カイオーガを探して   作:ハマグリ9

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ダイゴさんの大誤算

 ポケモンバトルを行う前に、顔を横に向けながら自販機に1000円札を入れてはおいしい水を連打する行為を繰り返している。おいしい水は1本200円。ここで事前に持ち金を減らすことでバトルに負けても問題ないように備えておくのだ。見よ! この完成された16連打の安定感を! 

 

「ウオォォォォッ!!」

 

「ママー、あの人何やってるの?」

 

「しっ!! 見ちゃいけません!!」

 

 …………き、気にしないもん! 子供の残酷で真理を突いた言葉なんて、全然効いてないんだからね! お、あたりが出た。ラッキー、おしるこを貰おう。こんだけ纏めて買うとポイントの貯まりも早いな。

 

   ◇  ◇  ◇

 

「次の方どう……ヒッ!!」

 

「すいませーん、コロシアムに登録をお願いします」

 

 何をこの人はこんなに怯えているんだろうか? 服装をみてもどこもおかしくはない。社会の窓も完全に閉まっている。後ろに厳つい人でも並んでいるのだろうか? 後ろを向くとポケモンブリーダーの人から目を逸らされた。解せぬ。

 

「あ、あの…………そのままでポケモンバトルを行うのですか?」

 

「え? ……ええ、そうですね」

 

「わ、わかりました。トレーナーカードをお貸しください」

 

「どうぞ」

 

 なぜかトレーナーカードと俺の顔をまじまじと見ている。このマスクに惚れたか……このワニマスクも罪作りなマスクだぜ。

 

「と、登録が完了致しましたので、順番が来るまで席に座ってお待ちください」

 

「ありがとうございました」

 

 お礼を言って受付から出たあと、流れるようにトイレに行き鏡で確認をする。

 

「そんなにおかしいかなぁ…………この精巧なワニの被り物」

 

 ダイゴさんはそのまま流していたから問題ないと思うんだがね。インパクトが足りなかったか? イメージアップの為に、お金が貯まり次第、他のアニマル被り物シリーズを揃えよう。

 

 次買うとしたら馬かヤギだな。キリンも捨てがたいが、いかんせん見にくかったので今回は断念する。値段も相応だったし。本当に金策しないとね。

 

 席に戻ると、御神木様(テッシード)は固まったように動いていなかった。また鉄分でも摂取しているのだろう。掲示板に目をやると、次の次ぐらいに第5コロシアムで戦う事になっていた。そろそろ移動するか。

 

「御神木様、そろそろ案内して欲しいんだが」

 

 こちらをちらりと見たが動かない。抱えて運べということなのだろうか? この辺りの行動には性格が出ているな。まぁいいや、さっさと現地に行こう。

 

「よっこいしょっと」

 

「クギュッ!」

 

 そう思って右手でラグビーボールのように抱え込むが、どうにもお気に召さなかったらしい。違ェんだよ! とでも言うかのように抗議を上げて、最終的にはバックパックから頭だけを出す状態で納得してくれた。

 

 第5コロシアムは2~4に比べて、少しフィールドに特徴が出ている。さしずめ2~4がノーマルフィールドで、1と5以降が特殊フィールドなのだろう。ちなみに最大のフィールドである第1コロシアムはなんと水中戦のようだ。

 

 4階奥にある第5コロシアムのフィールドは草原のようになっている。草やノーマル、飛行タイプが戦いやすそうだが炎タイプが出てきたらどうするのだろうか? フレンドリーショップの店員さんに聞いてみると「特殊フィールドではそれに合ったポケモン同士で戦わせる」とのことらしい。

 

 よく考えてみれば第1コロシアムに呼ばれたのに、水ポケモン持っていない人だと悲惨なことになるな。特に炎と岩、地面タイプ持ちだとまずフィールドに出ることができそうにない。

 

ということはこれ稼ぎ時か? ダイゴさんが気を使ってくれたのかね?

 

   ◇  ◇  ◇

 

 はい、甘く見てました。また会いましたねオオスバメの人。この前より容赦なくやられてしまった。一切降りてこない鳥葬はえげつなさ過ぎると思うんだ。でも、空中で好きなように動ける状態こそが鳥ポケモンの有利な部分なんだよなぁ。反省。

 

 これを機に、対空中技を編み出す必要がありそうだ。まぁ、難しい事ではなさそうではある。もう少し【ステルスロック】の練度を上げれば、空中戦を防げるやもしれん。今夜帰ったら御神木様とミーティングしよう。

 

 ポケモンセンターで回復した後に、受付に戻ってもう一度登録してもらう。また第5コロシアムらしい。相手によっては考えていたアレが出来るやも知れぬ。期待で胸の鼓動が激しくなるな、これが恋か。

 

「君のはただの酸欠だと思うよ?」

 

「ダイゴサン! ヌワァゼココヌィッ!!」

 

 このワザとらしい程のオーバーリアクション! ある種のお約束とも言える。

 

「その反応を待っていた。第5コロシアムはどうだったかな?」

 

「なんか、ダイゴさんだんだん反応が俗世に染まってきちゃったせいで、面白みが薄れてきちまったかな……」

 

 これほど一方的で無礼な発言もないだろう。反応的に真面目な話ではないっぽいし、このままのノリでいいか。

 

「感想もなしにそれは酷くないか!? で、初戦はどうだったのさ」

 

「フィールドは気に入ったよ。初戦は空中からの縦横無尽な攻撃で、上手くこちらのペースに乗せられなかったな。もう少しでいけそうなのだが………」

 

「なるほど、じゃあそんな君にアドバイスを授けよう」

 

 そいつはいい。為になりそうだ。

 

「おお、チャンピオンからのお言葉をもらえるとは僕は実に運がいい」

 

「…………そろそろこの流れやめないかい? 僕のイメージが崩れそうなんだが」

 

 俺に関わってしまった以上、それは時間の問題だと思うんだがね。

 

「で、アドバイスというのは?」

 

「君は【ステルスロック】を下から生やしてばかりだけど、ここは船の中で密閉空間なのだから上から生やしたって問題ないんだ」

 

 ああなるほど、上にも撒いて空を狭めるのか。そっちは盲点だった。確かにそれなら飛行タイプのポケモンの相手もなんとかできそうだ。攻撃ルートを絞らせることができれば、それだけ迎撃もしやすい。流石はホウエンチャンピオン。お礼にこの言葉を送ろう。

 

「ダイゴさんダイゴさん、社会の窓開いてるよ」

 

「え? ……お見苦しいものを見せてしまったようだ」

 

「今更取り繕っても仕方がないと思うよ? 俺は」

 

「なんということだ…………」

 

 ダイゴさんは黒っぽいズボンを履いているため、チャックそのものは見えにくい。ならなんでわかったかって? パンツが見えたからだよ。

 

「まぁ、気づきにくい服装だし大丈夫じゃね?」

 

 言葉の責任までは持たんがな! 少し気を落としたようにダイゴさんは帰っていった。あとでちゃんとしたアドバイスのお礼に、ホエルオーの涙(チョコレート味)とワニの被り物を送ろう。ワニも石が生活に関わってる生き物なんだぜ! 胃石といって、それで食物をすりつぶして消化の助けとするか、水棲動物の場合は体重の調整にも使うのだ。

 

「さっそく試してみるか」

 

「クギュルルル!!」

 

 先ほどの雪辱を晴らすためなのか、かなりやる気があるようだ。向上心があることはとても重要なことだ。技を覚えたりするのも、このあたりの性質が関係しているのだろう。

 

 順番を見ると4番目に俺の名前がある。少し時間が空きそうだ。今のうちにやるべきこと…………写真見ながら防衛場所のプランでも練るか。

 

 見た感じ一本道で、横に案内板があるのがわかる。もともと考えていた通り、まず道を狭めて1対1にさせるためにも【ステルスロック】で壁を増量する。次に反対方向への道は完全に封鎖させたい。これは実験済みだから何の問題もない。

 

 あとは【ステルスロック】で弱っている相手に攻撃、防御6段階上昇状態で押しつぶす。【タネばくだん】は【ステルスロック】の壁を破壊しそうだから、あまり使えそうにない。

 

 両方封鎖すればいいかとも考えたが、下手に封鎖すると相手が何をしでかすかわからん。素直にポケモンバトルでやりあった方が楽だと思わせられるような風にしないといかん。戦い終わったあとの、岩の片付けも大変だしな。

 

 あくまでも、目標はダイゴさんが来るまでの時間稼ぎ。まぁ、当日誰も来ないなんてオチもありえそうだが…………うむ。

 

 考えが纏まったところで顔を上げると、ちょうど次が俺になっていたからそろそろ移動しよう。

 

 バトルで理論が上手くいくか楽しみだ。できれば特殊攻撃系ではなく物理系でいてほしいところ。

 

   ◇  ◇  ◇

 

「俺は恭平、よろしく頼む」

 

「チカよ、全力でやりましょう?」

 

 なんでこうもミニスカート着ている娘は、皆熱血系なんだ……もう少しで見えそう。実は態とやっていないか?

 

「ずっと気になってたんだけど、なんでワニの被り物してるの? かいじゅうマニアの真似?」

 

「いや、趣味だ。新しい被り物を買うためにバトルで稼いでいるんだ」

 

 彼女は、そーなのかと能天気そうに言ってフィールドの外へ出て行った。俺も早めに位置につかないと審判に怒られちまう。

 

 御神木様が定位置に着いた辺りで、相手もポケモンが出てきた。毛並みの良いマッスグマだ。相性的には……有利ではあるが、圧倒的に相手の方が早い。動きを抑え込む必要がありそうだ。

 

「試合開始!」

 

「御神木様! 【ステルスロック 城の陣】!」

 

「クギュ!!」

 

「マッスグマ、【でんこうせっか】」

 

「ゴロロロロ!」

 

 城の陣生成の前に一撃貰うが御神木様はケロリとしている。まぁ半減やしな。相手の方がダメージを受けている気がする。そうこうしている間に、以前から考えていた【ステルスロック 城の陣】が完成する。

 

 通常の【ステルスロック】とは違い、御神木様を中心に蓮の花のようにささくれた大きな石が展開している。いちおう真正面と真横に通路があり特殊技が放たれたらそこから逃げる予定である。

 

 相手からの攻撃ルートを固定し【やどりぎのタネ】、【タネばくだん】、【ころがる】などを当てやすくした陣だ。当然相手は突っ込むかどうか迷うはずだから、ここで積ませてもらう。

 

「【のろい】で待ちの体制!」

 

「クギュル!」

 

 【のろい】を積んで突破力を上げる。あとは遠距離でも【タネばくだん】ブッパゲーだ。

 

「これは厄介ね…………マッスグマ! 【あなをほる】ッ」

 

「ゴロロ!」

 

 穴を掘るか。jkの間では穴を掘るが流行でもしてるのか? いやらしい…………うむ。この辺りのネタをダイゴさんに吹っ掛けよう。

 

「もう一度【のろい】をした後に(かわ)して【やどりぎのタネ】!」

 

 穴を掘るの弱点は相手のポケモンの真下から攻撃することだ。道が決まっているし、振動でタイミングも掴めるならば、カウンターだって決めやすい。【やどりぎのタネ】が直撃したうえに、無理に避けようとしたせいで体勢を崩し【ステルスロック】の花に直撃した。あれは痛そうだがこれは勝負の世界、こうなることもあるさね。

 

 これで相手は攻めなければ【やどりぎのタネ】に吸い尽くされ、攻撃しようにも【ステルスロック】や鉄の棘が邪魔をし、御神木様の体力は常にマッスグマの最大HPの1/8+御神木様の最大HPの1/16分が回復していく。

 

 こちらは相手が攻めるまで【のろい】を積む。【すなかけ】が厄介だが、それを行うには少なくとも花の中央付近まで近づかなければならないため、こっちはカウンターを決めやすくなる。

 

「御神木様、もう一度【のろい】だ」

 

   ◇  ◇  ◇

 

 やはり連勝すると気分がいいな。御神木様もいろいろなポケモンから体力を吸ってご機嫌である。ただ、城の陣は待ちを完成させる必要があるのと、草タイプには通りづらいこと、特殊攻撃を行うポケモン相手には向いていないことが確認できた。だが思いつきでこれなら効果は十分だろう。

 

 財布の中身もだいぶ増えたので、ダイゴさん宛のものを買ってもまだ買えそうである。予定通りお礼のモノと、精巧なヤギの被り物、ついでに御神木様用の磨き布とオイルを買い換える。これで今日は部屋に戻ろうか。

 

 明日は今日買ったヤギを被って歩き回るとしよう。他の人の反応が楽しみだ。

 

 

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