ゲリラの溢れる異世界へ、日本国召喚。   作:ペジテ市民A

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この星って公転周期が6時間長いらしいので、閏年は2年に一度何ですかね。


衝突

≪中央暦1639年2月28日≫

<石垣島沖>

 

 武装商船ウォーターコール号は石垣島に向け低速で航行していた。

 

 普段なら不審船の発見・追跡を行うはずの巡視船は、改造が済んだものは行方不明となった民間船の捜索に駆り出され、未改造のものは出港出来ていなかった。

 

 転移による混乱が重なった事で、奇跡的に発見されなかったのである。

 

 石垣島港まで5キロと言うところでやっと発見され、ヘリによる追跡と呼びかけが行われた。

 一時行方不明となった民間船には、潮に流された後自力で帰港する船もあり、この船もその類だと思われたからだ。

 

 武装した不審船がいると言う情報も知らされていたが、外部から武装が見られなかった為、日本の船だと判断された。

 

 しかし、度重なる呼び掛けに応答する事はなく、真っ直ぐ港に向かうばかり。何か事情があるのだろうと、ちょうど石垣島港に停泊中の護衛艦ちょうかいにその旨を通達し、そのまま追跡を続ける。

 

 そして遂にウォーターコール号は石垣島港に侵入した。

 

 

≪中央暦1639年1月25日≫

<エストシラント港>

 

 時は少し遡る。

 

 敵船沈没の報酬が上がり、軍艦を沈没させれば報酬百倍と発表された時、ウォーターコール号の船長モルガー・セントールは、顔見知りの漁師から聞いた突然現れた島の話を思い出した。

 

 彼はすぐにその二つを繋げ、新しく発見された島に軍基地が出来ていたのだと考えた。

 

 報酬百倍。直ぐに思い浮かんだのは、借金の事である。と言っても、彼のではなく、最近居候させて居る親戚の物だ。

 子供名義で金を借りて蒸発するなんて、とんだ屑が居たものだと思ったが、屑と言えば自分もそれなりの屑であり、そう珍しい物でもないのかも知れない。

 

 生まれ持った気の短さで、価値ある事など出来た試しが無いが、自分を頼った若者を助けるのはきっと良い事だろう。

 

 そんな考えの元思い付いたのが他人を巻き込んだ自爆攻撃なのだから、自分のどうしようも無さは運命的とも言える。

 

 増えた報酬程度では、船員と山分けすれば大した量にならない。敢えて船狩りを行うなら、軍艦で無ければ意味が無いのだ。しかし正規の軍艦を非軍人が沈める方法は少ない。数少ない手段の一つが、高速艇による突撃自爆である。

 

 幸いかどうかはさておいて、高速艇について心当たりはあった。知り合いに金持ちの翁がおり、孫への贈り物として高速艇の輸送したいと言う依頼を出していたのだ。ただ運輸について疎いのか老耄したのか、報酬設定が滅茶苦茶であり、誰も手をつけていなかった。

 高速艇の性能自体は本物であり、手っ取り早く高速艇が欲しいなら悪くない。

 

 盗み前提で計画を立てる辺り自分の屑さはそれなり程度では無いな、と自嘲しつつ、巻き込む相手を考える。

 

 金に困っており、死んでも構わない。そんな奴はいないか?少し考えて探す必要すらない事に気づく。今の船員がちょうどそんな奴らだった。

 

 若い時のやらかしで未だ賠償金を払っている死にかけのジジイと、娘を大学に入れたいらしい親バカ野郎。

 

 老人と若者を利用して儲けようとする船長だなんて言われれば悪評どころでは無い。だが死ぬ前提の計画なら評判を気にしなくて良いと言うのは、発見である。いや、死んでも構わない奴は無駄に強いって事は、有名か。

 

 昔軍人であった時に叩き込まれた合理性と、元々の気性が合体して悪辣な計画が徐々に形となって行く。

 

 船員には沖に出てから伝えよう。船上において船長の権力は、皇帝陛下以上。きっとあいつらは拒否しないだろう。あいつらにも悪い話では無いし、賭けには乗るタイプだ。分の悪い賭けにもな。

 

 内務省の発表により爆薬は何処も高騰しているが、ラジオニュースを聞かない親父がやっている爆薬屋を知っている。あそこなら夕刊の時間までは値上げしないだろう。

 

 大方の計画を立てた所で船員に明日出港だと伝えた。

 

 

 

≪中央暦1639年2月10日≫

<シオス王国シャーリー港>

 

 意気揚々と、自分のお通夜みたいな気分で出港し、目的は軍艦狙いの自爆攻撃だと伝えたは良いものの、大幅に変化していた海流に悩まされて軍艦は見つけられなかった。

 

 シオス王国の港に寄港し、補給を行なっていた夜。波止場で2人の船員の年取った方、ユリス・ナモンはモルガーを怒鳴りつけた。

 

「自爆攻撃だ!?ワシとあやつにぶつかって来いと?それでお前さんは生き残って報酬総取りか?」

 

 モルガーはちょっと落ち着けと言い、

 

「報酬は山分けだ。ユーリ翁、それであんたの賠償金も、奴の大学費用も足りるだろ。それにウォーターコールは鈍足だ、私も死ぬに決まってる。」

 

と答える。それにユリスはバカを見るように言う。

 

「それで誰が戦果報告するってんだ。バカな考えで死ねと言われたかねぇよ。」

 

「それは問題ない。海軍に通報して座標を言えば、沈んだ2隻とご対面ってわけだ。」

 

 モルガーの答えには呆れた様に言い返す。

 

「計画は大層煮詰めたようだなご苦労様。そんな事はどうだって良いんだ。ワシの金は老人1人首括ればどうにでもなる話だ。わざわざてめえの自殺に付き合ってやる筋合いはねえよ。それにあやつはどーすんだ。あれの説得は自分でしろよ!てめえの船じゃなくて、この陸でなぁ!」

 

 ユリスは若い方、ランス・レンを見つけ呼びつけた。

 

「おい、ランス!こいつがてめえに娘を残して死ねッつってるからよ。せめて弁解でも聞いておけ。」

 

 のこのこやって来たランスにモルガーは説得を始める。

 

「船長ぉー、娘が卒業するまで死ねないですよー。学費払わないとですから。」

 

「お前が幾ら働いたって払える学費は大した事ないだろ。娘の行く大学はそれ相応に大したことない大学ってわけだ。」

 

 ランスはムッとする。

 

「それは船長でも言い過ぎですよー。僕の給料で行ける程度の大学が、天才に見合う訳無いじゃ無いですか。」

 

 モルガーは説得の糸口を掴んだと感じ、ユリスは経験からこれは丸め込まれる流れだと焦る。

 

「唐突な親バカだな。だが、良い大学へ行ける訳無い事は分かってるだろ。そこでだ、軍艦沈めた報酬なら何処でも行かせられるぞ。」

 

「おい待てやめろ、親バカしてるこいつにそれを言ったら……。」

 

 ユリスの心配通り、ランスは即答した。

 

「あとは軍艦が何処にいるかが問題ですよー。船長心当たりあります?」

 

「ああ、潮の変化からして、ロデニウスの北東に何かある可能性が高い。軍艦が居るならあそこだろう。」

 

「おいランスてめー、死んだらあの子が悲しむぞ、おい!?」

 

 ランスは普段ふわふわした男だが、決断の速さと覚悟の異常な硬さは取り柄でもあり、苦労の種でもある。

 

「でも娘が全力を発揮出来ないのは僕が悲しい。自分の感情を優先する、クズで普通の男ですよー、僕は。」

 

「クソッ、計画に抜かりは無いんだろうな、船長殿?」

 

 説得は出来たと、モルガーは満足する。

 

「おお、海軍大学中退の力を見せてやろう。」

 

 ユリスは跳び上がって驚く。

 

「あんたクソエリートだったんだな。それがこんなになるとは、取り敢えずいい気味だ。」

 

 

 

 

<ウォーターコール号甲板>

 

 いよいよ爆薬の設置などの作業をしている時、ユリスがランスに話かける。

 

「おい、いいのか、死んで。」

 

 ランスが頷くと、ユリスは仕方ねぇと吐き捨てる。

 

「自分より若いのが、死ぬなんてほざいたら、ぶち転がしてでも止めて生きてきた。若い奴ってのは、若いだけでどんなお偉い老人より価値があるからな。……だが、自分より若いのが、そいつより若い奴の為に死ぬってんなら、止められねぇ。年取ってから、そうゆう事が増えた。同じ家族愛でも、親バカは親孝行よりずっと良いものだぞ。子の為に親が死ぬのは悲劇だが、親の為に子が死ぬのは加虐趣味の惨劇にしかならん。要するに、ワシはお前さんを止めん。百倍の報酬がどれくらいか分かるか?」

 

 聞き入っていたランスは指折り数える。

 

「八、九……。これじゃ船会社を始められる位だよー。」

 

「それだとお前さんの総取りになっとる。ワシの分はやっても良いが、船長は自分の取り分を持って行くだろう。それを三等分だ。」

 

「……それでも船長になれる位だ。」

 

「ああ、そしてどんな大学へも行けるな。兵学校へも行けるんじゃないか。そうすれば、エストシラントであった少将殿みたいな将校になれるぞ。」

 

 ランスの顔がパッと明るくなる。彼の娘には特待生になれるだけの学力はあるが、女性である事や体力面から認定されない為に諦めていたのだが、学費を出せるのなら入学の道も開ける。

 

「それは良いな。でもあの少将みたくオッサンになるのは困るよー。」

 

 2人で笑い、気分を上げる。自分が死ぬのはプラスであると自らに言い聞かせてながら。

 

  

 

 

 

≪中央暦1639年2月28日≫

<石垣島沿海ウォーターコール号>

 

「ユーリ翁、軍艦は見えるか?」

 

 操船室のモルガーが、艦橋の上に登ったユリスに叫ぶ。

 

「おう、灰色の船が見える。港中デケェ船ばっかだぞ。」

 

「そうか。じゃあ海軍に連絡しろ。」

 

 ユリスは梯子を伝って船室に入り、魔導通信器を弄る。

 

「どうやって海軍まで繋ぐんだ?」

 

「内務局海上事案連絡室にかけろ。そこで国籍不明の軍艦を見つけたと言えば、海軍に回る。」

 

 魔信の設定を変えると、ラジオや国営放送などが次々と流れ、暫くして内務局に繋がった。

 

『こちら内務局海上事案連絡室だ。船籍と要件は?』

 

 内務局のあるエストシラントまでかなり距離がある為か、ノイズ混じりの音だ。

 

『えぇ、こちら武装商船ウォーターコール号。私掠免許番号は、えぇ、ニ・0009-2612。ニ・0009-2612。要件は国籍不明の軍艦の発見、あと見覚えない島の発見だ。」

 

 少しの間があり、応答があった。

 

『分かった。登録母港は0009エストシラント港第9埠頭、船長はモルガー・ドーレスト・セントールの、ウォーターコール号で合っているか?』

 

『ああ、それだ。それで合ってるぞ。』

 

 確認作業をしているのか、紙を捲る音がした。

 

『確認した。海軍第3海域情報室へ繋ぐ。』

 

 数秒間無音になり、ブチっと言う音で再び繋がる。

 

『こちら海軍第3海域情報室。不審艦と不審な……島?の通報だな。小海域区分は?』

 

『小海域?"メサンブリアのあみだくじ"って所の東だが……。」

 

『メサンブリア?通称で言われても分からん。近くの島とそこからの推定距離、方角は?』

 

 ユリスは海図を指先で辿って答える。

 

『シオスのガーリ島から東北東へ1340キロだ。』

 

 向こうでも同じ確認をしているのかガサゴソ雑音が聞こえた。

 

『その海域は……。第3艦隊か。暫し待て、そっちに回す。』

 

 これはタライ回しって奴なのか?と思いながら、繋がるのを待つ。

 

『こちら駆逐艦ホーエンス、要件は……、何?不審艦と島?司令部に回す。暫し待たれよ。』

 

 ついに会話なしに回されるとは。ただ徐々に上へと送られてるのは分かるので、繋がるまで待つ。

 そういえば最初より音質が良くなっている様な気がする。

 

『こちら第3艦隊大東洋調査支隊旗艦パール。艦長のダルダだ。』

 

 少し声を聞いて、聞き覚えを感じた。

 

『あんたもしかして海軍の方の少将様か?』

 

『海軍の方の?ああ、第9埠頭の船乗りか。軍艦を見つけたのか。』

 

『そうだな。だから、戦果確認をお願いしたい。』

 

 何か考える様に小さく呟く。

 

『それではやはり……。うむ、任されよ。武運あれ。』

 

 武運か、とユリスは思う。まさか最期に武運を祈られるとは。

 

 そこでモルガーが、傍受されるかも知れないから魔信を切れと言う。

 

『えぇ、そう言う事なら、パーパルディアに栄光あれ。』

 

 そう言って通信を切った。

 

 

 

 

 

<石垣島港>

 

 石垣島港に侵入したウォーターコールは、停泊する護衛艦ちょうかいを追い越す様な形で港内を進む。

 

 ちょうかいの乗組員は、甲板から双眼鏡でウォーターコールを観察していた。

 

 ちょうかいの近くを通り過ぎようとした時、ウォーターコールの船尾ハッチが開き、高速艇が飛び出した。

 

 ちょうかいの乗組員が対応しようと配置に着く前に、ウォーターコールから発砲を受け、負傷者を出し妨害される。

 

 そうする内に、爆薬を満載した高速艇がちょうかいの右舷、艦橋の真下に突入した。

 

 

 

 

<新型高速艇エーデル1638>

 

 ハッチが開くと、ランスが高速艇を押し出し、勢いそのままハッチを踏み切って高速艇に飛び乗る。

 

 一気に最高速まで加速し、灰色の軍艦へ旋回させる。こうやって近くで見ると、やはり大きい。

 

「爺さん、やっぱり速いね。」

 

「死ぬと決めたならビビんじゃねえよ。」

 

 爆弾を起動させる為タイミングを見ていたユリスは、軍艦の甲板で銃を構える兵士を見つけた。

 ランスに気をつける様言う前に、モルガーの銃撃で薙ぎ払われる。

 

 いよいよ軍艦が城壁の様に大きくなり、敵兵士と目が合った様に感じる。

 ついに衝突して、高速艇の船首が軍艦にめり込んだ。

 

 自分の指へ、スイッチを押す様に、つまり自分と若者を殺す様に命じると、世界がスローモーションになり、思いの外やわな船だ、などと考えながら……。

 

 老人の意識は爆裂によって消し飛ばされた。

 

 

<ウォーターコール号船上>

 

 2人が発進した事を確認すると、重機関銃を取り出し軍艦へ向け乱射する。

 

 弾が切れる頃に、2人を乗せた高速艇は軍艦の右舷に吸い込まれ、直後爆発。

 煙が晴れると、ここからでも見える大穴が空いていた。

 

「良くやった。これでお前らは英雄だな。ランス、おまえの娘は英雄の娘になったぞ。」

 

 モルガーは2人の戦果を確認すると、大量に買い集めたバズーカ砲を、大砲らしき部分や艦橋部分、更には報酬を増やすべく近くの船舶へと発射する。

 

 辺りで複数の爆発が起こり、煙で視界が悪くなる中、モルガーは新たなバズーカ砲を肩に乗せ、次の獲物を探す。

 

 これが祖国、そして同胞たちを守る事になると信じて、火器を振るう。

 

 モルガーは自分が軍人だった時の義務感を思い出し、軍人を辞めてもなおその義務に縋り、こうして他人を巻き込んで自爆している自分を嗤う。

 

 過去に戻った様な軍人の勘によって、自分に銃口が向けられていると悟った。

 

「皇国に栄光あれ!!皇帝陛下ばんざ」

 

 モルガーの視界は、ランスやユリスが最期に見たのと同じ、閃光に真っ白くなった。

 

 中央暦1639年2月28日午後1時16分。

 

 ちょうかいからの正当防衛射撃により、甲板上にあった爆発物が誘爆。元海軍中佐モルガー・ドーレスト・セントールはウォーターコール号と共に海中に没した。

 

 

 

 

 

 

 

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