鉄血のウマ娘!   作:すろー

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#5 あと二人!

「いい走りじゃねぇか、ファイン」

 帰ってきたファインモーションに俺はそう声をかけた、が、その声が果たして彼女の耳に届いているのかは定かではなかった。それほどまでにファインの両目は爛々と輝き、どこかはるか遠くを見るようだった。後からミカとウララも追いつく。

「追いつけなかった…」

「は、速いね~!次は負けないぞぉ~!」

 ウララの言葉にファインの耳がぴくん、と反応する。

「つぎ…次?」

「ファインちゃんと走るの、すっごいたのしかったの!だからね、また走るんだ!」

「私に、次…」

 ファインの表情が落ち着く。目のきらめきはおさまらず、だがこんどはまっすぐ俺を、『トレーナーのオルガ・イツカ』を見ていた。

「トレーナー、私、走りたい…!この学園で、みんなと、もっと!だから、だから…!」

 SP隊長を見る。表情は柔らかかった。

 

「これからも私の警護で、ううん、トレーナーでいてくださる…?」

 

そう来なきゃな。

 

「引き続きのご利用ありがとうございます。俺たち鉄華団は必ずあなたの走りを最後まで見届けてみせましょう…やるぞ!」

 

 ファインは上品に、しかしすごくうれしそうに微笑んだ。

 

「なァに、心配いらねぇさ。俺たちは前にもお前みたいなお嬢様を守り通したことがある」

「私みたいな…?」

「ああ。お前に似て世間知らずで…お前に似てそれを知ろうと必死だった。なァミカ?」

「うん…ファイン、あんたはおれが、おれとオルガが連れてってあげるよ」

 

「決まりだな」

 マクギリスがそう呟き、背を向けた。

「理事長にはともに掛け合ってやろう、オルガ団長。君たちの活躍を期待するいちトレーナーとしての、たむけだ」

「助かる…頼むぜ」

 

 理事長は快諾。その後にファインの父の説得があったが、ファインの信念と彼女の走りに魅せられ、父もGOサインを出した。

 

 ファインモーションが、チームに加わった。

 

 

「オルガ、あと二人だよ」

「ん゛ん゛!!??」

 昼、食堂。ピラフを食っていた俺は向かいで野菜炒め定食を箸でつつく(この野郎まだ動物の肉に慣れないのか肉だけを器用に避けて俺の皿に移しやがる)ミカに指摘され、むせた。確かに。完全に終わった気になってたが三人目が入っただけ…大丈夫かこれ…尺とか。

「ファインは三年で帰っちゃうんでしょ?早く見つけないとレースにでれないよ」

 いやいやさすがに三年経つことは…あるかも。

「おお…今日からまたスカウト頑張るからよ…お前もちっとは手伝えよな」

「オルガが言うならそうするけど」

 いや、こいつに任せたら麻袋とかに二人くらい詰めて連れてきそうで怖い。実際そんな強行勧誘するチームがあったそうだ。そんなんでチーム入りする奴の顔が見てみたいってもんだ。

「くしゅんっ…!」

 斜め前の席で大盛ごはんを前にしているウマ娘がくしゃみをした。

 

 そういやファインは俺が声をかけたわけでもないし最終的にはマクギリスのセッティングだ。いやースカウトって難しい。前世の鉄華団もみんなホイホイ入ってきてくれたしなー。

 そんなことを考えながらまた練習場前の階段に座り込む。春の陽気が次第に眠りを誘い、俺は少し昼寝しようと横になった…

 

「…ガ…ルガ…オルガ!」

「ッ!…おお、ミカ」

「おおじゃないよ、こんなとこで寝たら風邪ひくよオルガ」

 気が付けばもう夜!相当寝てしまったらしい…トラックには当然もう走るウマ娘の姿は見えなかった…一人を除いては。

「ミカ、あれは?」

「わかんない…さっきからずっと走ってるよ」

 その鹿毛のウマ娘は肩で大きく息をしながらトラックを走っている。見る限り、とても…

「速いな」

「うん」

 

 声をかけることにした。

「よぉ、遅くまでご苦労さん」

「…何か用?」

 立ち止まるのは惜しいといった感じでこちらに冷たくぶっきらぼうに返答してきたそのウマ娘は、俺を恰好からトレーナーと認めると(こちらでは常にジャージを着ることにしている、いつものスーツじゃ目立つからな…)背を向けながら一言、

「悪いけど、行くから…」

「あっオイ待ちやがれ!」

 駆けだそうとした彼女を引き留める。

「…用があるなら早く言って」

「あ、ああ…あんたまだトレーナーがいないんだよな?」

「そうだけど」

「アンタのトレーナーにしてくれ、俺を」

 

 彼女は驚くより怪訝な目をしてこちらを見、言う…

「なんで私?選抜レースを見たとかじゃなさそうなんだけど」

「カンだ」

 自分でもびっくりしているが、確かに俺はコイツに『何か』を感じた…それがトレーナーとしての直観ならそれに従うまでだ。俺のカンは冴えるんだ…戦闘なら。

「飽きれた…でも…」

 そう言うと彼女は胸に手を当て黙り込んだ。

「…オイ?」

 

「いいわ」

「…はい?」

「だから、頼むと言っているの…あなたが私のトレーナーになることを」

「…おぉ!」

 急に肯定されてびっくりしたしよくわからんがメンバーゲットってことだ。ようし…

「でも」

 でも?

「私は…独りでやるから、余計な気は回さないで」

「な、何だそりゃ…いいやでも、とにかく歓迎するぜ!鉄華団のオルガ・イツカだ!」

「私はアドマイヤベガ。…そろそろ行っていい?書類とかはまた取りに行くわ…じゃあ」

 

 走り去って行ってしまった。どうやら一難去ってまた一難、というか…

「アドマイヤベガ、か…これであと一人だな、ミカ!」

「うん、でも…あいつの走り、なんだか変だ」

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