7/
こうして、一人の少女が世界から消えた。
一ノ瀬志希という少女の死は、暫くの間、世間を賑わし、そして少しずつ話題にあがらなくなり、いつしか誰も語らなくなった。こうして、彼女の幕は閉じられた。
それからの話。
一ノ瀬志希の死から暫くして、一人の少女が立ち直った。
その少女は、ある種の強さを持っていた。
かつての少女を知る者がいたら、別人と見紛うほどの心の変化を持って。
ある者はそれを成長と呼び祝福し、ある者はそれを孤独と呼んで哀れんだ。
それでも少女は、一歩ずつ前に進んだ。強くなった。とても。
それが、大事な物を失った代わりに得たものが、補って余りあるものだったのか誰にも分からない。
それから、気が遠くなるほど、長い時が経った。
そして、一ノ瀬志希の死とは無関係に、世界は動き続けた。
志希のことを、フレデリカのことを、みんなのことを知るものが誰もいなくなっても、それでも時間は進み続けた。
世界は歩みを止めず、そして時間の針も止まらなかった。
人は外惑星へと帆を立てて、宇宙に広く散らばった。
それからもっともっと時が流れた。
宇宙から人がいなくなっても、観測者がいなくなっても世界は回り続けた。
そして時間と共に、宇宙は淡々と膨張して行った。
膨張して膨張して膨張して。
これでもかと言うほど膨張した宇宙は、ある時、膨らむことができなくなった。
そして、限界まで膨れ上がった宇宙は。パンパンの風船のようになった宇宙は。
それでも膨らもうとして。
そして。
パチンと弾けた。
弾けて、宇宙は。
収縮を開始した。
時間の矢は逆転し。
そして、そして、そして。
8/
金髪の少女が道を歩いていた。
特に理由があったわけではない。
ただ、街へ出ようと思った、それだけだ。
街を歩いていた少女は、何かに誘われるように道を歩んだ。どこか、懐かしい香りが鼻を擽るような気がして。
少女が歩いていると、視線の端で、何かを見つけた。
なんだろうか。少女は焦点を合わせた。
「あ────」
目線が、あった。
そこには、女の子がいた。自分とそう歳が変わらない、長い髪の女の子が。
その少女を見た瞬間、時が止まったような気がした。
知るはずがないのに。知っているはずがないのに。
なぜなら彼女とは初対面なのだから。
だから、知るはずがない。なのに、なぜだか酷く懐かしく、そして。
「あれ……」
頬に触れると、涙がつたっていることに気づいた。
「シキ……ちゃん」
口をついて出た言葉。その言葉とともに、涙がポロポロとこぼれ落ちる。
とめどなく流れ出る。体から水分がなくなっちゃうくらい、涙が出る。
それを見た女の子は、空を仰いだ。その顔には、少しだけ笑みが浮かんでいた。
少女は、宮本フレデリカは駆け出し、そして抱きしめた。
「……にゃはは」
少し気まずそうに、彼女は笑った。
「なんだ……。やっぱりパパ、間違ってたんだ」