Superstar-Z   作:星宇海

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2週間以上経ってますね……申し訳ありません。


第12話 ギャラクシーは突然に

 

 

 

 見渡せばそこは黒。周りにはポツポツと光る小さな点。光る点が幾つあるかわかりません。どのくらい離れているのかもわかりません。

 

 目の前には白い球体が。そして後ろには、青い球体が。皆が住んでいる場所。僕が守ると勝手に決めた場所。僕は巨大な剣を片手に黒い宙を駆けていきます。目の前には巨大な獣がいて、眩い光りが僕に迫ってきます。避けると後ろに球体に当たるので、僕は剣で受け止めます。

 

 獣は叫びます。どうして叫ぶのか。悲しいから? それとも怒っているから? 今となってはもうわかりません。

 

「────」

 

 僕は剣から光を放ちました。同時に、獣も背中の大筒から光を放ちました。放った光はちょうど僕らの真ん中でぶつかりました。そして眩しい光が目の前で散って、僕とアイツは落ちていきます。

 

 先にアイツが地面に落ちました。次は僕の番です。どんどん地面が近付いて、近付いて……最後には────

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ッ!?」

 

 男は目を覚ます。先程見たものは既に終わったこと。今は自宅の寝室だ。男は胸の中にあった妙な安心感と悲しさを流すように息を吐く。ベッドから起き上がって時計を見れば、起床時刻より数分早かった。

 

「思い出した上に、早く起きるなんて……」

 

 あの夢……あの過去を思い出すことは最近は無かったのだが……。おそらく、原因はあの巨人のせいだろう。

 

 彼がこの星を去って10年。今もどこかで親切に手助けをする彼と入れ替わるように現れた巨人。一体何故、どうして来訪したのか。いずれ彼らと話さなくてはいけないだろう。そう思うとちょっと憂鬱になる。

 

「この星は愛されてるよな。ウルトラマンに」

 

 平和な街を一望しつつ、青影正太は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「多分だけど、ゼットの声が聞こえるのはゼットライザーを媒介にしているから……かもね」

『成程……。じゃああまりにも始とゼットライザーの距離が離れると、俺の声が聞こえなくなってしまうわけですな』

「多分だよ多分」

 

 始とゼットは学校へ向かいつつ呑気に話し合っている。話題は勿論、彼らがインナースペース外でも話せるようになったことである。

 

 原因はどうでもよいと流してはいたが、帰宅してからやはり気になって調べていた際、ゼットライザーを自室に置きっぱなしで洗面所へと向かってしまった始。するとゼットの声が聞こえず、自室に戻ったら再度聞こえるようになった。もしかしてと思い数回検証し、確証を得たのである。しかしゼットと話せるようになったのは突然の事であるため、他にも要因があるのかもしれないが。

 

『でも困ったな……始だってずっと持ってるわけじゃないからな』

「そうだね。あ、ゼットライザーも地球人からは見えない素材で出来てるとかない?」

『いや~、どうだったかな……ヒカリ先生そんなこと言ってたかな……』

「聞いてないの? もしかして忘れたとか?」

『……すまん』

 

 ゼットの声があまりにも申し訳なさそうだったので、始は思わず笑みを溢してしまう。しかし覚えていないのならしょうがない。後でサラッと思い出すこともあるだろうし、今だって別段都合が悪いわけでもなかった。

 

「まあ、しょうがない。じゃあ持てる時はなるべく近場に置くようにするよ」

『そ、そりゃ良くない! 始のプライバシーとやらもありますでしょうし……』

「だったら聞かないように、見ないようにしててよ」

『ど、努力する』

「ハハ……ほどほどでいいからさ」

 

 他愛もない会話。しかし傍から見れば独り言を呟くだけの狂人だ。よって人々に見られた場合には社会的に終わる可能性もある。

 時と場所には注意しなくては。街行く人たちを横目に、始は口を閉じた。するとタイミングよく背後から声が。

 

「始くん!」

「おはよう、かのん!」

 

 かのんは小走りで始の隣へ。そのまま2人は並んで街中を歩く。そこからは他愛もない話だ。でもある程度進むと、ある話題に辿り着くことになる。そしてかのんは尋ねてくるのだった。

 

「ねえねえ、代々木のライブどうだった?」

「またかよ。だからすげー良かったって」

「ホント!」

「ホントにホント」

「そっか……えへへ……」

 

 最近ずっとこの調子である。

 

 代々木スクールアイドルフェスで優勝したのは、やはりと言うべきかSunny Passionだった。評判通り……いや、それ以上の圧倒的パフォーマンスを前にして、始は目を奪われてしまっていた。

 

 ではクーカーはどうだったのか。結果を言うと、彼女たちは特別賞に輝いた。初ステージにも関わらず、多くの人々を魅了し、他のスクールアイドルと競い合える程のポテンシャルがあると知らしめたのだ。

 かのん的にはようやく人前でも歌えたと言う事実もあって舞い上がっているのかもしれない。彼女のことを思えば、確かにわからなくもないが。

 

「浸ってるのもいいけどさ、今日から正式に活動するんだ。シャキッとしろよシャキッと」

 

 理事長との条件である「1位を取る」ということは出来なかった。しかしこの特別賞が効いたのか、なんと活動を認めてくれたのだ。その旨や部室、練習場所の提供については昨日の放課後伝えられた。部室の鍵は今日渡されることになっており、これで本格的に動けるというわけである

 

「そこはわかってる。結ヶ丘のスクールアイドルとして……っていうのもあるけど、ライブをやって、もっといい歌を歌いたいって思ったから」

 

 どうやら言わなくても大丈夫だったようだ。かのんはかのんなりに色々考えているのだ。

 スクールアイドルを通し、彼女も変わり始めている。そんな姿を見ていたいと思うと、ウルトラマンとして平和のために戦うのも苦じゃないなと心から思う。

 

「そうかい。じゃあ、体力トレーニングはもう少し厳しくしてもいいかな〜」

「え、あれ以上に!? 始くん勘弁してよ〜」

「いい歌を歌いたいんだろ?」

「それとこれは別〜!」

 

 別々の壁を乗り越えた2人は、いつものように学校へと歩みを進めていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ういっすー! クゥクゥちゃんから話聞いたよ。活動、許可してもらえたんでしょ?」

 

 教室に向かう途中、可可と千砂都に遭遇。どうやら可可から話は聞いているみたいであり、始とかのんは事実であると首を縦に振る。

 

「そうなんだよ! 正直ダメかなーとは思ってたんだけど」

「本当、呼ばれた時はヒヤヒヤしたよ」

「アハハ、でもよかったね」

 

 昨日のことを話す2人を見て笑う千砂都。彼女も自分の事のように喜んでくれているのがわかる。

 すると可可から報告はそれだけではないと告げられる。携帯を取り出して見せてくれたのは、クーカーの共同アカウントであった。

 

「なんと……フォロワーが2千人になったんデス!」

 

 先日のライブが効いたのか、多くの人々に注目されたようだ。

 正式に活動を認められたこと、そして注目してくれているファンが増えた事。これらを受けて彼女たちは練習により一層力が入ることだろう。

 

 しかしすべてのわだかまりが解け、心地よく活動がスタートできるというわけでもない。まだ身近な、同学年との問題は片付いてはいないのだから。

 

「……」

 

 前方から歩いてくるのは音楽科の制服に身を包んだ生徒である彼女……葉月恋。未だにスクールアイドルとしてかのん達が活動することを認めていないのは、火を見るより明らかだった。

 

「こちらが部室の鍵です」

 

 やや語調に棘があるようにも思えなくもないが、揚げ足取りのように問い詰めるのも良くない。こうやって鍵を持ってきてくれただけでも感謝すべきだ。

 かのんの掌へ落とすようにして鍵を渡した恋。そして用は済んだと帰ろうとするが、かのんが呼び止めた。幾秒か躊躇した様子を見せたかのんだったが、意を決して恋へ伝える。

 

「私たち……この学校の力になるような成績を収められるようにする」

 

 かのん達も同じ。音楽を特色とする学校として恥じないように、そして新しく始まった結ヶ丘を共に盛り上げようとしている。方法や形は違えど、向いている方向は同じだ。だからわかってくれるのではと歩み寄る。けど、返ってくる答えは期待していたものとは違くて……

 

「だったら、スクールアイドル以外の活動にしてください。そうであれば、いくらでも応援してあげられますから」

「……それはできない。あのライブを通して、スクールアイドルって本当に素晴らしいって思った。それにもっと練習して、いいライブをしたい、いい歌を歌いたいって思ったから」

 

 スクールアイドルでなければ。彼女はしきりに口にする。他の方法で学校を盛り上げてくれと。

 でもそれはできないとかのんも食い下がる。代々木のフェスを、それまでの過程を通して多くの刺激が彼女にもたらされたのだろう。自分の力を高め、歌……ライブを披露したいと強い眼差しで訴えていた。

 両者の意見は平行線。同じ目標(ゴール)を目指しているが、交わることは無い。今話してもあるのは衝突のみである。

 

 平行線であることを恋も悟ったのだろうか。4人の元を後にする。

 

「残念ですが、今のあなた達がラブライブで勝てるとはとても思えません」

 

 厳しい言葉を残して。

 

『ウルトラ手厳しいですなぁ……にしても不思議だ。どうしてあそこまでスクール……なんたらを認めようとしないんだ?』

「さあな……」

 

 葉月恋は何故そこまでしてスクールアイドルをやって欲しく無いのか。学校の評判が下がる……という訳だけでは無いように思えた。第一、初参加で特別賞を貰えるレベルのライブをしたのだからこれからの活動次第でさらに化ける可能性はあると示した。それにスクールアイドルは世間一般的にも認知され、学生のみならず人気であることはあちこちで開催されているイベントに彼女らが呼ばれていることが証明している。さらに過去には海外やアキバドームにてライブを行ったグループもおり、同じくアキバドームで大会が開かれたと記録にも残されている。自己を表現する芸術の1つとして誇ってもいいはずだ。

 けれども彼女は眉を顰めていた。やめてくれと訴えていた。そこまでしてスクールアイドルをして欲しくない理由とはなんなのか。始の中には疑問が残る。

 

「始、何か言いまシタ?」

「いや別に!? 何はともあれ鍵は貰ったんだ。これからはより一層力を入れて練習しよう!」

 

 ついついゼットとの会話に答えてしまったが、なんとか誤魔化すことは出来たようだ。ひと息ついて視線を向けると、かのんだけは悲しそうに恋が去っていった方向を見つめていた。

 

「かのん、お前が言った通りこれからも練習して学校に恥じない活躍ができたら、葉月さんだって認めてくれるかもしれない。そう信じて今はやっていくしかないよ」

「始くん……うん、そうだよね!」

「始はいつも前向きなんですネ。それが頼もしいですガ」

 

 かのんの表情に明るさが戻ったところで、可可が話題を提示した。言われてみればと千砂都も顎に手を当てている。

 

「前向きに考えないと出来ることも出来なくなっちゃうからな。どうなるかわからないのなら、まずは信じてやっていくだけってね」

 

 精神は肉体に作用する。後ろ向きな思考は体を萎縮させ本来の動きを阻害してしまう。だからなるべく前向きにいよう、考えようとしているのだと語る。先のことはわからない。思い描いていたこととは違うかもしれないけれど、信じてやっていくぐらいタダなんだからと。

 笑顔を見せて語る始に、可可は納得したようだった。一方かのんと千砂都は彼らしいと笑みを浮かべている。

 

 後味の悪い雰囲気が始によって好転したところで、HRの開始を告げるチャイムが校舎に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「始~はやく購買行こうぜ!」

「悪い。俺さっきのプリント職員室に持っていかなきゃいけねんだわ。先行ってろよ」

「まったく大変だな。頼まれたら片っ端から引き受けてるだろ? もしかしてお前……先生に媚び売ろうってか!?」

「そんなんじゃない。ただ断る理由もないだけ。ってか早く行けって。お目当ての品、売り切れるぞ」

「ん、それもそうだな。じゃ、先行ってるわ!」

 

 午前中の授業が終わり昼休み。授業中は先生の声が大半を支配する教室もこの時間は騒がしくなる。

 購買へ走っていく友人を横目に背伸びをした始は、教卓に置かれたプリントへ目をやる。授業で使ったものなのだが、先生の荷物も多くプリントだけ持ってくるように頼まれたのだ。

 

『始、さっきの……歴史だっけ? 怪獣の事にも触れてたな』

 

 頭の中でゼットが語り掛けてくる。4限は歴史の授業であり、教師は近年の怪獣についても触れていた。それがゼット的には気になったのだろう。

 

「そりゃ触れざるを得ないだろ。現に今も怪獣災害があるんだし」

『やっぱり、怪獣専門の授業とかあるのか?』

「専門……はないかな。怪獣の生態は生物に含まれるし、大体は社会の科目で触れるし……」

 

 生徒に見られないよう口元を隠して話す始。

 怪獣が出現したからと言って、また新たに教科が増える訳でもなかった。社会科や理科の授業で触れるだけだ。避難についても全校集会のような形で行われており、大きく学校の仕組みが変化することはない。

 

「そういえば、ゼットとかって勉強するの?」

 

 ちょっとした疑問だった。彼らウルトラマンでも学校はあるのか、そして勉強をするのか。

 

『勿論するでございますよ。任務で宇宙中に散らばるんだ。様々な言語や怪獣の生体、各惑星の文明なんかを知らなくちゃいけないからな』

 

 このように異種族同士で会話すること、そして怪獣の対処、惑星ごとの文化を知らなければ守ることはできない。当たり前と言えば当たり前のことだった。ウルトラマンも1つの生命体。最初のスタート地点は案外同じなのかもしれない。

 

「にしてはたまに日本語怪しんだよな……」

『なんだ?』

「いいや、何も。そうだ、光の国……だっけ? そこじゃどんなことを習ってたんだ?」

『そうだな……怪獣生態学は基本として……あとなんだっけかな……宇宙気象学とか……古代宇宙文学史とか……』

「あ、もういいや……ありがと」

 

 地球でのあれこれで頭をフル回転させているこちらからしたら、絶対に難関過ぎて吹き飛ぶであろうワードの羅列だった。考えるだけで思考がフリーズしそうな始は途中で聞くのをやめ、教卓へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

「失礼しました」

 

 職員室を後にして購買に向かおうとした矢先、始の前に金髪で翠眼の女子生徒が立っていた。その青い普通科の制服やストレートのロングヘアには見覚えがあった。確か代々木のフェスに居た人物だ。

 

「君、フェスの時に────「そのことは触れないで」

 

 触れてはいけないらしい。了承したと始は頷く。

 女子生徒は始を真っ直ぐに見つめ、突然で悪いんだけどと前置きをしたうえであることを訪ねてきた。

 

「あなた、あのスクールアイドル2人とは知り合いなんでしょ?」

 

 ”あのスクールアイドル”とは、かのんと可可の事だろうか。改めて2人の名を出して聞いてみたところ、どうやら合っているらしい。でも一体何の用か。

 

「じゃあ、部室もどこにあるか分かる?」

 

 唐突な質問に戸惑う。けれども同じ学校の生徒へ隠す必要もないことだ。始は正直に場所を話し、今日から使い始めることも伝えた。

 

「もしかして入部とか? だったらかのん達に────「そう、ありがとうね。それじゃあ」

 

 始の言葉を聞くこともなく、お礼を残して去っていった。

 

「………え?」

 

 昼休みの廊下。

 始の発した間の抜けた声は、誰にも聞かれることのないまま、溶けるように消えていくのだった。

 

 

 




冒頭に関しては何も言うまい。

ゼットとの会話はゼットライザーを持つか、近くにある状態で行えます。つまり奪われようものなら……。
何気に呼び方が変わっていたキャラがいますね。始とより親しくなったということです。
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