カイオーガを探して   作:ハマグリ9

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仮説と謎の力

 夕食を取りにハルカが目を付けていた個室のある牛丼屋に入ったまでは良かったのだ。しかし、ケントさんが仮面を外したのを見た瞬間、俺は無意識のうちに叫んでいた。

 

 奴の顔は結構整っていたのだ……いわゆる糸目系イケメンである。しかも修験者のような格好と妙にマッチしているのだ。女の子に人気出そうですね。ダイゴさん然りケントさん然り店員然りその辺を歩いている人然り、この世界の顔面偏差値の平均が男女関係なく高すぎるんだよォ! 

 

「クソがッ! イケメンばかりかここは!」

 

「クッ」

 

 うっさいとばかりに後ろから御神木様に押しつぶされた上、ゴロゴロと何度も往復され念入りに轢かれた。弱者には発言権すらないらしい。最早俺の身と心はボロボロである。しくしく涙を見せながらその場に倒れ伏した。

 

「……ハルカ嬢、こやつはいったいどうしたんじゃ?」

 

「ただの持病だから気にしないように放置の方向で。あとハルカ嬢はやめて欲しいです」

 

 なんということだ。悲しみの心を胸に秘め、むくりと起き上がる。

 

 呆れた顔をしているケントさんと目を丸くしているストライク達、それとは対照的に一切気にせずにメニューを見ている大賀達。

 

 これが場慣れの差か……うちの子達は確実な方法で俺のボケを殺してきやがるからなぁ。

 

 最初ストライクを見たときはまるで皆にトラウマを植え付けていたカマキリ型F.O.Eみたいな奴だな! なんて思ったが、今はそんな気配は一切しない。むしろ縁側でお茶飲んでいるおじいさんみたいな雰囲気を醸し出している。よくその鋭そうな鎌で湯呑持てますね。

 

 それにしても、誰もこの荒々しいウシのマスクから流れ出る悲しみの涙に触れないとか……こんな世界間違っているよ!

 

「ヌシはその被りもんを脱がんのか?」

 

「ん? ああ、俺このままの状態で食べれるんで気にしないでください」

 

「……え?」

 

「え?」

 

 お前何言っているの? みたいな目で見られている。何か噛み合わないな……あ、牛のマスク被っておいて牛丼はダメだろうってことか? それとも草食動物が肉食うなよっていう方? いやしかしな、世の中には焼肉を食べる牛がマスコットの焼肉店というのもあってだな……

 

 そんなことを思っていると、何故か目を潤ませたハルカがケントさんの手を取ってぶんぶんと上下に振り始める。

 

「やっと……やっとキョウヘイ先生のコレに突っ込んでくれる人が……ッ! 知っている人はだいたい流すかそもそも触れない人ばかりで途中からわたしが間違っているのかも? なんて思うようになって……」

 

 涙ぐむほど思いつめてしまっていたのか。だが俺は謝らない! 

 

「大変なんじゃのう……」

 

 なんでそんな悟ったような顔していらっしゃるんです?

 

「あ、そうだ。ここの支払いをこっちで持つ代わりに幾つか聞きたいことがあるんですが、いいでしょうか?」

 

「む、内容によるな。なんじゃ?」

 

「マグマ団内部でいったい何があったのかを知りたいんです。主にチャンピオンが居たのにどうしてマグマ団の連中は逃げる事ができたのか、内部の状態はどうだったのか、ですかね。ニュースだけではどうにも腑に落ちなくて」

 

「ソレか。うーむ……本来なら守秘義務に引っかかりそうじゃが、その辺りならニュースの延長じゃろうし問題ない……じゃろう。多分。まぁ暗にしていただけじゃけん。明文化されていないのなら……な?」

 

 守秘義務が発生しているんですか。そしてそれでいいんですか。

 

「とは言っても、マグマ団の連中が逃げ出せた理由は、おいもよく理解できていないんじゃ。内部も内部で異様という程度じゃし」

 

 どうにも歯切れが悪そうだ。いったい何があったと言うんだ?

 

「先に話しやすい内部について話すか。どこまで知っちょる?」

 

「研究機材が詰まった部屋にそれについての資料室等があったとしか知りませんね」

 

 大体の人が考えるような違法組織のアジト! 的なものだったという風にしか報道されていない。俺がマグマ団アジトについてで知りたいのは、どんな研究を、どこまで進めていたのかということだ。あと溶岩増幅装置とかかな。

 

「その他となると……気味の悪い石版を多数集めていたことと、ポケモンの剥製だけを纏めた部屋があったこと。地下深くまで掘り進められていて溶岩溜りに直結されている部屋があったことぐらい……かのう」

 

 ポケモンの剥製とは趣味が悪いな。溶岩溜りに直結された部屋はなんだ? グラードンの観察か? そして……

 

「石版か」

 

 ぽつりと言葉が漏れ出る。

 

 これ関連でダイゴさんやオダマキ博士から石版集めを依頼されているな。マグマ団が遺跡を荒らして回っているというのはダイゴさんからも聞いている。まぁ、恐らくは古代ポケモンについて調べているのだろうし、そこまで不思議な内容とは思えん。

 

 そんな話をしていると、タイミング悪く牛丼が運ばれてきた。ホカホカと白い湯気が上がり、出来たての牛丼はとても美味しそうだ。続きは食いながらになるだろう。

 

「……本当にその状態で食べれるんじゃな」

 

「んむぅ?」

 

 何か言っただろうか?

 

「うむ、気にするな。続きじゃが、読めん文字や図の羅列が彫り込まれた石版が大量に集められちょったぞ……ああ、そうじゃ。同じ部屋にあったデスクと書きかけの本が押収されていたのう」

 

 書きかけの本か。同じ部屋にあったということは、石版の内容を写していたのか? もしくは翻訳でもしていたのかもしれん。内容的にポケモン警察か政府機関に流れた可能性が高そうだな。依頼内容の確認という名目でダイゴさんかオダマキ博士辺りに聞いてみようかね。ただ、ダイゴさんに直接聞けるタイミングがあるかどうかだなぁ……オダマキ博士もこの辺りの情報を知っているかもしれない。そっち経由で聞いたほうが無難かもしれん。

 

「その本も嫌な感じでのう……革で装丁されちょったんじゃが、アレは恐らく色々なポケモンの皮を剥いで作られたものじゃろうな。ツギハギが荒々しく残っておったし、獣皮紙も統一されとらんかった」

 

 しみじみと食いながら言っているが、なかなかアレな内容だな。マグマ団は態々そんなものを組み合わせていったい何の本を作っていたんだ? そしてこれを聴いてなお俺達は牛丼を食べれるのか? 俺は食えるけどハルカとかどうなのよ。

 

 ちらりと見てみると、そこまで顔色が悪くなっていなさそうに見えた。普通に食べてるし。最近色々とありすぎて耐性が付いてきたのかもしれない。あんまりいいことじゃあないだろうけれど。

 

「よくそこまで観察できましたね」

 

 結構しっかりと見る余裕があったのか。

 

「おい達の班が資料室の隣で見つけたけんな。じゃけん他の部屋については大まかにしか知らんのじゃ」

 

「ああ、なるほど」

 

「次にポケモンの剥製だらけの部屋についてはそのまんまじゃ。一番わからないのは溶岩溜りに直結された部屋でのう。態々地下深くまで掘って溶岩の中の何かの研究を行っていたようなんじゃが……」

 

 溶岩の中……ねぇ……まさか予想の一つだったグラードンが本当にここの地下に居るのか? そのせいでこの周辺では【あまごい】が使えないとか……いや待て。ならなんで砂漠でも使えなかったんだということになる。ただ単純に溶岩増幅装置の研究をしていたのかもしれんし。早合点はいけないな。

 

「溶岩からは何か見つかっていないので?」

 

「そこまでは知らんのう。ただ大騒ぎにはなっちょらんかったな」

 

 うーむ……大騒ぎになっていないということはグラードンではないのか? もしグラードンだとすると完全に封鎖されるだろうし、ダイゴさんも何かしら言うだろう。またはグラードンがそこから移動でもしたか。でも寝ているはずだし……

 

 ん?

 

 ふと、とある仮説が頭をよぎる。

 

 仮に少し前まで火山の地下にグラードンが居たとして、火山の噴火によって目覚めて何処かに移動していたとしたら、今煙突山の中に居ないのも頷けるだろう。待てよ、ハルカの話だと噴火が起きたタイミングは俺の火傷の後だったはずだ。

 

 ――――――――なら、噴火はグラードンが目覚めた結果であり、そもそもは【あいいろのたま】を持っていた俺が近づいたからグラードンを起こした……のか?

 

 確か【あいいろのたま】はカイオーガを鎮め、【べにいろのたま】はグラードンを鎮める。ならばその逆をやらかすとどうなる? ああ、でもシリーズによっては【あいいろのたま】でカイオーガを、【べにいろのたま】でグラードンを目覚めさせているしなんとも言えない。

 

 それに、もしそうだとしても、なんであの時マグマ団は送り火山に襲撃をしたんだ。今の考えだとすでにグラードンは移動していたのに……ああ、そもそもあの時目覚めるのが想定外だったからか。すでに発動している大規模作戦を遅らせるわけにもいかないだろうし、珠を手に入れてから再度見つけるようにしても問題ないのだろう。

 

「……生? キョウ……」

 

 なら、どうして俺が火傷しなければいけなかったんだ? 【あいいろのたま】を持っているからか? それとも――――俺の体に関わってくる……のか?

 

 俺の体か。そういえば【べにいろのたま】が俺に近づいただけで俺は拷問級のダメージを受けた。アレと同じことがグラードンにも起きるとしたら目も覚めるだろう。そうして起こされたグラードンは、その近づいてくる不快の根本を攻撃した?

 

 こう考えると電車の中で俺が大火傷した理由って……グラードンの力となるのか? あの時感じたナニカが近くに居る不快感はグラードンによるもの……そうだとしたら今俺が火傷していないのも頷けるし……

 

 だとするのなら、あの時【あいいろのたま】がグラードンを攻撃して、その攻撃に対抗したグラードンが俺に攻撃したということか? しかし、もし仮にそうだというのならば、それって……

 

 ――――――俺の体は、グラードンなどに近い性質を持っているということにならないか?

 

「……ヘイ先……!」

 

 珠によるダメージという共通点。バラバラだったピースが多少なりとも噛み合ったような感じすらある。でも、これは感じがするだけなのだ。所詮、俺の妄想でしかないはず。はずなのに……どうにもこの考えが頭から離れない。

 

 今回の情報は俺の根本を揺るがすかも知れない。かなり重要な情報となるだろう。考えるべき内容が一気に増えてきた。これを調べることができたら一気に俺の体の正体に近づけるだろう。トクサネシティまで行かずとも……

 

「キョウヘイ先生!」

 

 いつの間にか真横に居たハルカに呼びかけられ、大賀に肩を揺さぶられていた。

 

「……ん? どうした?」

 

「どうしたじゃあないよ! 急に黙り込んでブツブツブツブツと……ちょっと怖かったかも」

 

 それ傍から見ているといろいろと痛い人にしか見えんな。

 

「すまん。ちょっと思いついたことから一気に思考が流れ始めたというか……」

 

 頭を掻きながら謝る。これは夜に続きを考えよう。目の前に置いてある牛丼も完全に冷めてしまっていた。

 

「あー……話を続けてもよかか?」

 

 少し居心地悪そうなケントさんと目があった。

 

「すみません、お願いします」

 

 本当にすみません……目の前でいきなり黙られてブツブツ呟き始めたらどうしていいか迷うよなぁ。

 

「おし、とは言え残る話といえばチャンピオンがどうしてマグマ団を逃がしてしまったのかという話だけなんじゃが」

 

 それもかなり重要なんですよ。

 

「おいも一番不思議に思っちょる内容なんじゃが、まず戦闘前からおかしくてな。何か印のようなものを彫り込まれたボロボロのポケモン達を鎖で引きずっていて、首領らしき男が何やらブツブツ唱え始めてな」

 

「唱える? ……呪文みたいにですか」

 

 昔の記憶が揺さぶられる。厨二的な方と死にかけた方の記憶だ。前者はともかく後者はこちらではありえないはずなのだ。

 

「おう、まるで魔法使いみたいじゃったよ。そうすると、引き連れられていたポケモン達がバタバタと倒れ始めてな。激昂したチャンピオンが攻撃をしたんじゃが……その後すぐにおかしい事が起きてのう」

 

 ダイゴさんなら激昂するような状態だったのだろう。あの人ポケモンや石については意外と熱い人だし。

 

「おかしい事?」

 

「――――――それから、攻撃が一切当たらなくなったんじゃ」

 

 手紙にも書いてあったな。何度考えてもtasさんでもない限り無理そうな内容だ。そう言えば、外れたとは書いてあったが一切当たらなくなったとなると話が変わってくるぞ?

 

「どんな攻撃もですか?」

 

「【サイコキネシス】、【コメットパンチ】、【じしん】、【バレットパンチ】……全て直撃しそうな攻撃じゃったが、何かにずらされるように当たっちょらんかった」

 

 なんだ? 倒れたポケモン達と関係があるのは確定として……どうして攻撃が当たらなくなったんだ? まさか本当に魔法でも使ったとでも言うのだろうか。うーむ、ポケモンが居るんだし魔法ぐらいあっても不思議じゃあないかもしれんが。

 

「次に、おい達全員が何かの力でいきなり部屋の外に吹き飛ばされてそのまま逃げられた。これがヌシの知りたがっていた内容じゃけん」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。部屋の外に吹き飛ばされた? 全員?」

 

 どういうことだ? 【ふきとばす】か? ……いや、ポケモンがやっただなんてケントさんは言っていない! ならいったい何なんだろう。

 

「あの場に居た全員な」

 

「……本当に不思議な内容ですね」

 

「狐にでもつままれたような気分じゃったよ」

 

 こっちだと本当に起こりそうな気分ですな。

 

「なるほど……そりゃあ手紙には書けんよなぁ……」

 

 大体の人はテキトーなことを書いて失敗をうやむやにしようとしているようにしか見えんだろう。

 

「手紙?」

 

「ああ、こっちの話です。お話ありがとうございました」

 

 そう言って頭を下げる。貴重な情報の山だった……出費以上の価値だな。

 

「構わん。他に何か聞きたい事はあるか?」

 

 俺からはもう特にないかな。

 

「じゃあわたしから質問いいですか!」

 

 びっ! っとハルカが右手を上げる。左手には6杯目の牛丼が乗っかっていた。あと何杯食べるんですかねぇ……

 

「む、ハルカ嬢か。なんじゃ?」

 

 彼の中ではハルカの呼び方はハルカ嬢で定着してしまったらしい。

 

「呼び方変えてください。あと樵をやっていらっしゃると言っていましたがケントさんは狐の調印を持っているんですか?」

 

 ああ、そういえば色違いのキュウコンに認められた人以外森に入れないんだったか。

 

「あれか。確かじじどんが持っちょったが……おい自身は持っちょらんな。あれを持っちょるのは街全体で見ても10人ぐらいじゃろう」

 

 そんなに少ないのか。

 

「受け継がれるもんでもなし、お狐様に認められるかどうかは個人の資質じゃけん。ほとんどの樵は砂漠側の木々を整える仕事ばかりじゃな。じゃっどん、おいも子供の頃3回だけ社に行った事があるぞ。じじどんの社の修復や掃除手伝いとして駆り出されてのう、常にロコンが横に付いた状態でなぁ……そんときにストライクと出会ったんじゃ」

 

 ゆっくりとストライクが頷いている。

 

「そういえばかなり特殊な体色をしているけれど、最初からこうだったんですか?」

 

 お、それ俺も気になっていたんだよな。

 

「そうじゃ。じゃけんボロボロになるまで戦闘を続けていたようで、社にもたれかかる様に倒れちょってな。それを助けてからの付き合いじゃのう」

 

 ストライクが無言で頷いている。いぶし銀だなぁ。少しぐらい喋ってもいいのよ?

 

「あの出会い以来、ただひたすらに強くあり、斬ることのみを追求してきた。そいがおい達の原点じゃからな。おいからも幾つか聞いていいか?」

 

「なんです?」

 

「ヌシは様々な技を訓練しちょるみたいじゃが、どういう発想であんな技を訓練させようと思ったんじゃ?」

 

 あんな技と言っても色々とありすぎて困るんだが。

 

「確かにキョウヘイ先生って無駄に応用力が高いよね。戦術研究ノートとかにもだいぶ組み合わせを書き込んでいるし」

 

 そうだなぁ……

 

「確かに俺が考えるのも多いけれど、一部の技は俺が組み合わせを考えた訳じゃなくてな。御神木様達が自分で考えていたりもするんだぜ? ちなみに網代笠がやっていた【しびれごな】と【かげぶんしん】の連続使用は網代笠が考えて編み出した逃走方法だ」

 

 あれには驚いたもんだよ。自分の【しびれごな】では痺れないからそれを盾に安全に【かげぶんしん】を積むという方法だ。大賀のやっていた【バウンドガン】ほど斜めにはぶっ飛んでいないが……いつかはそういう技を網代笠も生み出してしまうのだろうか。

 

「それ以外にも接触時に爆発する種の連射だとか、全て初めて見る戦闘方法でなぁ……どういう理論で生まれているのか気になったんじゃよ」

 

「なにそれわたし知らない」

 

 こっち向くな。その技はまだ研究中だから伏せているんだよ。

 

「理論……理論か……とりあえず技そのものの特性を考えてやる所からだなぁ。カモネギを倒した【ロックショットガン】を例に考えるなら、まずは【こうそくスピン】が【ステルスロック】や【まきびし】を弾くという性質に目を付ける。次に弾けるのなら攻撃にも転用できないかなとか考えてノートなんかに書きなぐる。そうした後に理論上のものを御神木様達と相談。意見交換をしてから最終段階として訓練場等で実地実験を始める。かなり端折っているけれどもこんな感じのものを流れでやっているかな」

 

 さっきも大賀のお陰で色々なインスピレーションを受けてな、【バウンドガン】と【タネばくだん】を組み合わせたら回数接触型の爆弾にならないかな? なんて思ったりしている。狙いがずれたと思って安心している敵の真上から弾丸が降り注ぎ、ついでに爆発する。威力もそれなりに出るだろう。うん、なかなかにえげつないな。忘れない内に理論とかをメモしておこう。

 

「それにだ。そういう点なら俺だけじゃあなくてハルカも言うべきじゃあないか? お前の発想だってかなりぶっ飛んだ内容だろうに」

 

「と、言うと?」

 

 ケントさんが不思議そうな顔をする。

 

「えー、わたし達だと同時にできない。だから、代わりとして先に発射した技に追いついて蹴り落とすとか考えるのは普通でしょう?」

 

 それが普通だったらルチアさんとかは反応しないと思うんだ。正直俺達の戦い方って普通のバトルよりコンテストバトル向けだとはつくづく思っている。それでも方向性は変えないがね。

 

「……オヌシらどっちもどっちじゃよ。似た者同士じゃな」

 

「まぁ、俺の弟子だしな。似るのも仕方がない」

 

「わたしの師匠ですし、似るのも仕方がないかも」

 

 態々言葉まで合わせなくてもいいんだぜ。

 

「でもこれってケントさんにも言えますよね」

 

「む?」

 

「だっていくら斬ることだけに特化しているとは言っても、普通は合間に他の技も扱うと思うんです。それでも信念として貫き通している訳でしょう?」

 

 まぁ、ハルカの言う通りだな。

 

「おい達はソレしか知らんからな。寝ても覚めてもソレのみを追求し続けちょる。その為にはよそに振れる余裕なぞなしということじゃな」

 

 なるほどなぁ。

 

「今のおい達ではまだ足りん。じゃけん、更なる極意を求めて斬る修行を続けちょる」

 

 極意か……燕はもう通り越しているから、極意となると龍を切り裂くとかかね。

 

「その道を歩み続けてどこまで征くので?」

 

「無論、果までじゃ」

 

 まったくもって予想通りの答えです。納得の強さだよ、ホント。

 

「ケントさん達のように斬ることのみに特化した人が相手になる場合のことも、これからは考えないとな……」

 

 ゲームをやっていた時の意識で長所を伸ばすということは頭の中に入っていたが、ただただ一つを目指す人が居るだなんて思ってもいなかったからなぁ。多彩に、どんな状況でも広範囲で刺さるという考え方が強すぎたんだろう。これも一つの転換期だな。

 

 再戦に備えて今の内からケントさん用の対策を考えるのも面白そうだ。

 

 そのまま雑談をしながら晩御飯を食べ終え、支払いをしてケントさんと別れる。

 

「早めにバッジを集め終えるのを期待しちょるな。次の再戦、楽しみにしちょるぞ!」

 

「ええ、それまでケントさんもお元気で」

 

「おう!」

 

「お話ありがとうございましたー!」

 

 さて、宿に戻ったらジム戦を含めて色々と考えないとな。

 

 


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