Superstar-Z   作:星宇海

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第2話 それぞれの世界

「なんて体たらくだよ! こんなんだからSTORAGE(ウチ)は予算が減らされるんだよぉぉぉ!!」

 

 都内から遠く離れた位置に建設されたストレイジ統合基地の中に、怒号が響き渡る。

 声の主はストレイジ長官である栗山。被害における中継記者会見の疲れや、これから来るであろう予算難のせいで声が荒げてしまっているのだ。

 

「すみません長官!」

「すみませんでした!」

 

 頭を下げるのは()()()()()である中嶋(ナカシマ)晶子(ショウコ)。そして隊長の青影(アオカゲ)正太(ショウタ)である。

 彼女らが何故頭を下げているのか。それは怪獣を対峙する際に、周辺のビルを何棟か倒してしまったからだ。怪獣よりも人々を守る組織が街を破壊していたら本末転倒……ということだ。

 

「晶子も反省しているようです。今回はこれくらいで良いでしょう」

「大体ね、キミがそうやって甘やかすから……イテテテ……」

「長官、これどーぞ」

「え、なにこれ?」

「お腹にも優しいドリンクですよ。それ飲んで落ち着いてください」

 

 あらゆるストレスからか、長官はいつも胃を痛めている。そんな彼にドリンクを差し出したのは太田(オオタ)結衣(ユイ)。ここストレイジで怪獣の分析などを行っている。

 

「あ、これおいしいよ。ありがと……じゃなくて!! まあいいや。今後気をつけるように!!! いいね!!!! 頼んだよ?」

 

 長官が作戦室を後にし残った3人は息を吐く。長官を前にすると緊張するし、今回は完全にこちら側のミスだった。今は申し訳なさでいっぱいだった。

 

「本当にすみませんでした!」

「いいっていいって。今回相手したゴメスは18mで小柄だったし、セブンガーで相手するのはちょっとキツそうだったもんね」

「ああ。それに、いくらこっちがミスしたからって、ビートル隊()よりも被害を食い止めた件数は多い。多少は大目に見てくれる」

 

 増加していく怪獣災害や宇宙人被害に対処するため発足したビートル隊。彼らはウルトラマンの去った世の中で急速に勢力を拡大させていった。そんな中、日本支部だけは変わった方向へと進化していくことになる。ロボット兵器を主力とした派生部隊が誕生したのだ。それが対怪獣特殊空挺機甲隊である。航空戦力が充実しているのになぜ設立されたのかは諸説あり、「日本と言えばロボットでしょ」という誰かの一声、またはウルトラマンのような人型兵器を求める声があったからなどが囁かれている理由だ。

 

 当初は日本支部から邪魔な者を追いやるための島流し、窓際部隊としてあまり期待はされていなかった。隊長である青影正太は組織にあれこれ意見をしすぎていたため、隊長職を与えて追いやられたのが真相であるし、中嶋晶子もやや突っ込みすぎる性格が組織に馴染まずここへ飛ばされてきた。太田結衣に至っては性格が一歩間違えればマッドサイエンティストのそれであったため異動となった過去を持つ。

 

 しかし状況はストレイジに味方した。対怪獣特殊空挺機甲……通称特空機と呼ばれる対怪獣用ロボット兵器”対怪獣特殊空挺機甲1号機 セブンガー”によって多くの怪獣を討伐。条約あれこれで出撃が遅いと言われるビートル隊()よりも高い評価を得たのだ。

 

「で、ですよ────「けど、命を守るために街を壊していい訳じゃない。そこで生活する人々のことも考慮しておけ? いいな」

「了解」

「よし。じゃあ瓦礫の撤去任務、行ってこい!」

 

 反省の念を見せていればそれ以上は追及しないし、掘り返さない。

 正太は笑顔を見せると晶子に次の任務を言い渡す。彼からの新たな指令に、晶子は「了解」と返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「おい、どこに向かってるんだよ!!」

「わかんないよ!」

 

 始は今、社会人や学生でごった返している街中を全力疾走している。それも目の前でオレンジ色の髪を風に靡かせながら走る少女”澁谷(シブヤ)かのん”に手を引かれているからだ。

 ぶつかった後に互いを認識して数秒、かのんが発したのは「なんでもいいから取り敢えず一緒にきて」という言葉だった。走りながら状況を聞くと、どうやら歌っていたところを聞かれ、中国語で迫られたので逃げてきたらしい。

 

「その子の話聞いてやれよ!」

「私、中国語わかんなよ!?」

「フィーリングでなんとかしろって!」

 

 始の言葉が風に乗って流れていく。けれど、今更言っても仕方のないことではあるが。

 

 走って走って、2人は街角に止めてあった乗用車の後ろに身を隠す。顔半分を覗かせれば、肩で息をしているグレージュのボブカットにした女子生徒がいた。どうやらかのんと同じ()()()の制服を着ているようだ。

 

「あれ……どこに……」

「あの子?」

「うん……」

 

 かのんとは異なり、始は全くの他人だ。そんな奴がこそこそと覗き見るような真似をしているのはいかがなものかと彼自身思うところがある。けれど下手に出ていくわけにもいかず、ここはその女子生徒が去るまで大人しくしているしかない。

 

「よし、いったぞ」

「……なんかごめんね。朝から巻き込んじゃって」

「いや別にいいよ」

 

 その後、始は何を話そうか迷っていた。一般的なのは今日から新生活がスタートする訳だし、ここで「その制服、似合ってるね」とでも言えば話を始めるのには困らない。だが彼女の場合、その言葉は禁句にも等しいだろう。本来であればかのんは、普通科の制服を着る訳ではなかったのだから。

 

「何してるの?」

「「うわっ!?」」

 

 すると横からとある人物が話しかけてくる。びっくりはしたが話題にも困っていたし、彼女が天らからの救いにも思えた。

 

「ちぃちゃん!?」

「千砂都!?」

「ういっす!」

 

 白い髪を団子状に結んだ少女。彼女は”(アラシ)千砂都(チサト)”。かのんや始とは幼馴染という関係である。

 

「むこうに変な子がいて」

「変な子……かどうかは知らないけど、その子から逃げて隠れてたんだよ」

「へ~、朝から大変だね」

「ほんとだよ、まったく」

 

 目の前で会話する千砂都とかのん、そして始は同じ高校に通うことになっている。しかし、千砂都の制服だけデザインが異なっている。男女によるデザインの違いは置いとき、具体的に言えばかのんと始のトップスが青いブレザーなのに対し、千砂都のトップスは白いブレザーなのだ。

 

「音楽科の制服、かっこいいね」

「えへへ」

「せっかく合格したんだから頑張らないとね、ダンス」

 

 今から通う結ヶ咲高等学校は普通科と音楽科に別れており、制服によって通っている科の区別を図っている。かのんが言ったように、千砂都は音楽科を選択し見事受かったのだった。

 

「かのんちゃんも歌、続けるんでしょ?」

 

 千砂都の問いに、かのんはすぐさま答えられなかった。それもこれも、かのんに起こった過去の出来事が関係している。

 

 もともと、かのんは歌が得意だった。彼女の歌は同級生からも評判であり、まさしく誰もを魅了する歌声だった。けれど小学校の発表会、彼女は歌うことが出来なかった。目の前に広がる大勢の視線。会場の独特の雰囲気。それらが彼女に圧をかけた。声を出そうにも出ない。出そうとすればするほど舌が痙攣したように動かなくなる。終いには視界がブラックアウト。そして気付けばベッドの上……という結末になってしまったのだ。それからというもの、かのんは人前で歌うことが出来なくなってしまった。結ヶ丘の受験の時もそうだ。当初は音楽科志望で臨んだ。しかし受験の際、歌を発表することになったのだが発表会の時と同じく……。そのため、かのんは普通科に通うことになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「受験前に言ったでしょ? 合格しなかったら最後にするって。だから、ここで新しいことを始めるのもいいかなって。もう歌は諦めるって」

 

 かのんは高校入学を機に、新しいことを始めることも検討しているようだった。

 

「でも……私はかのんちゃんの歌、聴いていたいけどな。始くんだってそうでしょ?」

「……ああ」

 

 その言葉を聞いて、かのんは表情を曇らせる。

 

 さらに同じくして表情を曇らせていたのは始。彼もかのんの歌を聴いていたいという思いは千砂都と同じ。だが、彼も彼で少し後ろめたさを感じていた。

 かのんが歌えなかった発表会の後日、始は彼女にこう言ったのだった。「元気出して。次は必ず上手くいく」と。後に始は酷く後悔した。随分と無責任で身勝手な言葉を吐いたなと。だって”上手くいった次”などなかったのだから。自分のかけた言葉のせいで、彼女をより苦しめる結果になってしまっているのではないかと。そんな自責の念に駆られており、始は強く言えずにいるのだった。

 

「そ、そうだ。始くんは何か新しい事するの?」

 

 するとこの雰囲気を変えるため、かのんは始に話題を振った。

 

「始くんだったら色々できるんじゃない?」

「俺? いや……まだ何も決めてないよ」

「空手、もう一度やってみるとかは? 私好きだったよ。始くんの空手」

「空手は……もうやらないかな」

「そっか。残念だな」

 

 始も空手習っていたのだがある時を境にやめてしまった過去を持っている。再度、高校でやるという気もないことを伝えると、千砂都は残念がっていた。

 

「あ、オカルト研究部にでも入ろっかな」

「あるの?」

「さあ?」

「適当なこと言わないでよー!」

 

 そんな会話をしつつ、3人は校門をくぐっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 入学式を終え、普通科の教室に戻れば簡単な自己紹介の時間が待っていた。知り合いが同じクラスにいない始も、流れに乗って簡単に紹介を済ませる。こういった場面で人気者になろうとして爆死し、3年間窓だけを見て過ごす、或いは机に突っ伏して生徒間の談笑に耳を傾けるなどといった状態にならないように注意を払った結果である。

 

「結ヶ丘はもともと神宮音楽学校という名前だったって先ほど理事長が言っていました────」

 

 教壇に立った先生が話を始める。

 この結ヶ丘は神宮音楽学校の伝統を引き継ぐ新設校だ。つまり、今教室にいる始たちが記念すべき一期生ということにもなる。しかしそんな一期生でもある始は先生の話を聞き流し、窓の外に広がる景色を眺めていた。例え一期生だとしても、普通科には特に誇らしいものでもないからだ。

 

「皆さんには、この地に根付く音楽の歴史を引き継いでほしいのです。音楽科に注目が集まってしまうかもしれませんが、普通科の皆さんでも出来ることは沢山ある筈です」

 

 この学校では音楽に力を入れており、何よりも音楽科がその恩恵を受けている。音楽に力を入れている訳だし、当然と言えば当然だが。

 そんな伝統を受け継ごうと、音楽で何を成そうとする立派な志を持って入学した生徒たちと違い、単に家から近かったからと入学を決めた始には、先生の言葉が刺さる。

 

(特空機……)

 

 若干の居心地の悪さを抱えつつ、窓の外を見ていた始。すると瓦礫撤去の任を受け、空を飛翔するセブンガーを見かけるのだった。

 

 入学式、自己紹介、簡単なHRだけで今日は放課となった。ここから部活動見学をしても良いが、今日は気分ではない。明日から見て回ろうとし、玄関口へと歩を進める。

 

「スバラシイコエノヒト~!」

「怖い怖い怖い~~!!!」

 

 中庭では朝の様にかのんが追いかけられていたが、彼女自身が話をつけるべきだろう。心の中で謝罪し、始は見つからないようにして帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 地球から遥か遠く。漆黒のキャンバスに浮かぶ数々の光。静寂が支配する宇宙空間で、ひと際眩しい閃光がはじける。

 炎を突っ切り、宇宙を翔けるのは巨大な鮫型の怪獣だった。背中からのジェット噴射によって推力を得ているらしくかなり速い。ヤツの名は【狂暴宇宙鮫(キョウボウウチュウザメ)ゲネガーグ】。()()()()を奪って逃走している最中だ。

 

 するとゲネガーグの側面から、またある者が激突する。青と銀が特徴的な体で、胸元では水晶体が光り輝いている異星人だった。宇宙鮫に幾度か殴り掛かるものの、これといったダメージを与えられていない。それどころか、攻撃を仕掛けた異星人が逆に攻撃を貰っている。けれども諦めずに喰らい付く異星人。強力な顎を抑え、頭部に手刀を繰り出す。

 頭部から光の刃を投擲してダメージを与える異星人へ、仕返しとばかりに背中と側面から拡散光弾を放った。急な攻撃に対応しきれない異星人は立ち尽くす。

 

「セリャッ!!」

 

 怪獣との間に光が乱入。と同時に迫る光弾を全て防いでみせた。青いマントを翻すのは、青と赤の体を持ち、頭部に鋭い刃を備えた戦士だった。

 

「危ねぇから手出すなっつったろ」

「また半人前扱いして。俺だって宇宙警備隊ですよ? 師匠」

 

 どうやら2人は師弟関係にあるようだ。状況を整理すると、師匠の言いつけを守らずに弟子が追いかけていた……というところだろうか。

 

「■■■ッッ」

 

 怪獣は師弟に配慮することなく、その大きな口から紫の光線を放つ。流石は宇宙の平和を守る”宇宙警備隊”の一員。即座に反応するとともに回避。ゲネガーグへと接近する。

 

「お前を弟子に取った覚えはねえ」

 

 師弟関係ではないらしい。弟子(仮)が勝手に言っているだけのようだ。

 

「それにオレから言わせれば、お前なんて3分の1人前だ」

「さ、3分の1ぃ!? ウルトラショック……」

 

 戦いの中だというのに、衝撃的な発言を繰り返す両者。しかし目線だけは、今にも攻撃を仕掛けんとする宇宙鮫に向けられている。

 

「な、コイツ……小惑星を飲み込んでやがる」

 

 ゲネガーグの口から吐き出されたのは巨大な小惑星。当たればひとたまりもないことは確かだが、驚くべきはそのなんでも飲み込んでしまう口、そして呑み込んでも支障がない体の構造だ。

 

「ンの野郎、さっさと飲み込んだモノを返しやがれ!」

 

 巨人の右足が赤く燃え上がり、ゲネガーグを蹴り上げる。それに激昂したのだろうか、或いは自分への脅威だと認識したのか……。再度口から何かを吐き出す。

 

「その手は食うか!」

 

 避ける必要すらなく、見事にキャッチすると後方へ放り投げる。しかし投げたのは小惑星では無さそうだ。投げた瞬間、重力に引かれる感覚を彼は感じ取ったのだから。

 

「な、ブルトン!? マジかよぉぉおおおぉおお!?!?」

 

 ゲネガーグから吐き出されたのは無機物の塊……ではなく、四次元怪獣ブルトンだった。放り投げた戦士は、ブルトンの開けた次元の穴に吸い込まれていく。脱出しようと藻搔いてみるも、ブルトンの発生させる引力には敵わない。

 

「師匠!」

「クソ……しゃーねぇ。”ゼット”これを持っていけ!」

 

 ゼット……と呼ばれた異星人は師匠からとあるアイテムを渡される。3つのメダルとそれを読み込ませ、力に変換させる装置だ。

 

「ヤツの飲み込んだメダルは、お前が回収しろ。頼んだぞ!」

「師匠ぉぉぉぉ!!!」

 

 異次元の穴は閉じてしまった。ゼットの声は最早、宇宙に響くだけ。するとゲネガーグは再び逃走を図る。生物とは思えない急激な加速で瞬く間にゼットとの距離を離していく。

 

「この……待て!」

 

 すぐさまゼットもゲネガーグの追跡を再開。

 師匠から託されたアイテムを手に、彼らの戦いはある惑星へと舞台を移すのだった。




今回からかのんや千砂都、そしてストレイジ組が出てきました。

この世界のストレイジにはハルキポジが居らず、今は晶子がパイロットをやっています。隊長の正太が搭乗するときもありますが、大半は基地での指揮をやってます。結衣に関しては言わずもがなって感じです。

そして最後の方で出てきたのはご存知彼らです。今回は敢て名前を出しませんでした。

スパスタの1話を丁寧にやりたいが為に、巨人との邂逅がもう少し先になってしまうかもしれませんが何卒お待ちを……。
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