お詫びと言ってはなんですが、今回は少し長めです。
彼女自身が話をつけるべきだ、なんてことを考えて結ヶ丘を後にした始だったが既に後悔している。巻き込まれたという形ではあったものの、最後まで彼女に付き合うべきでは……と。
(いいや。あれはかのんがどうにかしなきゃいけない問題だよな……うん)
優柔不断な自分に呆れつつ、思考を切り替えんと周囲を見回す。
自分と同じ学生や営業に向かう社会人などで溢れる、なんの変哲もない日常的な光景がそこには広がっている。けれど日が変われば極僅かな変化が訪れる。例えば、道端で困っているような老人の姿……とか。
「……」
足を止めたのはたったの数秒。始がやらなくても、きっと誰かが手を差し伸べてくれる。だからわざわざ声を掛けなくてもいいんだ。そう言い聞かせ、これまで通りに自宅への道を歩いていこうとする。
「……~~っ」
声にならない葛藤。足を止め、何度も帰り道とお爺さんの方を交互に見る。自分じゃなくても、すぐに誰かが助けて─────
「お爺さん、何か困りごとですか?」
気付けば、自分の足はお爺さんを助けに向かっていた。
話を聞けば、どうやらトランクを開けるための鍵を落としてしまい探し回っていたらしい。「お安い御用です」などと笑顔で言い放つ始だったが、彼の内心は「またやってしまった」という後悔だけだった。
「おお、これだ。ありがとね」
「いいえ。見つかってよかったです」
彼の落とした鍵は、約1時間の捜索で無事見つけることが出来た。笑顔でお礼をしながら去っていくお爺さんを始は笑顔で送った。
大勢の人ごみに紛れて姿が見えなくなった時、始は息を吐いた。
「始くん!」
「おわっ!? って千砂都……びっくりした」
「ごめんごめん。人助け、ご苦労様」
「え、見てたのかよ」
すると背後から嵐千砂都に声を掛けられた。どうやら一連の出来事を見られてしまったらしい。
「だってあれだけ「もう困っている人を見ても助けない」って言ってた始くんがお爺さんを助けてたからね」
始の物真似をしているんだろうが、あまりにも似ておらず笑ってしまったが彼女的にはそれでもよかったらしい。けれど、何故千砂都がここに居るのだろうか。まだ結ヶ丘に残ってダンスの練習をしていてもおかしくはない時間帯だ。気になった始は尋ねてみた。
「言ってなかったっけ。私、今日からたこ焼き屋でバイトするんだよ。そうだ、今から遊びに来てよ!」
千砂都に誘われるがまま、始はたこ焼き屋までついてきた。
「また昔みたいに、困ってる人を助けるの?」
たこ焼きを焼きながら、千砂都は始に尋ねる。
彼は昔、困っている人を助けたいと考えて沢山の人を助けていた。自分よりも大きく重い荷物を持ったり、勝てるわけでもないのに苛めっ子と対決したり、逃げた犬を飼い主と共に捜索して数日間帰らなかったり……。けれどそれもある時を境にやらなくなっていったのだ。
「やらないよ。今回はたまたまだって」
「ほんと~?」
千砂都の問い方は、また絶対にやるという確信をもっているように聞こえた。そういった手助けはしないと、これまでも何度か言ってはいた。けれど困っている人を見過ごせる筈もなく、内心自分に呆れながら助けてしまうのが夏空始であると、千砂都は見抜いているようだった。
「難しく考えずに自分のやりたい事、すればいいんじゃないかな?」
始の頬に何かがコツンと当たる。どうやらそれは袋に入ったたこ焼きだった。
「はい、どうぞ」
「……ありがと。じゃあ俺、帰るよ。あまり千砂都の邪魔するわけにもいかないし」
「そっか。じゃあまたね!」
暗くなり始めた空と4月にしてはちょっと寒い風の元、千砂都に見送られ、今度こそと始は帰り道を歩く。彼の脳裏には、先ほど言われた彼女の言葉が木霊する。
「やりたい事をすれば……か」
難しく考えるのは正直柄じゃない。けれども彼の心はやめといたほうがいいと訴えかけている気がする。そんな迷いを別の感情で塗りつぶすかのように、始はたこ焼きを口に入れる。
「美味っ……」
*****
入学式の前から随分と忙しい1日だったなと想いにふける始。今日の所は早く帰って晩御飯にありつきたい。そしてまた明日から高校生活をどう楽しむかを考えよう……とたこ焼きを食べていっそう増した空腹感の中考えていた。しかし彼を休ませてはくれなさそうだ。
「君、1人? 俺らと遊ばない」
「あ、あの……」
「そんなに緊張しなくってもさぁ」
女の子がナンパされている場面に出くわしてしまった。それも結ヶ丘の生徒がだ。男2人は何も答えられていない彼女をいいことに、強引に話を進めている。
なんだ今日は。どうしてこうも見過ごしたくない事態に遭遇するんだ。始は先と同じように頭を悩ます。
(だから俺が助けたとこで……!)
見なかったフリをし、通り過ぎることは容易だ。ちょっとした罪悪感を無視すれば良いんだ。どうせ明日になれば忘れる。
(……)
けど、ここで千砂都の言葉を思い出してしまう。やりたい事をすればいい。なら、今始のやりたい事……それは────
「いたいた。いやーどうも、連れがお世話になりました。ダメだよ逸れちゃ〜」
少女を救出すべく、始は知り合いの体で近付く。
「なんだよ知り合いがいたのかよ」
「いやほんと申し訳ないです。それじゃ行こうか!」
親しいフリをし、少女の手を引いて離脱しようと試みる。しかし……。
「あの……どちら様デスカ?」
「…………っっ!?」
あろうことか、少女から知り合いではないとバラされてしまった。多分テンパってのことから口に出してしまったのだろうが、作戦が台無しになってしまった事に変わりはない。一瞬だけ時が止まり、事実を飲み込んだ男達が始を睨む。
「何? オレたちから横取りしようっての?」
「舐めた真似しやがってよ……」
こっからどうすれば良いかわからず、取り敢えず笑って誤魔化す。当然男たちはその態度が気に食わなかったのだろう。始に一歩踏み寄る。
「文句あんの?」
少女を守るように立っていた始。彼は男の言葉に反論する。
「ありますよ! 大ありですよ! あんたら、寄ってたかってこの子追い込んで……そんで連れて行こうとして……恥ずかしくないんすか!」
「んだとテメェ!」
「やべっ……あ、なんだアレ!」
「ん?」
「逃げるよ!」
これ以上留まれば顔に青痣を作るだけでは済まされないと悟った始は男たちの気を逸らすと同時に少女の手を引いて突破。後ろから男共の怒号が聞こえるが、構わずに走り続けた。
しばらく走り続けると、先ほどの男たちの姿はとうに見えなくなっていた。ずいぶん遠くまで来たが彼らを撒けたらしい。
「はあ……此処までなら大丈夫。いや~、あいつら追っかけてきすぎでしょ」
「あの……さっきはすみませんデシタ。せっかく助けてくださったのに……」
「いいよいいよ。結果的に逃げられただからそれでオーケーってことで!」
自分が始に誰だと問いかけなければ幾分かマシだったのだろうと少女は謝罪しているのだが、始は気にせずにと伝える。
フォローをしつつ始は共に逃げてきた少女を見つめる。先は状況が状況だったために顔など気にしている暇などなかったのだが、よくよく見ると見覚えのある顔だった。彼はこの思い出せそうで思い出せない感覚から解放されたい一心で、少女を長く眺めてしまうのだった。
「あ、あの……何デスカ?」
「いや……君、見覚えがあるなって……」
「や、やっぱり助けるフリして横取りする気だったヤツデスカ!?」
「な、違うよ! そんなんじゃないよ!! ほんとに見覚えがあるなって気が……ああーー!!!!」
電気のスイッチが入ったのかの如く、全身に迸るある感覚。途端に脳内がクリアになり、今朝の記憶が呼び起こされる。
「君アレだ! かのんを追っかけてた子だ!!」
「もしかしてかのんさんを知っているノデスカ!!」
途端、少女は”かのん”という言葉に反応を見せ始に迫る。これで確信に変わる。やはり今朝、そして学校でかのんを追い回していた結ヶ丘の生徒だ。
「初めまして。上海から来マシタ。
「俺は夏空始。よろしく」
気付けば近くのベンチに座り、彼女は自分のことについて話してくれた。
どうやら彼女はスクールアイドルをしたくて日本に留学してきたらしい。スクールアイドル、その名の通り学校でアイドル活動をする生徒たちの名だ。10年以上も続いいるが人気は未だ高く、テレビは勿論雑誌や広告でも見ない日はない。
そして今朝、かのんの声に惹かれて中国語で話しかけてしまったらしい。その後も一緒にスクールアイドルをしようと誘ったが、断れてしまったと彼女は残念そうに話してくれた。
「まあ、かのんがスクールアイドルをするってのはな……」
「残念デス。とても綺麗な声なのニ……」
人前で歌えないかのんだ。それこそ人前で歌い踊るスクールアイドルをやるというのは無理があるだろう。
「デスガ、スクールアイドルをやる以外ならなんでも協力してくれると言ってマシタ!」
可可も可可で残念そうに落ち込んだり、元気そうに笑顔を見せたり……なんだか忙しい人物である。
「でもさ、
始は尋ねる。
チラッと見かけただけの始でさえ、ダンスや歌で高いパフォーマンスを求められているものだということはわかる。結ヶ丘は音楽に力を入れた学校だ。興味ある人物が存在していてもおかしくはないだろう。けれど可可は溜息を吐き、「わかってないデスネ」と言われてしまった。そう言われて始は少しショックだった。
「今日、髪の毛を縛った同級生に言われマシタ。この学校にとってイイものではないと」
なんだそれは、と始は顔を顰める。あまりにも理不尽すぎやしないだろうか。
「なんだそれ」
「そう確かに言ってマシタ!!」
なんという学校に入学してしまったのだろうかと、頭を抱えそうになるがギリギリでセーブ。「大変だな」と声を掛ける。
途端何かを考え込む可可。そして次の瞬間、顔を上げてこちらにこんなお願いをしてきたのだった。
「そうだ! 始さん、これは何かの縁です。クゥクゥを助けてください。袖振り合うも何とやらってヤツデス!」
「いや、俺はそう言うのはちょっと……」
「なんでデスカ! さっきだって可可を助けてくれたじゃないデスカ! あの感じでお願いしマス!!」
「あれはこれは話が別だろ! っていうかあの感じってなんだよ!? それに……さっきは助けたけど、本当は見ないフリして逃げようとしてたんだ。結構最低な奴だよ、俺」
しばしの沈黙が辺りを支配する。
そう。結果的に助けたのはいいが、あの時は知らない顔して通り過ぎようともしていた。そんな考えがミリ単位でも存在しているような人間が、純粋な心で活動を始めようとする少女を手伝う訳にはいかないだろう。
だが、目の前にいる本人はそのようには捉えていなかったらしい。
「いいえ! 始さんは最低なヤツじゃありマセン!! あの時、始さんは自分の事よりも可可のことを考えて助けてくれました。ま、まあ可可のせいで一部大変なことになってしまいマシタが……とにかく、そんな人が最低なワケないデス!!!」
始の言葉を否定する可可に言葉を失う。その視線が、その発せられた言葉がとても真っ直ぐだったからだ。
「どうだか……」
「でもとにかく、始さんの行動は素晴らしかったデス。尊敬シマス!!」
キラキラした目で手を掴んでくるものだから、始は驚いて声も出なくなっていた。
「ですから……!!」
「…………わかった! わかったよ!! クゥクゥ、お前に協力してやる。これで満足か?」
「はい! ありがとうございマス〜!!」
この場を切り抜ける為に仕方なく了承した、と言い聞かせたいところだが実際は違う。ただ純粋に可可を助けたいと思ったからだ。こちらが根負けしたと言ってもいい。
「じゃあ可可は帰りマス。それじゃあ───」
「途中まで送ってくよ。またさっきみたいに絡まれると面倒だろ?」
「やっぱり最低なヤツじゃありマセン!」
「うるせえよ……」
彼女と共に歩く始の中では、何かがまた変わろうとしていた。
*****
翌日、ちょっとした朝の空き時間に可可たちのいる教室へと足を運んだ始。
「始さん、おはようございマス!」
「おはよう。んで、話ってなんだよ?」
彼が別クラスに来たのは可可に呼ばれたからだ。方法はチャットアプリ。
昨日の夜アカウントを強引に交換されたことが脳裏をよぎり、思わず苦笑いが出てしまう。
「え、始くん?」
「あ、かのんおはよう。そういやクラスここだったっけ」
「そうだけど……って今はそうじゃなくて、なんでここに始くんがいるの?」
始が自分たちのクラスにいることに不思議がってしまうかのん。
「クゥクゥに呼ばれてきた」
「はい、可可が呼びマシタ。かのんさん、始さんも可可に協力してくれんデス!!」
彼女の言葉に驚くのはかのんだけではない。先程、始さん”も”と言った。つまりは、自分以外にも協力者がいると言う事。そしてその人物は十中八九……
「え、もしかしてかのんも可可に協力してんの?」
「してるというか……するってさっき言った感じ……かな……? それより始くん、クゥクゥちゃんとどこで知り合ったの!?」
「昨日の夜だけど」
このままだと始とかのんの間だけで話が進展していきそうだと察した可可がストップをかける。
「そういう訳デス。かのんさん、始さん、改めて一緒にスクールアイドルやってくれる人探すの手伝ってくだサイ!」
「うん、人を探すのなら私にもできる筈だから」
「昨日言ったからな。二言はねえってやつだ」
改めて言うことでもないと思ったが、可可にとってはそれほどまでに大事なことなのだ。であれば何としてでも彼女の願いを叶えてやりたいと始は意気込む。
そこからスクールアイドルに興味を持つ、或いはやってくれる人を授業の合間で探し始めたのだがこれが全くといって良いほどいないのだった。そして時間は昼休み。中庭で現状を報告し合う。
「ダメだ。みんな他にやりたいことがあるって」
「私が聞いたのも同じような答えだったかな……」
「そうデスか……」
結構簡単に集まるとも思ったが、実際はそれほど甘くなかった。可可も収穫は良くないようで視線を落としている。
「元気出せよクゥクゥ。まだ声かけてない人とかいるし、粘り強くやっていこう?」
「そうだよ。まだ音楽科の人達にも声かけてないでしょ?」
すると可可は何かを言いたそうにかのんへ視線を向けるが、なんでもないと再び視線を下へ。
「お、あの子とかイイ感じじゃん?」
「始くん、ナンパ師みたいな言い方しないで」
かのんの指摘に「すみません」と謝罪しつつ。始は目の前を通過する女子生徒へ声を掛けた。
「あの……」
「なんでしょう?」
「突然で悪いんだけど、スクールアイドルとか興味あったりしない? もしよかったら……」
話している中で世間のスカウトマンはこんなことをやっているのかと、賛辞と尊敬の念をどこかへ送る始。
すると金髪の女子生徒はわずかに振り返る。立ち止まり話を聞いてくれたこと、そして多少なりとも振り返ったっということ。これは”キタ”のではないかと期待する。
(これ……アリか? アリなのか??)
しかし、彼女から発せられた言葉は全くもって予想していないものであった。
「アタシを誰だと思ってるの!?」
一蹴というべきか、怒られたというべきか。何れにしろやってくれそうにはないことはわかった。
「強烈にフラれマシたね……」
「いや言い方……」
首を垂れる始の元に集まる2人。
─────そんな時、聞き慣れない通知音が各々の携帯から流れ始めた。その音を聞いた途端、周囲の空気が一変。誰もが携帯を取り出して画面に注目する。
「始くんこれって……」
「緊急速報メールだ」
国民保護に関する情報として政府から送られてくるメールだ。これが送られてくる大抵の場合は……怪獣出現の時である。
けれども今回は違うらしく、隕石が降ってくるとのことだ。これでも大惨事ではあるのだが、怪獣という獰猛な動く災害への脅威を前にするとどうしても比べてしまう。かといって避難しないわけではないが。
すると校舎中、否、街中のスピーカーから避難指示を告げる警報が流れ出す。日常的になったとはいえ、未だこの音になれる気配はない。
「皆さん、体育館に避難してください!!」
音楽科の制服を身に纏い、髪を後ろで結った生徒が大声で告げる。
「人集めは後だ。今は避難しよう!」
「わかった」
「はいデス」
体育館は一般の人を受け入れるための避難所として機能する。既に学校の生徒ではない人たちも体育館へと続いていた。
この行動の速さも連日のように怪獣災害の様子が報道されていること、そしてそれに伴う避難経路などが細かく整備されたからだ。
体育館へと入る前に、始は街の方へ目を向ける。丁度隕石が街中へ落下するところだ。
「みんな伏せろ!!」
誰かの一声に従い、衝撃に備えて伏せる。
轟音が鳴り響き、砂嵐が人々を襲う。人々の悲鳴は自然の繰り出す音にかき消される。
「お、おい怪獣だ!?」
どうやら隕石は宇宙を彷徨い、この星の引力に引かれたものではないらしい。自らの意思を持ち、破壊の限りを尽くさんとする獣だったようだ。
「なんだアレ……」
「そんなこと言ってないで避難だよ!!」
「始さん、ボサッとすんなデス!!!」
緊急時に怪獣を見ていた始に向かい、2人は言葉を投げつけた。
街に聳え立つビルを頭部で破壊し、叫びをあげるのはゲネガーグ。宇宙での長い航海の後に、この星へたどり着いた狂暴な怪獣だ。
怪獣は未だ人類には計り知れない力を秘めている。放っておけば文明を無に帰すことだって容易い。
そう。放っておけば……だ。
何者かの気配を感じたゲネガーグは空を見て吠える。空を舞うのは銀色に輝く巨大な人型ロボ。ストレイジが保有する特空機第1号セブンガーだ。
「セブンガー、起動!」
コックピットでの晶子の掛け声とともに、まるで言葉を喋っているかのようなセブンガー独特の起動音が鳴り響く。
《セブンガー、着陸します。ご注意ください》
機体から外部に向けてAIが注意喚起のアナウンスを行う。そして背中にあるブースターで落下の衝撃を抑えつつ着地。
「何、この怪獣……結衣、見えてる?」
『見えてる。……過去のデータベースには載ってない新種だね』
セブンガーのメインカメラや、街中に配備されたカメラはストレイジ統合基地のモニターで確認可能だ。基地では結衣が分析を、正太が指示を出してくれることで晶子は柔軟に戦うことができる。
「了解。隊長、とにかく攻撃してみます!」
『わかった。相手は何をしてくるかわからない。十二分に気を付けろ』
『晶子、できれば怪獣のサンプルも入手して!!』
「もうまた無理な注文を……。いくよ、セブンガー!」
晶子の操作によってゲネガーグと交戦を開始するセブンガー。高出力のギアや各部のエンジンをフル回転させ、文字通りの鉄拳が怪獣の頭を殴り飛ばす。弱った隙に2度、3度と拳の味を思い知らせる。
「■■ッ!」
けれどもゲネガーグだってサンドバッグのままでいる筈はない。巨大な頭で頭突きし、バランスを崩したとこでさらに追撃。セブンガーを押して転倒させようと突進。
「このぉぉぉぉぉ!」
晶子も負けているのは性に合わない。ブースターを蒸かし、転倒をギリギリ耐える。さらにその勢いを利用して、左でのアッパーを食らわす。
「人々を守る意地、舐めんな!」
《実用行動時間、残り2分》
セブンガーはバッテリー式であり、背中に接続されたバッテリーカートリッジにより最大3分間の行動が可能となっている。
時間が来てしまえばビートル隊へバトンタッチするしかないが、怪獣が悠長に待ってくれる筈がない。ここで戦えるのは晶子とセブンガーのみと考えるのが妥当だ。
「結衣、サンプルには期待しないで……よ!!」
両こぶしを合わせ、真上から一気に振り下ろす。怯んだと思ったのも束の間、ゲネガーグの反撃にセブンガーは転倒。形成が逆転してしまった。
『晶子!』
コックピット内のスピーカーに正太の声が響く。一瞬でも手を抜けば市民は勿論のこと、パイロットだって危険になる。
「大丈夫……です!」
ゲネガーグに食い千切られる前に、セブンガーは距離を取る。すると今度は結衣の声がスピーカーから聞こえてきた。
『晶子、同じ場所にもう1つ高熱源体が接近中』
『何だと? 今日は随分と賑やかだな』
『接触まで3、2、1……!』
結衣のカウント通り、丁度ゲネガーグとセブンガーの中心に光が舞い降りる。
「なになになに!?」
眩い光が収まると、目の前に現れたのは青い体の巨人。
「え……嘘……結衣、隊長」
『見てるよ……この姿、もしかしなくてもそうだよ!!』
銀色の頭に輝く瞳、胸元で光る水晶体という姿はこの星に生きる人間であれば誰もが知っているものであった。
かの巨人の姿はストレイジだけでなく、避難所にいる者、テレビで中継を見る者……世界中のあらゆる人間が目にしていた。
『ああ……ウルトラマン……だな』
10年の時を経て、再び光の巨人が地球の大地に立った。
始と可可の絡み、そして平和が突如崩れていく世界についてを描いた3話でした。
何気に今回でストレイジの戦闘を初めて描きましたね。ロボット兵器はいいですね。