目が覚めると、月明かりによって薄明るくなっている室内と見知らぬ天井が視界に入ってきた。そして何故か枕が凸状になっている。凄く頭が置きづらくて不快なんだが……
「……なんだ夢か」
どうやら俺は夢の世界に紛れ込んでしまったらしい。もう一度寝ようとするが枕の凸部分が固く、とても眠り辛いため枕の下を探ると【あいいろのたま】が出てきた。何故かは分からないが【あいいろのたま】が枕の下にあったから寝にくかったようだ。
意味不明すぎる。
なんだよこれ。この丁度頭の地点に【あいいろのたま】が設置されているとか誰が意図的にやったんだ。嫌がらせか! 誰得だよ。とりあえず【あいいろのたま】をポケットに入れ、この意味不明な夢から目を覚ますために腕を抓ってみる。
「いやぁ、やけにリアルな夢だなぁ……抓っても痛みを感じる夢とか久々だぞぉ~?」
横に置いてあった時計を見ると、現在時刻は午前3時らしい。
夢の中でもう一度眠るってどうなのだろうか? 悪影響がなければいいんだが。そんなことを考えているとぬぅっと何かが視界の端から現れた。思わず体がビクッとなる。
「……ラッキーか?」
その丸いフォルム。卵をお腹に大事そうに抱えているお腹。ピンクの悪魔とまで言われたポケモン……どこからどう見てもラッキーだ。それにしても、なんでそんなにボソボソ喋ってるんです?
「いきなりぬっと出てこられると心臓に悪いと思うのですが……」
ドッキリ系テレビか何かですかね? 病院内でそれをやると心臓の弱い人が大変なことになる気がするのですが。そんなことを考えている俺を余所に一通りバタバタした後に病室から飛び出して行ってしまった。いったいなんだったのだ……ただ一つ言うとするのならば、病院内は走らないほうがいいと思います。
……そろそろ現実逃避はやめるか。
さて、恐らくだが病院……いや、ラッキーが居たしポケモンセンターか? とりあえず治療施設へ担ぎ込まれたのだろう。改めて時計を見ると俺たちが電車に乗ってから1日しか変わっていない。昼頃に乗ったから、大体15時間の睡眠だったということだな。
ベッドから這い出て自分の服装を確認すると、見事な病院着である。緑色や青色なのはどこも同じなんだな……目に優しいからか? 安静作用もあるとか大学病院の先生が言っていたなぁ……懐かしい。実家のような安心感を感じる。
軽く体を動かすがやはり油の切れたロボットみたいにキレが悪い。まるでデータを取るために体に鉛を付けてた時みたいだな。柔軟をしていたら治らないだろうか? まずは……アキレス腱伸ばしからやるか。
軽く柔軟をしながらラッキーが帰ってくるのを待っていると、廊下の方からバタバタと足音が聞こえてきた。だんだんと音が大きくなってきているということは、こちらに向かっているのだろう。急患でも出たのか?
「キョウヘイ先生!」
勢いよく扉が開き、ハルカが飛び込んできた。その際にバンッという音を立てて部屋が明るくなる。スイッチを押す勢いが強すぎるぞ。
「おう、おはよう。朝食ってやっぱり6:30まで待たないと貰えないのかな? 病院食ってその辺の規定が厳しいんだよなぁ……」
「起きて第一声がソレ!?」
「いや、さすがに4割ぐらいは冗談だ。電車で迷惑かけた……すまないな。でも今の時間的にバタバタするのは他の人に迷惑かかるからやめたほうがいいと思うぞ」
「そういう時はすまないとかあやまるんじゃなくて、ありがとうでしょう? ……それとその最後の一言はいらないかも」
「……だな。改めて――ありがとうハルカ。ハルカが居なかったらどうなっていたかわからなかった」
頭を下げてお礼を言う。どうにもまだ頭の回転が本調子ではないようだ。失言が多すぎる。何か発言する際にはよく考えてから発言するようにしよう。
「うん、どういたしまして! キョウヘイ先生が無事で良かったよ……」
「ゴホンッ」
なにやらやけに主張する看護師さんが一人、扉を開けた状態で顔をのぞかせている。
「ああ、ジョーイさんおはようございます……なんで早く入らせろよみたいな空気出しているので?」
「いえいえ。別にそんなことありませんわよ」
いったいどうしたのだろうか……
「そろそろ本題に入らせて貰うわね。キョウヘイさん、貴方はどうしてここで寝ていたかわかりますか?」
それは理解っていることだな。その辺の記憶はまだ残っているし。
「全身に火傷のようなジクジクとした激痛が走って、意識を落としたからだと思います」
こんな感じかな? という答えを言うと、微妙に顔をしかめられる。え? 違うの?
「火傷のような、ではなく本当に全身が火傷の状態でした。それもⅢ度熱傷です」
「……ファッ!?」
めちゃくちゃ重症じゃないですかヤダー。確認のために服を捲ってみるが――腕や腹には火傷の跡など一切残っていない。
あれ? 今なんともありませんよ? ポケモン世界の科学の力ってすげー。だから過去形なのか。
「これが現代の科学力か。俺の想像の3歩先を歩いているな……」
ふしぎなくすりを飲まされた結果がコレか。渋谷で海が見られるようになるのだろうか? ……在庫があったらあと3本は買いたいです! きっと、どこかのスタドリのように体が軽くなるのだろう。ただ、現状周りが海のように輝いてはいない。俺には効果が薄かったようなのが残念だ。
「残念ですが、今の科学力でもそれは不可能です。今治っているのは――」
「――ユーの持っていた藍色に光る玉のお陰だろうね」
扉からまた新しい人が入ってきた。
「貴方は……」
「昼間のおじさん!」
入ってきた中年の男性は、白髪混じりのオールバックのヘアスタイルに青いコート、紫の半ズボンといったスタイルだ。ハルカは昼間にこの人と会ったのか?
「……なんでこんなところにアダンさんが?」
エメラルド版でルネジムのジムリーダーをやっていた人で、ルビー・サファイアでルネジムのジムリーダーを行っていたミクリさんの師匠でもある。
「おや、わたくしを知っているとは驚きですね。隠居してそれなりに経つのですが」
それはこっちに来たばかりの俺が知っているのは何でだ? という意味なのか。若い人が知っているのが珍しいということなのか……どっちだろうか。
「ハルカの教師役として、聞かれた時に答えられなければいけませんからね。各ジムの現ジムリーダーやその先代については少し前に調べていました。現ルネジムのジムリーダーであるミクリさんの師匠にしてマダムキラー、そしてその特徴的な口調。俺が言えた義理ではありませんがなかなかに目立ちますので、その分覚えやすかったですね」
嘘は言っていない。パソコンでジムリーダーの来歴や使用ポケモンのタイプが変わっていないかどうかを調べたりもした。
喉が渇きを訴え始めたので辺りを見回してみるが俺のバックパックが見当たらない。恐らくハルカが回収したのだろう。
「俺のバックパック……はここに無いのか。仕方がない。ハルカ、寝起きで喋ると少し喉がイガイガするからお水を人数分持ってきてくれないか? 個人的になるべく冷えてるヤツだとありがたい」
「むぅ……わかった。でも冷やしすぎると体に良くないからあんまり一気に飲まないでね?」
「では私はコップを持ってきますね」
ハルカに水を頼むとジョーイさんも察してくれたのか部屋から出て行ってくれた。これで5~10分ぐらいは密談ができそうだ。
「さて、昼に助けていただいてありがとうございました。これでお話し合いができますね」
「……どうしてわたくしがユーに用があると思ったのです?」
え? 今更そんなことを聞くの?
「前提として、俺が倒れる前にアダンさんとは会っていない。なのでアダンさんがハルカと関わることがあるとしたら俺が倒れた後のはずだ。かと言って病院内でわざわざ医者ではないアダンさんがハルカに関わる必要性もない。だから必然的にアダンさんは俺が倒れてから病院までの間にハルカと関わったはずだ」
「……それで?」
「その時に関わったとするならば、必然的にハルカが助けを求めて接触したのだろうと考えられる。だが、ただ助けただけの相手に対し、わざわざこの時間帯に訪ねてくる必要性は無い」
「善意でかもしれませんよ? かなりひどい火傷でしたし」
「ならば余計にです。普通、そこまで酷い火傷なら目を覚ますまで時間がかかります。仮に応急手当中に何か不思議なことが起こっていて、ソレについて聞きたいと思っても、目を覚ますまで自らの予定を崩して待つだなんて選択肢は、相手に対して何かしらの目的がなければ取りませんよ」
さて、用事の内容とはなんなのだろうか。金銭目的ならハルカがその場で渡すだろう。だからこの人がここにいる理由はそれ以外ということになる。今まで交流がないのだから個人的な用事ではないはず……となるとダイゴさんから頼まれたとかになるのか?
他にこの人クラスの人間を動かせる人が居るとは思えない。ポケモン協会が一般的な1トレーナーでしかない俺に接触を求める必要性もないだろうし。
……ここまで考えて全て俺の誇大妄想でしたなんてオチは避けたいなぁ。
「……ダイゴさんから何か頼まれました?」
すると、アダンさんが少し困ったような顔になった。
「うーん、わたくしも少し焦りすぎていたのかもしれないな。大体はユーの言ったとおりですね。元々は偶々ユーの後ろに座っていて、応急処置を済ませて病院へ送ったら今まで通り旅行を続けるつもりだったのですが。ユーの言ったとおりダイゴの坊やに頼まれて起きるのを待っていたのですよ」
俺はアダンさんの真横を通って座っていたのか。いくら不調だって言っても節穴すぎるだろ俺の目ェ……
「……ん? あれ? 何時ダイゴさんに頼まれたんですか?」
「ユーを病院へ搬送した後に坊やから連絡がありましてね、元々わたくしがシダケタウンへ旅行に行っていることは坊やに伝えてありましたから、安否確認や噴火について聞かれた際に不思議な出来事としてユーの話を出したのです。そうしたら坊やが少し尋ねたいことがあるので意識が戻り次第連絡して欲しいと」
尋ねたいこと? 一体何だろうか。
「それにわたくしも色々と聞きたいことができたので渡りに船でしたね」
「聞きたいことですか?」
こっちは大体予想がつくな。俺の体についてだろう。
「ええ、ユーの体と【あいいろのたま】についてです。ユーの体に起きた重度の火傷を治す際に、お嬢さんが【あいいろのたま】と呼んでいたモノが光り、反応をしていました。アレは一体何だったのでしょうか? わたくしはホウエン地方の歴史も、少しなら学があるつもりです。ですが【あいいろのたま】に体を癒す力があるというのは聞いたことがございませんし、送り火山にいるアオイ夫妻も知らないと思います」
「【あいいろのたま】が?」
これが光ったのか? ポケットから【あいいろのたま】を引っ張り出す。そして今更だがあの老夫婦の苗字はアオイなのか。
「残念ですが、俺はコイツについてはカイオーガが絡んでいるということしか知らないんですよ。なので、この【あいいろのたま】がなぜ光ったのか。どうやって俺の体を直したのかはわかりません」
むしろ俺が知りたいです。どう俺と関わっているのか。どうしてふと気がついたらすぐ傍にあるのか。わからないことだらけだ。
「では体についても?」
「……俺はそれについて知りたいから旅をしているんです。トクサネ宇宙センターにまで行けば何か情報がわかるかも知れないとのことですが」
それを知る為にアルセウスに協力をしているんだ。
そんなことを話しているとタッタッタッタッという軽快な足音が聞こえてきた。そろそろ潮時だろう。
「時間切れですね。続きは今日の午後に、ポケナビかライヴキャスターでダイゴさんと通信をしながらにしませんか?」
「……そうしますか」
次の会議の時間を決めた辺りでコンコンコンと扉がノックされた。
「キョウヘイ先生、お水持ってきたから入るね」
「おう。ありがとうな」
ハルカから貰ったおいしい水を、コップを待たずにそのまま直で飲み出す。程よく冷えたお水が喉を通り何とも言えない爽快感を感じる。なんだか頭が冴えてきた気がするな……これがプラシーボってやつか。
そのままグビグビと飲み込んでいると、ふと今のうちにやるべきことが頭に浮かんできた。あとでジョーイさんにアレやってもらわないとな……マスコミとか面倒の塊だし。
「……ふふっ」
なんだか楽しくなってきたぞ?
「き、キョウヘイ先生? なんか黒い笑いしているけど……何かあったの?」
なんでそんな引いた感じに? ……よく考えれば今の俺相当気持ち悪いな。
「いや、少しばかり面白いことを思いついてな……ああ、ハルカも協力してくれ」
「え……え?」
◇ ◇ ◇
一度寝て、07:00には朝ごはんを食べようと思っていたのだが完全に寝過ごしてしまった……現在08:00、もう少し遅く起きたらネタになっただろうに。ギリギリ朝食に間に合ってしまうこの何とも言えない感じの時間……
このまま朝飯をどうするか考えて居ると、ハルカが朝食を食べに行こうと病室にやってきたのでそのまま食堂に食べ、その後軽くジョギングに行くことにする。
「ハルカ、今日はポケモンセンターの前とか混んでいたか?」
「予想通りで記者っぽい人が複数人居たよ」
やっぱり食いつかないハズがないもんな、こんなネタ。噴火直後に電車内で謎の火傷とか売り出しには持って来いだ。
「そうか。じゃあ、行ってくるわ」
「……本当にソレで行くの?」
今の俺は病院服にフクロウのマスクを着けた超人、いや鳥人だ。病院に来ている理由はきっと翼をなくしてしまったのだろう。
「大丈夫大丈夫。今の俺は小野原恭平ではなく愛玩鳥人インコマンだ。この変装を見抜けるものは誰もいない! 誰もだ!」
ハルカにサムズアップした後、そのままの足取りでごく普通で当たり前のように入口から出て、散歩の体で近くにいた記者の一人に話しかける。
「今日はこんなに大勢でどうしたんです? 何かスクープでもありましたか?」
凄い不審そうな表情をしていらっしゃる。
「……貴方は? この病院に入院中の方ですか?」
「ええ、ちょっと空へ飛ぶための羽が見つからなくなってしまったので……」
そう言って親指で自分の肩を指し示す。そこには鳥類の大多数にあるはずの羽がなくなっていた。このままではフクロウから羽の要らないキーウィに変わってしまう。大事件だろう? と肩を竦ませながら話を続ける。
「記者さん達の探している人って昨日のお昼頃に急患で運ばれて来た大火傷の人?」
「! 知っているんですか!?」
「ええ、少しだけですが。かなりバタバタしていたので記憶に残っていますね」
「どんな方でしたか? 容態は?」
話を聞いていた記者以外もわらわらと集まってきた。まるで落ちた砂糖に群がるアリか何かだな。
「それが今日の午前3時頃に容態が急変した後に病院を出発したとか聞きましたよ……」
「どうして貴方がその情報を知っているんです?」
「先ほど言った通り、昨日のその時間帯にかなり慌ただしくなっていたので騒音で起こされたんです」
そんな感じの受け答えをしていると、その間に記者団の数名が患者さんの連れ添いで外に出てきていたジョーイさんに確認を取りに行ったようだ。だが。それも先を見越してジョーイさんに根回ししてもらっている。ジョーイさん達的にも病院前で騒がれるのは嬉しくないのだろう。あんまりいい顔はしていなかったが一度だけ協力を得られることになった。なので、少し渋ってから言うように頼んである。
「……裏取れた? そうか。ならもうココには居ないのか……情報ありがとうございます! これ、少ないですが……」
封筒から、ちらりとお札が見えたが先に手で制しておく。
「いえ、受け取れませんよ。その代わりにですが最近活発化しているアクア団やマグマ団の情報なんてありませんか? 情報通として最近気になっていまして」
いかにも世間話好きな体を装って聞く。
「ああ、それでしたら放流しても問題なさそうですね。えーと……最近キンセツシティでマグマ団をよく見かけるなどの情報が入っています」
「キンセツシティですか。なるほど、ありがとうございます」
キンセツシティか。最近、黒い雷発生現象で話題になっている所だ。何か関連があるのかもしれないな……早いうちに移動したい。ただ、今の俺みたいなのに話す情報なのだから精度はあんまり良くないのかな。それとも少し調べただけで見つけられるほど溢れているのか……これは無いな。それなら警察が動くだろう。前者として考えておこう。
「いえいえ、こちらこそ貴重な情報ありがとうございました」
そう言って記者団は機材を持って撤収して行った。うん、なかなかの撤退速度だ。感心しながら軽くポケモンセンターの辺りを散歩して、ふと顔を煙突山の方へ向ける。
煙突山は未だに山頂からモクモクと煙を上げており、風上の方角であるハジツゲタウンは今も火山灰が降り続け、畑などを埋める勢いで積もっているようだし、一部は避難区域にも指定されていた。これで雨でも降ったら火山灰が泥のようになるし排水口も埋もれてしまうだろう。当分は晴れでいることを祈っておく。
視線を戻すと、近くに設置されていたベンチがあったので腰をかけつつ思考を巡らせることにする。
「俺とお前はいったい何の関係があるんだ?」
巡らせたつもりがダダ漏れだ。パイプのトラブルなら8000円ぐらいで治せるが、口の言葉漏れはどこに相談すればいいのだろうか。
こういう時にもう一人の僕がヒントを残してくれればいいのに……さて、また飛んだ思考を戻そうか。アレは……あの火傷はグラードンのせいなのか? それとも火山が近かったせいか? 確かにあの事件から今まで生きてきて、暑い場所や乾いた場所では少し動きづらく感じる時はあったが、あんな痛みを感じたことはなかったはずだ。しかし、こっちに来て何か強化された可能性もあるし、原因の特定としては決め手に欠けてしまう。
次、【あいいろのたま】を持つせいで反発の余波を食らったとか? どうだろう……これも保留。ただ、【あいいろのたま】が何かしらの力で中和し、そのまま俺を治したなんて考え方はできそうだ。そういえばどのタイミングで光ったのか聞いていないな。後でハルカに聞かないと。
最後……火傷が治ったのは俺の自己回復力か、【あいいろのたま】か。これは高確率で後者だろう。ただ、昔の件もあるし固定観念は無くしておきたい。保留。
結局全部保留かよ……
「ハァ……」
一歩進んで一歩戻ったような気分だ。
「あ! あの時のフクロウさん!」
ベンチで肩を落としていると、なんだか前に聞いたことのあるようなハスキーボイスが聞こえてきた。顔を上げるとやはり見覚えのある顔が見えた。
「ん? ……おお! ミツル君じゃないか」
そういえば君療養のためにこっちに来ていたね。
「ミツル君がここにいるということは……昨日の火山のせいか?」
病状が悪化した場合はこんなに明るくは無いだろう。
「うん! おじさんと約束したんだ。今日はとりあえず病院に行って、体調が良ければ明日育て屋に見学に行くって!」
「育て屋に?」
育て屋を見学か……ハルカにもいい経験になるかもしれないな。それにミツル君の今日の診察後の予定が空いているのならハルカVSミツル君というのも面白いかも知れない。
「ミツル君。今日の診察後の予定が空いているのなら一度ポケモンバトルをしてみないかい?」
「本当!? うん! やってみたい! 僕まだ人とポケモンバトルやったことがないんだ!」
おお、いい反応だ。そう言えば、あれから手持ちのポケモンは増えたのだろうか?
「そうか。なら……覚えているかな。俺と一緒に旅をしているハルカって言う子とポケモンバトルをしよう。ミツル君のおじさんと少しお話がしたいのだけれど、ポケナビは持っているかい?」
「ポケナビ? うん! 持ってるよ!」
ミツル君は首から紐を通して下げているポケナビを持ち上げてにこやかに笑っている。最近買ってもらえたのだろう。
「もしもし、アキミツおじさん? あのね――」
これで午後はハルカも退屈せずに済むだろう。