「ここが君に与えられた小屋だ、オルガ団長」
「なんか…」
翌日、マクギリスに連れられて俺が来たのはチームに与えられた部屋の前…なのだが。
「ボロくね?」
「ああ」
「ああ、じゃなくね」
目の前にあるのは明らかに他のチームの施設とは一線を画す程のボロさ、小ささ…
「仕方ないさ、君のチームのメンバーはまだゼロだろう」
「確かにな」
ミカの加入は決定しているが、メンバーを集めないといけないことには変わりない。
「では私はこれで」
「おお」
マクギリスも自身のチームの元へ向かうようだ。すぐ右に曲がって入ったのは彼のチームの小屋…
「ボロくね?」
チームアグニカ、大丈夫だろうか…
*
「チーム鉄華団〜!よろしく頼んま〜す!」
「まーす」
俺とミカはとりあえず名前を鉄華団にしてチームメンバーを集めるために校門前に立つ。
「チーム鉄華団〜!よろしく頼んま〜す!」
「てかオルガ、鉄華団って安直すぎない?」
「うるせえ」
こんな調子じゃ誰も来ねえだろうな、全く…
「新しいチーム!?面白そ〜!!」
来た。
「私ね、ちょうど入るチームとトレーナー探してたんだ!」
彼女の名前はハルウララというらしい。別に断る理由もないので加入ということにした。一日目にして一人獲得!この調子ならメンバーなどすぐにそろうはずだろう…
甘かった。
「チーム鉄華団~!、よろしく頼んま~す!」
「まーす」
「楽しいよぉ~!」
「オルガ、もう三日はこれなんだけど」
「うるせえ」
想像以上に人が…じゃなかった、ウマ娘が入らん。よく考えれば実績も何もない知らないチームにひょこひょこはいる方がおかしい。急に不安になってウララを見たがニコニコして呼びかけを続けていた。何故…
「オルガ、レースに出るにはチームに五人いるんだって」
「マジ?」
あと三人。チームを結成できない不安より今いるミカとウララをレースに出せない申し訳なさが勝ってしまう。
「簡単な話さ。スカウトすればいい」
「スカウト?」
翌日の昼。食堂でばったり会ったマクギリスに相談するとあっさり返答が。
「正ピ来」
「略してもらっては困るな。ちゃんと『正直ピンと来ませんねぇ』って言ってほしいものだが」
マクギリスは自身のパフェを片付けると、コーヒーに口をつけながら続ける。
「未デビューのウマ娘がトラックで走っているだろう?彼女たちはまだ自分自身がデビューできる実力を持っていないと考えている。しかし往々にして十分な実力を持っていてもデビューしていない者も存在する。これは非常に好ましくないことだ」
マクギリスはスプーンでオムライスの皿を叩く俺をしっかり見据え言う。
「示すんだ。彼女たちの走りを、力を、世界に。君が前世でそうしたように」
「俺が、示す…」
確かに『前』で無名の鉄華団を率い世に名を響かせたのは俺と家族たちだ。ここにはまたミカがいる。あとは探すだけということか。こちらが待つのではなく、俺自身が探す…この世界での鉄華団を。
「では、頑張ってくれ」
マクギリスはトレーを持ち席を立つ。俺にはその背中は見えなかった。頭は反響する言葉と決意で埋められていたからだ。
俺は残っていたオムライスをかっ込むと、午後からのトレーニングを見るため食堂を勢いよく後にした。