今回からスーパースターとZのクロスを書いていこうと思います。過去作を読んでくれた方にも、今作が初めてという方にも楽しんで頂けるように頑張ります。
第1話 変わらぬ朝
子どもの頃は今でも覚えている。ごく普通に遊んで、ごく普通に暮らしていた。
でも……あの時だけはどの時代よりも鮮明に覚えている。ある日突如として現れ、瞬く間にテレビの一面を覆った怪獣たち。ヤツらがいとも簡単に街を壊していく様子。その惨状を見ていた俺を、母さんはいつも抱きしめてくれた。俺が怯えていると思ったんだろう。けれど決まって俺が見ていたのは怪獣じゃない。そんな怪獣と戦う巨大な異星人の背中だ。
どんなに倒れても立ち上がるその姿に……俺は憧れていたのかもしれない。その背中が、どこか父さんにも似ていたから。
*****
「はあ……なーにがウルトラマンのようになりたいだよ。何もこんな時に思い出さなくてもいいのに」
カーテンの隙間から太陽の眩しい光が顔を照らす。眩しさと眠気で瞼が重い。それでも口だけは元気なようだ。
部屋の中で1人、ベッドに横たわりながら
「始~、早くきなさい~」
「はいはい、今行きますよ~っと」
居間から聞こえてくる母の声に動かされ、始はノロノロと身支度を開始する。カーテンを開けると、彼の心情とは真逆に清々しい青空が広がっていた。「お天道様は今日もご機嫌ですね」などと嫌味を言ってやろうかとも思ったが、大人げない気がしたので喉元辺りまで来ていたそれをどうにかして飲み込んだ。
「……」
部屋の隅に丸まっている小さな胴着には目もくれず、淡々と制服姿に着替えていく。制服に身を包んだのは今日で2度目。記念すべき第1回目は父親に見せた時だ。
「……よし」
鏡で取り敢えずチェックし、リュックをもって自分の部屋を後にする。結んだネクタイがちょっぴりキツい。
「おはよう、母さん」
「おはよう。始、入学早々遅刻する気?」
「そんなんじゃないよ」
母
「ごめん始、私もう行くから。お皿洗って、出る時は鍵閉めていってね」
「俺も子どもじゃないんだから、そんなことくらいわかってるよ」
「私にとってはまだまだ子どもよ。あとそのすかした態度、似合ってないわよ~」
「……うるさいよ」
始の反論ですら、早紀は笑って受け止めていた。
「それじゃ、本当に行くからね~」
母の言葉に、始は手を振るだけで答える。扉の閉まる音が聞こえた後、彼はマグカップを持ちながら先程から流れているテレビに目を向ける。しかし特段面白い話題もなかったため朝食を胃に流し込み、先ほど母に言われた諸々を済ませる。
「父さん、行ってくるよ」
そして最後に、父
外に出れば活気あふれる音が鼓膜を震わす。街を歩けば誰もが楽しそうで、街角ではモデルが撮影をしている。そして路上パフォーマーの音楽がBGMのように鳴り響く。始としてはうるさくなく、むしろ心地よい。こうしていられることが、何よりも
「10年か……」
街行く人々と同じように歩みながら、始は呟く。
光の巨人、ウルトラマンが地球を去ってから10年の月日が流れた。
当時はウルトラマンがいなくなり騒然となったことを覚えている。あらゆるメディアが「ウルトラマンの行方」「ウルトラマンはどこへ?」といった見出しやテロップで世の中を埋め尽くしていた。加えて、「ウルトラマンは我々を見捨てた」「ずっと守ってくれると思ったのに裏切られた」などと人々の声があったことも誰もが知っている。
結局、自分たちにとって都合が悪くなってしまえば、幾度も守ってくれた命の恩人にすら牙を向けてしまうのだ。しかし、そんな彼ら彼女らの批判を否定しきれるほど、世の中は平和ではない。
『先日都内に現れた巨大怪獣は、ビートル隊日本支部所属対怪獣特殊空挺機甲隊……通称
『えー、今回の怪獣討伐にて被害を受けてしまった近隣住民の皆様────』
街頭モニターではテレビキャスターの報道の後、すぐさま記者会見の様子が映される。
そう。今も尚、地球は怪獣や宇宙人の被害に晒され続けている。あらゆる場所から怪獣が現れ、人類の築いた文明を瓦礫の山に変えている。地上は勿論のこと、海や空にでも怪獣は姿を現している。さらには宇宙から飛来してくるなんてものも珍しくない。宇宙人だって、コソ泥の如く人々に悪事を働いている。そんな増加していく怪獣災害、宇宙人被害に対処するため、10年前に発足したのがVersatile Tactical Lerder。通称ビートル隊だ。ウルトラマンが去った後も彼らが戦いを続けている。
だが人という生き物はあらゆる環境に適応する。怪獣が現れるかもしれないという不安を抱きつつも日常生活を送るし、怪獣の被害を伝えていた街頭モニターに目を向ける者だって始を含めて数人しかいなかった。それくらい、世界は怪獣や宇宙人という存在を受け入れている。
「……」
言葉に出来ない複雑な感情を抱きつつ、始はモニターを見つめていた。すると
「……っ!?」
気付いた時には視線が地面に向けられていた。左肩や太ももの辺りが痛い。ぶつかったのかなと考える暇なく地面に倒れ込んでしまった。
「ああ!? す、すみません!!」
「痛ぅ~、気をつけろよな……ってかのん!?」
「え、始くん!?」
ぶつかってきた相手は、どうやら始のよく知っている人物のようだ。
初回なのでこの辺で。