メリュジーヌは壊れた 作:聖晶石の謎の一部
その日、騎士の中の騎士であり、年中発情期の妖精騎士ランスロットはモルガンにお叱りを受けていた。
理由は多々あるが、その全てが「オーロラの為」というものに付属している。
「はぁぁぁ……どうしてお前はそうなのだ」
女王の間。
神代の魔女であり、北欧の魔術神から魔術の手解きを受けた自分ならば例え最高位の竜種であっても御しきれる筈……モルガンはそんな甘い考えが打ち砕かれたような気分で目の前の変態を見ていた。
「ハァ……ハァ……ハァ……あぁオーロラ!!!」
まだ血の滲む脇を押さえて、遠方の鏡からソールズベリーの領主オーロラを視姦する姿。これが仮にも自分が従える部下の中で一番なのか……うわーやだなぁ。と怒りを通り越してドン引きすらしていた。
「我が娘ですらこうはなるまい。ガウェインはあの癖こそ厄介だが、それをなきにすれば誰よりも優れた騎士である。だがランスロット……お前は何故、女王である私の忠言を無視してあれに構う?」
「うわぁ……やっぱりボクの肉を食べたから目に見えて"魔力の色"が変わってる!リスクはあったけどやってよかった………グヘヘ。これってある意味、子作りだよね?ボクとオーロラでボクから出来たオーロラを作るんだ。あぁヤバい……すっごい興奮してきた」
クチュクチュクチュクチュ。
それでも女王としての威厳を持って叱っても、この始末。最早馬の耳に念仏………いや、馬でも叱れば萎縮するだろうから、こいつはただの爬虫類である。
「仕方ないな」
これまで何度も呼び出して叱ってきたが、ランスロットが改善を見せた様子はなかった。
我慢強いモルガンもこれに時間をかけるだけ無駄だとため息をつく。
「お前が引き起こした様々な蛮行。今回は花を届ける為に超音速で走行し、田畑を焼け野にしたのだったか……本来なら謹慎処分で済ます所だがあれの近くにやるようでは逆に褒美を与えるようなものだ。―――よって妖精騎士ガウェイン」
「はっ」
瞬時に参上して膝をつく忠臣を見てやり、未だ鏡から離れようとしない変態を蔑むようにして言い放つ。
「期限はあえて与えん。貴殿にはこれよりランスロットと任の全てを交換し、風の氏族の長に遣えよ」
「―――――あ?」
グルリと首を回転させ、縦に伸びた瞳孔で此方を見るランスロット。
流石にやつの地雷を踏んだか……とモルガンは構えた。
「……成る程。流石はボクらの王。これが俗に言う……焦らされってやつだね。汎人類史から流れてきた書物で知ってるよ」
しかし何を勘違いしたのか、此方を尊敬するような眼差しをして、ガウェインの肩を叩いていた。
「……はぁ」
女王の苦労は尽きない。
・メリュジーヌ…ボクのオーロラに何かあったら……分かってるよね?と圧力をかける。
・ガウェイン…なんでこいつ不敬罪で処罰されないんだろうと思ってる。