Superstar-Z   作:星宇海

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サブタイの通りです。


第25話 闇人形 ─FAUST─

 

 地球の衛星、月。途方もなく広がる宇宙空間の中で、人類がその足で立ったことのある数少ない場所。しかしながら人類が未だ確認できていない未解明の地点に建物が存在していた。無論、地球人類が建造したものではない。

 

「ほぉ……これがそうなのか……」

 

 中ではブツブツと独り言を唱えながら装置をセット、起動させていく者の姿が。銀色の頭は彼の知能指数を具体的に示すかの如く巨大であるその反面、手足は触手となった異形さが目立っている。彼の名は”チブル星人ガイズラ”コンピューターによって管理されているというチブル星出身の宇宙人である。目的は勿論、地球侵略である。

 今現在行っているのは侵略の為に使用する”道具”……の前段階。つまりは試作を製作中なのだ。

 

「チャリジャのお陰で非常に興味深いものが手に入った。コイツは私の計画と類似点も多いしな」

 

 ガイズラが持つカプセルに入っているのは何かの一部。どうやら数多の並行世界を行き来する怪獣バイヤーから購入したらしい。

 

闇の巨人(ウルティノイド)……デビルスプリンターでどれほどの力を出せるか楽しみだ」

 

 ウルティノイド……かつて同じ名を冠した暗黒破壊神によって作られた操り人形。別の世界では多くの悲劇と恐怖を生み、その都度巨人たちと戦いを繰り広げた強敵たちだ。ガイズラはその一部を入手し、デビルスプリンターの力で復活させようとしているらしい。

 

「巨人の復元……これが成功すれば私の”惑星潜入式巨人型運用兵器”の実証にもなるのだ」

 

 作業は進み、いよいよ最終段階へと移行していた。並々ならぬエネルギーが装置から溢れ出し、太陽光を思わせる閃光が一面を支配する。加えて雷鳴のような激しい音がそこら中へ伝播する。

 

「ハハ……ハハハハハッ!」

 

 成功を確信したか。ガイズラの邪悪な笑い声は月を超え、宇宙まで轟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「マジですか! うおぉぉぉぉ……これで2号ロボが完成する!!」

 

 統合基地の指令室は歓喜の声で満ちていた。

 

「ホントに! ホントに予算が下りたんですね!!」

「勿論だよ。先程連絡が来たんだから」

 

 神津島での怪獣騒ぎ。その時、偶然にも休暇を楽しんでいた事務次長がセブンガーの戦闘を目撃。特空機の性能やストレイジの活躍を目にした結果、かねてから出されていた2号ロボット開発計画の予算を彼の権限で出してくれることとなったのだ。ストレイジにとっては最近の中で最も良いニュースだ。栗山も機嫌が大変好さそうである。

 

「事務次長はね、特空機の性能を大変高く評価されていたよ」

 

 栗山は事務次長からの言葉を伝えた。ウルトラマンですら苦戦したゴモラにも必死に食いつき、健闘したことへの称賛。そしてこの調子でいけばいつの日か、ウルトラマンをも超えるロボットを開発することだってできるのではないかと。地球人の力で地球を守ることができるのではないかといった……希望と激励の旨を。

 

「晶子くん、あの時は勇敢な戦いっぷりだと聞いている。次も期待しているよ」

「ありがとうございます!」

 

 満足そうに頷いた栗山は指令室を後にする。

 長官の居る緊張感が消え去った後、結衣は即座に自分のモニターへと走っていく。

 

「さてと……武装と機関制御システムに各関節のエンジンは────」

「結衣はロボしか見えてないか……」

「念願でしたからね。さて、私も体動かしに行ってこようかな~」

 

 晶子も同じくいても立っても居られないらしい。パイロットとして2号ロボを操縦するため更なる体力をつけておきたいのだろう。かくいう正太も心の中では狂喜乱舞である。

 

「ん? 隊長、晶子、これ見て」

 

 すると何か送られてきたのか、目の前の巨大モニターに内容を送信する。見たところ内容は、大気圏外で謎の高エネルギー反応をキャッチしたというもの。しかし反応は一時的なものだったらしく、すぐに消失。それ以降は動きがないとのことであった。

 

「怪獣か宇宙人の侵入か?」

「いえ、そうであれば反応が継続するはずです」

「不思議ですね……」

「ああ。嬉しい報告があった後だが、被害が出てからじゃ遅い。警戒レベルを引き上げるぞ」

「でも隊長、今セブンガーはオーバーホール中ですよ」

「あ~、そうだった……」

 

 怪獣や宇宙人の類ではないとしても、何かの予兆であることは確実である。しかし晶子の言うように、戦力であるセブンガーは清掃作業や劣化部品の交換、調整を施している最中だ。なかなか点検のできない部分まで見るため、再度組み立てるにしても大幅に時間がかかる。現実的に見て、今日中に出撃させることはできないだろう。

 

「有事の際は地上で対応だ。ビートル隊にも連絡しておく」

 

 そのまま解散。各自の業務へと戻っていく。その中で未だにモニターを見つめる正太は妙な胸騒ぎを覚えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね。買い物に付き合ってもらっちゃって」

「いいって別に」

 

 街中を並んで歩くのはかのん。そして袋をガサゴソと音を立てて運ぶ始であった。

 神津島のライブも終わり今日は久々のオフ。しかしオフだからこそなのか、かのんは喫茶店で使う材料の買い出しを頼まれたらしい。始は喫茶店へと足を運んだ直後、彼女と鉢合わせ。そのまま買い出しに付き合うことにしたのだった。

 

「あ、でもちゃっかり荷物持ち確保できてラッキー……とか思ってるだろ?」

「うっ!? そんなこと……ないよ?」

「疑問形なの駄目だろ」

「ま、まあい~じゃん! 帰ったら奢るからさ! ね?」

「まったく……」

 

 呆れ混じりの笑みを浮かべてはいるが、ついて来たのは彼女を手伝うためだ。別に荷物を持つくらいどうってことない。

 

「でもさ、こうやって2人で歩くの久しぶりじゃない?」

「そうか? 学校行くときとか途中まで2人だったりするだろ」

「それとこれは別だよ~!」

 

 かのんが言いたいのは2人で歩く……というよりも休日に2人で出掛けていることに関してだ。最近は練習のある日が殆どであったし、遊ぶにしても可可やすみれ、千砂都がいることも多々あった。しかしそれが嫌なわけではない。スクールアイドルとして活動することも、大人数で遊ぶことも、どちらも楽しいと感じているのだから。だがこうして始と時間を共有し、時間が過ぎるのを良しとする状況は久しく、これはまた違った楽しさがあるのだ。

 

「そう言われればそう……かも?」

「疑問形にしない!」

 

 立場が逆転してしまった。そのことにわかると、2人の間から笑い声が響いた。

 

「それにしてもさ……」

 

 幾何か後、ふとかのんがある話題を切り出してきた。

 

「あのお店で……私と始くん……閉じ込められたんだよね」

「そういえばあの店か……」

「うん。怪獣が現れてさ、瓦礫で道が塞がれちゃって、私はお母さんやありあとも逸れちゃって……」

「俺もそうだった気がする」

 

 買い出しで赴いていた店は今から9年前、怪獣出現によって被害を受けた場所だった。当時7歳だった2人は運悪く閉じ込められてしまった。幸い軽症で救出されたのだが、今でも思い出すくらいには大きな出来事として記憶していた。

 

「そう言えばあの時も始くんに助けてもらったな~」

 

 懐かしさに浸る彼女とは異なり、始は心当たりがないようで疑問符を浮かべている。その様を見たかのんはがっかりしたと同時に唖然としている。彼女にとってはかなり大きな事柄だったらしい。

 

「忘れたの!?」

「ごめん……」

「私にとってはさ……」

 

 そこまでで言い淀む彼女へ始は踏み込もうとした途端────

 

 

 

 

 

 平和が崩れる音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「隊長、怪獣が出現しました!」

「警戒はしておけとは言ったが……こんなに早いなんてな」

 

 指令室に鳴り響く警報。

 結衣の操作によってモニターに映し出されたのは、地中から飛び出てきた怪獣の姿。

 

「地中から……テレスドンか?」

 

 母なる海から地上へ踏み出し、進化を遂げてきた生物であるが、生きていくうえで地中に潜ることを選択したものも存在する。勿論、怪獣も同じことだ。故に、地下にも生活圏を拡大しようと開発を進める現人類にとっては、衝突を避けられない存在なのである。

 正太は地底から現れた怪獣、そして見た目からテレスドンではないかと推測したが結衣は否定した。

 

「惜しいですね隊長。あの怪獣は【地底怪獣(チテイカイジュウ)デットン】テレスドンと同種族なのは間違い無いんですけど、デットンに関してはデータが少なすぎて正直なんとも……」

 

 テレスドンと比べ、妙にくたびれたような体をしているデットン。しかし地底怪獣の名に恥じない怪力を発揮し、街を蹂躙している。

 更に解析を行っている結衣はまたもや不可解な事象を見つけたようだ。

 

「このデットン……何かに誘導されている……?」

「誘導だと?」

「はい。謎の反応がデットンを刺激、そして暴れさせているようです」

 

 導き出される結論……それは何者かの企みによるものであるということだ。その行動の不快さに目を細める正太。

 

「隊長、ビートル隊もすぐ出撃するそうです!」

「今日は早いな。よし、晶子、結衣、俺たちは現場に出て避難誘導を行うぞ!」

「「了解!」」

 

 違和感は消えず、特空機も出せない。しかし今は人々を守る身。やれることをするだけだ。

 3人は丸い卵型の車体が特徴の特殊車両STORAG EEGG(ストレイジエッグ)……通称ステッグへと乗り込んで現場に急行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 怪獣の出現によって世界は変わる。先程まで散策をしていた人や、ショッピングを楽しむ人たちも一目散に避難している。それはあの2人も同じことであった。

 

「かのん、俺は逃げ遅れた人がいないか見てくる!」

「ちょ、始くん!? 待って!!」

 

 最近は怪獣が現れる度に駆け出していく。夏空始が()()()()()をする人間なのはわかっている。誰かを助けている姿は憧れるし、自分だって救ってくれたことがある。けれど今起こしている彼の行動にどことない危機感を覚えたかのんは、彼のことを追いかけていくのであった。

 

 一方始は人の波をかき分けるように走り抜け、路地裏に入ると同時にゼットライザーを起動させた。

 

「折角のオフを……っ!」

 

 閃光が数度辺りを照らし、赤と青の体色を持つ巨体が姿を現した。

 

《ULTRAMAN Z ALPHA EDGE》

 

 登場早々踵落としを繰り出したゼット。威力の高い足技は破壊行為を止めさせるには充分であった。デットンの叫びは痛みから徐々へ怒りへと変わり、目の前の巨人を威嚇。威嚇を受け止め、対決の意思を見せるためにゼットも構えをとる。

 

「ウルトラマン……!」

 

 始を追っていたかのんもゼットの登場に足を止め、彼の戦いを見守ることに。

 

『隊長! デットンを刺激していた反応が途絶えました!!』

「なに?」

 

 結衣の報告に正太の表情が強張る。デットンを刺激し、わざわざ地上まで誘き出したのに何故このタイミングで消したのか。操るのであれば継続する筈。では怪獣の駆除を人間に任せるため? いや、そんな面倒なことはしないだろう。

 

「とすれば……」

 

 彼はデットンを交戦する巨人を見る。つまりは……彼を誘き出ための囮か。

 

「まずいな」

 

 避難指示、そして警戒を怠らないようにと両隊員に伝えた彼は走り出す。

 

『始、怪獣の動きが鈍くなってきた。このまま押し切るぞ!!』

「ああ!」

 

 デットンを戦うゼット。前回のゴモラ程ではないが、ヤツも怪力で押してくるタイプの怪獣だ。一番使い慣れているアルファエッジで様子見をと思って戦っていたのだが、先ほどのあるタイミングを境に繰り出される攻撃は楽々と避けられるものへと変わった。これは大きなチャンス。攻撃の手を緩めず、デットンの体力を着実に奪っていく。

 

「よし!」

『ウルトラ決めるぜ!』

 

 トドメだと両腕が青白く発光した。そして腕を十字に組み光線を放……つことを止めてしまう。

 

「なに!?」

『なんだあれは!?』

 

 突如頭上に黒点が生まれる。小さく雷を放ちながら、黒点は徐々に広がっていく。まるで自分たちを包み込むかのように。困惑する間にも闇と形容すべきそれは地面にまで到達し────

 

 

 

 

 

 消えた。痕跡を一切残さず。後に残るのは破壊された街とその残骸のみ。日常の静寂が一瞬にして戻ってきたのだ。

 

 

 

 

 

「いない……」

 

 かのんやストレイジは困惑する。何故なら先ほどまで戦っていたゼットとデットンすらもその場から消え失せたのだから。何者かの仕業なのか……謎の黒点の正体を知る者などこの場には存在しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「なんだよここ……寒々しいな」

『なんらかの異空間かもしれないな』

 

 闇に飲み込まれた直後、目の前の景色はがらりと変化していた。例えるなら荒野。文明の痕跡など存在しない果てのない大地。そして奇妙な空模様。赤黒く、不気味な光が明滅する空は見ているだけで気分が悪くなる。加えて体が重い。健康な体の筈なのに、妙な倦怠感が自分を支配している。

 

「■■■ッ!」

 

 途端、全速力で突進してくるデットン。直撃したゼットは後方へ大きく吹き飛ぶ。そこで彼らは新たな事実に気付く。

 

「おい、あの怪獣……」

『ああ……さっきより強くなってやがります……』

 

 余裕とは言わずも圧倒していた筈のデットンが、ここではゼットを大きく上回る力を発揮していた。高揚しているかのように何度も咆哮を上げるデットンへ再度構えたゼット。すると、また異なる足音が空間内に反響した。

 近付いてくるシルエットが露わになる。目の前に立つ者の存在に、始は息をするのも忘れてしまう。

 

「あれは……ウルトラマンか……?」

『いや違う! アイツはウルトラマンなんかじゃない……もっと別の何かだ』

 

 赤と黒、左右非対称で構成された体。頭部から突き出した2本の角と感情の読み取れない漆黒の瞳から流れる涙ライン……そのどこか道化師を思わせる姿に冷や汗が流れる。光というものを拒む意思か、胸の水晶も黒く染められている。暗黒に立つその姿は人とは相逸れないと、ウルトラマンなどではないと……強く認識させられる。

 

「なんなんだ……」

『お前は!』

 

 握る拳とは裏腹に、始の体を支配するのは震えだった。

 声に乗る感情は非常に希薄。瞳や水晶が表している色のように、その心も虚無で満たされていたのだ。

 

私、はファウスト。無限、に広がる……闇の権化

 

 

 




今回登場するダークファウストはガイズラがウルティノイドの一部(残骸)を入手し、デビルスプリンターと混ぜて再生させた個体です。本来であればメタフィールドから書き換えないと展開できないダークフィールドもデビルスプリンターで強化され、メフィスト同様に自力で展開できるようになってます。そして本来であれば目が赤くなるんですが、赤目のファウストはな……と思い黒のままにしてます。
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