「よぉ、準備はどうだ?ミカ」
「オルガ」
昼過ぎ。ステージ裏で待機するミカとファルコに言葉をかけてやろうと思った。もう大体の用意はできているようで、ミカとファルコが着ているのはスーツをベースにした衣装。フォーマルの中にもフリルが随所に施されており、まさにこの二人の組み合わせをそのまま表したようなデザインだ。薄い紺色のパンツスタイルがミカによく似あう。
「トレーナーさん!色々手伝ってくれてありがとうございますっ!」
「なぁに、大したことはしてねぇさ…ステージに立つのはお前たちだからな」
「見ていてくださいね!最高のステージにしてみせます!ねっ、ミカヅキちゃん!」
「うん」
*
特設の野外ステージには開演時間が迫るにつれ続々と人が集まってきた。ファルコの応援うちわやグッズを持参しているコアなファン、チラシを見て集まってきた学園のウマ娘、熱気につられた野次馬…一部ではミカの応援うちわを持っている強者までいる。ミカのファンか…
鉄華団のメンバーも駆けつけている。
「キラキラ、見られるよねっ!」
「ミカちゃんのステージ、たのしみ!」
「ミカヅキのステージは私もお気に入りだから♪」
「…そろそろね」
十四時。
開演の合図とともにステージ中央にスマートファルコンが駆けだしてきた。ファンが声援を送り熱気が徐々に高まってくる。
「みんなーっ!今日はあつまってくれてありがとーっ!トキメキ☆ウマドル、スマートファルコンですっ!ファル子って呼んでねーっ!」
『ファルコーーッ!』
「ありがとーっ!でもでも、今日はファル子ひとりじゃないの!デュエットで送る今回のライブのパートナーはっ…ミカヅキオーガスちゃん!!」
そう言うファルコの裏からミカがいつもの調子で歩いてくる。そのままファルコに促されてステージ中央に立った。
「あー…ミカヅキオーガスです」
『ミカヅキーッ!』
「え?あうん、ミカヅキ…です」
「今日はミカヅキちゃんとファル子のスペシャルデュエット、名付けてファミコン!!」
ファミコン…?
「じゃあいくよーっ!一曲目はっ!」
「GIRLS LEGEND U、です」
そのステージは想像以上だった。スマートファルコンの元気な歌声に対しミカの落ち着いた声が見事に相乗効果を成し、一人の歌声の四倍、五倍…それ以上の熱気を起こした。
もっと驚くべきはミカのダンス!あいつはこれまでのウイニングライブで特にしっかりしたダンスは踊らず来たのだが、練習の成果だろうか、ファルコのそれと遜色ないレベルの完成度に到達していた。
もちろんトークタイムもあったのだが。
「ミカヅキちゃんは最近デビューしたけど、適正はどうなの?」
「てきせい?えー…あー…どうなの?オルガ」
なぜか俺にマイクが回ってきた。
「あー…ミカのトレーナーのオルガ・イツカだぞぉ…ミカの適正は短距離とマイルってとこだ…え?バ場?そういやミカは芝しか走って…どうするミカ」
「なんでもいいよ」
「なんでもいいらしいぞぉ…」
会場が笑いにあふれた。スベんなくてよかった…
「じゃあじゃあミカヅキちゃん、今度ファル子とだーと走らない?」
「だーと?…いいけど」
「決まりっ!私たちファミコンはダートユニットになりました♪」
ダートのレースか…確かに考えたことは無かった。ウララは最初に適性を聞いていたからダートを走らせたがミカはまだ…もしかしたら、あるいは。
「じゃあ惜しいですが最後の曲になっちゃいましたっ!みんなで盛り上がりましょー!」
「RAGE OF DUST、です」
*
ステージは大成功に終わった。最後の曲から三回アンコールを消費したところでステージ裏にエアグルーヴの姿が見えたのでおそらくそれを機に終わったのだろう。
「ミカ、おつかれさん」
「ミカちゃん!キラキラだったよ!」「うんっ!」「良きステージでした」「良かったわ」
鉄華団の皆と公演後のミカとファルコに会いに行った。
「ありがとうみんな」
「みなさんのおかげですっ!」
「ミカ、急かもしれんがすぐにレースだぞ…京王杯」
「任せて。ファルコが協力してくれたから」
「ファルコが?」
「はいっ!すぐにレースと聞いて、レッスンはレースのための練習も複合したものにしておきました♪」
それは驚きだ。ミカの身体がレース的に仕上がってきたのはそのためだったのか!…頭が上がらねぇな、トレーナーとして。
「レースでも輝いてこそのウマドルですからっ!」
「うん、ありがとうファルコ…おれ、勝つよ」
「ありがとうな、ミカのためによ」
GII、京王杯ジュニアステークス。サクラバクシンオーとの対決が迫る…!