カイオーガを探して   作:ハマグリ9

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カイナ市場の不審人物

「ようこそ、マスクの王国へ」

 

 虎の被り物を着けた男が低い声で歓迎してきた。とても耳触りの良い声が印象的なお人である。

 

「雑貨屋の店長に紹介してもらった恭平です。予約していたものを受け取りに来ました」

 

「ああ、君がキョウヘイ君か。あいつから話は聞いているよ。奥に品物があるから少し待っていなさい」

 

 そう言って虎の被り物を着けたマスターは、店の奥に入っていってしまった。

 

 辺りを見回すと一面が動物の被り物なのだが、右隅の一角にはそれらがない。不思議に思っていると店の奥からマスターが帰ってきた。

 

「これだね。バトルサーチャー1個、ポケモンナビゲーター1個、リアル黒ヒツジマスク1個」

 

「はい、間違いありません」

 

 これのためにわざわざこの市場まで来たのだ。これからはペリッパー便で頼むことになるが、やはり一度は自分の足で買いに来るべきだろう。ここまでマスクの種類が多いとは思わなかったが。

 

「締めて58,000円だ」

 

 代金を支払い早速装着していく。うん、いいかぶり心地だ。流石の職人技だな。

 

「ポケモンナビゲーターはライブキャスター同様ポケモンセンターで充電するか、専用の機材を使って充電してくれ。バトルサーチャーは歩いた振動で充電するから、そのへん歩いていれば勝手に充電が貯まる優れものだ」

 

 ポケモンセンターはトレーナーにとってもはや聖域だな。流行の病とかで閉鎖したらトレーナーもやばいだろうな。ポケモンも風邪を引くらしいが、そのあたりの対策ってどうなっているのだろう。

 

 マスターにお礼を言い店を後にする。そのままの足取りでフラフラと露天を回りながら保存食や木の実を買う。そして最後に御神木様用の鉄の玉を10個買って買い物は完了だ。

 

 もともとこんなに買う予定はなかったのだが、この世界のリュックサックが凄い性能を持っていたので気にせずに大量に買っている。今まで買ったりしたアイテムを数ごと並べるとこんな感じになる。

 

 

 リュックの中

 

モンスターボール×10

ピーピーエイド×10

ポイントアップ×33

おいしい水×60

おしるこ×3

ヤバイサイコソーダ×35

ヤバイグレープソーダ×5

安らぎの鈴×1

食べ残し(御神木様)×1

リアルアニマルマスク×5

タオル×2

着替え×1

御神木様用の磨き布×2

御神木様用のオイル×2

保存食×30(日)

鉄の玉×10

 

 である。明らか様におかしいのがおいしい水60本だ。そんなに入りきらないはずなのだがね。製造会社の人に電話で聞いたら、このバックパックはなんとモンスターボールの重量軽減装置が組み込まれている貴重なものだそうだ。

 

 今更ながらあの船で景品として出されているのだから、貴重なものなのは当たり前だったのかもしれん。でも中に収納できる理由にはなりませんよね? 収納できる理由は企業秘密とのこと。

 

 そんな訳で、何も考えずに買えるものを買うという暴挙を犯しながら市場を回る。そうしていると目の前にいきなり青緑の髪を後ろに束ね、制服は青を基調と下半身は半スカートを来ているアニメお馴染みの女性とガーディが現れた。

 

「すみません、少し署の方までご同行願えませんでしょうか?」

 

「ガウッ!!」

 

「ファッ!?」

 

 なぜかいきなり事情聴取される俺。どういうことなの……俺、ここで何かやったっけ?

 

   ◇  ◇  ◇

 

 まだ時間がかかっているのか。彼が買い物にいってから既に8時間が経過して、日が落ちて月が登り始めている。

 

 少し寄り道をするから大体5時間ぐらいだなとは彼の言葉だった筈だ。いくらなんでも遅すぎる。ライブキャスターにも応答しないし一体どうなっているんだ?

 

 何かに巻き込まれた? いや、彼の方から厄介事に突っ込むことはあまりしないはずだ。たぶん。きっとしないに違いない。自信がなくなってきた。

 

 どうするか考えているとライブキャスターにようやく応答が来た。彼からだ。

 

「遅い! いったい何をやっていた!」

 

「……あの、ツワブキダイゴさんでいらっしゃいますか?」

 

 彼かと思っていたら、この町のジュンサーさんだった。不思議に思い着信を確認してもやはり彼のライブキャスターだ。

 

「いきなり怒鳴ってしまってすみませんでした。そのライブキャスターは知人の物なのですが、持ち主を知りませんか?」

 

「ええと、ですね…………ダイゴさんに、捕まえたアクア団の確認とオノハラキョウヘイさんの引取りをお願いしたいのですが」

 

「アクア団の件は了解しました。ただ、そこにいる人の引取りはあまり引き受けたくないのですが」

 

「待ってくれダイゴさん。俺も連絡したかったんだがライブキャスター預けてできなかったんだ。申し訳ない」

 

 そう言ってライブキャスターの前で土下座をしている。何をやっているんだコイツは。

 

「…………はぁ、わかった。今からそっちに向かうから準備をして待っていろ」

 

 少し乱暴な言葉遣いになってしまったがもう気にせん。

 

   ◇  ◇  ◇

 

「すみませんでしたーッ!!」

 

 頭の上に御神木様(テッシード)を乗せた状態で土下座を再度行う。

 

 別に俺が悪事を成してジュンサーさんに捕まったわけではなく、ただ不審者だったから声をかけられただけでして。

 

 免許証の代わりにトレーナーカード見せたら今度はアクア団について聞かれ始め、アクア団が捕まっている檻に近づく際に、ライブキャスターを含めたリュックを担当の人に渡して、情報を絞っていたらいつの間にか時間が過ぎていたのだ。

 

「土下座は地位高い人間が地に頭をつけるから価値があるわけで、底辺が土下座しても何の価値も無いのだよ」

 

「おおう、グサッとくる一言ですな。否定しませんが」

 

 素直に頭を上げると頭の上に乗っていた御神木様が華麗な着地を見せる。ほら、ボールの中へ帰って来なさい。

 

「はぁ……で? 情報はどれぐらい絞れたの?」

 

「下っ端でしたのであまり情報を持っていませんでしたね。この町にあるアジトも聞いておいたので、他の警察官が向かいましたがおそらくもぬけの殻でしょうしね」

 

「まぁ、そうだろうね」

 

「ああ、そうだ。でも面白い情報を聞きましたよ」

 

「なんだい? 面白い情報って」

 

 少しだけダイゴさんが興味を示したようだ

 

「最近アクア団もマグマ団も、隕石について調べていたようです」

 

「隕石? 空から落ちてくるあの隕石か?」

 

「それですね。隕石を使って何かしようとしているのでしょうね」

 

「裏は取ったのかい?」

 

 原作でも同じように襲撃していたから間違いない、とは言えないしな。実際に聞いたから合っているはずだ。

 

「何人かが同じことを言っていました。独居房のようなので相談はできないはずです」

 

 ダイゴさんがうんうん唸りながら考え込んでしまった。

 

「隕石というと実際に落ちてきたことのあるハジツゲタウン、宇宙研究をしているトクサネシティが挙げられますね」

 

「もう一箇所最近隕石が落ちてきた場所があるんだ」

 

 ん? 他に隕石が落ちてきた場所なんてあったか?

 

「そらのはしらと呼ばれているところに1月ほど前に落下したんだ」

 

「空の柱に?」

 

 何であんな場所に……? いや、まぁ、自然現象なのだからおかしい訳ではないのだけれども。違和感がある。

 

「知っているのかい?」

 

「軽くですがね、元々道の途中にヒビが入っていて上に進みづらいとか。あとシンオウ神話に関係しているとか聞いた覚えがありますね」

 

「そうだね、そのせいで今も隕石があそこには鎮座しているらしい」

 

 へぇ……気にはなるけども。アルセウス関連かな?

 

「なるほど、候補は3箇所あるのか。どこに来ますかね?」

 

「うーん十中八九ハジツゲタウンだと思うよ」

 

「それはまたどうして?」

 

 どうにも、既に確信を持っているようだ。

 

「あそこには、隕石を研究しているソライシ博士もいるからね。実物を手に入れた上にデータまで手に入る」

 

「ああ、なるほど。では、この後はそこにすぐ向かうので?」

 

「いや、監視は送るが僕は一度、石の洞窟に行って久しぶりに石を採取して気分転換してくるよ」

 

「仕事詰めでは集中力が切れたり、パフォーマンスの維持が難しいですもんね」

 

 さて、露骨に聴きに行ったからあえて行かないと言ったのか。それとも本当に行かないのか。

 

「さて、そろそろ夜中になってしまうし、トウカシティへ向かおう」

 

「もうだいぶ暗いが大丈夫なん?」

 

 お月様も満面の笑みだ。本日は満月なり。

 

「むしろ、今日行かないとだいぶ期間が空きそうだからね」

 

「何かあったので?」

 

「明日からトウカシティ周辺で雨らしいんだけど、なかなか強い雨らしくてね、人手が足りていないらしい」

 

「え、そんな中に俺を送り込むの!?」

 

「先方にもう君が手伝ってくれるって話通しちゃってるからね」

 

 もう話通しちゃったか。仕方ないね。

 

「マジかよ…………夢なら覚めt」

 

「残念。これが現実だ。エアームド、こいつを足で捕まえて【そらをとぶ】だ!!」

 

「ムドッ!!」

 

 どこかの即死魔法みたいだなと思いながら渡された防寒具を着ておとなしく掴まれる。

 

「夜景というのも悪くはないな」

 

 確かに眼下に広がるライトアップされた港町というのもなかなか悪くはない。だが……うむ。

 

「相手がむさくるしい男でなければねぇ」

 

「乗っけてもらえるお前がそれを言うか」

 

 ただ、この運ばれ方はそれなりに怖いんですよ?

 

「もちろん、それに俺が高所恐怖症だったらどうする。確実に失禁してるところだぞ」

 

「そんなの後ろ乗せても変わらないだろ。背中で漏らされた方が困る」

 

「こやつめ」

 

 互いに軽口を言いながらトウカシティへ飛んで行く。さて、新しい仲間は誰にしようか。

 

 

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