日本社会主義共和国召喚   作:おは

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ロウリアの大陸統一戦争

中央歴1639年3月22日 クワ・トイネ公国

「同志の皆さん、我々が一か月で見せた成果はあなたたちにも出来ます」

 

異世界に転移した共和国が、クワ・トイネ公国と国交を結んでから一か月。共和国工作員の富岡は、クワ・トイネでのインフラ整備と共に、

本来の目的であるプロレタリアートへの演説を精力的に勤め上げていた。

徐々にではあるが、民衆は領主に対する疑問を持ち始めている。本来ならば結果は上々だ。

しかし工作が始まったクイラ王国では、扇動によって無産階級革命の機運が高まったいるのを考えると

遅いと言わざるを得ない。もちろん豊かなクワ・トイネでは階級の矛盾が表れにくいことや、

共和国が求めている地下資源を持つクイラ王国の方が、多数の工作員が送り込まれているのもこの結果の理由だろう。

 

余談であるが、共和国がなぜ食料を必要としていないのかというと、90年代の遺伝子革命によって

遺伝子組み換え食物の全面導入による食料自給を成し遂げたからだった。

 

同日クワ・トイネ公国 首相官邸

 

「すごいものですね。共和国は明らかに第三文明圏を超えています。もしかすると我が国も超えるかもしれません」

 

秘書の興奮した語りを聞きながら、カナタはクイラ王国の政情不安が頭に浮かんだ。かの国の鉱山労働者が

暴動を起こしたのは日本と国交を結んでからだ。国内で下層民の急進化が始まったのも、日本と国交を結んでからだ。日本は何かをやっている。それを突き止めてやめさせなくては、とカナタは考えれている。

 

「君、至急日本の動きを探ってもらえないだろうか」

 

そしてカナタの危惧通り、恐れていた事態が起こった。

 

同日

 

クイラ王国の鉱山内で起こった落盤事故への抗議は、工作員の介入により大規模な反乱へと変貌した。

続く一週間のうちに貴族の逮捕、人民裁判による王族の処刑、そしてクイラ人民共和国の誕生と、目まぐるしく情勢が変わった。

 

中央歴1639年3月29日

 

ロウリア王国 王都ジン・ハーク

 

「クイラ王国が滅びたそうだな。我らの侵攻に悪い影響はあるのか」

 

「スパイからの報告によると、クワ・トイネは、日本がこの事態を引き起こしたと非難しており、即座に国交を断絶しました。クイラ王国崩壊と合わせれば侵攻するのに最も良い時期かと」

 

「宰相、日本についての情報はありますかな?」

 

「現在も連中に対しての情報はほとんどありません、しかし我らにとって良いことにクワ・トイネと日本は国交断絶済み。連中について考える必要はなくなりました」

 

「なるほど、では先々代の悲願である大陸の統一が我が代で出来るのだな」

 

会議にいる誰もが軍事作戦の成功を確信した。会議終了後、ロウリアによる大陸統一戦争が開始された。

 

 

 

 

日本社会主義共和国 仙台

 

市民から学園前と言われている、スターリン様式の五階建ての建物がある。その建物の主は人民情報部。

かつての世界ではCIAやKGBに並ぶ評価をされ、国内からはプロレタリアートの剣、国外からは国際テロの総本山と呼ばれている組織だ。

 

現在彼らはロデニウス大陸の共産化の最終段階についての報告をしていた。

 

「我々の計算通り、クワ・トイネは国交を断絶しました。現在ロウリアが戦時体制に入ったことは諜報員の情報により確実です」

 

そこらの職場に居るのんびりとしたおじさんのような風貌の男は、作戦部長の経過報告を聞いていた。

彼の名前は高木秀則。この国の諜報機関のトップだ。そののんびりした風貌とは裏腹に、数々の赤色テロの首謀者であり、

世界中で最も危険なテロリストとしての評価を受けている。

 

しかし彼自身は、強欲な資本家の資産を搾取されているプロレタリアートの報復行為はテロ活動ではないと認識している。危険な人物だ。

 

「わかった、報告ありがとう。クワ・トイネの諜報員からの報告は?」

 

「諜報員は各位隠れ家に潜伏。ロウリアの侵攻後、赤色民兵による蜂起の準備を完了しています」

 

「ありがとう、次はロウリアでの武装蜂起だが、準備はどうなんだ?」

 

「在地の諜報員によると、ロウリアは6年もの戦争準備で水面下での不満が高まっています。

我々はこの情勢を利用し、多くの協力者を確保しています。現在でも王政を打倒できるほどの戦力です」

 

「ロウリアが侵攻しなかった場合には転覆させることが出来るわけか、わかった。同志、

私はこれから最高評議会に作戦許可を取りに行ってくる。いいかね、この戦争の主役は我らであって軍でないことを肝に銘じてくれ」

 

最高評議会は人民情報部の作戦を支持。革命戦争への壮大な仕掛けが始まる。

 

 

中央歴1639年4月29日 クワ・トイネ公国 とある小さな町

 

町中の空気はロウリアの侵攻とその残虐性、そして自分たちを守ってくれない政府への不満であふれていた。

まさに、赤衛隊を作り上げるための環境が整っていた。

 

富岡は避難民でごったかえす広場で、銃口を空に向け、引き金を引いた。これまでに聞いたことがない音にその場にいるすべての人々が彼を見つめている

 

「君たちはどこに逃げているんだ!」

 

その質問にもちろん、首都だと誰かの返答が返ってくる。

 

「首都に行ってもこのままでは殺されるぞ!この国の最も堅固なギムが落とされたんだ!」

 

「じゃあ、お前はどうするつもりだ!」また誰かの返答がやってくる。

 

「この場所を守る!見ろ!俺の持っているものを!これは俺の国のものでピストルと言われているものだ!」

 

誰もが富岡の持つピストルに目を注ぐ。富岡は遠くに見える看板を打ち落とすと宣言し、引き金を引いた。

情報部での訓練で培われた技量によって銃弾は看板の支えを打ち抜き、看板を落とした。

それを見た人々は、彼が狂人でないことを認識した。

 

「俺と一緒に戦うのなら、全員にこれよりもいいものやる!どうだ!戦うやつはいるか!」

 

10名が彼のそばに来た。身なりを見るに避難民か、この場所から逃げられないほど貧しいものだ。

「ありがとう!ありがとう!ほかに参加したい奴はいるか!」

 

最終的に集まったのは30名だった。富岡は上層部に自分が蜂起した事を伝え、

報告を聞いた情報部は支援のために無人機を飛ばしてこの小さな町一帯の偵察に向かった。

 

 

中央歴1639年5月1日

 

ロウリア軍1000人ほどの一団が、富岡の居る町へと向かってゆく。町に残った住民の殺害、そして略奪のためだ。その情報は無人機を介して富岡と、彼が作った急ごしらえの部隊に伝えられた。

 

「同志諸君、我々の町に連中がやってきた。だが、連中は知るだろう。我々が腐敗した封建軍とは違い、

はるかに強いことを」

 

30名で1000人を相手にするなど正気ではないと、つい2日前であったらそう人々は思っていただろう。

しかし人々は、富岡から渡された武器の使い方を知るうち、勝てるという確信を持てるようになった。

 

彼らの持つ30式小銃は国民皆兵主義のための銃であり、1日の教育で使い方を覚えられるのだ。

そのため転移前は反政府勢力にバラまかれ、共和国の世界ではAK47に代わって「テロリストの銃」というありがたくない

あだ名をつけられている。

 

ロウリア軍が気付いた異変は、町に掲げられた赤い旗だろう。彼らはその異変を無視して旗が掲げられた

広場に向かってゆく。その時建物の窓から甲高い銃声が流れ始め、兵士たちの鎧を銃弾が貫き、兵士たちををもの言わぬ屍に変えてゆく。兵士たちが攻撃に気付くのは遅すぎた。30丁の小銃による一斉射撃は、彼らの前衛を完全に消滅させた。

 

一瞬の出来事に恐怖を覚えたロウリア軍は、蜘蛛の子を散らすようにして我先にと町から逃げだす。わずか30名で

1000人に勝てたのだ。その勝利は町から逃げられなかった者たちも見ていた。彼らはみな、富岡と町の守護者たちに対して歓声を上げる。中には赤衛隊に加わるものも出た。この勝利を近隣に伝えるものも出たのだ。

 

富岡は歓喜の中、こう思う。やはり5月1日には何かが起こる。

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