する激しい搾取が行われていた。

 

「我々の同志になりうる男フランソワ・ディバル解放が我々の任務だ。」

 

部下に命令を下していたのは大使として派遣されているはずの朝田だった。共和国は戦争の時間稼ぎのために皇国の顔を立て抗議の翌日に更迭を発表し本土に帰還したはずだったが、実際にはパーパルディアに対する工作活動の責任者としてデュロに派遣された。

 

デュロではディバルの一派に接触し協力関係を構築、監獄襲撃に向けての準備を進めていた。

 

 

 

中央歴1639年7月6日 深夜 パーパルディア皇国 デュロ監獄

 

監獄の奥深く地下牢にある囚人が鎖で両手足の自由がないまま収監されていた。

 

やけに外が騒がしいな。俺のいる地下牢にまで音が聞こえる・・・・・仲間たちが工員を集めて刑務所の襲撃をしているのだろうか?

 

外の音はさらに騒がしくなり。看守が一斉射撃をする音や魔道砲の発射の音もちらほらと聞こえ始めたがディバルの関心は壁の中から聞こえる金属が石を叩くだった。

 

音は段々と大きくなっていったが看守が来ることはなかった。自分の監獄の壁に小さな穴が開き壁が崩れ見たことのない装備をした男たち複数人現れた。

 

「お前がフランソワ・ディバルか?」

 

囚人がそうだと答えると男たちは手足の鎖を壊し。見たことのない機械を片手にこちらは目標を確保した

そちらも撤退してくれと答えた後

 

「同志、君の仲間たちと合流しよう」

 

といい囚人を連れ出し町の闇の中に消えていった。

 

こうして皇国の危険人物フランソワ・ディバルは脱獄したわけだが皇国の上層部はその事実を知らされることはなく、監獄を襲撃した暴徒を撃退した事とディバルの処刑はすでに完了し死体を埋めたという偽りの情報が報告されたのだ。結果、皇国は共和国の策謀に対する備えを怠らせることになる。

 

 

 

中央歴1639年7月12日

 

地下出版新聞民衆の友から『貴族を吊るせ!そうすれば全てがうまくいく!!!』

扇動的な見出しの新聞が発行された。

 

内容はフランソワ・ディバルの解放を成し遂げたこと、パーパルディア皇国が新たな戦争と民衆にさらなる負担を求めていること、その対処法として貴族を吊るすことを薦めることだった。

 

それ自体は民衆の友がいつも書く記事だったが、貴族の襲撃に関しての武器の作り方、襲撃方法の具体例などはこれまでの扇動的だった記事とは違っていた。

 

破壊活動の具体的な内容が書かれたこの記事は皇国本土の反政府組織のほかに属領の被支配民たちの間を出回り皇国の治安を急速に悪化させ後に起こる象徴的な事件への導火線の火をつけた。

 

中央歴1639年7月27日 パーパルディア皇国 工業都市デュロ とある馬車

 

私の夫からの命令で友人の屋敷に行くことになった私はいつものように自分の祖国がどうなっているかを知るために新聞を手に取った。その見出しは私に衝撃を与えた。

 

『共和国!魔王領を版図に収める!!」

 

私は妹がどうなったかを知るために記事をくまなく読んだけれどもそこには何も書かれていなかった。

死んだと書かれるよりもマシだがそれでもあの共和国のことだから無事では済まないだろう。

 

 

「皇族につながる大貴族だからお前の国は安泰だって言っていたわよね?その結果がコレとかどういうことよ!!!」

 

王国の安全そして妹を守るためにある大貴族に嫁いだのだが結婚生活は最低そのものだった。結婚相手は私のことを珍しい種族の奴隷として見ていてほとんど娼婦のような扱いだった。もっとも8番目の妻になると聞いた時からこうなるのはわかっていたけど。

 

私が体と引き換えに約束させた王国の安寧が守られなかったのだから私も自由にやらせてもらう。始めに御者に夫から与えられた宝石を与えると寄り道として港に行ってもらうことができた。

 

港に着いたらどう隠れるかはその時次第だ。

 

私を載せた馬車は工業地帯と隣接するスラム街を通っていた。ここを通り抜ければ港はすぐそこのはずだった。突如馬車が止まると御者が騒ぐ声が聞こえた。

 

「お前たち、この馬車に乗っているのはセドリ―大公の奥方だぞ!道を開けろ!!!」

 

私が馬車のカーテンを開けると周りに人だかりができていた。

 

「クッソったれのセドリ―は工場で死んだ仲間たちの慰問金を『鼠どもに金など不要だ』と言ったそうじゃないかそれの恩返しさ」

 

二日前に弾薬工場で爆発事故が起こった件のことだろう。たしかに夫は数百人の事故を起こした時に死傷者よりも工場の被害を嘆いていたがそんなことまで言っていたとは。

 

「おい!!やめ・・・」

 

 

御者が民衆に引き摺り下ろされ、私の馬車の扉を斧を持った人々が叩き割った後、一人が私の角を掴んで強引に引きずり出した。

 

「この女、糞セドリ―の情婦じゃないか。俺たちが苦しんでいるなか女を囲ってウハウハかってか。この野郎!!」

 

 

私を囲む群集は口々に夫に対する非難するとその様子にただ震えていることしかできなかった。

そのうちに私についてはしゃべりだした。

 

「この女どうする?」

 

「別嬪だし犯してから殺すのがいちばんさ。」

 

「クソ貴族に犯されていたんだ俺たちがやってもいいだろ。」

 

口々に私をそう話をしているのを聞いて皇国人への嫌悪をより強くし最悪な時間を受けることを覚悟したときに

 

「同志諸君、そんなことはしてはいけない!」

 

見慣れない外見の男が群集の中を割って入った。

 

「あぁん!なんだおめぇは?」

 

「私は朝田!諸君らの神聖な蜂起をより良い方向に導くものだ。」

 

この言動を聞いた私はこの男が共和国人であることを悟った。朝田という男ははさらに話を続ける。

 

「君らの怒りはもっともだ。腐敗した貴族は君たちの苦境を無視し消耗品のように扱っている。その怒りを貴族を襲うことで解消するのは実に正しい。しかし!肉体的欲求に屈し犯すということは断じて容認できない!!!君たちの蜂起の神聖さを汚し!!!!革命の価値を貶めてしまう!!!!!」

 

男の演説は群集をある程度はなだめてくれたが

 

「ごちゃごちゃうるせぇ!!」

 

と何人かの男が朝田に襲い掛かった。

 

「革命を汚す屑どもが」

 

吐き捨て見慣れない武器で次々と襲い掛かってきた男を銃殺した。それを見た私を含む群集は恐怖に飲まれこの状況を支配する者がこの男であることを思い知らされた。

 

「さて、同志諸君!君たちはディバル同志の新聞を読んだかね?」

 

尋ねると何人かが『あぁ・・・聞かされたことある、たしか貴族を吊るせというやつだ』と答えた

それを聞いて何かを納得した朝田は

 

「では、やることはわかっているな。この女を吊るせ。皇国いや第三文明圏全体に抑圧された労働者の怒りを見せつけようではないか!!!!」

 

朝田は街灯の一つを指さしそういったのだ。

 

私は恐怖で動かない体を妹の無事を確かめるために必死に動かしたのだが朝田に掴まれて動くことが出来なかった。

 

「放してください、私は妹の無事を確かめなくてはいかないのです、放して!!!」

 

私が懇願すると彼は私の耳でつぶやく

 

「お前の妹は共和国人民として暮らしていくことになるだろう。だが、お前は死ぬ。革命の薪としてな」

 

妹が生きているという話は私を決して生かして返さないことの裏返しだ。誰かが持ってきた縄が私の首にかけられ、体が地面を離れた。空気を求める苦しみの中私は妹が無事であることを祈り続けた。

 

 

 

翌日、皇国の新聞はジュゼベル・ノスグーラが暴徒に襲われて死亡したと一面に報じた。この報道は皇国貴族を不安にさせ治安に対しての対策を政府に求めることになる。民衆の友も『民衆の怒り思い知れ!これは始まりに過ぎない』と扇動を始め事実を知った下層民の革命への熱気が高まることになる。アルデの戦争計画の要であった皇国の一致団結は崩れた。

 

共和国はパーパルディアの戦争計画を混乱させた。代償は幼い少女の涙だ。




朝田が参加したのはディバルとの会合の際に偶然見かけたからです
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