「オルガ」
「ん?どうしたミカ」
新年度がはじまり数日、今日も今日とて練習に励むミカが休憩時間に近づいてきた。
「”でーと”って、なに?」
「は?」
ミカのその言葉を一瞬考えたがやっぱりどう考えてもデートと聞こえたことに間違いない。ミカが、デート…いや前世から女関係には事欠かない人間ではあったが…
「デートか、デートって言うのはそのな、男女が…」
待てよ。
「お前今女じゃん」
「そうだよ」
「え?あーそういう…」
別にそういうアレではなかった。
「…この時期でデートって言ったらドロワのことでしょう」
アヤベの話を詳しく聞く。この時期に毎年行われる『リーニュ・ドロワット』という名のダンスパーティーがあるそうで、そのペアダンスの相手のことを『デート』と呼ぶそうで…
「なるほどな…ミカがそのダンスパーリーでそいつと組むわけだ」
「いや、おれにデートの話してきたのは一人じゃなくて」
「えぇ…」
「モテてるじゃない」
珍しく茶化すようなことを言うアヤベにも、気になったから聞いてみた。
「アヤベはどうなんだよ、ドロワ」
「…そんなのに出てる暇ないわ」
曰くレースや練習が原因で出ないウマ娘も一定いるそうで。
「なるほどなぁ…」
*
「ということで鉄華団はこれからドロワ強化月間に移ろうと思う」
「なんでこうなるのよ…」
練習を早めに切り上げてチーム小屋に集まったメンバーたちの前で俺はそう宣言した。
「はいはーい!マヤも出たーい!」
「マヤノ、デートはいんのか?」
「まだいないけど…大人っぽ~いダンスがしたいな…あっ!」
「…何よ」
マヤノの視線はその先のウマ娘…アドマイヤベガに向けられていた。
「な、アヤベ」
「…」
こめかみに手をやり首を振り、少し間をおいて…
「…わかったわよ。よろしく、マヤノ」
アヤベとマヤノのペアが決まったところで、この鉄華団は残り三人となったわけだ。
「ねぇ団長、どうしてドロワに力を入れるの?」
ファインが首をかしげながら興味深そうに俺に聞く。
「…そうだな、これまで俺たちはレースのことで頭がいっぱいだったろ?なんというか、学園側が用意してくれんならこういうのには乗ってみるべきだと思ったんだ…区切りにもなるしな」
「新年度を迎えた今、俺の耳にも志半ばで倒れたウマ娘の話が入ってくる。俺たちは、お前らはここまで来れた。その記念というかご褒美というか…すまねぇな口下手で」
「わかるよ…うん、そうだね♪精一杯楽しませてもらおうかしら…じゃあ私は!」
「?」
「ウララちゃん、どうかな!」
「えっ!?ファインちゃんとわたしが!?やったー!おどるおどる!」
デートは絆あってこそ。同じチームメンバーで組むというのも確かにいい案なのかもしれねぇな。
「そっか…じゃあおれも、そういうの適当に選んじゃダメなんだ」
「ミカ」
ミカは何かを決めたような表情に変わって、握った右手を胸に当てた。
「おれ探してみるよ…今までこっちで出会ったみんなから、おれのデートを」
*
「ドロワのダンスは他とは違うわ、あなたならすぐ覚えられるでしょうけど、覚悟しなさいよ」
「アイ・コピー!アヤベちゃんと大人のダンス、踊ってみせるよ!」
「あはは!ゆっくりしたダンスも楽しーね!」
「ウララちゃんと踊ると、なんだかこっちまでどんどん楽しくなってきちゃうな」
こうしてドロワに向けた特別レッスンが開始された。ミカはここにはいない…あいつのデートを探すためにな。
「うまくやれればいいがな、ミカ…」
*
「ねぇミカヅキちゃん、どうかな」
「ふーん、これで踊るんだね」
「そう、頑張ろう!ファル子たちでドロワを変えるの!」