少年とガールズバンド   作:奏でるの

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運動部でしたが体育祭は苦手でした。




#12 体育祭とか 前

「暑っついね〜…」

 

「言うな。余計暑くなるだろー」

 

「モカちゃん溶けちゃいそうだよぉ……」

 

「おわっ。暑いならおっかかるなし…」

 

「けー君なんで長袖の上着着てんの〜? 見てるだけで暑くなるー」

 

「別にいいだろ。気にするな。つか、なんでコッチいるんだよ青葉…。お前のクラスの座席アッチじゃね?」

 

「いーじゃん別に〜。あ、お茶ちょーだーい」

 

「自分の飲めよ…」

 

「座席に置いて来ちゃった〜。…………ぷはっ。あー冷たくて美味しぃ」

 

「もう飲んでるし。俺許可してねぇよ?」

 

「後でモカちゃんのあげるから〜」

 

「……別にいーよ」

 

「…遠慮しなくていーのに〜」

 

「ちょっとモカと佳夏! だらけてないで応援しなよっ!」

 

「「暑すぎて無理」〜」

 

「(なんかモカが増えたみたい)」

 

「おいおい。暑さ耐性無さすぎだろお前ら…。声出しゃ暑さも気になんねぇって!」

 

「むしろ巴は元気すぎ」

 

「ていうかお前らもなんで白軍(コッチ)にいんだよ」

 

「あはは……せっかくだから皆で応援しようってひまりちゃんがね?」

 

「別にわざわざ来てくれなくても……」

 

「素直に嬉しいって言えばいーのに〜」

 

「モカ」

 

「怖〜い」

 

「だから暑っついって」

 

 

 

 

 

炎天下の下。体育祭が始まった。

 

 

まだ5月なのにこの暑さは異常だろ。そして何よりこの灼熱のグラウンドで太陽光に晒されながら観戦しなければいけないこの状況は何だ? なんかこう仮設の屋根を建てるとかしてくれないかな。グラウンドの向こうに見える『体育祭本部』と書かれた仮設テントを睨みながらそんな事を考える。

この体育祭の最大の敵はこの天気だな。

 

 

ギンギラギンだが欠片もさりげなくない太陽に照らされて、じわじわと汗が滲み出てくるのを肌で感じる。嫌な感覚だ。俺は首にかけたタオルで何度も額を拭う。

 

 

「なんか仕草がおっさく臭いよ?」

 

 

うるせぇ。暑いんだからしゃーないやん。

 

 

開会式も済ませ、ただ今2年生の全員リレー。1年の全員リレーを先程済ませた俺達だが、正直な所この熱気でもう疲れ気味。まだ1種目しかこなしていないし、走った距離としてはたったの100mだが、なんかもうだらけ始めてる。あれもこれも全部この気温のせいだ。

 

 

「あ、湊さん次じゃん」

 

 

美竹の言葉を聞き、俺は座席から立ち上がってリレーが見える位置まで前に出る。

 

 

意外と近くにいた湊先輩。湊先輩も俺達と同じ白軍なので白いハチマキを巻いている。

 

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「湊さんって足速いの?」

 

 

美竹がそんな事を聞いてきた。さぁどうなのだろうか。正直な話あまり運動が得意そうには見えないが。

 

 

なんて考えていたら。

 

 

「(チラ)」

 

「(お…)」

 

 

先輩と目があった。キリッとした瞳でこちらをじっと見つめる先輩。なんでコッチ見てんだろ。……おい美竹睨み返すな。別に先輩はメンチ切ってるわけじゃない。多分。

 

 

数秒後、湊先輩の後ろから走者がやってくる。どうやら湊先輩のクラスである2-Bは現在トップのようだ。このまま維持できるか。

 

 

湊先輩にバトンが渡る。

 

 

「……」

 

「……oh…」

 

 

ギャンギャン追い抜かれる先輩。どうやら運動は苦手のようだ。

 

 

「湊さん足遅…」

 

「(お前もどっこいどっこいな気がするけどな)」

 

「……何?」

 

「なんでもない。………ぁ先輩転んだ」

 

 

ぺちょっと転んだ湊先輩。そして敵軍のはずの今井先輩がすかさず駆け寄る。湊先輩が好きすぎる今井先輩なのでした。

 

 

「次リサ先輩じゃん! おーいっ! リサせんぱーいっ」

 

 

上原が元気よく今井先輩を呼ぶと。

 

 

「イエーイ☆」

 

 

若干遠かったがそんな声が聞こえてきた。笑顔でピースしている。

 

 

「おおっ。速いな!」

 

「お〜。流石リサさーん」

 

 

バトンを受け取った今井先輩は速かった。たしかダンス部だったっけ? やっぱ運動してると違うのかな。

 

 

順調に2年生のリレーは進みアンカーへ。現在トップは2-C、白軍だ。この調子で1位に……あれ?

 

 

一瞬何故か客席がどよめきだした。理由は……まあアレを見れば驚くよな。俺もびっくりだ。

 

 

最下位だったはずの2-Aのアンカーが前の3人をぶっちぎってゴール。大逆転も大逆転の大勝利。

 

 

「すげー」

 

「だろ? あれが日菜先輩だ」

 

 

2-Aのアンカーは氷川先輩。やっぱとんでもないなあの人。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

「いやー勝ったねー☆ さっすがヒナっ」

 

「ヤバいっすねあの人」

 

 

リレーを終えた先輩方がやってきた。ただ今トラックでは3年のリレーの後、中等部のリレーが行われていた。

後ろで宇田川が「あ"こぉーーーッ!!」って叫んでる。声でかいよ。

 

 

「湊先輩大丈夫でした? 盛大に転びましたけど」

 

「あれは何かの間違いよ」

 

「いや…結構紛れも無い事実だったと思うんすけど」

 

 

怪我は無いようだが土まみれの湊先輩。なんかちょっとムスッとしてて可愛い。

 

 

「でも頑張りましたね。カッコよかったですよ」

 

 

俺は先輩の髪に付いていた土を払って落とす。

 

 

「……リサと同じ事するのね」

 

「はい?」

 

「ねー♪ というかセリフも同じだし?」

 

「ぅえ…?」

 

 

つまり二番煎じと? なんかダサいなぁ俺。

 

 

「前から思っていたけれど、あなた達意外と似た者同士よね」

 

「「そう?」」

 

「(息ピッタリ…)」

 

「別に俺そんな世話焼きでもないし」

 

「えー? でも佳夏。なんだかんだで手伝ってくれるじゃん。一昨日だってCiRCLEでさ?」

 

「いや、あれは湊先輩が無理やり…」

 

「でも結局最後まで付き合ってくれたし☆ 割かし佳夏って世話焼きだよね〜!」

 

「は、いやいや。先輩がソレいいます?」

 

「ムッ。ちょっとそれどーいう意味〜っ??」

 

「いたいいたい。だってそうでしょ? わざわざスタッフに差し入れでクッキー作ってくるなんて」

 

「アレはたまたま作り過ぎちゃって…的な?」

 

「アパートの隣人ですか? めっちゃ美味かったですよ」

 

「そう? あはは♪ 良かったよ〜。またなんか作ってくるね☆」

 

「あざっす」

 

「………2人とも、いつからそんなに仲良くなったのよ」

 

 

俺は首を傾げる。いつからと聞かれたら、割と今井先輩は最初からこんな距離感だったと思うのだが…。

……強いて言うなら。

 

 

「ちょっと2人でんむ━━━━━」

 

 

俺のセリフの続きは、今井先輩の人差し指が俺の唇に当てられた事で遮られた。

 

 

シーっ♡

 

「………」

 

 

ウインクをしながら若干頬を紅潮させる先輩。あまりの不意打ちに1歩後ずさりしてしまう。それはズルいって先輩。

 

 

蘭達のとこ行ってくるね〜と今井先輩はその場を早歩きで離れる。

 

 

「…………佳夏。リサに何をしたの?」

 

「…別に何も」

 

 

その聞き方だと俺が今井先輩に何かいらん事したみたいな感じになっちゃうよ。

別に"ちょっと2人で買い物して遊んだ"くらい言っても構わない気もするのだが、口止めされたからには言わない方がいいのだろうか。

 

 

「……まぁいいわ。少し疲れたし、戻るわ」

 

「そうですか。ちゃんと水分補給してくださいね」

 

「分かってるわよ」

 

「あ、飴あるんですけどいります?」

 

「…………そういう所よ」

 

「? 何がです?」

 

「何でもないわ。……ちなみに飴はどこ?」

 

「あ、ハイハイ」

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

「お疲れ様です」

 

 

湊先輩が去ってすぐのこと。後ろから声をかけられる。

 

 

「あぁ。氷川さん」

 

 

妹の方ではない。姉の氷川紗夜さんだ。私服姿でやってきた氷川さんは涼しい顔をしている。半袖だからですか? 似合ってますね。大人びた雰囲気と相まって気品すら感じる。

 

 

「妹さんの応援ですか?」

 

「…というより監視です。あの子はすぐ人に迷惑をかけるので」

 

「親目線ですか」

 

「姉です」

 

「知ってますよ」

 

 

氷川さんとはちょくちょく話す。Roseliaとの邂逅以来、バンド練習に顔を出す(※連行される)内にギターの練習にも付き合うようになっていたため、お互いに研鑽しあう仲になっていたりする。

 

 

「それと、今井さんに誘われたと言うのもあります」

 

「Roseliaの応援ですか」

 

「はい。白金さんも来てますよ」

 

「……ほんとだ」

 

 

氷川さんの後ろに視線を向けると、木陰にいるにも関わらず何故か日傘を指している白金さんの姿が。日傘の意味を成していないような気もするがなかなか絵になっているので面白い。美人って無敵。

 

 

「人混みは苦手なんでしたっけ」

 

「えぇ。ですが、宇田川さんに誘われたようなので」

 

「あこ大好きじゃん…」

 

 

とりあえず俺は白金さんの元へ向かい、今ちょうどあこ達中等部のリレーである事を伝えると。

 

 

「…! あこちゃん、今…行くね…!」

 

 

そう言って宇田川と同じ所へ。親友のためならこの暑さ敵ではないと。なるほど…カッコイイじゃあねぇか。

 

 

「何やってるんですか?」

 

「敬礼です」

 

「それは分かりますけど…」

 

 

言いたいことは分かる。何故敬礼などしているのかと問いたいのだろうが、正直俺もよく分からない。きっとこの気温で若干おかしくなっているのだ。きっとそうだ。

 

 

「にしても凄いですね、お宅の妹さん」

 

「そうね。……あの子はなんでもできますから」

 

「……」

 

 

なんだろう。褒めたと言うのにあまり嬉しくは無さそうだ。というかむしろ…

 

 

()()()()苦手ですか? 妹さん」

 

「……そう、見えますか?」

 

「少しだけ。……実は昨日、妹さんと話しました」

 

「……」

 

 

昨日は体育祭前日ということで、プログラム全体の進行確認が生徒全員で行われた。

各競技の出場者で集まり説明を受ける。無論障害物競走も例外ではなく、氷川先輩ともそこで初めて会って話した。

とりあえず独特な感性をお持ちのようで、話の節々で色々と()を痛感することもあった。

 

 

そして。

 

 

「氷川さんの話をたくさん聞かされましたよ。『おねーちゃんはねー』って」

 

「……あの子は…。すみません、妹がご迷惑を」

 

「いえ、それは別にいいんです。むしろ氷川さんの事が色々と聞けて良かったですよ。にんじん苦手なんて、可愛らしいとこあるじゃないですか」

 

「か…// それは気にしないでほしいです」

 

 

子供っぽい所を指摘されたからなのか、氷川さんは小さく咳払いをした。

 

 

「……尊敬されてますね」

 

「……」

 

 

氷川さんは何も応えない。

 

やっぱり。何となく気付いていたことだが…

 

 

「…やっぱ辛いですか?」

 

「……………………同情なんて要らないわ」

 

 

きっと氷川さんならそう言うと思った。けど…

 

 

俺は同情せずには居られなかった。

 

 

「"天才"が隣に居るって、やっぱ辛いですよ。何をしても、まるでコンビニにでも寄るかーみたいな軽い気持ちで自分を追い越して行くから」

 

「…え?」

 

「数字では自分も優秀な筈なのに…それでも天才相手には霞んで見える。むしろ、よりそう感じてしまう……みたいな」

 

 

氷川さんは静かに聞いていた。

 

 

「ギフテッド相手に抱く感情って、憧れから恨みに変わるんですよ。━━━━━

 

 

 

 

 

━━━━━()()()()()()()()()()()()()()…ってね」

 

 

「━━━━━っ」

 

 

数秒の沈黙。

 

 

「……林道さん。…あなた…………」

 

「…………氷川さんには、そうなって欲しくないな」

 

「………」

 

 

……俺は何をペラペラと喋っているんだか。ほら、氷川さんが困っているだろ。

 

 

「すみません、気持ち悪いこと言って。…忘れてください」

 

「………はい」

 

 

そう応えた氷川さんはグラウンドに視線を向ける。

 

 

「(林道さん。……もしかして、あなたも…)」

 

 

 

 

 

昨日の氷川先輩との会話で何となく気付いた。氷川さんが妹さんに向けている感情に。

 

 

初めはシンプルな憧れから。俺もそうありたいと願い、努力する。

次は嫉妬。いつからか自分の努力では辿り着けないと自覚する。

そして憎悪。何故そんなお前が俺の近くにいるのだと、大きな恐怖と共に相手を恨む。それが筋違いだと分かっていても。

 

 

ソースは俺。

 

 

でも、それはあくまでも()()()()()()

 

 

相手にももちろん感情がある。こんなふざけたさもしい情を抱く俺に対して、相手がどう思うか。どう思ってくれるか。それを自分がどう汲み取れるか。

 

 

それに気付けたなら、きっと。

 

 

 

 

「林道さん」

 

 

氷川さんが視線を動かさずに声をかけてきた。

 

 

「…私はいつか、日菜と向き合えるでしょうか」

 

 

弱々しい声。不安を纏った氷川さんの言葉に、俺ははっきり答える。

 

 

「大丈夫です。氷川さんなら」

 

 

"向き合えるかどうか"を考えるのは、"向き合いたい"証拠。まだ氷川さんは妹さんを嫌ってなんかない。

 

 

俺だって乗り越えたんだ。

 

 

「まずは自分の気持ちに向き合ってみてください…」

 

「私の…?」

 

「はい。きっと気付けますから」

 

 

今のあなたを創ってくれているモノの一端。Roseliaのギタリストになるきっかけを作った人。それは紛れもなくあなたの妹なのだと。そう気付けたのなら。

 

 

「そしたら分かりますよ。妹さんが氷川さんに何を思って、どう想ってくれているか」

 

「……どう想って…」

 

「………すみません。上から目線で失礼な事を」

 

「いいえ。ありがとうございます……あっ」

 

 

何かに気付いた氷川さん。どうしたのだろうか。

 

 

「………日菜が来る気がします」

 

「は?」

 

 

何だそれは。気がします…って、確信はないの「おねーちゃぁ〜〜〜んっ!!」うわガチで来たじゃん。

 

 

声のする方に視線を向けると、コチラへ走ってくる氷川先輩(シリアスブレイカー)が。足速すぎだろ。弦巻より速いんじゃ…?

 

 

「おねーちゃん来てくれたんだねっ! あっ、佳君やっほー!」

 

「日菜。人前で抱きつかないでって言ってるでしょ? …というより佳君って」

 

「佳君は佳君だよ! ねーっ」

 

「結局その呼び方にしたんすね。まぁいいですけど」

 

 

昨日急にあだ名を決められた。いくつかの候補の中で"佳君"が1番るんっと来るらしい。

 

 

「どうだったおねーちゃん! あたしのクラス1位だよ」

 

「……えぇ見てたわよ。いい加減離れなさい」

 

「…うんっ!!(ほんとに見てくれてたんだ…)」

 

 

……いや離れないんかい。今のいい返事はなんだったのか。

 

 

氷川先輩は氷川さんにくっついて離れない。まるで猫だ。ていうか氷川さんもさりげなくタオルで氷川先輩の汗を拭っている。

 

 

やっぱりちゃんとおねーちゃんしているな。

 

 

「佳君。今日のラストは楽しみにしてるからね〜!」

 

「…俺は全然楽しみじゃないです」

 

 

あぁ、怖いなー。

 

 

「どういうこと?」

 

「あのね。今年の障害物競走、佳君も出るんだって! るんっ♪て来るよねー!」

 

「…そうなんですか?」

 

 

俺はゆっくり頷く。

 

 

「あんなん見せられたら…ねぇ」

 

「えー。佳君だってリレーでアンカーだったじゃん! 2人抜きで1位だったし」

 

「近くにいたんで抜けただけです」

 

「(…十分凄いと思いますが)」

 

「氷川先輩。50mのタイム幾つですか」

 

「5.9!」

 

 

※女子50m走日本記録 6.47秒

 

 

「うわー」

 

 

数字にされるとやる気が失せる。5秒台って何? は?

 

 

「まぁあたしには勝てないかもだけど、頑張ろーね!」

 

 

む…。

 

 

「日菜…!」

 

「ん? …あっ、あはは…! ごめんね? 佳君」

 

「……別にいいですけど」

 

 

少しばかりカチンと来た。

 

 

勝てるかは分からない、けど……………負ける気はサラサラ無い。

 

 

「佳夏ー! 次二人三脚だよーっ」

 

「おーう」

 

 

上原から呼ばれた。もうそんな時間か。

 

 

「それじゃあ氷川先輩。氷川さん。俺は行きます」

 

「……ねー。やっぱ氷川先輩ってなんか変。るんって来ないしさ。普通に日菜でいいのに」

 

「はい?」

 

「ほら。おねーちゃんもいるから紛らわしいじゃん?」

 

 

引き留められたかと思ったら急に名前の話になった。まぁ、確かに紛らわしいのは否めないが。

 

 

「別に、"さん"付けと"先輩"呼びで分けてるし…」

 

「えー! そんなのつまんなーい」

 

 

えぇ…。つまんないと言われましても。氷川さんからも何か言ってやってください。

 

 

「…確かに。分かりやすくした方がいいかもしれないわね」

 

「ほら!」

 

 

真剣に考える氷川さん。「別に呼び方なんてどうでもいいでしょう?」とか言うと思ったのに。

 

 

「ね?」

 

「ね? って……はぁ、分かりましたよ。………日菜、先輩」

 

「〜! いいねいいね! るんっ♪て来たよ!」

 

「そっすか…」

 

「次はおねーちゃんね」

 

 

え? 日菜先輩だけじゃないの?

 

 

「……呼んでくれないのですか?」

 

「……」

 

 

なんって顔するんすか…! そんな顔されたら………断れないじゃん。

 

 

俺は小さく咳払いをして。

 

 

「……さ、紗夜…さん?」

 

「なんで疑問形なんですか…」

 

「すみません…なんか、気恥しくて」

 

「…っ……そ、そうですか…//」

 

「…なんでおねーちゃんだけー? あたしは?」

 

「え? …いや別に」

 

「えー! 何それぇーっ」

 

 

俺は逃げるようにその場を離れる。なんだかちょっと顔が熱い気もするが、きっとこの気温のせいだ。もう何でもかんでもこの天気のせいだ。太陽の馬鹿野郎。

 

 

 

 

 

「…あなたも自分のクラスに戻ったら?」

 

「……うん。…おねーちゃん」

 

「何?」

 

「来てくれてありがとね。嬉しい…」

 

「……………私は湊さん達を見に来たの。あなたは…ついでよ」

 

「それでも」

 

「………そう」

 

「うん……」

 

「私は湊さんの所に行くわ。あなたもすぐに戻りなさい」

 

「…うん」

 

「………………………怪我、しないようにね」

 

「ぇ」

 

「それじゃあ」

 

「………………………………うんっ」

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

「どういうことだよ」

 

「うっさいな」

 

 

なんだよいきなり。もうすぐ始まるぞ二人三脚。

 

 

「……俺は女子とやるはずだったのに」

 

「…………」

 

「なんでコイツとなんだよっ!!」

 

「悪いな、俺で」

 

(りょう)。コイツの事殴っていいぞ」

 

 

トラック上で叫ぶ優太とペアを組んだのは、クラスメイトの林亮(はやしりょう)。もちろん男子。

 

 

亮曰く、ペア決めの際に優太は片っ端から女子に凸って撃沈。見かねた女子が亮に頼んで二人三脚に出てもらったらしい。

 

 

「くそっ……くそっ!

 

「どんだけなんだよ」

 

「シンプルに引く」

 

「……お前は良いよな…蘭ちゃんと組めて…

 

「唾飛んだぞバカっ」

 

「俺今すぐ棄権したいんだが」

 

 

していいと思うぞ。というかどう考えても自業自得というか、今までの優太の行動が遠因だと思うんだが…いや確実にそうだ。

 

 

「ちくせう。こうなったら意地でも1位になってやるっ」

 

「おう頑張れ」

 

「えー…ダル」

 

「おう頑張れ」

 

「俺マジ走るから」

 

「は? それ俺も走らなきゃじゃん」

 

「おう頑張れ」

 

「佳夏はさっきから無理矢理会話を終わらせようとすんな。コイツどうにかしろ」

 

「おう頑張れ」

 

「行くぞ亮!」

 

「え、ちょっいてててててて! 足繋がってんだよっ! 優しく扱えっ女子のように!」

 

「お前は女子じゃねぇ!」

 

 

行ったか。全く騒がしいやつめ。亮はマジでご愁傷さま。後で何か飲み物奢るから。

 

 

「やっと行った…」

 

 

美竹も呆れ気味に言う。

 

 

「ソッチの男子凄ぇな…」

 

 

隣にいた宇田川が優太達を目線で追いながら感想を漏らす。確かに凄いよな。アイツの私欲に対しての情熱は。キモイくらいに。

 

 

「良い奴なんだけどな。女子が絡むとダメになる」

 

「変な人〜」

 

「ほんとキモイ」

 

「蘭はアイツの事嫌いなのか?」

 

「嫌い」

 

 

スタート位置に立つ優太達を睨む美竹。直後乾いた音ともに優太達は走り出す。二人三脚だから遅いけど。

 

 

「うおおおおおおお」

 

 

雄叫びが聞こえてくる。余程悔しかったんだな、優太。

 

 

いたっ

 

 

いや転ぶんかいっ。

 

 

「わー転んだ〜」

 

「転んだな」

 

「ふん」

 

 

盛大にコケたが大丈夫だろうか。ていうか亮はマジでとばっちりじゃん。優太に引っ張られるように亮も倒れる。

 

 

実行委員に介抱される形で優太は途中退場。なんて悲しい結末だ。泣けるわ。

 

 

まぁいい。

 

 

「次はアタシらだな」

 

「あぁ」

 

 

順番は待ってくれない。早々に俺たちの出番がやってくる。

 

 

今回、宇田川達とは同じ順だ。つまり隣同士で対決というわけである。宇田川、青葉のペアだが、2人とも運動はできる方みたいだし何とも強敵だ。

 

 

まぁ負けるつもりは無いが

 

 

「アタシらに勝てるかな?」

 

「かな〜」

 

 

余裕の表情を見せる2人。

 

 

「あたし達が勝つ」

 

「舐めるなよ」

 

 

やってやるさ。なんたって、特訓までしたんだからな。

 

 

俺と美竹は目を合わせて頷き合う。

 

 

「この前の感覚を思い出せ」

 

「言われなくても」

 

 

…………

 

………

 

……

 

 

「「1、2、1、2、1、2…」」

 

「おわっ」

 

「あっ!」

 

 

ドサッ。

 

 

倒れる俺と美竹。さっきからずっとコレだ。

 

 

「おいおい…。大丈夫かお前らー」

 

「ふ、2人とも…! 怪我してない?」

 

「あぁ…大丈夫だ。美竹は?」

 

「あたしも大丈夫…」

 

 

何度か美竹と合わせているが、どうにもテンポが合わない。それもそうだ。俺と美竹では身長も違えば歩幅も違う。俺の方が高いし大きいのだ。

互いが互いに合わせようとするから、逆にギクシャクする。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

一向に上手くいく気配が無いからか、互いに無言が続く。コレは良くない空気だ。

 

 

「アタシらはそろそろ帰るけど…お前らは?」

 

 

確かにもう日も傾いてる。一旦落ちついて、また明日か……いや明日はバイトだ。なら明後日かな。

 

 

なんにしても、今日はもうお互い疲れているだろうし、「そうだな」と言って立ち上がろうとした時…。

 

 

美竹に袖を摘まれて止められた。

 

 

「? どうした?」

 

「…いや、なんでもない。先帰ってくれ。俺達はもう少しやっていく」

 

「…そうか。あんま無理すんなよ」

 

 

去っていく宇田川を見送って、俺は美竹に手を差し出す。

 

 

「ほら」

 

「…………ん」

 

 

俺の手を掴んでゆっくり立ち上がる美竹。だが暗い雰囲気を纏った彼女の顔は俯いていて見えない。

 

 

「……そんなに勝ちたいのか?」

 

 

ここまで意地を張るのだから、何か譲れない理由があるのだろう。

 

 

「……別に、無理に勝ちたいわけじゃない」

 

 

美竹は小さく呟く。

 

 

「けど、佳夏と息が合わないのが………凄く気に入らない」

 

「……なんだそれ」

 

「…ふん」

 

 

なんだか拍子抜けだ。何を言い出すかと思えば…。

 

 

「まぁ、巴達に勝ちたいのはあるけど。モカがなんかうざいし」

 

「めっちゃ煽ってたな、アイツ」

 

 

しかし、現状宇田川ペアに勝てる算段は無い。むしろ男で高身長の俺がいる事はある意味デメリットだ。

 

 

「なぁ美竹」

 

「?」

 

「今からでも、ペア変えるか?」

 

 

俺の一言で美竹は目を見開く。まるでショックを受けたかのように。

 

 

「……………なんで」

 

「…このままじゃどうあれ勝てない。原因は俺だろうし、やっぱ他の女子とやった方が上手く行くと思う」

 

「……あたしとは、嫌…なの?」

 

 

「あたしとは嫌なのか」。ペアを決めた際も美竹は同じセリフを言ったが、あの時とは違い、今まるで別人の言葉のように弱々しく響いた。

 

 

罪悪感からか、俺はすぐさま否定する。

 

 

「そんなことは無い…ただ、このままなら「じゃあ」

 

 

美竹は俺の手首を掴んだ。力強く、痛いくらいに。

 

 

「じゃあ、あたしとやって…」

 

「…美竹…?」

 

「あたしは…佳夏と二人三脚に出たいの…!」

 

 

力強く吠えた美竹の手は少し震えている。けれど、更に力強く握ってくる。

 

 

「その方が…楽しい…から…//」

 

「……」

 

 

そっちの方が楽しい。

 

 

勝ちは二の次、だったのだろう。俺は美竹との…いや違う。宇田川達への勝利を最優先にしていた。

 

 

なんてアホらしい。自分の馬鹿さを痛感した。

 

 

楽しい方が良いに決まってる。

 

 

「…そうだな…そうだ。さっきのは忘れてくれ。今の美竹の相棒は俺だよな」

 

「ん…//(あたし何言ってんだろ…!)」

 

「なんだ、そんなに俺とやりたかったのかいだっ

 

「うっさい! そんなんじゃないから!」

 

「分かった、分かったから。抓らないでっ」

 

 

いててて。ちょっと軽口のつもりだったのに。

でもやっぱり、こういう雰囲気の方がいいのかもしれない。

 

 

「しかしどうする。やるからにはせめてまともに合わせないと」

 

「まともに合わせても多分遅いよ? あたし達」

 

 

俺もそう思う。

 

 

「普通に走れたらいいのに…」

 

「………」

 

 

ボソッと呟いた美竹の言葉が耳に入る。

 

 

普通に走る…。………いけるか?

 

 

「美竹」

 

「何?」

 

「次は全力で走ってみてくれ」

 

「は? ……二人三脚で?」

 

「そう。二人三脚で」

 

 

なんか三白眼でコチラを見つめる相方。別に考え無しなわけじゃない。

 

 

「無理に合わせようとしてるからモタつくんだ。ならどちらか一方に合わせるべきじゃないか?」

 

「…つまりアンタがあたしに合わせるって話?」

 

「そう」

 

「そんなことできんの?」

 

 

正直分からない。けど…やってみる価値はある。

 

 

「…転んだら痛そう」

 

「分かってる。…そこは、俺を信頼してくれ。としか言えない」

 

「……」

 

「無理そうなら「分かった」」

 

 

美竹はすぐさま俺たちの足の紐の結び目を締め直す。

 

 

「信頼する」

 

「お、おう」

 

「だからあたしに任せて」

 

 

真剣な顔と目。その目は"あたしも信頼するからお前も信頼しろ"と言っているようだった。

 

 

「あぁ。任せる」

 

 

2人でスタート位置へ。ゴールまでの距離は50m。その間、走りは全て美竹に任せる。

 

 

「よーい…」

 

 

互いに肩を組んで、準備体制へ。

 

 

「ドンっ」

 

 

走る。

 

 

「(………嘘っ)」

 

「(……マジか)」

 

 

ガシッ

 

 

「「あっ」」

 

 

ドサッと倒れ伏す俺たち。だが、俺たちの頭は転んだことより…

 

 

「今速かった!」

 

「あぁ。しかも50m走りきったぞ俺たちっ」

 

「やった…!」

 

 

俺たちはガッツポーズをする。

 

 

俺たちは走りきった。今まで出来なかったゴールを成し遂げた。

 

 

そして気付く。

 

 

俺たちは転んだのだ。まぁそれだけならいいのだが。全力疾走した美竹を地面から守るために、俺は何とか美竹の下にまわっていた。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

俺は美竹に押し倒されている。……ような状態になっている。

 

 

「…なな、なんで下にいんのっ!?//」

 

「いや、咄嗟に」

 

「すぐ退いて!//」

 

「いやまず足のやつ解いて…」

 

 

…………

 

………

 

……

 

 

「なんで顔赤くしてんだよ」

 

「なんでもない…っ!」

 

 

もう始まるってのに…。大丈夫か?

 

 

『位置について…』

 

 

スターターピストルを構えた先生の合図で全員が位置に着く。

 

 

「信頼してる」

 

「あたしも」

 

『よーい━━━━━』

 

 

構えて。

 

 

パンッ

 

 

俺たちは走り出す。

 

 

「な━━━━━」

 

「うそ〜…」

 

 

宇田川達の声は俺たちに聞こえていない。

 

 

俺たちは一気にトップへ躍り出た。それもそうだろう。美竹は全力で走っているんだから。

美竹は決して足が速い訳では無い。それは俺も美竹も分かっている。けれど二人三脚の敵相手に勝てない程遅いわけが無い。

 

 

俺は美竹が全力で走れるように合わせる。美竹なら誰より速く走ってくれると信じているから。美竹は転ぶかもしれない恐怖を振り払って全力で走る。俺がしっかり合わせてくれると信じているから。

 

 

信頼の成せる技。今の俺たちは最強。そう錯覚すらさせる。

 

 

 

 

 

なんだか…()()()()()()

 

 

 

 

 

「モカ! アタシ達も…!」

 

「え〜疲れる〜…」

 

「パン奢るからさ!」

 

「行っくよートモちーん!」

 

 

後ろで近付いてくる気配。宇田川達だろう。流石、速い者同士だな。……だが。

 

 

「「(俺)(あたし)たちの勝ち」」

 

 

俺たちがゴールのテープを切った。

 

 

 

 

 

「……お疲れ」

 

「はぁ……はぁ……うん…」

 

 

俺はすぐさま足の紐を解き、美竹に向き直る。

美竹の息が整うのを待ってから、俺は右手を上げた。

 

「ん」

 

「…! うんっ」

 

 

俺たちは大きな音をたててハイタッチした。

 

 

「佳夏……痛い…」

 

「あ、悪い」

 

 

ハイタッチした手を抑える美竹。マジゴメン。ちと調子乗った…。

 

 

「いやー負けた負けた!」

 

「宇田川…」

 

 

青葉と共にコチラにやってきた。悔しそうだが、笑顔を見せているところを見ると安心する。

 

 

「ふ。あたし達の勝ち」

 

「くっそ。ガチで悔しい…!」

 

 

すかさずマウントをかます美竹。お前って奴は…。

 

 

「けー君と蘭ってば、いつからあんなのできてたの〜?」

 

「そうだぞ! 一緒に練習してた時はあんなにゴタゴタだったのに」

 

「……」

 

「……それは…」

 

 

俺は再度美竹と顔を見合わせてから。ドヤ顔と共に応える。

 

 

「「ヒミツ」」

 

「……へ〜」

 

「なんか腹立つな…」

 

「さて、戻るか」

 

「そうだね」

 

「あ! おい待てよっ」

 

「ひっ捕らえろ〜」

 

 

勝てて良かった。

 

 

けど何より、めちゃくちゃ楽しかった。そんな二人三脚が終わった。

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

宇田川達から逃げるように座席へ。

 

 

「佳兄達凄かった! ビューンって速くって!」

 

「うん…凄かったね。林道さん。あの…お疲れ様、です…」

 

「あ、どうも」

 

 

あこや白金さん。…ていうかもう皆いた。クラスも、なんなら学校もごちゃ混ぜなメンツが勢揃い。すげ。

 

 

「やるわね、美竹さん」

 

「湊さん。…まぁ、佳夏とは信頼し合ってるので。当然です」

 

「信頼…?」

 

「はい」ドヤァ

 

 

アッチは無視しておこう。どう考えても薮をつついて蛇を出す、だ。触らぬ神に祟りなしかな。

 

 

「あこの言う通り、凄かったじゃん☆ 練習でもしてたの?」

 

「えぇまあ。秘密の特訓を」

 

「秘密の…特訓…! 何それチョーカッコイイっ!!」

 

「だろ」

 

「あ、もちろんおねーちゃんも!」

 

「なんかついでみたいで素直に喜べないな…」

 

 

でも嬉しいぞー! と、あこに抱きつく宇田川姉。仲良いね。

 

 

「お疲れ様です。流石ですね」

 

「ひか…紗夜さん。どうも」

 

 

紗夜さんが歩いてやって来る。

 

 

「あれは美竹が頑張ってくれたからですよ。俺はそれに合わせただけです。美竹の方も褒めてやってくださいな」

 

「そうですね。…でも、多大な信頼あってこそだと思いますよ」

 

「……………は、はあ…」

 

「それだけの信頼をおかれる人間なのだから。誇っていいかと思います」

 

 

急に持ち上げる紗夜さん。うわなんだろ、めっちゃ恥ずかしい。

 

 

俺は自覚する程に熱くなった顔を逸らす。バレバレだろうが、こうでもしないと耐えられなかった。直球で褒められるのに慣れて無さすぎだろ俺。

 

 

紗夜さんは俺の火照った顔を覗きたいのか、ゆっくり近付いてくる。やめてくれ。

 

 

「ふふっ。照れてるんですか?」

 

「なんでもないです」

 

「可愛い所もあるじゃないですか」

 

「……なんすか。仕返しですか?」

 

「さて…どうでしょう。……ふふ」

 

 

くそぅ。弄ばれている気分だ。方や紗夜さんは薄く微笑んでいる。珍しい紗夜さんの笑顔に少しばかり動揺するが、目を合わせていない分なんとか平静を保てている。

普段とのギャップえぐいな。美人の自覚を持って欲しい。

 

 

俺は一旦落ち着こうと、あからさまに話題を切り替える。

 

 

「そろそろ昼ですね」

 

「そのようですね。今やっている中等部50m走が終わり次第昼休憩です」

 

 

紗夜さんはプログラムが書かれた紙を出して応えてくれた。そんなもん持ち歩いてるんすか。律儀か。

 

 

「昼食はどうします?」

 

「私は日菜に弁当を届けて来ます。あの子忘れて行ったので…」

 

 

全く…と、小さなため息と共に不満を零すが、なんだかんだで世話を焼いているのが姉らしい。

 

 

そのまま日菜先輩に捕まるとわかっているクセに。

 

 

「なるほど」

 

「ええ。…そういえば、丸山さんが探してましたよ」

 

「はい?」

 

 

唐突に出てきた予想外の人物に驚きを禁じ得なかった。

 

 

「丸山さん?」

 

「はい。ほら、あちらに」

 

 

視線だけ動かした紗夜さんと同じ方向を向くと、そこには丸山さんと大和先輩。日菜先輩と……白髪おさげの女子がいた。パスパレメンバーが揃い踏みである。

 

 

「あ! おーいっ」

 

「こっち見てますよ、丸山さん」

 

「見てますね」

 

「"こっちに来い"と言ってるようですが」

 

「……失礼しますね」

 

「えぇ」

 

 

紗夜さんに一言断りを入れてから丸山さん達の元へ合流。この状況で優太を呼んだらどうなるんだろう。きっと発狂する。そんで死ぬ。

ちなみにその優太はただ今保健室。足をガッツリ捻ったらしい。ドンマイすぎる。

 

 

「こんちわ。そのサングラス似合ってないですよ」

 

「いきなり辛辣っ! コホン。こんにちは。この間ぶりだね」

 

 

丸山さんとはあのマ〇ク以来の再会だ。

 

 

「丸山さんて結構頻繁にメッセージくれるんで、そんな久々な気はしないですけど」

 

「えー? 彩ちゃんそんなことしてたの? あ、佳君。後であたしとも連絡先交換してね!」

 

「えぇ後でなら」

 

「う〜…っ。だって林道君。愚痴とかよく聞いてくれるし…」

 

「愚痴って…。それ、どうなんですか…? あ、佳夏さん。お疲れ様です!」

 

「大和先輩もお疲れ様です。……それと…若宮(わかみや)さん。…でしたっけ」

 

 

俺は目の前にいる白髪おさげの少女に問いかける。優太の話では、たしかモデルでハーフの子だと聞いていたが。なるほど、確かに綺麗な顔をしている。身長もこの中では1番高い。おたえと同じくらいか?

 

 

「はい! 若宮イヴと申します。押忍!」

 

 

……おす?

 

 

「お、押忍………」

 

 

とりあえず俺は何も考えずに返した。

 

 

「…! 流石アヤさんの言う通りの大和男児な方です!」

 

「は、…大和男児? …丸山さんこの人に何言ったの?」

 

「え? えーっと。…優しくて頼れる寡黙な人…?」

 

「……誰そのカッコイイ人」

 

「だから林道君だって」

 

 

誰だよその林道君。俺じゃないでしょ。

 

 

というかそれが何故大和男児になるのやら…。? そもそも大和男児ってなんだ?

 

 

「イヴさんはパスパレのキーボード担当です」

 

「へぇ。確かに綺麗な指してますね」

 

「? 指を見て分かるものなのですか?」

 

 

若宮さんが不思議そうに聞いてくる。

 

 

「何となく分かりません? 楽器によってたこの付き方とか違うし」

 

「へー」

 

「林道君すごーい」

 

「別に凄かないですよ…」

 

 

むしろジロジロ見てすみませんって感じです…はい。

 

 

チラッと若宮さんを見てみると、何故か目をキラキラと輝かしていた。なんで?

 

 

「凄いです! その観察眼…まさしくブシです!」

 

「?? いや、男子高校生です…」

 

「ブシドーですね!」

 

 

はぇ? 武士道? そんな道を通った記憶は無いのだが。

 

 

「イヴさんは日本文化が大好きなようでして…」

 

 

大和先輩が小さく補足してくれる。

 

 

「何か知識が若干ズレてません?」

 

「確かにそんな気はしますけど、勉強中という事で…」

 

 

それで納得しろという話ですか。

 

 

「えっと…とりあえずよろしく。若宮さん」

 

「私も高校1年生なので、敬語はいりません!」

 

 

そうだったのか。てっきり全員高2かと。

 

 

「なら、若宮…な」

 

「イヴです!」

 

「…イヴ」

 

「はい!」

 

 

なんていい笑顔。

 

 

イヴは右手を差し出して握手を求めてきた。

 

 

「よろしくお願いします! ケーナさんっ」

 

「こちらこそ」

 

 

握手なんていつぶりだろうと、俺はイヴのちいさな手を握り返しながら思った。

……いやついこの前黒服さんとしたやんけ。全然久々じゃねぇな。

 

 

「コレぞ金打(きんちょう)ですね」

 

「全然違くね?」

 

 

俺たちは一体どんな堅い約束を交わしたのか。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

「ところで白鷺さんは?」

 

 

パスパレメンバー最後の1人がさっきから見えない。来ていなのだろうか。

 

 

「チサトさんは午前中はドラマの撮影で来れないそうです」

 

 

流石女優。忙しいんだな。

 

 

「丸山さんとイヴは2人の応援?」

 

「そう! それに羽丘なんて行事でもないと来ないしね」

 

「私もヒナさんとマヤさんの援軍として、微力ながら助太刀しに来ました!」

 

「そっか(…援軍?)」

 

 

この2人は花咲川の生徒だったっけか。もしかしたら香澄達とも知り合いかもな。

 

 

「あ。千聖ちゃんから『もうすぐ着くわ』って」

 

 

丸山さんがスマホを確認しながら報告する。

どうやらその撮影とやらも終わってコチラに向かっているらしい。

 

 

すると。

 

 

 

 

何故か俺のスマホがメッセージの受信音を鳴らした。

 

 

誰だ、こんな時に。と思いながらスマホを開く。

 

 

 

 

 

千聖『待ってなさい』

 

 

 

 

 

…は……え? 怖。

 

 

「あっ。千聖ちゃんからじゃん! 何これー」

 

「いや分っかんねっす。ていうか近い」

 

 

いつの間にか俺の後ろから顔を出して画面を確認する日菜先輩。近いよほんと。アイドルの自覚ある?

 

 

白鷺さんもなんでわざわざ俺にこんなメッセージを? そこはかとなく恐怖を感じる。

 

 

「え"。なんか怖い」

 

 

丸山さんも俺と同じ感想を漏らす。

 

 

「千聖ちゃんとも連絡先交換してたんだねー。よくやり取りしてるの?」

 

「たまに…って感じです。丸山さん程じゃありません」

 

「ふふん」

 

「むしろ丸山さんは控えてくださいよ」

 

「えぇっ!? なんで!」

 

「何か失敗したり、怒られたらすぐ連絡寄越すじゃないですか」

 

「何それ見てみたい!」

 

「こんな感じです」

 

 

俺は丸山さんとのトーク履歴を見せた。

 

 

 

 

 

彩『林道君!』

 

佳夏『なんすか』

 

彩『"バリバリのお忍び芸能人オーラが出るコーデ"ってどんな感じかな?』

 

佳夏『おやすみなさい』

 

彩『待って! 諦めないで』

 

佳夏『いや。そんなん俺に聞かないで下さいよ』

 

佳夏『白鷺さんに聞いてみたらどうです?』

 

彩『千聖ちゃんにはもちろん聞いたよ? そしたら』

 

彩『「大丈夫よ。今の彩ちゃんにはどうあっても無理だから」』

 

彩『って。酷くない?』

 

佳夏『じゃあその通りなんじゃないですかね』

 

彩『めんどくさがんないでよ!』

 

佳夏『無茶を言う…』

 

佳夏『ちょっと待ってて下さい』

 

彩『え? はーい』

 

佳夏『お待たせしました』

 

彩『どうしたの?』

 

佳夏『ちょっとオシャレ強者の知り合いに聞いてみました』

 

佳夏『"芸能人オーラの無い人がバリバリの芸能人オーラを出せるコーデ"ってやつを』

 

彩『なんかちょっと違う気がするけど…どうだった?』

 

佳夏『「ちょっとよく意味がわかんない☆」だそうですおやすみなさい』

 

彩『え!? ちょっと待って!』

 

彩『林道君?』

 

彩『林道くーん!』

 

彩『反応してよー…!』

 

 

 

 

 

「佳君。次」

 

「うっす」

 

 

 

 

 

彩『林道君! また千聖ちゃんが』

 

佳夏『今度はなんすか…』

 

佳夏『またお菓子の食べ過ぎで怒られたんですか?』

 

佳夏『それともレッスン着がダサいとか言われました?』

 

佳夏『それとも歌詞噛みすぎとかですか?』

 

彩『凄いよ林道君! 全部だよ!』

 

佳夏『もうどうしようもねぇ』

 

彩『千聖ちゃんは厳しすぎるの! 林道君もそう思わない?』

 

佳夏『俺からは何とも。でも丸山さんの為に言ってるんだし、白鷺さんなりの愛だと思えば』

 

彩『愛であんな笑ってない笑顔出せる千聖ちゃんが怖いよ』

 

佳夏『それ白鷺さんに絶対言わない方がいいですよ』

 

彩『分かった』

 

彩『でもこのレッスン着がダサいってのは聞き捨てならない!』

 

佳夏『はぁ』

 

彩『ちなみにコレね』

 

彩『(写真)』

 

佳夏『いやダサいよ』

 

佳夏『ダサいよ』

 

彩『なんで2回も言ったの?』

 

佳夏『いや、え? 何その柄。パジャマ?』

 

彩『千聖ちゃんと同じこと言ってる!』

 

彩『そんなにパジャマかな?』

 

佳夏『わりと』

 

彩『えー! 千聖ちゃんも林道君もわかって無さすぎ!』

 

佳夏『えー』

 

佳夏『というか丸山さん』

 

彩『何?』

 

佳夏『その写真の隅っこに写ってる食べかけのアイスって』

 

彩『あ』

 

佳夏『今、夜の11時前ですよ』

 

彩『林道君』

 

彩『千聖ちゃんにはだも』

 

彩『千聖ちゃんには黙っててね』

 

 

 

 

 

 

「ちなみにコレは一昨日のやつです」

 

「あー。確かにあの服はないよねー」

 

「えぇ!? 日菜ちゃんまで…!」

 

 

ガックリと項垂れる丸山さん。そんなにあの服が気に入ってたんですか。

 

 

「というか、会話の節々で千聖さんへの愚痴が凄いですね」

 

「アヤさん! また夜中に甘いもの食べて、美容と健康の大敵ですよ?」

 

「だ、だって〜…!」

 

 

うだうだと往生際悪くぶうたれる丸山さん。こんなの白鷺さんが見たらなんて言うか。

 

 

 

 

 

「なかなか面白い話をしているようね。彩ちゃん?」

 

 

 

 

 

終わった。

 

 

「………ち…………千聖、ちゃん…?」

 

「……来てたんですね」

 

 

俺は慎重に話しかける。

 

 

「えぇ。たった今ね」

 

 

笑顔で俺に応えた白鷺さん。その目は決して笑っていない。まず高校生が出せる雰囲気と目じゃない。

 

 

「彩ちゃん」

 

「はひぃっ!」

 

 

素っ頓狂な返事と共に姿勢を正し。

 

 

「お説教が……必要みたいね♪」

 

「(ガタガタガタガタガタガタガタガタ…)」

 

 

携帯のマナーモードみたく震える丸山さん。絶望に満ちた目はコチラを向いている。きっと助けを乞うているのだろう。

 

 

「あたしおねーちゃんのとこ行ってくるね!」

 

「ジ、ジブンも…」

 

「私も失礼つかまつります…!」

 

 

それを残酷にも切り捨てる他メンバー。なんて無情で非情。これこそ儚い、だな。

 

 

「佳夏」

 

「はいっ」

 

 

白鷺さんに背筋を伸ばして体を向ける。

 

 

「待ってて。彩ちゃんとちょっと()()してくるから」

 

「アイサー」

 

 

俺は引き摺られていく丸山さんに敬礼を送りながら。その場を去った。骨は拾いますよ…丸山さん。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

白鷺さんから逃げるように離脱した俺の元に。

 

 

佳夏君発見!

 

 

突如、流星が降りかか(突撃す)る。

 

 

「佳夏。お弁当食べよ!」

 

「おう、上原。今いくぁっ

 

「「「え」」」

 

「わ〜…」

 

「佳夏君! 応援しに来たよー!」

 

「……………香澄…」

 

 

急展開も急展開。

 

 

キラキラドキドキガールこと戸山香澄がやってきた。

 

 

痛てぇよホント。後ろからのタックルは悪質だ。マジで星になるかと思ったし、あまりの驚きで動悸が凄い。こんなキラキラドキドキ求めてない。

 

 

「一旦離れてくれ…」

 

「さっきの二人三脚凄かったね! こうドバーンッと先頭に出てた!」

 

「聞いてくれよい」

 

「次は何出るの? あ! 今日はね、皆も来てるんだよ!」

 

「ストップ。ストップだ香澄」

 

 

俺は香澄の角を鷲掴みしにて引き剥がす。……っおい。抵抗するな。「むーーっ!」じゃない。

 

 

数秒の拮抗の末、なんとか引き剥がす事に成功する。

 

 

「…はぁ。何しに来たんだ?」

 

「だから応援! あっちゃんがね? 羽丘で体育祭やるからーって」

 

「あっちゃん?」

 

「私の妹!」

 

 

お前妹いたのか。

 

 

「あっちゃんが来年羽丘に入学するから、体育祭見ておきたいって」

 

「なるほど」

 

「け、佳夏君…?」

 

「んぇ?」

 

 

羽沢達が声をかけて来たのでそちらに顔を向ける。……なんかめっちゃ警戒されてる雰囲気なんだが。美竹を抜いたAfterglow4人組はコチラを……というか香澄を見ながら四者四様の表情を作る。なんかちょっと面白いじゃん。

 

 

「あの子…誰? なんか佳夏と仲良さげじゃない!?」

 

私だってまだ抱きついたことないのに…

 

「つ、つぐ?」

 

「……あ〜…。あの子って、SPACE(スペース)で"きらきら星"歌ってた子じゃな〜い?」

 

「………あ! あの赤いギター持ってた奴か!」

 

「確かに…あの変な猫耳は…!」

 

 

なんて覚え方されてんだよお前。

 

 

確かにそんな話を有咲から聞いたな。めっちゃ怒ってたけど。

なんでもSPACEってライブハウスで、遅れてやってきたバンドの時間稼ぎのために有咲を引っ張ってステージに立ったとか何とか。行動力よ。

 

 

「…まぁとりあえず。ほれ、挨拶しときな」

 

「はぁーい。えーと…。花咲川女子学園1年の戸山香澄です!」

 

 

それを聞いた4人組は、おどおどと「よろしく…」と言って互いに自己紹介をする。

 

 

「…で」

 

「?」

 

 

上原がキッと睨みつけながら聞いてきた。

 

 

「あの子とはどういう関係!?」

 

「はぁ? …どうって」

 

 

俺は香澄に視線を向けながら考える。

 

 

別に特別な何かがあるようには思えないし、ちょっとギターを教える程度の仲だ。まぁ仲良くはさせてもらっているが……何ピースしてんだよ。可愛いな。

 

 

「強いて言うなら友達だ。な? 香澄」

 

「うん!」

 

「香澄…って。……名前呼び…??」

 

私だってまだ呼ばれたことないのに…

 

「つぐ…? ほんとどうした??」

 

「新キャラ登場〜…」

 

「佳夏君。この人達は?」

 

「同級生で…お前の先輩バンドだ」

 

「えっ!? バンド組んでるの?」

 

「あぁ。この4人にお前と同じギターボーカルの奴を加えた………てか美竹はどこだ?」

 

 

一緒にコッチに来たから遠くにはいないはずなんだが…。とキョロキョロと美竹を探していると。宇田川が奥の方を指さしている。アッチにいるのか?

 

 

見てみると。

 

 

「湊さん達が佳夏を引っ張り回すからAfterglow(うち)で一緒に練習できないじゃないですかっ!」

 

「佳夏はRoseliaのマネージャー。行動を共にするのは当然じゃない」

 

「まーまー2人とも? ちょっと落ち着きなってぇ。ほら友希那ぁ…」

 

 

まーだやってんのかい。

 

 

どんだけ言い合ってたんだよ。実は仲良いでしょおたくら。

 

 

「AfterglowとRoseliaのボーカルだ」

 

「あぁそう…だ…………………びっくりするからさ、おたえ。急に出てこないでくれ」

 

「やっほ」

 

「あ♪ おたえ〜!」

 

「香澄が一番乗りだったんだね」

 

「そう! 私の勝ちっ」

 

 

突如…いや、まるで初めから居たかのように現れて会話に混ざるおたえ。そういえば「皆も来てる」って香澄が言ってたな。まだ増えるのか。

 

 

というかなんだよ勝ちって。なんか勝負でもしてたのかよ。

 

 

「誰が先に佳夏を見つけられるかの勝負」

 

「私がいっちばーん!」

 

 

あぁ…そう。おめでとう。

 

 

俺は自身のカバンから飴を取り出して香澄にあげた。なんか犬にご褒美をあげている感覚だ。めっちゃ喜んでるし。

 

 

「私のは無いの?」

 

 

おたえにもやった。

 

 

「他にも来てるんだろ? どこいるんだ?」

 

 

「皆も」ってのは恐らく有咲達の事だろう。一緒に行動しておけばいいのに。まさか置いて来たのか?

 

 

……いた。

 

 

「はぁ……はぁ……か、香澄…てめぇ…!」

 

「香澄ちゃ……はぁ……急に、走らないで…よ…」

 

「ふぅ……香澄が先に見つけたかぁ」

 

 

屍のようになった有咲とりみ。それに付き添うようにやってきた沙綾。私服姿の蔵練メンバーが揃ったな。

 

 

「お前らも来てたんだな」

 

「うん。応援に来たよ」

 

「有咲遅いよー」

 

「そうだそうだー」

 

「おめーらが走るのが悪いんだろ! 私らがどれだけ探し回ったと思って…!」

 

「有咲ちゃん落ち着いて…!」

 

 

振り回されてるな有咲。ギャーギャーと香澄とおたえに苦言を申し立てている。苦労人は辛いな。

 

 

「悪いな探させて。俺ので良かったらお茶飲むか? 多分冷たいし」

 

「…え? あぁ、悪いな佳夏………」

 

 

疲れ切っている有咲はノータイムで俺の水筒に口をつける。そんなに水分を欲していたのか。マジでお疲れ様。

 

 

「………ぷはっ。あ"ー生き返るわ」

 

「お疲れだな」

 

「まったくだ。こいつらったら人の話を聞きやしないし……ん?」

 

「?」

 

 

有咲は水筒を片手に疑問符をつけたまま香澄達を見る。その香澄達は何故か目を丸くして俺たちを見ている。…いやなんかりみと沙綾は少し顔を赤くして…?

 

 

「ねぇ佳夏」

 

「ん?」

 

 

おたえが聞いてくる。

 

 

「その水筒ってもう飲んだ?」

 

「? そりゃ飲んだよ。俺のだし」

 

 

何を聞いて来るかと思えばそんな当たり前な…………ん?

 

 

……あ。

 

 

俺は有咲に顔を向けると。

 

 

「………っ!////」

 

 

それはもう真っ赤に茹で上がった顔があった。

 

 

「ちげーからっ!!」

 

「うわ声でか…」

 

「この暑さと疲労でちょっと思考が鈍ってただけだし!」

 

「あ、あぁ…はい」

 

「決して間接キスとかじゃなくてなぁ!!」

 

「わぁってるって。俺の水筒振り回さないで…」

 

「お前、もうコレ飲むな…//」

 

「……え? 俺に死ねと?」

 

「私に飲ませたお前が悪いっ! 変態っ!!」

 

 

言いがかりだ。いや確かに渡したのは俺だけど、圧倒的善意なんだが…。

悲報。俺の水源が無くなった。

 

 

「佳夏、お腹空いた」

 

「脈絡無さすぎだろ。話題変換下手かよ、おたえ」

 

 

唐突に空腹を訴えるミステリアスレディおたえ。

 

 

「昼飯は?」

 

「皆用意してきてるよ」

 

「もしかして…いや、もしかしなくてもパン〜?」

 

「モカ! んふふ、正解っ」

 

「やった〜♪」

 

「チョココロネもあるよ」

 

「沙綾ちゃん…!」

 

「佳夏君! あっちで食べよっ」

 

「ちょいまち。弁当持ってくる」

 

「有咲も行こ」

 

「なっ! 分かったから引っ張んなっておたえ!」

 

「あ! イヴちゃん! やっほ〜っ」

 

「カスミさん! 来ていたのですね!」

 

「美竹は……まだやってんのか。羽沢達も一緒にどうだ?」

 

「あ、うん! ご一緒させて貰おうかなっ」

 

「……なんか佳夏の友達って女子ばっかりな気が…」

 

「どうした? 上原」

 

「なんでもないよっ!」

 

「お? おう…」

 

「アタシはあこ呼んでこようかな」

 

「ついでに蘭も呼んできて〜」

 

「あいよー」

 

「喉乾いた…。有咲、水筒の返還を求む…」

 

「ふんっ」

 

「あーずるいっ! 私もお茶飲みたいっ」

 

「あ、香澄の次私ね」

 

「いやまず俺に飲ませろ。それ俺の。な?」

 

「佳夏君。私ので良ければ飲む…?」

 

「羽沢……お前は天使か? ……て、あれ?」

 

「どしたの? 佳夏」

 

「弁当が消えた」

 

「え?」

 

「どこに……」

 

「ん〜…まい〜」モッチャモッチャ

 

「…ミニハンバーグ美味しい」モッグモッグ

 

「青葉…? おたえ……?」

 

 

 

 

 

直上の太陽に照らされながら、個性的すぎるメンツと昼休憩。

 

 

波乱万丈に満ちた俺たちの体育祭は、まだまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、全部食ったの?」

 

「「美味しかった」」

 

「こんっの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう前中後編にしても良いくらいの長さですね。

登場キャラ数が過去最大で大変です…。





次回はもっと増えます。





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