バトルスピリッツ ヤマト・ストーリーズ   作:置き物

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第1話【来たれ バトスピの聖地!龍星神ジーク・メテオヴルム 咆哮!】

バトルスピリッツ。

それはカードとコアが無限の可能性を産む、カードゲーム。

世界が異なればその可能性もまた異なる。

とある世界、『ニホン国』。

その国にはかつてバトスピ戦国期と呼ばれた苛烈な時代があった。全国のバトラーがあらゆる陣営に別れ、ニホン国内のバトスピの覇権を握ろうと戦っていた時代。

そんな中、ニホン国内のバトスピ界を大きく揺るがそうとする事件が起きた……。

「魔王」と呼ばれるバトラーが各地から強力なバトラーを集め、「第六天魔王軍」を結成。

この国のバトスピを支配すべく、『ニホン チャンピオンシップ』へと乗り込んでいった。

 

 

多くのバトラー達が「魔王軍」の前に敗れ去っていった。

───────ただ一人を除いて。

 

 

ニホンチャンピオンシップ 決勝。

魔王とそのバトラーのバトルは激しいものだった。

場を支配するスピリットはいずれは神にも届くであろう天魔王の刃。

魔王とそのスピリットから放たれるプレッシャーがバトルフィールドのみならず、この場の空気さえも支配する。

会場が静寂に静まる中、そのバトラーは遂に動く─。

 

「これが俺のキースピリットだァァァァァ!!!」

 

青年が叫び、呼び出すのは神々しき白き龍。その姿に観客のみならず、魔王すら驚く。

 

「行ってくれ!俺のスピリット!!」

「バ、バカな……この我がぁああああ!!」

 

【魔王】ライフ 3→0

 

白き龍が魔王を下し、バトルの勝敗は決まった。

勝者となった青年は会場に来たバトラーへ。バトルを中継で見ている全ての者へこう叫んだ。

 

「お前達!バトスピは好きか!カードは好きか!だったら……その好きを突き通して、お前達の(スピリッツ)を見せてみろ!」

 

後に「天照(てんしょう)」と呼ばれる伝説のバトラーは高らかに叫んだ。

 

この言葉に世界中のカードバトラーは感化された。そして……世界中で今まで以上の大バトスピブームを産むことになる。

 

 

それから時は経ち……ニホン国ヤマト市。世界でも有数のバトルスピリッツが盛んな場所。

ここには世界中から様々なバトラー達が集まる。

ある者は赤き竜を操り、流星の如く駆ける青年。ある者は誇り高き竜騎士を従える乙女。ある者は歌う少女と共に自身のステージを作り上げる。バトルスピリッツのカードがある限り、バトラー達もまた無限の可能性を秘めている。世はまさに大バトルスピリッツ時代!

これはヤマト市に住む一人の青年から始まるこの世界に生きるバトラー達の熱き物語である。

 

『バトルスピリッツ ヤマト・ストーリーズ』

 

 

「よし……そろそろ行くか!」

 

勢いよく玄関から飛び出してきた一人の男。炎のような形をした赤色の髪とオレンジのジャケットが特徴的な青年は飛び出してきた勢いのまま、ヤマト市内へと走り始める。

 

「おっちゃん、こんちは!」

「おお、ゴウちゃん!今日も元気だねェ!」

「ありがと!また店に行くから!」

 

彼の名前は紅蓮 ゴウ。このヤマト市に住むカードバトラーだ。彼が向かう先はこの先にあるジーク広場。彼が毎日のように通っているお気に入りの場所。そしてそこでは……。

 

「俺のターン!龍皇ジークフリードを召喚!コストはブレイドラから確保!」

「フラッシュ!ブリザードウォール!」

「ま、負けた~!そのカード強ェ~!!」

 

「おっ、やってるやってる!」

 

ゴウの目の前で行われているのはバトルスピリッツ。カードバトラー達が己のデッキに眠るスピリットやマジックを駆使し戦っていた。

そして、ここに来ているバトラーは例外なく腕に青色の機械を装着していた。この機械こそ世界中のバトルスピリッツの人気を更に高めた存在、Bパッドである。このBパッドは言うなれば高度な技術によって小型されたバトルマシン。Bパッドを展開する場所さえあれば、いつどこであっても迫力のあるバトルを楽しめるアイテム。

そのためこのヤマト市ではジーク広場のようなBパッドを使用して、バトスピをすることの出来る場所が数多く存在しているのである。

 

「よし、俺もやるぞ!」

 

ゴウはジャケットから彼の魂であるデッキを取り出す。そして、意気込んでバトスピの対戦相手を探そうとする。その時だった─。

 

 

「か、返してくださいよ!」

「なんだ!?」

 

声に気づいたゴウはその声が聞こえたジーク広場の中央へと向かってゆく。

 

「このデッキはたった今、このオレ……毒田サマの物だァ!」

 

毒田と名乗る小太りの男。黒い蛇がプリントされた毒々しい紫のパーカーを来た彼は対戦相手である眼鏡の少年のBパッドからデッキを引き抜き、その内容を確認する。

 

「ガハハハハ!!中々いいモン持ってんじゃねぇか!こりゃいい!」

 

彼にとって予想以上の収穫だったのだろうか。毒田は思わず高笑いを上げていた。

 

「オ、オイ。あれって……」

「紫と黒蛇のパーカー……チーム・ヴェノムのヤツだ……。最近ヤマト市で悪さをしてるっていうカラーギャング。まさかここにも現れるなんて……」

「しかも相手は観光客だぞ……。容赦ねぇのかよ……」

 

 

その光景を見た広場のバトラー達は一斉にざわめき出す。近頃ウワサになっているカラーギャング、チーム・ヴェノム。その一人がこの場所に現れて悪行をしている……。

毒田の他人のデッキを奪うというバトラーとして。そしてヤマト市に住む人間として観光客に対してモラルの欠けた行為。見過ごせない行為の数々だが、ここにいる者バトラー達は彼を咎めようとしなかった。『下手な事をすればチーム・ヴェノムに報復されるかもしれない。』そんな考えが頭に浮かんで誰も毒田の行動を止める事が出来なかったのである。()()()()()()()()()

 

 

「そこまでだ、悪党野郎!」

 

毒田の悪行に彼はいてもたってもいられず、ゴウは勢いよく毒田の前に姿を現す。

 

「なんだテメェ!?」

「お前……人のデッキになにしてんだ!」

「人のデッキ……?オイオイ、勘違いすんなよ~。これはたった今、オレ様のデッキになったんだぜ?」

「……!!」

「それによ、こんな弱いガキが持つくらいならオレ様が使ってやる方が有意義だと思わねェか~?ガハハハ!!」

 

 

デッキを奪い取った事を悪びれることなく自慢する毒田。その言葉にゴウは怒りを感じていた。自然と拳に力が入り、手が震える。沸き立つ怒りを彼は必死に抑えているのだろう。

 

 

「お前!デッキにはその人の色んな想いが込められているんだ。そんな想いの積もったデッキを奪っていいはずがない。しかもこのヤマト市を楽しみにしてくれている観光客からそれを奪うだなんて……」

 

 

 

「このヤマト市の誇りを!バトスピを!何より人の心を傷つけんじゃねェ!!!」

 

 

「……!!」

 

 

ゴウの一喝。おもわず手を挙げてしまいたくなるほどの相手だが、その怒りの衝動を言葉にして言い放つ。

 

 

「知ったこっちゃあねぇなァ。オレ様に盾突いたらどうなるかを……」

 

その言葉は当事者である毒田には全く響いていなかった。だが……彼の言葉はまるで燃える炎のように、周りに広まっていく。

 

「そ、そうだ……デッキを返してやれ!」「この最低ヤロー!」「お前なんかがこの広場に来るんじゃねー!!」

 

先程まで沈黙を貫いていた広場のカードバトラーは次々と声を上げていく。ゴウの言葉は無駄ではなく、周囲のカードバトラー達へと届き、彼らの心を目覚めさせたようだ。

 

(な、なんだ……!?さっきまでオレ様に口答えしてこなかった奴らが急に変わりやがった!?)

 

 

周囲のカードバトラー達の反応の変化に毒田は焦り始める。そんな中、ゴウは闘志を燃やして毒田へと近づいていく。

 

「そして毒田!俺はお前に()()()()()でバトルを申し込む!」

「……な、なにィ!?」

 

「お、おい……マジかよアイツ……」「ヤマト式目を使うのか!?」

 

先程と同じぐらいのざわめき。このざわめきの理由を毒田にデッキを奪われた眼鏡の少年はイマイチ理解できなかったが、自分の知らない何かが起こっていることだけは確かだった。

 

「お、おもしれェじゃねェか……。そのバトル受けてやるよ」

 

ヤマト式目という名前を聞いた毒田は若干の冷や汗を掻きながらも、ゴウの挑戦を受ける事を決める。

 

「俺が勝ったらお前が奪ったデッキを返してもらう!」

「なら、オレ様が勝てば……オマエのデッキを頂く!」

「……いいぜ。俺の魂のデッキを賭けて勝負だ、毒田!!」

 

言葉を交わした後、ゴウと毒田はジーク広場のバトルフィールドへと移動する。

 

「あ、あのっ。ヤマト式目って何ですか……?」

 

眼鏡の少年は近くにいた二人組のバトラーに話しかける。

 

「君は確か観光客だったな……。そうか、知らないのも無理はないか。ここヤマト市がバトスピの聖地。それ故にバトスピに関する独自のルールも存在する。その一つがヤマト式目さ」

「ヤマト式目ってのは、揉め事はバトルスピリッツの勝敗によって解決するというの市特有の条例。お互いに条件を提示し合って、双方の合意の上で行なわれるバトル。そして……敗者は勝者の提示した条件を受け入れなければならない」

 

その話を聞いた少年は先程のやり取りを思い出す。あれがお互いに提示した条件だったのだ。

 

「このバトルってもしかして……」

「お前の考える通り、実質的なアンティルールだ。しかもヤマト市公認って事になるな」

「もっとも……赤髪の彼は君のデッキを取り返す為にバトルする。自分のデッキを失うリスクを抱えてね」

 

(そんなリスクを抱えてまで……どうして……?)

 

 

自分のせいで見知らぬバトラーのデッキが失われるかもしれないという不安が少年の心を埋め尽くす……。だが、目の前の青年は違った。

 

 

「心配すんな!俺が必ずお前のデッキを取り戻してやるからな!」

「……!!」

 

バトルフィールドへと移動したゴウは少年の方へと向けて、高らかに宣言する。必ず、デッキを取り返すのだと─。

その言葉が少年の心を埋めつくしていた不安を消し去ってゆく。

少年は彼の言葉を強く信じ、固唾を飲んでこのバトルを見守る事にした。

 

 

「ヤマト式目、申請!」

 

 

 

≪条件、チェック。バトルIDチェック。─ヤマト式目、承認しました。『紅蓮 ゴウ』、『毒田 遊山(どくだ ゆうざん)』。両者バトルの準備をしてください≫

 

 

ゴウの声と共にヤマト式目のシステムが起動。数秒のチェックが行われ、Bパッドから承認完了の音声が鳴り響く。

 

「さぁ、始めようか……!!」

「この毒田様に勝とうだなんて百年早いことを思い知らせてやる!」

 

 

 

ゴウと毒田は互いに自身のBパッドを展開。そして、両者はバトルを始める為の合言葉を叫ぶ。

 

 

ゲートオープン!界放!

 

 

ゴウにとって少年のデッキを取り戻すためのバトルが始まった。先行の権利を得たのは毒田だ。

 

 

TURN1【毒田】

 

 

「先行はオレだ!オレはクリスタニードルを2体召喚!」

 

 

毒田は手札のカードを2枚同時にBパッドへと叩きつける。蛇にも竜にも似た紫のスピリット、クリスタニードル。小さな雄叫びを上げて毒田のフィールドに現れた。

 

 

「オレ様はターンエンドよ!」

 

【毒田】フィールド

クリスタニードル Lv2(2S)

クリスタニードル Lv2(2)

 

TURN2【ゴウ】

 

 

「俺のターン!俺はレイニードルを2体召喚!」

 

 

ゴウも負けじと2枚のカードをBパッドへと置いてゆく。赤のシンボルが砕けて、そこから現れるのは鮮やかな青色の鱗を持つ小さな竜。ゴウのフィールドに2体のレイニードルが出現した。

 

 

「オイオイ、オレ様の真似事かぁ?つか、パクリだろ!」

「いくぜ、アタックステップ!」

「オイ!無視すんな!」

 

 

毒田の言葉を他所にゴウはアタックステップを開始する。彼のフィールドにはやる気に満ち溢れたレイニードル達。ゴウはこのターンから強気に攻めて行くのだろう。

 

 

「2体のレイニードルでアタック!」

 

 

2体のレイニードルが互い顔を見合わせ、攻撃目標である毒田へと突き進んでゆく。

 

 

「いきなりフルアタックかよ……!両方、ライフで受けてやる!」

 

 

勢いよく放たれた二体の頭突きが毒田のライフを一つずつ砕いた。

 

 

【毒田】5→4→3

 

 

 

「ぐっ……!」

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

【ゴウ】フィールド

レイニードル(RV)Lv2(2S)疲労

レイニードル(RV)Lv2(2) 疲労

 

 

TURN3【毒田】

 

 

「オレ様はもう1体クリスタニードルを召喚!」

 

 

三体目となるクリスタニードルの召喚。バトスピにおいて同じ名前のカードは原則3枚までしか入れることができない。これで毒田のデッキに投入されている全てのクリスタニードルが出揃ったことになる。

 

 

「更にバーストをセットする!」

 

 

毒田が手札からカードを1枚、裏向きで左上へと置く。毒田が伏せたのはバーストと呼ばれるカード。条件を満たせば相手の特定の行動に対して発動できるいわば罠のようなカードである。

 

 

「アタックステップ!クリスタニードルでアタック!」

 

 

毒田の命令を受けたクリスタニードルはゴウへとその体を進ませてゆく。

 

 

「そのアタック、ライフで受ける!」

 

 

クリスタニードルがゴウに向かって突進。彼のライフを一つ破壊した。

 

 

【ゴウ】5→4

 

 

「オレ様はこれでターンエンドだ」

 

 

このターン3体のクリスタニードルでフルアタックを仕掛けてもトドメをさせず、コアを与えるだけだと考えた毒田。ここは2体のブロッカーを残し、ターンを終了する。

 

【毒田】フィールド

クリスタニードル Lv2(2S)疲労

クリスタニードル Lv2 (2)

クリスタニードル Lv2 (2)

バースト:有

 

 

TURN4【ゴウ】

 

「俺のターン!3体目のレイニードルを召喚!」

 

ゴウも3体目のレイニードルを召喚。ゴウもまたデッキに投入されているレイニードルを全て召喚したことになる。

 

「テメェ!またオレ様の真似かよ!」

 

 

ゴウと毒田。どちらも低コスト帯の似たようなスピリットを並べている。一見、ゴウは毒田の動きを真似してゲームを進めているようにも思える。

しかし毒田は気づいていない。レイニードルの能力がゴウのデッキとって必要不可欠な能力であることを……。

 

 

「いいや、レイニードルの効果はお前のスピリットには真似できないぜ!レイニードルはカード名にヴルムを含むスピリットを召喚する時、赤のシンボルを1つ増やす事ができる!」

「何だと!?」

「二つの竜、交わりし時……その流星が勝利を巻き起こす!掴むぜ、勝利!龍星神ジーク・メテオヴルム、召喚ッ!!」

 

 

空が割れ、赤とオレンジの光がぶつかり合い光り輝く。そして、光の中から姿を見せるのは二つの竜の名前を冠する紅き龍。今ここにゴウのキースピリット、龍星神ジーク・メテオヴルムがバトルフィールドに姿を現した。

 

 

「更にレイニードル達のコアを移動させ、ジークメテオ・ヴルムのLvを2へとアップ!そしてアタックステップ!まずはレイニードルでアタックだ!」

「そのアタックはライフで受ける!」

 

 

前のターン同様、レイニードルの頭突きが毒田のライフを破壊する。

 

 

【毒田】3→2

 

 

「続けて龍星神ジーク・メテオヴルムでアタック!アタック時、【激突】を発揮!」

 

 

【激突】。それは相手のスピリットにブロックを強制させる能力。この能力によって毒田はフィールドにいるクリスタニードルでブロックをせざるを得ない。

 

 

「クリスタニードルでブロックだ!」

 

 

赤とオレンジ。二つの炎を纏った竜に攻撃をクリスタニードルはその身を賭けて、止めにかかる。当然、ジーク・メテオヴルムの方がBPは上。ジーク・メテオヴルムはクリスタニードルのブロックをもろともせず、弾き飛ばす。反対にクリスタニードルはその衝撃に耐えられずに爆散した。

だが、スピリットを失ったはずの毒田はニヤリと笑っていた。それもそのはず。スピリットの破壊こそが彼の仕組んだ罠の発動条件なのだから……。

 

 

「かかったな!バースト発動!ナイトメアドレイン!」

「……!!」

「まずはバースト効果からだ!お前のジークメテオ・ヴルムからコアを2個トラッシュに置く!」

「何だって?」

 

 

突如として空から降り注ぐ紫の雨。その雨がジーク・メテオヴルムからコアを奪い、Lvをダウンさせる。

 

 

「更にコストを支払う事でフラッシュ効果!コスト4以下の相手スピリット全てのコアを1個ずつリザーブへ!消えな、レイニードルども!」

 

 

降り注ぐ紫の雨はますます広がっていく。雨はジーク・メテオヴルムのみならず、レイニードル達を襲い、コアを奪ってたちまち消滅させてしまった。

 

 

「ガハハハハ!オレ様のバーストを発動させちまうなんて【激突】がアダになったな!」

「……これぐらいで俺は止まらねぇ!ターンエンドだ!」

 

 

【ゴウ】フィールド

龍星神ジーク・メテオヴルム Lv1(S)疲労

 

「フン、強がりやがって!」

 

TURN5 【毒田】

 

 

「オレ様のターン……ガハハハハ!来ちまったぜ、オレ様の切り札!」

 

 

ドローしたカードを見るや否や彼の表情に笑みが浮かび上がる。毒田にとってこのドローは思わず高笑いしてしまうほどの神引き。なぜなら自分が優位な状態でキースピリットを引き当てることが出来たのだから……。

 

 

「紫纏いし凶暴な龍、来やがれ!水晶龍アメジスト・ドラゴン!」

 

 

毒田はBパッドに勢いよくカードを置き、自らのキースピリットを召喚する。その名の通り、紫水晶(アメジスト)紫水晶のような美しい紫色と鋭利な爪を持つ竜が雄叫びと共にバトルフィールドへと舞い降りた。

 

 

「そいつがお前のキースピリットか……!」

「余裕ぶっこいてられるのも今のうちだぜ!オレ様はアメジスト・ドラゴンの召喚時効果を発揮!手札から聖魔神をノーコストで召喚!」

 

 

アメジスト・ドラゴンの咆哮し、その鋭利な爪で空間を引き裂く。その中から現れるのは左半身が白く、右半身が紫色の特徴的な角を持つ聖魔神。ブレイヴと呼ばれるカード種でも特異的な存在である。

 

 

「そしてこの効果でブレイヴを召喚した事でオレはデッキから2枚ドロー!!そして聖魔神!フィールドのアメジスト・ドラゴンと合体しろォ!!」

 

 

スピリットはブレイヴと合体する事によってBPの上昇や新たな能力を得るなど更なるパワーアップを果たす。この場合も例外ではなく、聖魔神の右腕から紫色の光が与えられ、アメジスト・ドラゴンを更に強化する。

 

 

「アタックステップ!行け、合体(ブレイヴ)スピリット!」

 

 

聖魔神によってパワーアップを果たしたアメジスト・ドラゴン。毒田の指示の元、ゴウの元へ駆けだしてゆく。

 

 

「更に聖魔神の右合体時効果!トラッシュからオレのライフ以下のコストのスピリットをコストを支払わずに召喚する!蘇れ、クリスタニードル!」

 

 

聖魔神から不気味な光が地面に向かって放たれる。その場所から前のターンに破壊されたクリスタニードルが毒田のフィールドに蘇った。

 

 

「ライフで受ける!」

「ブレイヴスピリットはダブルシンボル!ライフを2つ砕くぜェ〜!」

 

アメジスト・ドラゴンがゴウの元へ近づき、鋭い爪で二つのライフを引き裂く。これでゴウとライフが並んだ。

 

【ゴウ】4→2

 

「ぐあっ……!!」

「ガハハハハ!!イキがっていたのもここまでだな!後はコイツらで終わりだぜ〜!」

 

毒田は勝利を確信し、 高笑いする。フィールドにはクリスタニードルが三体居て、ゴウにはブロック出来るスピリットはいない。彼の勝利はもはや確実と言える盤面。だが……彼の目論みはここで崩れ去ることになる。

 

 

「俺のライフが減ったこの瞬間、手札からペネトレイトフレイムを使用!」

「な、なにィ!?」

「燃やし尽くすぜ、俺の(スピリッツ)!うぉおおおお!!」

 

 

マジックの使用宣言と共にゴウの身体が炎に包まれ、燃え上がる。それは彼自身の熱い魂を反映したかのような炎だった。

 

 

「な、なんだァ!?てか、何でオマエ燃えてんだよ!」

「このマジックの効果でBP合計12000まで相手のスピリットを破壊できる!俺はクリスタニードルを全て破壊する!」

「何だと!?」

「吹き飛べェェェ!!」

 

 

ゴウの叫びと同時に放たれた熱い炎がクリスタニードル達を襲う。突如降りかかる炎にクリスタニードル達は逃げ惑うも避けることは出来ず、爆発していった。

 

 

「オ、オレ様のスピリット達が……全滅だと……!?」

「さっきのお返しだ!さぁ!ターンを続けるか?」

「ク、クソ……。ターンエンドだ……」

 

 

【毒田】フィールド

水晶龍アメジスト・ドラゴン+聖魔神 Lv2(3S)疲労

 

 

思わぬ所から飛び出してきたゴウのマジック。その効果によってアタッカー達を失った毒田はターンを終了せざる得なかった。ターン開始と打って変わって彼の表情には焦りが現れ始めている。

 

 

TURN6【ゴウ】

 

「俺のターン!お前のスピリットが居なくなったこの時を待っていたぜ!龍星神ジーク・メテオヴルムをLv3にアップ!」

 

コアの力によって最高レベルへと到達したジーク・メテオヴルムは雄々しく咆哮する。

 

 

「ぐぬぬ……!!」

 

(こ、コイツ……!オレ様の場ががら空きになる事を見越して動いてたってのか……!?)

 

 

「アタックステップ!受けてもらうぜ、俺の熱い一撃!ジーク・メテオヴルムでアタックだ!!」

 

 

咆哮と共に空へと飛びあがり、毒田の元へ急降下するジーク・メテオヴルム。その姿はまるで流星の如く。赤い炎を纏った輝く竜は毒田へと突進してゆく。

当然、毒田にはブロッカーとなるスピリットはなく、このアタックをライフで受けるしかない。

 

 

「ジーク・メテオヴルムはダブルシンボル!ライフを二つ破壊するぜ!」

「ク、クソォ!!このオレ様がァ!!」

 

【毒田】ライフ2→0

 

 

毒田のライフが砕かれ、特徴的な機械音と共に勝敗が決した。勝者はもちろんゴウだ。

 

 

「お前が盗ったデッキ、アイツに返してもらうぜ」

「……チィ」

 

仮にもこのヤマト市に住んでいる毒田。ヤマト式目によって定められた規則を破れば重たい罰が待っている事を知っているためか、奪ったデッキを渋々眼鏡の少年の元へと返しに行く。そして次に毒田がとった行動は……。

 

 

「ク、クソ~!!紅蓮 ゴウとか言ったな!覚えていやがれ!」

 

 

その場から慌てて逃走。毒田は広場から出ていく形となった。

何はともあれ、この場所に再び平和が戻ってきた事でバトラー達は各々バトスピを再開し始める。

 

 

「あ、あのっ!」

「おお、お前はさっきの!」

ゴウに声を掛ける1人の少年、それは先程毒田にデッキ奪われた眼鏡の少年だった。

「紅蓮 ゴウさん、ありがとうございました!あれはボクにとって大切なデッキなんです。それを取り返してもらって、なんてお礼を言えばいいのやら……!」

「ゴウでいいぜ。その方が堅苦しくないだろ?それに俺は困ってる奴を見過ごせないんだ。助けるのは当然の事だって」

「じゃあゴウさんって呼びますね」

「……まっ、それでいっか」

「そうだ、ゴウさん。少し広場の外で話したい事があるんですけど、大丈夫ですか?

「い、いいけど……」

 

 

突然の申し出にゴウは少々困りつつも、少年の言葉どおり、ジーク広場の外へと出ることにした。

 

「申し遅れました。ボクはこういうものなんです」

 

少年は胸ポケットから一つの名刺を取り出し、ゴウに手渡す。その名刺に書かれていた文字をゴウは読み上げてゆく。

 

「キクチジャーナル所属記者 新田聞人(にったもんと)……。キクチジャーナルってあの!?」

 

キクチジャーナル。世界的に有名なパトスピ情報誌を出版している会社である。目の前の少年がこの会社の記者である事にゴウは驚きを隠せないでいた。

 

 

「お前、凄い奴だったんだな……」

「アハハ……まだ見習いですけどね」

「いや、見習いでもスゲーよ。ん?記者って事は……」

「はい。ボクはこのヤマト市を取材しに来たんです。あの伝説のカードバトラー『天照』が生まれた場所……ここを取材できるだなんて、すごくワクワクしています!」

 

高まる期待 その様子を見たゴウは聞人にある提案をすることにした。

 

「ならさ……このヤマト市を案内させてくれよ!」

「い、いいんですか!?」

「もちろん!俺、聞人にこの街の良いトコ色々知って欲しいんだ!それに『天照』に縁のある所も知ってるしな!」

「ええっ!?あの『天照』の!?それはどこで……」

 

聞人がその言葉を言い終える前に腹の音が鳴っていた。

 

「ア、アハハハ……色々落ち着いたらお腹すいちゃいました……」

「なら、まずは腹ごしらえだな!美味い飯屋を知ってるんだが、今から食べにいかないか?」

「は、はいっ!是非行かせて下さい!行きましょう!」

 

聞人はゴウに連れられ、ヤマト市を案内される。

この出会いが、聞人の運命を大きく変えることをまだ知らない─。

 

 

 

日も暮れ始めた夕方。逃げ出した毒田はジーク広場から離れた廃工場へと来ていた。この廃工場はとっくの昔に使われておらず、近づくものもいない。そのため毒田の所属するチーム・ヴェノムの恰好のアジトとなっている。毒田は入口から下へと通じる階段を降りて、扉を開ける。

 

「あ、アニキィ……。オレ、やられちまった……。仇を取ってくれよォ……!」

「……」

 

毒田の視線の先。彼がアニキと呼ぶ人物……。

その鋭い視線が闇の中で光る。

ゴウとチーム・ヴェノムの因縁が始まろうとしていた─。




お読み頂きありがとうございます。筆者の置き物です。
この度、連載開始致しました『バトルスピリッツ ヤマト・ストーリーズ』いかがでしたでしょうか。
作品構想からしばらく時間がかかっての投稿になりましたが、自分でも満足のいく1話になったと思います。この作品では自分が色々書きたいものを書いていこうと考えていますので、お付き合い頂ければ何よりです。
また筆者のTwitterアカウント(https://twitter.com/okimono000?s=21)ではヤマト・ストーリーズを初めとした創作話についても呟いておりますので、興味ありましたらフォローよろしくお願いします。
それでは次回の更新もお楽しみに!
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