パンジャンドラムにチート勇者をやらせてみた   作:蝋燭機関

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導入

 

 戦車や機械化歩兵が大地を縦横無尽に駆け巡り、巨大艦砲を搭載した戦艦に変わって無数の航空機を擁する航空母艦が溟海の新たなる支配者として踊り出、ジュリオ・ドゥーエの思想を体現する機械仕掛けの怪鳥たちが大空を埋め尽くした大戦争。

 

 『戦争を終わらせるための戦争』とも称された先の世界大戦から20年の休戦を経て、勃発するに至った二度目の全世界規模の国家総力戦はより陰惨なものとなり、世界が砲煙弾雨につつまれ、前線の軍人のみならず、銃後の一般市民をもその攻撃対象となった。

 

 

 そして狂乱の時代から数十年。

 

 当時を生きた人々のほとんどが鬼籍に入り、その記憶が世界から薄れつつある時。

 それは起こった。

 

 その場所は、大戦に勝利すれど日の沈まぬ帝国たる威容を失った国家。

 とは言え、国連安保理常任理事国、主要国首脳会議メンバー、未だに大国たる影響力と工業力を持つ国家でもある。

 水冷式重機関銃の冷却水で紅茶を飲んだなどの逸話や、主力戦車には紅茶を飲むための設備があるなど、紅茶が生産されていないくせに三度の飯より紅茶が好きそうな国である。(最近は少し商業的生産があるらしいが)

 

 

 その国で、ある文書がこのたび機密解除を受けたのだ。

 公開された文書に記されていたのは、かの大戦中に試作されたある兵器に関するもの。

 

 しかし、その兵器自体は実験段階で「あっ、コイツ使えないわ」と判断された出来損ないである。当然のことながら実戦に投入されることもなく、直接戦局に与えた影響など何もない。

 

 これが彼の国の元植民地にして、現在は超大国である国の暗殺された大統領に関するものや、同じく戦局に然したる影響を与えなかった兵器でも、護衛駆逐艦がフィラデルフィアから遠く離れたノーフォークへと瞬間移動したという都市伝説に関するものでもあったのなら、世間の注目を集めたのだろうが、大戦中に無数存在した試作兵器の一つに関する文書、特に注目も何もされないハズだった。

 

 

 しかし、現実は違った。

 

 秘密のベールを脱ぐに至ったそれは、瞬く間に全世界でニュースとなって世間の目にとまるものとなった。テレビはもちろんネットでも、その公開情報に関する記事が作られた。

 

 

 特に極東の島国では、その文書に対する反響は凄まじかった。

 ネットはお祭り騒ぎとなり、各まとめサイトで機密文書関連のものが多くまとめられた。

 元同盟国でもあり(今でも準同盟国という間柄でもあるが)、同じ島国同士、何か共通するものがあるのだろう。

 

 だが、なぜたかが一試作兵器が多くの関心を集めたのか?

 それは、この兵器のあまりのイカれ具合にある。

 

 確かにその兵器は実戦で用いられなかったが、より正確には用いることが出来ないレベルの失敗作なのだ。

 何を血迷ったのか、その兵器はロケットの推進力でもって車輪を回転させ、しかも誘導装置も無しに目標に突っ込ませるというものだ。当時の技術水準では真っ直ぐ進ませることすら不可能であり、頻繁に横転する始末。

 もうコンセプトからして、破綻した代物である。

 

 

 こんな有様であるため、「何故実験が行われるまでに至ったのか?」「存在自体が攻撃地点を欺瞞するための陽動作戦の一環だったのではないか」「でもカヴェナンターやデファイアントを作るような国だし……」などと議論百出する様であった。

 

 

 ただこの兵器そのものに関しては、大昔の大戦中に既に存在が知られており、こんなとち狂った兵器が存在したということが今回公開された情報ではない。

 軍もこのような兵器には期待しているはずもなく、戦後に研究を継続していたということもない。

 しかも、この兵器は一部の人々の間では非常に有名な存在ではあるものの、一般の大多数の人々はよく知らないものであり、ちょっとやそっとの情報では、それほど世間を騒がすことはないはずであった。

 

 

 ならば一体何が公開されたのか?

 

 

 それは、開示された情報が某所に保管されていたこの兵器のプロトタイプのうち一つが、異世界に召喚された可能性があることを暗に示していたからだ。

 

 公開された情報は文書以外にも映像が含まれており、その映像では、倉庫らしき場所に置かれた埃をかぶった巨大なボビン状の物体の周囲に、謎の輝く図形――(ジャパニーズ・ファンタジーでよく見られる魔法陣と呼ばれる謎の言語やマークが書かれたアレ)が出現、直後画面全体がまるでスタングレネードを炸裂させたかのような眩い閃光で覆い尽くされ、その光が収まった頃には、先ほどまでそこに存在したハズの巨大なボビンの如き物体が綺麗サッパリ消え去ってしまっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、公開されたこの映像は、殆どの人はよくできたCGであると考えていた。

 要するに、広大なネットの海に広く存在するフェイクの心霊映像の類いだと考えていたのだ。

 

 だが、これはそのような出所不明を謳うようなものではなく、歴とした政府機関により公開されたものである。

 いかに内容がイカれたものであるとはいえ、何故こうも世間ではそのような扱いを受けたのか?

 

 

 それは(ひとえ)にその文書が機密解除された日時に起因していた。

 

 機密解除がなされ、文書が衆目にさらされた日は4月1日。

 世間一般ではエイプリルフールとも呼ばれる日。

 

 当該国の公共放送局を含めた各種メディアがエイプリルフールでやたら気合いの入った嘘のニュースを作ることも関係しているのだろう。

 

 結果として、ブルーピーコックに引き続き英国政府は、再び公開された情報が事実であるとの追加発表をすることになった……

 

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