日本社会主義共和国召喚   作:おは

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瞳に映るもの

中央歴1639年6月25日 日本社会主義共和国 旧軍事境界線

 

かつて日本国との軍事境界線は共和国の転移により眼下に砂浜とそこから広がる海とはるか遠くに地平線が見える場所となっていた。

 

「こんなところに情報部の連中が大挙して訪れているんだ?」

 

兵士がそうつぶやいた場所は軍事境界線ぎりぎりにある監視所のの弾薬庫だ。移転前ならば人数はともかく保管状況を確認しに情報部員がやってくることは珍しくないのだが現在は境界線の弾薬が軒並み東京条約に加盟した諸国に分配され空になったこの場所に来る理由は見当たらない。

 

「同志、ここが有名な女の霊が出る場所だと聞いたが?」

 

情報部員たちの指揮官が兵士に質問をした。

 

この弾薬庫は元々本土決戦での空襲で使用された焼夷弾によって亡くなった人々の墓地があった

その後の休戦ライン上あった墓地は陣地構築のためにつぶすことになったのが遺骨を別の場所に移するときに女性の遺骨を残したまま監視所が建てられてしまった。それを恨んだ女性の霊が怪現象を起こすとここで監視している兵士たちが語り継いでいた

 

「た、確かにここは幽霊が出るというう噂はありますがそんなものはあり得ません」

 

「同志、魔法もこの世界に来るまではあり得ないものだと思われていた、幽霊はどうなのかを調べるのが我々の任務なのだ。」

 

魔法の発見の衝撃は魔法が見せる可能性によって大きくなっているばかりだ。共和国は魔導士を陣営に加えるために宣伝工作や貴族である者たちへの免罪などあらゆる手段を取っていた。この調査は共和国内部で進められている迫害された巫女や占い師などの霊能力者の再調査と共に進められている、かつての世界にも魔法やそれに類する力はあったのかという確認であった。

 

 

「えーと、同志ここで死霊術を使えばよろしいですの?」

 

弾薬庫に入った来た女の姿は人とは違う長くとがった耳を持つエルフだった。

 

早速始めてくれと言われるまま死霊術の詠唱の彼女の心中は『どうしてこうなった』一文字だろう

クワ・トイネ公国の裕福な貴族の一人娘だった彼女は本来ならば革命の際に処刑されていただろう

運命のいたずらかロウリア軍の侵攻によって両親を殺された復讐を誓い戦いに盲目的に参加した

 

戦いのさなか彼女のいたクワ・トイネ抵抗軍は赤衛隊と名前を変えていたがそれ以外では変わらなかったために故郷で起こった異変を知ることが出来なかった。(もしも知っていたらこの場所にいなかったが)

 

戦いが終わり凱旋式を見て初めてクワ・トイネが人民共和国に変わったこと共産主義によるロデニウス大陸のユートピア建設が行われることを知った。

 

その後の彼女は自分の領地を政府に接収されたことで帰る場所を失い途方に暮れていたところを

魔術師を加入させたい共和国の採用官に赤衛隊にいた経歴を評価され日本本土での魔法技術者として雇われた。現在彼女は故郷から遠く離れた祖国を滅ぼした者の大要塞群で除霊活動をすることになったのだ

 

「信じられん!?本当にいるとは・・・」

 

詠唱が終わるとそこには焼夷弾によって顔が焼けただれた女の幽霊が半透明の姿で浮び僅かにかすれた叫び声とそれを録画する音だけが弾薬庫に響いていた

 

「この方がおっしゃるには自分の体の上に重しがのしかかって苦しいのでどうにかしてしてほしいと言ってますね」

 

静寂を破ったのはエルフの女だ彼女は弾薬庫のかつて82ミリ化学砲弾が山と積まれた場所に行くとここですわと伝えた。それを聞いた兵士や情報部員は床のコンクリートを工具で怖しあらわになった地面を掘ると人骨が現れた。

 

「これは・・・上層部に映像を届けなくてはな、同志、魔法技師よくやってくれた。まずは女性の人骨は大東亜戦争戦没者墓地に埋葬するように提言してくれ」

 

指揮官は兵士にこの件は他言無用であると言い残すと部下を連れて監視所から去っていった。

 

 

 

中央歴1639年6月26日 日本社会主義共和国 仙台

 

現在流れているニュースでは『パーパルディア皇国に到着した外交団。ワルシャワ労働歌を出迎えた外交官の前で演奏』という内容であった

 

(演奏後、曲の内容を知ったパーパルディア側からこれは侮辱であるという非難が内密に届き共和国側は手違いとして謝罪することになる)

 

 

「周辺諸国からの情報である異様にプライドが高い国と聞きましたがこの件に対する対応を見ると我が国を恐れているようです」

 

高木はパーパルディアに対する外交交渉について議長の小林に報告していた。

情報部長の高木が外交について話しているか?それは共和国の外交認識が他国とは異なり社会主義国以外は外交する相手ではなく倒す相手と考えており、そのため大使として派遣される者の実態は工作員だ。

 

もちろんワルシャワ労働歌を演奏したのは手違いでもなんでもなく計算された行動であった。皇国を侮辱しその対応でどれほど共和国を恐れているかを知るのが狙いだ。

 

「朝田の奴もよい根性をしているな下手をすれば殺されていたはずだぞ」

 

「彼も共産党員ですから、大義のために命を落とすなら本望です」

 

そのとおりだなと小林も賛同する。共産党員となったからにはただ、共産主義の大義のためにすべてをささげる意思を持つ必要があるのだ。

 

「パーパルディアが朝田を殺せば。こちらも宣戦布告する口実が出来ましたが」

 

「君の言う周辺国の情報からするとパーパルディアの戦力ははるかに劣っているそうだが、魔法が不確定要素だ」

 

魔法の不確定要素を考慮に入れて調査が終わる前に戦争になった場合は共和国はパーパルディア軍を目標に核攻撃を行う用意を整えている。

 

「魔法といえば、どうやら元々の世界にも存在していたようですよ」

 

なんだと!?と反応する小林に資料はを手渡した(魔術師を伴い共和国各地の心霊スポットの確認や霊能力者、超能力者の再試験の結果が書かれている)

 

 

これは国の一大事にかかわることではないか。これまでの巫女などの迫害は完全な誤りであったことを資料は示している。その誤りをどのようにするかが議長としての責任だ。最も簡単な解決法は資料を闇に葬ることだがそれはソ連や中国のように社会主義を蝕むだろう。かといって事実を公表したとしても迫害された者たちの補償(命を落としたものも多数いる)がどれほど彼らの心情をやわらげるかは未知数だ。

 

「次の人民大会の冒頭にこの事実を発布して公的に謝罪と補償をしよう」

 

その時人民は魔法がこの世界だけのものではなかったことをしることになる

 

同日 パーパルディア皇国 エストシラント

 

「なんだあいつらは!」

 

共和国のニュースでワルシャワ労働歌を演奏された外交官はレミールであった。演奏終了後この曲は何を歌っている?というレミールの疑問に日本国の大使は「暴虐な皇帝に死を与える内容ですね』伝えた

 

それを意味するものは『お前らを殺す』という外交ではなくただの侮辱だ。皇帝が奴らに頭を下げているのだと言っていなかったら。レミールはこの無礼者を殺していただろう

 

「殿下、お怒りはよくわかりますが向こうの大使から謝罪を得ることはできましたそれでよしとしましょう」

 

エルト自身も共和国の外交というもの?には心底憤っている。たとえ元の世界で強かったとしてもこの世界では新参者である共和国は世界の指導国である列強に敬意を示すのは礼儀なのではないのかと、そしてそれにもかかわらず共和国に下手に出ることを余儀なくされていることだ。

 

その怒りを振り払うためにレミールの目を見た時ににかつて第3外務局に勤めていた時に文明圏外国に要請を伝えた時の相手方の目に映るものと同じく物を見た。

 

 




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