嘘告されたけれど道化に徹した結果   作:タン塩レモンティー

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第2話

 翌日の俺ですか? はい。元気です!!

 ……小学生時代を思い出してこんなあいさつ言っちまうし、良い気分ではなかったが、いざ意を決して学校へと来てみたら、今日も綺麗な滝澤さんがいて、何となく見ていたらそれだけで心が浄化されました。

 見た目だけなら酒居さんもかなり可愛いけど。やっぱ滲み出るオーラが違うんだよなあ。

 そんなことを考えつつ、いつものように滝澤さんのことを目で追っていたら、滝澤さんが昨日のギャル三人衆に声を掛けられているのを目撃してしまった。

 嫌な予感がした。なにせ、彼女たちはいつも滝澤さんとは会話をしないのだ。

 もしかすると、俺のせいで滝澤さんにも嫌な思いをさせてしまうかもしれない。

 そう思うと、不安で居ても立っても居られなくなった俺は、何故か場所を変えようとし、人気のない所へと向かう4人の後をこっそりつけることにした。

 

 

 滝澤さんとギャルたちが辿り着いたのは、誰もいない校舎裏だった。それこそ、まるで告白スポットにうってつけの場所といえる。

 ますます嫌な予感がしてくる。まさか、次の嘘告のターゲットは、滝澤さんなんじゃ……。

 そう思ったが、すぐさま滝澤さんは女の子であったことを思い出す。流石に、女子が女子になんて特殊な、といったら失礼だが、珍しい告白を『噓』でやるなんて、考えられないか。

 でも、もし本当に告白が行われるとして、滝澤さんがそれをOKしてしまったら……。

 俺は木の陰に隠れて紛れられるように、道中でちぎり取ってきた木の枝を両手に、その場で待機する。

 これらのアイテムを取得する際に、バキバキっと大きめの音が出てしまい一瞬ヒヤッとしたのだが、彼女たちは気づく素振りも見せなかった。おそらく、酒居さんたちにとってはそれほどまでに今から滝澤さんに対して行うことが大層なことなのだろう。

 そう思うと、俺の方もじっとしていられない気持ちになる。

 

「滝澤さんさ~?最近、森脇によく話しかけられてるよなあ~?」

「え?えっと……その、はい……」

 

 どういうわけか、滝澤さんが恥ずかしがっている。今の話の流れで照れる要素がどこにあったのか謎だけど、こんな滝澤さんを見るのは初めてで、少しドキッとしてしまう。

 しかし、この話の切り出し方は正直予想外だった。

 さっきはああだのこうだの妄想が膨らんでしまった俺が、今更言っても説得力がないかもしれないけど、やっぱり一番にあるのは滝澤さんには傷ついてほしくないという気持ちだ。

 あんなにも真っすぐで、優しくて、綺麗な彼女の心が曇ってしまうところなんて、俺は見たくないのである。

 だから、俺が想像していた展開(嘘百合告白ww)とは異なっていったことで、内心少しほっとしていた。正直話が見えないが、俺と仲が良いことを妬むやつなんていないだろうから、どうせ滝澤さんから何か俺にとって弱みとなるようなエピソードでも聞き出そうという考えだろう。

 

「森脇にさ、告白してくんない?」

 

 だから、石井が言ったこのセリフを聞いた瞬間、背筋が凍り付いて、体の震えが止まらなくなった。

 

「え、その、あの……」

 

 石井さんに俺に対して告白するように言われた滝澤さんはといえば、すっかり、いつものクールなキャラは崩壊してしまっていた。

 

「あ、噓でいいから」

 

 そんな滝澤さんを見て、田中さんはそう付け加えたのだが、その言葉を聞いて、先ほどまで戸惑っていた滝澤さんは、今度は逆に固まってしまう。

 

「当たり前じゃん」

 

 しかしそれにはお構いなしで、石井さんは笑った。

 

「最近さ、森脇のやつ、調子こいてるじゃん?滝澤さんもしょっちゅう話しかけられてさ、迷惑してるでしょ?」

「ちゃんと私たちがついていてあげるからさ!ドッキリの報告とかは任せてくれちゃっていいから~。ね? お互いにとってメリットのある話だと思うんだよね~♪」

 

 酒居さんと石井さんと田中さんのギャル達三人にとって、俺に噓告ドッキリを仕掛けることでいったい何のメリットがあるのか。俺にはさっぱり理解できない。だが、その場のノリであいつらは押し切ろうとしていた。

 彼女たちの圧は凄い。男の俺でもうっかりビビってしまうレベルだ。

 しかし、滝澤さんは、そんなあいつらに向かってはっきりと、告げたのだった。

 

「いやです!森脇くんに、そんな、嘘で告白するなんて、絶対に嫌!」

 

 きっと滝澤さんは、俺が傷つかないようにするために、勇気を出してそう言ってくれたのだろう。そのことが、すごく嬉しかった。やっぱり滝澤さんだな、と思った。

 が、俺のガラスの心は少しだけ傷つく。もう、嘘でもいいから、滝澤さんに告白されてみたい人生だった。

 滝澤さんに、告白を明確に拒絶される。これはすなわち、俺に脈なしであることを意味しているのではないだろうか。これほど辛いことはない。

 そんなわけで嬉しくもあり、悲しくもある複雑な心境の俺だったが、彼女たちのやり取りの続きを見ていたら、そんな思考は頭の中からどこか遠くへ飛んでいってしまった。

 

「へえ~?断るって言うならさ」

「この写真、グループL○NEにばらまいてもいいわけ?」

「い、いやっ!や、やめてください!!」

 

 滝澤さんに対して、自分のスマホの画面を向ける田中さん。まさかの、滝澤さんに対する脅しの材料を彼女たちは持っていたのである。

 怒りが込み上げてきた。今すぐこの場から飛び出してしまいそうだった。だが、今ここで俺が登場しても、悲しいかな、何の力にもなれないし、事態がややこしくなるだけなので、黙って見ていることにする。

 

「じゃ、明日の放課後、空き教室で森脇に噓告するように。ラブレターはちゃんと自分の字で書いて、森脇の下駄箱に入れとけよー!」

 

 再びすっかり取り乱してしまった滝澤さんに、あいつらは言いたいことを一方的に言ってから立ち去った。

 あいつらの話をまとめると、どうやら次は、滝澤さんが俺に告白する様子を、空き教室の隅で隠し撮りする予定らしい。

 そして、滝澤さんの告白が終わったら、横から飛び出してきて「ドッキリ大成功~♪」とでもいうつもりなのだろう。

 同じ手にかかるかよ!という感じだが、告白の相手が好きな子となれば話は別だ。

 噓告白の計画について語っていたこの場に俺が隠れているなど、あいつらは微塵も思っていないだろうが、仮に俺がこの計画を知らなかったとしたら……

 俺が滝澤さんからラブレターを受け取ったら、例え騙されているかもしれないと思っても、わずかな希望にかけて、ついその誘いに乗ってしまうだろう。

 そして、そんな三人の姿が見えなくなった後、曇った表情を浮かべる滝澤さんが一人、その場に残されたのであった。

 酒居さんたち三人がその場を後にしてから、かれこれ5分以上が経過した。しかし、滝澤さんは暗い表情を浮かべたまま呆然と立ち尽くしており、ついにはその場にしゃがみ込んでしまった。

 滝澤さんはいつも一人でいることが多いが、あんなに落ち込んでいるところは見たことがない。きっと、田中さんが脅しで見せた写真が、よほどショックな、というか滝澤さんにとってはトラウマものの一枚だったのだろう。

 これ以上、彼女が苦しんでいる姿を見ていられなかった。




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