ゲリラの溢れる異世界へ、日本国召喚。   作:ペジテ市民A

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領土

≪中央暦1639年2月28日≫

<パラディス城>

 

 第4外務局長イノスの要請によって開かれた御前会議にて、イノスは全力で土手座していた。

 

「申し開きようも御座いません。私イノス・シャーサイが腹を切ってお詫び申し上げます!!ただ、最期に一つだけ、上奏致したき事が御座います。」

 

「待て、何があったと言うのだ、イノスよ。失態があったとは聞いておらぬぞ。説明せよ。」

 

「はっ、私は畏れ多くも、陛下のご信任を受けた第4外務局を長として、我が国の背後の安定の為、計画を遂行しておりました。しかし、我々は我が国とロデニウスを繋ぐシーレーン上に新たな島が、それも他国によって基地化された島が発見された事を、報告しなければなりません。」

 

「新たな島とは、どう言う事だ?単にお前達の怠惰、もしくは無能によって見落としていたのでは無いのか?」

 

 口を挟んだのは、外務局の失態と聞いてやって来た、国交監査室の狂犬レミールだ。国交監査室は、外国を相手にする外務局、パーパルディア皇国連邦の構成国を相手にする第2、第3内務局を監査し、彼らの失態で反乱などが起これば"対処"する役割である。そんな彼女が狂犬と言われる様になった所以は、その"対処"にある。

 

 彼女は反乱や反政府組織による事件が起こると、その地域の民族主義者を公開処刑したり、文化財の没収や破壊、聖地の焼却などを行い、住民の独立心を折るのだ。

 

 特にグーズ王国再建軍(通称GRA)によってパーパルディア本国でテロが起きた時、民族主義者と断定された7万人を鉱山で生き埋めにしたグーズ懲罰や、マルタ騎士軍(通称NoMA)がマルタ総督を射殺した事件の対処として、歴史ある巨大な神像を、新開発のミサイルの標的にして、周囲の教会や修道士ごと破壊したマルタ懲罰が有名である。

 

「それについては、クイラ王国より彼の国の北東にある日本国と国交を結んだと報告がありました。転移国家だと名乗る不審な国家ですが、海軍の調査によると確かに海流に不自然な変化が見られるとの事です。」

 

「つまり、本当に転移して来た可能性があると?」

 

 第3外務局長のカイオスが訪ねる。本当に転移国家なら、魔法帝国技術研究院──所謂魔帝技研が飛び付くぞ、と。

 

「転移の様な魔法による物なのか、隆起の様な自然による物なのか不明ですが、新しく島が現れた事はおそらく間違いありません。」

 

 しかし、

「新興国ならば、臣従させれば問題無いだろう。わざわざ御前会議を要請する程か?」

 

 レミールの問いに他の者も頷く。暗に要請しなければならなかった理由があるのだろう、と聞いているのだ。

 

「それが、海軍により、我が国の戦列艦及び爆裂艦と並ぶ程の大きさを持つ鋼鉄艦を保持していると報告されておりまして……。」

 

 

 

 

 

<パーパルディア皇国連邦海軍第3艦隊大東洋調査支隊旗艦パール艦橋>

 

 ウォーターコール号との通信直後。

 

「周囲の全艦に集結するよう伝えろ。アルカオン中将にも言って本隊を合流させてもらう。」

 

 艦橋にいる航海士の1人に座標を計算させ、通信兵に命じて外務局に連絡させる。

 

『こちら第4外務局局長イノスだ。何のようだダルダ少将?』

 

『武装商船がフィルアデス=ロデニウス間海域に島を確認した。何者かによって軍事基地となっているようです。』

 

 この情報に、パーパルディアの背後を固める計画を進行させていたイノスは跳び上がる。

 

『はぁー!?それはシーレーン防衛的に不味いぞ。』

 

『はい。その武装商船は攻撃を行うとの事。我々もその島嶼へ突撃する予定です。』

 

『分かった。私は皇帝陛下にその島嶼の領有権主張を上奏する。相手から呼び掛けられたら、その様に対応しておけ。海軍本部の方は私が伝えておく。』

 

『了解しました。』

 

 

 

 

<石垣島港>

 

 襲撃の後、ちょうかいではダメージコントロールの真っ最中であった。

 

 主砲や艦橋の消火作業をしつつ、機関部への浸水食止め作業、負傷者救助など手が回らない状態で、かと言って地元の消防では艦の構造に詳しくない為二次災害を招き兼ねず役に立たない。

 

 よって、付近にいたみょうこうや、あきづき、すずつきの3隻の護衛艦が駆けつけ、周囲の警戒や修理への協力を行なっていた。

 

 銃撃から5時間程経った時、周囲を哨戒していたP1が所属不明の船団を発見する。

 

 針路と速度からしてあと3時間以内で石垣島に到着すると判明し、日本側では対策が考えられていた。

 

 

 

 

<首相官邸>

 

 護衛艦襲撃。この知らせに閣僚は大騒ぎして官邸に集まった。

 

「松島君、それで被害は?」

 

 殺気を隠し切れていない松島防衛副大臣に首相の武田が聞く。

 

「護衛艦ちょうかいと、漁船第九太谷丸の2隻が攻撃に遭い、第九太谷丸が沈没。ちょうかいはダメージコントロールの最中であります。人的被害は、第九太谷丸は無人であり、死傷者は居ませんでした。しかし、ちょうかいの乗組員27名が死亡、68名が負傷しました。その内5名が重体との事です。」

 

「民間人は無事なんだね?」

 

 松島は頷く。

 

「それがせめてもの救いだけど……。」

 

 ここまでは閣僚の誰もが既に知っている事だ。そこで松島が新たな情報を伝える。

 

「その襲撃のあった石垣島港にパーパルディア皇国連邦海軍を名乗る船団が出現したとの事です。続報は届き次第お知らせします。」

 

 松島が去ったあと、閣僚たちの議論が始まった。

 

「日米安保は発動するんですか?」

 

 三田経済産業大臣の言葉はみんな気になっていたことだ。それに佐藤外務大臣が答える。

 

「アメリカ大使館に質問した所、国連や本国との連絡が取れないなど、安全保障条約に想定される状況と大いに異なる事、在日米軍を指揮下に置くインド太平洋軍と連絡が取れない事などから米軍は動かないとの事です。」

 

 閣僚たちは落胆しながらも、パーパルディアとやらの対処について話し合った。

 

 

 

<石垣島港>

 

 石垣島へと向かう船団は50隻以上の、フェリーの甲板や屋上に大砲などを設置した異形の船で構成されていた。間隔を開けて船団を組むその内の一隻に、沖合20キロの位置で巡視船が警告を行う。

 

『こちら海上自衛隊、貴船は日本国の領海を侵犯している。繰り返す、貴船は日本国の領海を侵犯している。』

 

 自衛隊の呼びかけに、意外にも返事があった。

 

『こちらパーパルディア皇国連邦海軍である。我が国の商船が沈没したとの情報がある。救助を行う為、邪魔をしない事だ。」

 

 しかし停船を求めても応じる事はなく、6キロまで近づくと巡視船が警告し、威嚇射撃を行おうとした時、パーパルディア艦の機銃が巡視船の上空に向けられる。

 

『こちらへの攻撃を予告された為、やむなく防衛する事とする。』

 

 パーパルディアの銃撃により巡視船は離脱し、今度は護衛艦が接近し、砲撃を警告した。

 

 これによりパーパルディア艦隊は、石垣島の沖合5キロでやっと停船したのだった。

 

 そこでパーパルディア艦隊は衝撃的な発言をする。

 

『こちらはパーパルディア皇国連邦海軍である。我々は、付近で沈没した我が国の商船の引き揚げを妨害しない事。そして我々がそれを完了したのち、我々を追跡しない事。最後に、我が国固有の領土から早急に立ち去る事を要求する。』

 

 護衛艦がすぐさま答えた。

 

『この島は日本国固有の領土であり、貴船らは日本国の領海を侵犯している。』

 

『直ちに退去が為されなければ、我々は占領する日本軍と、』

 

 パーパルディア艦の側面がスライドして開き、中から多連装ロケット砲などが現れる。

 しかし、それらの向く先は護衛艦だけでなく……。

 

『日本国の工作員を攻撃する。』

 

 石垣島の市街地へも、向けられていた。

 

 

 

 

 

<防衛省>

 

 モニターにはパーパルディア艦隊の空撮写真が写されていた。

 

「統合幕僚長、この船団を同時に全て破壊出来ますか?」

 

 厳田が問う。

 

「同時に破壊する事は可能です。ただ、市街地への攻撃を防げるかは別です。既に新世界には、人間を遥かに超える身体能力を持つ種族が存在していると判明しております。自衛隊に配備されている対艦ミサイルはマッハ0.8程度のハープーンです。接近に気付かれる可能性は無いとは言えません。攻撃に気付いた相手が市街地への報復を行う可能性があります。潜水艦による攻撃も同じ様に、魚雷の接近に気付ける種族の乗組員が居ないとは分かりません。」

 

 厳田の顔が一段と曇った。

 

 平時なら、統合幕僚長の心配し過ぎの様に見えるが、今回は相手に攻撃がバレたら国民が虐殺されてしまう。

 あらゆる可能性を考慮して計画を立てなければならないが、何せ新世界。情報はまだまだ足りていないのだ。

 

「現在石垣島から船団を離す方法を検討しております。」

 

「分かった。」

 

 厳田は無力感と共に、ある確信を持った。

 

 この事態は、最終手段としての防衛力が役に立たず、外交で解決出来なければこちらの負けだと。

 

 

 

<クイラ王国首都バルラート市>

 

 在クイラ大使の田中が、クイラの外務部日本国担当者に願い出る。

 

「つまりパーパルディアに接触を取りたいから仲介して欲しいんだね。」

 

 パーパルディアと日本は未だ接触出来て居なかった。クイラ王国との交渉を優先した事と、哨戒機の事件から調査が進んでいなかった為だ。

 

 担当者は、パーパルディア皇国連邦担当者を呼んだ。

 

「まあそうだな、魔道通信器の回線を貸そう。連絡が取れて、話が進めばフィルアデスへの渡航も支援出来る。」

 

「感謝します。」

 

「ではな、魔信器はこっちだ。」

 

 パーパルディア担当者が案内する。彼は魔信器の円盤を回したり、コードを差し替えたりして、パーパルディアの第四外務局に繋ぐ。

 

『第4外務局のヤーコアです。クイラですか。30日以内に開戦という事になりますね。何かありましたか?』

 

『それが連絡を取りたいのは、我々では無く"日本国"なのだ。』

 

 ガサゴソと資料を探す音がする。

 

『日本国……ね。今そこに日本国の外交官はいますか?』

 

『おお、いるぞ。変われば宜しいか?』

 

『そうしてください。』

 

 パーパルディア担当者は、田中に場所を譲った。

 

『私は日本国外務省の田中と申します。連絡を取らせて頂いたのは、貴国の海軍を名乗る武装船が、我が国の領海を侵犯し、武力をもって国民及び領土を脅かしている問題についてです。』

 

 ヤーコアはバカにした様に笑って言う。

 

『我が国の領土を占領しているのは、貴国の方です。それが故意によるもので無かったとしても、返還してくれないと困ります。』

 

『石垣島は1300年前には我が国との交流があり、400年以上前に我が国の領土となった、我々の世界の島ですよ。』

 

『ああ、貴国は転移国家を名乗っているのでしたね。クイラから聞いています。石垣島というのは、南幻島の事ですね。成程、それなら辻褄が合います。貴国の言う所の、石垣島と言うのはこの世界から君達の世界へ転移したものだと考えられますね。』

 

 いきなり出てきた新しい話に田中は戸惑う。

 

『どう言う事ですか。』

 

『我が国の漁師に伝わる話に、南幻島と言うものがあります。漁師たちが拠点にしていた島が、ある日突然消えてしまい凄く困った、と言う話です。海は理不尽に、どんな物でも飲み込んでしまうから気を付けろ、と言う教訓話で、昔はよくある伝承程度に捉えていました。しかし、50年以上前に実在したのでは無いか、と言う議論が始まり、最近島の位置を記した地図の、500年に作られた写しが見つかったのです。』

 

『その証拠なども確認したいので、我が国の外交官を貴国へ派遣する事は出来ますか?』

 

『ええ、領土問題解決の為、必要な事だと思います。』

 

 こうして外交官のパーパルディア派遣が決まったのだった。

 

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