僕のヒーローアカデミア~吸血鬼と為った者~   作:暁月鈴

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十四話になります。
今回は少し長くなりました。
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十四話~いざ、USJへ~

 あのマスコミの侵入の次の日の昼下がり。再びヒーロー基礎学の時間がやって来た。

 

「今日のヒーロー基礎学だが……急遽、俺とオールマイト、それに加えてもう1人の三人体制で行うことになった」

 

 開口一番に相澤先生はそう告げる。……にしても『急遽』ね。おそらくこの前のマスコミ騒動が影響しているのだろう。過去一度も侵入を許したことのない雄英の警備システムが、何者かによって隔壁が破壊されマスコミに侵入されてしまったあの騒動。幸いにも、怪我人とかは出なかったようだが。

 

 あの騒動の後、私はこっそりと突破されたゲートを見に行っていた。故障したわけでも無理矢理こじ開けたわけでもない。隔壁は無残に崩されて(ちり)のようになっており、細かい残骸が小さな山になっていた。明らかに法律を無視した個性の不正使用に加えて、ヒーローを挑発するかのような所業。

 

 この正体不明の者から生徒を守るためだとすれば、三人体制なのも納得できる話だ。

 

「はーい。何するんですか?」

 

 そんなことを考えていると、瀬呂くんが授業内容を訪ねていた。

 

「災害水難なんでもござれ。人命救助(レスキュー)訓練だ!」

 

 そんな彼の質問に答えつつ、相澤先生は『RESCUE』の文字が描かれたプラカードを掲げる。

 

 その言葉に反応してか、再びざわつき始めた教室を相澤先生が睨みをきかせることで静める。そして、戦闘服コスチュームの着用は各々の判断に任せることと移動用のバスの前に集合することが伝えられると、皆して各々の準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういうタイプだったか、くそう!!」

 

 飯田くんは、バスの席順でスムーズにいくようにと、クラスの皆を番号順で二列に並ばせた。しかし、バスの座席は、前半分が左右から向かい合う形の座席というタイプだった。結局座席にはそれぞれ好きなところに座ることになったため、二列に並んだ意味が無かった。

 

 自分の行動が無意味だったと落ち込む飯田くん。そこに芦戸さんから「イミなかったなぁ」と容赦のない言葉をかけられ、彼ははさらに落ち込む。

 

 そんな中、蛙吹さんがふと尋ねた。

 

「ねえ、緑谷ちゃん。私、思ったことは何でも言っちゃうの」 

 

「は、はいっ、蛙吹さん」 

 

 尋ねられた緑谷くんは少し顔を赤くしながら答える。

 

 そんな彼に、彼女は「梅雨ちゃんと呼んで」と微笑みながらお願いしつつ、話を続けた。

 

「あなたの"個性"……オールマイトに似てる」

 

 彼女がそう訪ねた瞬間……

 

「そそそそ、そうかな!?いや、でも僕はそのえー」

 

 と、慌てたのか、しどろもどろになってそう答える緑谷くん。にしても……

 

(分かりやすいくらいには動揺してるね。やっぱりアイツ、オールマイトと何かしらの関わりがあるのかな?)

 

 思い返すのはあの入学初日に行われた【個性把握テスト】。あの時からオールマイトは緑谷くんに肩入れしていた。それに、【戦闘訓練】の時もそうだ。あれだけのことをやったのにも関わらずオールマイトは訓練を中止にしなかった。少なくともオールマイトは緑谷くんに対して、何かしらの特別な感情を抱いてるのは、ほぼ確定だろう。

 

 そんなことを考えていると、

 

「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねぇぞ、似て非なるアレだぜ」

 

 二人の会話に切島くんが口を挟んできた。すると、緑谷くんは安心したのか『ホッ』と一息ついていた。そして、そのまま会話の流れが変化する。

 

「しかし増強型のシンプルな“個性”はいいな!派手で出来ることが多い!俺の“硬化”は対人じゃ強えけどいかんせん地味なんだよなー」

 

「僕は凄くかっこいいと思うよ、プロにも十分通用する“個性”だよ」

 

「プロなー。しかしやっぱヒーローも人気商売みてえなとこあるぜ?」

 

 そんな彼の一言がきっかけで、皆の話題が互いの"個性"のことになった。青山くんが自分の"個性"の強さと派手さをアピールするも、「お腹壊しちゃうのは良くないね」と芦戸さんに指摘されて撃沈したのを他所に、またも切島くんが話を切り出した。

 

「緑谷の個性も強力だけど、他に派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪、あとはやっぱりフランだよな!」

 

 爆豪くんは"強い"という言葉に反応するも、蛙吹さんの「キレてばっかで人気出なさそう」という一言にすぐに噛みつく。「人気出すわ!!」と言いつつ、キレれている当たり本末転倒である。そこに……

 

「この付き合いの浅さで、既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されてるって凄えよ。それにフランちゃんより人気出すのは無理じゃね?東方キャラの中でもトップに入るくらいには人気だぞ?」

 

「テメェのボキャブラリーは何だコラ、殺すぞ!」

 

 と、上鳴くんがやれやれと言った様子でそう告げる。すると、爆豪くんは身を乗り出し、般若の如く目を吊り上げた。そんな彼の態度に、緑谷くんは軽く震えていた。

 

「そろそろ着くぞ。いい加減にしとけよ……」

 

「「ハイ!!」」

 

 騒がしくなっていたバス内は、先頭に座る相澤先生の注意によってあっという間に静まる。そして、訓練を行うことになる施設が近づきつつあるのを目にしたクラスの皆は、各々が気を引き締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バスを降りて到着したのはドーム建築の大きな建物だった。相澤先生の引率の元に入口を通ると、中には様々なアトラクションのような施設があちらこちらに並んでいた。巨大なアーチのそばには、宇宙服を身につけたが立っていた。

 

「よく来てくれましたね、皆さん。お待ちしていましたよ」

 

 その人物が私達を出迎えると、緑谷くんと麗日さんが、声を上げる。

 

「スペースヒーロー『13号』だ!災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

 

「わーーー!私好きなの13号!」

 

 どうやら、あの宇宙服を着た人は『13号』と言うらしい。それにしても、アイツはヒーローに会うたびにそのヒーローの解説をするのか?

 

 そんなことを考えてると、13号がこの施設の名前を言う。

 

「水難事故、土砂災害、火災、暴風などなど……。あらゆる事故や災害を想定して、僕が作った演習場です。名付けて、ウソの災害や事故ルーム!略して……USJ!!!」

 

 そのいろいろと問題がありそうな名前に呆れていると、何やら相澤先生と13号が真剣な面持(おもも)ちでこそこそと話していた。

 

「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせるはずだが」

 

「先輩、それが……通勤時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで。仮眠室で休んでいます」

 

「不合理の極みだなオイ」

 

 そんな、普通なら聞き取れない音声で行われている会話を私はしっかりと聞き取っていた。それにしても、【制限】か……あの怪我と関係ありそうだな。

 

「えー始める前にお小言を一つ二つ……三つ……四つ……」

 

 どうやら、このまま授業を始めることにしたらしく、13号が声を上げる。それと同時に私は思考を止めて、先生の話を聞くことにする。

 

 先生の個性は『ブラックホール』あらゆるものを吸い込んでチリに出来てしまう反則的な能力である。その個性を使ってどんな災害からも人を救い上げることが出来るのが先生の持ち味と言える。

 

 麗日さんが頷くなかで、先生は「しかし」と言葉を繋げる。

 

「これは簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう個性がいるでしょう」

 

 まあ、それはそうだろう。私なんて、人間の心臓や脳を『キュッ』としちゃえば、それで終わりだ。

 

 これまでの授業で自身の個性に秘められた可能性と、人に向けることの危うさを学んでもらったと言う先生。

 

「この授業では心機一転!人命のために個性をどう活用するかを学んでいきましょう。人を傷つけるのではなく、救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな。以上!ご静聴ありがとうございました!」

 

 一通りの話を終えて胸に手を添えてお辞儀をする13号。すると、クラスの皆は拍手を送り、麗日さんと飯田君が歓声をあげる。その瞬間……

 

「────・・・・・・っ!!また!?」

 

 昨日も感じた悪寒が全身を駆け巡る。そして……

 

 USJの中央広場に設置された噴水の前に黒い歪みが生じた。その歪みが広がると、中から人間が現れた。

 

「一固まりになって動くな!!13号、生徒を守れ!!」

 

 その光景を前に、相澤先生は切羽詰まった様子で大声をだす。

 

 ただ皆は状況が良く読めていないようで、先生の言葉を受けても呆然と立っている者ばかり。そうこうしている内に、人はどんどん増えていく。

 

 

「何だありゃ?!また入試ん時みたいな、もう始まってるぞパターン?」

 

 未だに状況が飲み込めないらしく、切島くんが声を上げる。すると……

 

「動くな!あれは、(ヴィラン)だ!!」

 

 そんな切島くんの疑問に答えるかのように、相澤先生は声を上げる。その瞬間、ようやく事態を察したのか、クラスの皆が冷や汗を流した………


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