Superstar-Z   作:星宇海

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怪獣の被害に巻き込まれた始とすみれ、2人は一体どうなっちゃうのでしょうか(すっとぼけ)


第17話 自分に出来る事

 

 平和な午後は、突如として現れた怪獣によって崩壊した。逃げ惑う人々を追うようにして、怪獣は破壊の限りを尽くしている。

 

「痛たたた……私、どうして……」

 

 瓦礫の山の中で、平安名すみれは目を覚ました。痛みはあるが酷くはない。直に収まるだろう。

 すみれは辺りを見回し、先ほどまでの状況を思い出す。コンクリートの塊が落ちてくる直前、何か強い力で押されたのだ。

 

「そうか……私を庇って……」

 

 では誰が彼女を押したのか。考えれば必然と見えてくる。一緒に帰り、歪だと伝えたあのお人好しに他ならないだろう。

 

「始……!」

 

 すみれは声を張り上げながら、命の恩人でもある大切な友人を捜し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……くそ!」

 

 重い。苦しい。最初に感じたのはそれだった。

 瓦礫が降ってくる直前、始はすみれを突き飛ばした。本来であれば彼女が下敷きになっていただろう。だが始の咄嗟の行動が彼女を救い、代わりに彼が瓦礫に潰されたのである。

 

「早く出ないと……」

 

 身体中に掛かる瓦礫の重み。潰される一歩手前だ。始は脱出を試みる。しかし上に積もったコンクリートの塊など、少年1人では到底持ち上げることなど不可能。

 

「そうだ……ゼット……!」

 

 ゼットに変身すれば瓦礫など容易く蹴散らせる。どうにかゼットライザーに手を伸ばせればそれでなんとかなる。一部の望みに賭け、周囲を見渡すもののバックパックは何処にもない。

 

「……!?」

 

 ショックで力が抜けた。同時に心臓の鼓動が速くなるのがわかる。始の頭を過ったのは……死の一文字。

 

「いくぞ……!」

 

 どうにか脱出しなければ。両腕に力を入れるもびくともしない。当たり前だ。一体何十、何百の重さが積み上がっているというのか。でも……無意味な抵抗(こんなこと)でもしないと正気を保てる気がしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

《セブンガー、着陸します。ご注意ください》

 

 怪獣出現の報告を受け、セブンガーは現場に到着。着陸と同時に起動。独特の軌道音が木霊する。

 

「翼があるのに地中から……どういう訳?」

『あの怪獣は翼を有しているけど飛べないんだよ。鳥にもいるでしょ?』

 

 器官として羽根を持ってはいるものの、空を飛ぶことのできない鳥類だって存在する。ダチョウやヒクイドリ、キーウィがそうだ。目の前の怪獣も、翼を持つが飛ぶ能力はない。おそらく進化の過程で飛ぶ必要がなくなったからだろうと、結衣は推測する。

 翼を広げ威嚇してくる怪獣。だが威嚇など形だけ。あと数秒で攻撃が来るだろう。そう確信し、セブンガーは構えた。

 

『やっぱりだよ』

「何が?」

 

 結衣の通信が響く。怪獣の攻撃をいなしつつ、耳を傾ける。戦闘中に意識を向けるのは命取りになりうるが、怪獣への知識が並外れている結衣の声は聞いておいて損はない。

 

『この怪獣は過去に多々良島で確認されてる。名前は【有翼怪獣(ユウヨクカイジュウ)チャンドラー】爪や牙を使った攻撃が特徴。さっき言ったように空は飛べないけど、翼で強風を起こせるから注意して』

 

 彼女は膨大なデータから特徴をもとに怪獣を特定してみせた。しかし晶子にとっては、彼女の口から出た地名の方が気になるようだった。

 

「多々良島……? でもそこってスパイナーR1で……」

『おそらく地中に潜って生き延びたのかもな。……何はともあれ、市街地で強風を起こされて都市機能が麻痺したら厄介だ。責任もこっちにくるしな。早急に対処してくれ』

 

 結衣の声に代わり、正太が指令を出す。色々思うところはあるかもしれないが、怪獣による被害を抑えることが先決。晶子もストレイジのパイロット。意識を切り替え、操縦桿をもう一度握り直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠方で怪獣と特空機の戦闘を見つめる宇宙人2人組。ゼットン星人フィゾーとゴース星人シェバ。実験のために来たのはいいものの、怪獣の出現は全くの予想外。今は戦いを観戦している。

 

『いいのか? 行かなくて』

「執行日は指定されたが、我々が向かうタイミングに指示はなかった。故に、まだその時ではない」

 

 早く暴れる様子が見たいシェバは溜息交じりに戦いを観戦。

 

「それよりもその槍、何故持ってきた?」

『なんとなくな。いざという時の武器さ』

 

 シェバはカプセルを抱えてきたようだ。非常時にはそれを武器として扱うらしい。ウルトラマンの武器とはいえ、所詮武器は武器……ということだろう。

 そこから何秒か空いた後、観戦を続けながらシェバはぼそりと溢す。

 

『にしてもこの星、怪獣が立て続けに現れるようになったよな』

「ああ。しかし昔はこうではなく、辺境にある田舎惑星としてしか見られていなかった」

 

 フィゾーも話に乗ってきた。シェバの言う通り、怪獣が現れるようになったのはここ数十年の間だ。それまでの地球では、怪獣や宇宙人などいった未知の存在は空想の産物でしかなかった。

 

「だが14年前からすべてが変わった。魔王獣の一体が日本のある地域で目覚めたそうだ。そしてウルトラマンの存在がそこで初めて確認された」

 

 そこから3年後。怪獣や宇宙人の出現が頻発し、同時にウルトラマンの存在も多数確認されるようになった。

 

『それが今も続いてるってことだよな。宇宙人連中によれば、マガオロチの力が怪獣の目覚めに関与してるとかどうとか……。同時に、その残滓を頂こうと釣られてくるのも大量にいるって話だ』

「今ではこの星も”資源の眠る星”として注目されているからな。無論、我々もその1人なのだが」

『ホント、オーブが去ってくれたのは幸運だったな』

 

 どうやら宇宙での地球の立ち位置は劇的に変化しているようだった。辺境の惑星として見向きもされていなかったが、大魔王獣の存在が敵を呼び、そして倒された後も影響を残している。その末、この星は資源惑星として多くの星人から狙われることになったようである。

 

「さて、お話もここまでのようだ。そろそろ勝敗がつくぞ」

 

 お話はここまでらしい。2人の異星人はチャンドラーとセブンガーの戦いを再び観戦するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 続けざまに襲ってくる爪を受け止め、胸元に強烈な一撃を見舞うセブンガー。それに負けじと、チャンドラーも牙で胸部装甲や足の駆動部を狙ってくる。

 

「なかなかやるわね……」

 

 一撃一撃が重い両者は攻撃が当たる度に後退してしまう。だが再度接近して攻撃を繰り返す。するとセブンガーはヤツの腕を掴んで放り投げると同時に、後ろのブースターで飛翔。強力なドロップキックで吹き飛ばした。

 

『晶子、チャンドラーが翼を広げた。強風を繰り出してくるよ!』

「わかってる。でも、これがチャンス……!」

 

 強風を起こす際には、翼をはためかせなければならない。放たれれば甚大な被害を起こし、セブンガーもただでは済まないだろう。けれど強力故に隙が大きい。”大技”を撃ち込むならこのタイミングしかないのだ。

 

「出来たてホヤホヤバコさんの新兵器……ここで使うよ!」

 

 多くのセーフティーを解除し、スコープで狙いを定める。チャンドラーの首元を捉えると同時に、セブンガーは片膝を立て、右腕を突き出した発射姿勢に固定される。

 

「硬芯鉄拳弾……発射ッ!!」

 

 ジェット噴射で飛び出した右腕がチャンドラーの首元に直撃。すさまじい勢いはチャンドラーを後方へ押し戻し、ビルを押し倒すし大爆発を起こさせた。

 

「……よしっ!」

《チャンドラー、活動停止》

 

 怪獣討伐が終わり、晶子はため込んでいた息を吐いた。それは基地で見ていた2人も例外ではない。

 

「でも隊長、いいんですか? ビル巻き込んじゃいましたよ」

「あのくらいどうってことないだろ。既に民間人は避難しているわけだし、怪獣保険でどうとでもなる。というか、あのビルって取り壊し決まってなかったっけ?」

「だとしたら取り壊しの手間が省ける訳ですよね? そのお金こっちに回してくれないかな~」

「いや無理だろ……」

 

 怪獣の脅威は去った。あとは周のがれき撤去作業に移行するだけ。周りの空気は一瞬にして平穏へと変わる。

 

「あの鉄くずを攻撃してウルトラマンを誘き寄せる」

『そうかよ。それじゃ、ちゃっちゃと始めてくれ』

 

 いよいよ実験開始。ゼットン星人フィゾーは、ゼットライザーを起動させる。

 

 

《ZETTON》

 

 

「晶子、作戦終了だ。そのまま瓦礫の撤去作業に向かってくれ」

『了解』

 

 

《PANDON》

 

 

「チャンドラーか、今回はすぐに終わりましたね」

「ああ。一時はどうなるかとヒヤヒヤしたが、晶子が上手くやってくれたしな」

 

 

《MAGA-OROCHI》

 

 

「隊長、急激なエネルギー反応が……!」

「何っ!? 晶子、辺りを警戒しろ!!」

『りょ、了解! でもどういうことですか!? 怪獣はさっき倒したはず……』

 

 ────光の戦士を幾度となく苦しめた強敵。

 

 ────双頭で火を吐く大怪獣。

 

 ────星を喰らい尽くすという伝説を持ち、今なお恐れられている大魔王獣。 

 

 各メダルを読み込ませる。すると3体の怪獣は邪悪なオーラの中で混ざり、固まり、新たな1となって姿を現した。

 

「……は?」

 

 突如姿を現した合体魔王獣を前に、正太は困惑の声を漏らす。だってあの姿は……彼にとって罪悪感と後悔の、そして誇り高い姿だったから。もう決して見ることはなく、安らかに眠ると……そう信じていた存在だったからだ。

 

 

《ZEPPANDON》

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは……11年前に初めて確認された怪獣……」

 

 モニターと自分のデバイスを交互に見ながら分析を進める結衣。しかしその必要はなかった。何故なら隣にいる正太が答えてくれたからだ。

 

「【合体魔王獣(ガッタイマオウジュウ)ゼッパンドン】……」

「隊長……」

 

 正太の拳に力が入るのを、結衣は見逃さなかった。

 

「晶子、そのままじゃ不利だ。一旦退け!」

 

 大急ぎで通信を入れる正太。しかし晶子からの答えは……。

 

『いいえ。隊長、予備の硬芯鉄拳弾をこちらに送ってください。それまで耐えてみせます』

 

 まさかの拒否だった。しかし今セブンガーは右腕がない状態だ。攻撃も満足に行えないし、機体のバランスも最悪だ。しかも相手はゼッパンドン。生半可な装備で勝てる相手じゃないことは、()()()()()()()()()()()()

 

「いいか、俺は戻れと言ったんだ。それに背くことは重大な命令違反だ! お前わかっ────「それでも!! 私はストレイジのパイロットです。戦えない人を守るのが……私の仕事です!!!」

 

 彼女の向き合い方、覚悟を前に黙り込んでしまった正太。そして無言のまま、晶子も通信を切る。

 

「隊長、どうするんですか?」

なんでみんな……自分を犠牲にするんだよ……結衣、俺も現場に向かう。整備班に予備の鉄拳弾を送るように伝えておいてくれ!」

「あ、ちょっと隊長!?」

 

 結衣に言い残し、彼も現場に向かう。それはどうしてだったのか。おそらく、ゼッパンドンの姿で昔を思い出したのかもしれない。見送ることしかできなかった人物の存在を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

「ッ…………! ダメだ……くそ……誰か!」

 

 助けを求める。けれど彼の声に導かれて人が来る気配はない。もう一度、そしてさらにもう一度……助けを求める。上擦った情けない声。けれど始は構わず声を上げる。そうしないと死んでしまうから。

 

「なんだよ……俺……何も変わってない」

 

 笑みが溢れた。それは自分の姿が酷くみっともなかったからである。結局自分はゼットに頼らなければ何もできない。大層な事を言っておきながら、結局のところは人頼り。

 父親の背中を見送った時、かのんの助けになれなかった時……結局その頃から自分は何も変わってなかったのだと。

 

「っ!? 大変じゃない!」

 

 すると聞き慣れた声が周囲を震わす。すみれが金髪を揺らしながら近付いてくるのだ。庇ったおかげか、目立った外傷はなさそうだ。

 

「すみれ……大丈夫だった……」

「こんな時ぐらい自分の心配をしなさいよね……あんたのお陰でこの通りよ」

 

 怪獣の咆哮。そして激しい地響き。ふらつきながらもすみれは辺りを見回す。そして長めの鉄パイプを引っ張り出し───

 

「おい、何やってんだよ!?」

 

 瓦礫の隙間に突っ込む。梃子の原理で助け出そうという魂胆だ。

 

「見てわからない? あんたを助けるのよ!」

「馬鹿、俺を助けるよりも早く逃げろよ!」

 

 先ほどあんなに助けを求めていたのに、いざ来ると逃げるように促す。その矛盾に自分でも困惑してしまう。

 

「私だって逃げたいわよ! でもこんな状態で放っておけるはずないでしょ! それに、あんただって私の立場ならこうする。違う?」

 

 持ち上げようと踏ん張るすみれ。しかし、瓦礫の山はびくともしない。

 すぐ近くでは怪獣と特空機の激しい戦闘が行われており、いつ此方に被害が飛んでくるかわからない。額に汗を滲ませ、すみれは変わらず踏ん張る。

 

「なんで……」

 

 ふと、すみれとセブンガーの両者が視界に収まる。一方は人々を守るために怪獣と戦う。そしてもう一方は始を助けようと必死に動いている。形は違えど今その瞬間に、自分にできることをやっている。無茶でも構わずに、ただひたすらに。

 目の前にいる1機と1人の姿を見せられて、始は目の色を変える。そうだ。力があるかどうかじゃなかった。自分にできることを探し、それを必死に成そうとする。今までもそうしてきた。そこは変わっては……変えてはいけない部分の筈だ。

 

「俺だって……!」

 

 瓦礫に挟まれてはいるが、手も足も動く。四肢に力を入れ、襲い掛かる重みに反抗する。

 

(ゼットと一体化してんだから、こんな瓦礫……どかせなきゃ失格だろ……!)

 

 ゼットと一心同体なら、ある程度の力は出せると彼から教えてもらったことがある。ならば、今ここで使わなければ。

 すみれの助けもあり、積もった瓦礫の山が上がり始める。

 

「ちょ、ちょっと……!?」

「う……おお……おおおおおおっ……!!」

 

 足が抜けるくらいの隙間ができた瞬間、すみれが手を引いて脱出。塵や煤が宙を舞った。

 

「どうなってるったらどうなってるのよ!?」

「鍛えてたお陰かも……。だけどすみれが来なかったらヤバかったよ。ありがと」

「そんな感謝じゃ足りないわ」

「手厳しいなぁ……」

 

 軽いやり取りも束の間。始とすみれは瓦礫の山を縫うようにして、近くの避難所まで走っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり……セブンガーじゃキツイか」

 

 現場に出た正太。彼は地上からゼブンガーとゼッパンドンの戦闘を見上げる。先程右腕に予備の硬芯鉄拳弾を装着。普段通りのスペックで戦闘を続行している。片腕のみで耐えた晶子の腕は確かに凄腕だ。人々を守る信念の強さが伝わてくる。けれど、その信念が機械に作用するわけではない。ゼッパンドンという合体魔王獣の力の前には無力であった。

 

「これも”僕”の責任か……ん?」

 

 すると、地面に落ちているバックパックに目が行く。そこからは嫌悪するような、懐かしいような気配を感じたからだった。

 

「これは……成程……彼の落とし物か」

 

 中身を見なくとも、ある程度察した正太。すぐさま彼を見つけるために地面を蹴る。その速さは人間のそれではなかった。

 

 




色々と興味深いワードが飛び交う回になりました。スパイナーR1、多々良島……前者はオーブから、後者はウルトラマンからのお借りしてきた要素になります。一体何をしでかしたんでしょうビートル隊……。

そして現れるゼッパンドン。青影隊長はどうやらその姿に腹を立てている様子ですね……。
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