Superstar-Z   作:星宇海

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今年もよろしくお願いします。
そして申し訳ございませんでした。


第32話 赤と青の衝撃

「か、怪獣どぉわぁぁぁぁぁ!?」

 

 日々の通り、それでいて突然。姿を現し、周囲に構うことなく逃げ、追いかける怪獣たち。予想のつかないその動きに人々はパニックに陥っている。

 阿鼻叫喚と化した街の様子は、ストレイジも勿論観測済みだ。

 

「知っているとは思うけど、あれは"古代怪獣(コダイカイジュウ)ツインテール"全身のトゲを使って地中を高速移動したり、あの体をまっすぐに伸ばして海中を素早く泳ぎ回れるの」

「あれ……追いかけられてるの?」

 

 モニターに映される怪獣の様子を見ながら晶子は結衣に問いかける。しかしその質問が飛んでくることも予想済みか。すぐさま答える。やや声が弾んでいるのは気のせいだと思いたい。

 

「追っているのは"地底怪獣(チテイカイジュウ)グドン"ツインテールを追いかけているのはグドンにとって食料だから!」

「食物連鎖なら地中でやって欲しかったんだがな……」

 

 怪獣にも食物連鎖がある。この星で生きるものだというのにどことなく意外性を感じてしまうのは、怪獣という存在を未だ理解しきれていないからだろう。けれど、あれだけの巨体で街中を逃げられるのはこちら側が危険だ。早急に対処しなければならない。

 

「よし、晶子はセブンガーで迎撃。結衣、現地で2体を市街地から遠ざけろ。ツインテールをうまく誘導できればグドンもついてくる筈だ。始は避難誘導を。……実戦だが気張るな。何かあれば俺や結衣を頼れ」

 

 避難する側でなく、避難させる側。守られる側でなく守る側。ウルトラマンとしてやってきたそれもいまだに慣れる気配はない。でも、これは自分が選んだ道。そこに後悔はない。だから始は強く頷いた。

 

「……了解!」

 

 

 

 

 

 各自が出現準備を整えていく中、結衣は格納庫へ降りていく。探しているのは当然、セブンガーのパイロット。

 

「晶子!」

「結衣? どうしたの?」

「伝え忘れてた! グドンには振動触腕エクスカベーター、ツインテールにも強力な鞭がある。だから気をつけて」

 

 グドン、ツインテール……地底で生きるために進化した両種族は、偶然にもリーチの長い攻撃力を備えている。考えなしに近接戦を持ち込むのは危険だ。加えて今回は2体。作戦には慎重な動きが求められる。

 

「了解。なら、どっちも斬ってから対処ね。あの武装を使うわ」

 

 晶子はすぐさま整備班へ伝えると、ある装備がセブンガーの元へと運ばれる。20式銃剣2型。柄頭から鍔まで赤く塗装され、刀身は銀色に輝いた短剣型武装だ。このような外部武装はセブンガーのロールアウト後、実戦データを元に随時制作されてきたもの。中には"セブンガーで舞を披露する"際に使用された特注品もあり、用途は様々といっていい。とにかく、あの短剣装備なら2体の長いリーチに対抗できるはずだ。

 

「これでよし」

「でも気をつけて。耐久性に難があるから、下手に使うと折れるよ?」

「大丈夫。そこは私の操作に任せなさいって!」

「……そうだね。それじゃ、2体の誘導は任せて!!」

 

 2人は互いの持ち場へと向かって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「皆さん落ち着いて避難してください!」

 

 逃げ惑う人々を避難所へ誘導する始。しかしなかなか上手くいかないのが現実だ。それもその筈。怪獣が街で暴れていれば、誰だってパニックになる。それはあの時から変わらない。落ち着いてと言って落ち着けるわけがないだろうと自身にツッコむ。

 

『始くん、避難どうなってる?』

「あともう少しで避難完了です!」

『上出来だ。結衣、そろそろ動くぞ』

『了解! 待っててグドン! ツインテ────』

 

 通信が切れた。おそらく五月蝿くなると察した正太が操作したのだろう。始は戸惑いの表情を浮かべながらも任務に集中。避難誘導を再開させる。

 

「……! あれは!?」

 

 誘導を行いつつ、辺りに目を向けていた彼が見たもの。それは見覚えのある制服姿だった。

 

「大丈夫ですか、早く避難を!!」

 

 すぐさま駆け寄り、避難するように指示。

 

「わ、わかりました……あ、貴方は!?」

「え、葉月さん!?」

 

 聞き覚えのある声、礼儀正しい言葉遣い、そして黒髪のポニーテール。聞き間違うはずも、見間違うはずもない。その少女は葉月恋。でもなんら不思議なことはない。ストレイジでいればいつかは起きていた事。下校途中で怪獣災害に巻き込まれることだってあり得るのだから。とは言ってもあまりに早過ぎる。予想外の状況に動揺してしまうものの、どうにか平静を取り戻し……たように見せかけ、避難するように伝える。

 

「何故あなたがストレイジにいるのですか!?」

「ま、まあ……色々あって……じゃなくて、そんなことは今どうでもいいだろ!」

 

 地響きは未だ止むことは無い。ツインテールとグドンはビルを構わず薙ぎ倒し追いかけ、そして逃げている。

 すると、青白い光弾がツインテールへ撃ち込まれる。刻みの良いテンポで放たれ、怪獣の皮膚から火花を散らす。そこに響き渡る音。それは作戦開始開始の合図でもあった

 

「怪獣たちをこっから遠ざける。葉月さんも早く逃げて!」

 

 恋が何かを言っていたようだがそれを聞き返す暇はない。指示を終え、始は誘導地点へと走っていく。

 

「後々問い詰められるんだろうなぁこれ……」

 

 

 

 

 

「おおー、ちゃんと着いてきたぁ〜!!」

「喜んでる場合か! 下手すると俺たちがツインテールの餌だ!!」

 

 ステッグを使い、ツインテールを誘導する結衣と正太。後ろから迫る2体に興奮、或いはビビりつつアクセルを踏み込む。

 2体が動く度に、アスファルトの細かい破片が雨のように降り注いでくる。しかし抜群の運転能力を発揮し、瓦礫の雨を縫うように走り抜けていく。

 

「そろそろだ、晶子!」

『了解!』

 

 誘導地点に2体が足を踏み入れた瞬間、セブンガーの力強いタックルが炸裂。ツインテールを先に吹き飛ばし、切り返すと同時に背中のブースターを点火。グドンの腹へ体当たり。

 

「頼むぞ晶子」

 

 さらなる乱入者へ咆哮を上げる2体。同時に右手の短剣型装備を構え、タイミングを図るのはセブンガー。ほぼ同時地を蹴り、3つの影が重なる。瞬間、巨大な地鳴りが辺りに伝播していく。

 

「結衣、距離をとって晶子を援護だ!」

「了解!」

 

 2体と戦闘を行うセブンガーを援護するため、銃口から青白い光が放たれる。

 火花を散って声を上げるツインテールにセブンガーの左フックが炸裂。だが、側面から迫るグドンの攻撃は防ぎきれなかった。

 

『ああもう! やり辛いったらありゃしない!』

 

 晶子の怒りが籠ったセブンガーは、短剣でグドンを突き刺そうと試みる。すると今度はツインテールがその行動を阻止せんと動いてくる。相入れない関係の筈だが、共通の敵がいるとなると抜群のチームワークを発揮してくるようだ。

 

「こんな時にウインダムがあれば……」

「無いものをねだったってしょうがない。ここは晶子に……そしてアイツに任せる」

 

 正太は信じている。知っている。地球人の技術だって怪獣と太刀打ちできることを。そして待っている。彼が来ることを。以前この星を守っていた男のような力を持ち、彼と似た信念を持つ少年のことを。

 

「晶子さん、今助けに行きます!!」

 

 全力疾走で駆け抜けていく始。彼の目の前ではセブンガーが怪獣たちと戦っている。しかし戦況は怪獣側へと傾きつつある。それを食い止める為、彼は共に戦う戦士へと呼びかけた。

 

「行くぞゼット!」

 

 そんな彼を追う影が1つ。

 

「夏空さん……待ってください……!」

 

 息が絶え絶えになりながらも走る恋である。ストレイジである彼に避難しろと言われたが、やはり同学年の少年。放っておける訳がなかったのだ。けれども追いつけはしなかった。何故なら彼は"人を超えた速度"で走っていたのだから。

 始は後ろにいる恋に気付く筈もなく、ゼットライザーを起動。前方に現れた光の門を潜っていく。

 

「待ってください……あれ? 夏空さん……?」

 

 彼を見失い、辺りを見回す恋。すると次の瞬間、眩い閃光があたりを照らす。

 空を駆け、飛び蹴りによって2体を伏せさせたのは、青い上半身に赤い下半身の戦士。その名を────

 

「ウ、ウルトラマン……ゼット……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 突然の乱入者に、獲物も捕食者も利害が一致。咆哮を上げ、目の前の巨人へ進軍する。

 

『来るぞ、始!』

 

 正面から迫るグドンとぶつかるゼット。どちらも退くことのない押し合い。しかしそれを終了させたのはツインテールの鞭攻撃。空気を切り裂いて放たれたそれは彼の右腕を叩く。そのダメージは強力で、痛みと衝撃で後退してしまった。

 チャンスとすかさず追撃を試みるグドンとツインテールだったが、一体の鉄人に阻止される。

 

「私を忘れるなっつーの!」

 

 振るわれた短剣がグドンの胸部を切り裂く。続くようにしてツインテールの肉体も。

 舞い散る火花。数歩退がる2体。苦悶の声か怒りの叫びか。空気を震わし再度突進。ゼットがグドンを。セブンガーがツインテールと激突する。

 

『「ゼスティウムメーザー!』」

 

 緑の光線はグドンを焼く。懐に飛び込み、青い刃で斬りつける。

 

『始、このまま押し切るぞ!』

 

 ゼットの声に応えるように意識を集中させる。重なり合った2人の意思が体を動かし、素早い連撃でグドンを攻め立てる。

 一方セブンガーも自慢の怪力でツインテールを遠方へ投げ飛ばした。起き上がる隙も与えず馬乗りで追撃。

 

 が、世界というのは気まぐれだ。このまま優勢ではいさせてくれないらしい。さらなる地響きがその証拠。地を破り、炎を吹いてセブンガーへ不意打ちを仕掛けてきた。

 

「な、なに……!?」

 

 機体のダメージを確認しつつ、攻撃された方向へすかさず目を向ける。そこに居たのは同じく地底に住むとされる怪獣であった。

 岩盤を掘り崩し進み、膨大な熱エネルギーを蓄積した地底怪獣。

 

「”地底怪獣(チテイカイジュウ)テレスドン”まで……どうなってるの!?」

「おいおい何だ、地底怪獣のパーティーじゃないんだぞ」

 

 こぞって姿を現した地底住みの巨大生物たち。

 テレスドンの登場に気を取られ、ゼットの攻めが止まってしまう。グドンはすかさず、己の目からレーザー光線を放つ。至近距離から放たれれば、よほどの反射神経がなければ避けることはできない。当然、ゼットと始にはそんな力があるはずもなく……

 

『「うあああっ!?』」

 

 胸元から火花を散らして倒れ込んでしまった。

 一体の乱入による形勢逆転。いとも容易く変化するのが戦場……とは正太はよく知っているものの、毎回いい気分でないことは確かだ。

 

「面倒なことばかりが起きる」

「地底怪獣3体……こんなの絶対におかしい……」

 

 怪獣のことをストレイジ内では一番知り尽くしていると言っても過言ではない結衣が、現状を見て頭を悩ませているのだ。これが通常の怪獣出現とはまったく異なっているのだということは、火を見るより明らかだ。

 が、今はそれよりも優先しなくてはいけないことがある。

 

「結衣、今は解明よりも解決を優先しろ。防衛が俺たちの任務だ」

「……、了解!」

 

 マズルフラッシュ。ツインテールに火花が散り、動きが止まる。

 

「晶子、まだ行けるか!」

『勿論です!』

 

 銀色のボディに焦げが目立ち始めた我らの仲間へ目を向ける。

 

《機体損傷箇所多数確認。活動限界時間、残り1分》

「だよね……けどもう少し頑張って!」

 

 何もかも限界のセブンガー。背中のブースターを点火させ、一直線に突っ込んでいく。対してテレスドンも体をドリルの如く回転させ対抗。その勝負はテレスドンの方が有利だったか、セブンガーは吹き飛ばされてしまう。

 だが咄嗟に右腕をヤツに向け、狙えているかどうかもわからない状態で─────

 

「硬芯鉄拳弾……発射!」

 

 晶子は叫びと共に発射した。しかし通常のそれとは異なっており、あるものが握られた状態で。

 

「おい、あの手……」

「20式短剣を握ったまま!?」

 

 突き刺す手の形のまま、轟音を上げ飛んでいく。その姿はまさしく槍と形容する他ない。一直線に走る鉄拳弾はテレスドンを斬り、そして動きを止めていたツインテールの身体を貫いたのだった。

 ツインテールはそのまま地面に伏すと同時に爆ぜるのだった。一方、傷を負ったテレスドンはそのまま地中へと潜り姿を消してしまったのだった。

 

「なんとか退避させたな」

「はい……」

 

 突如として現れたテレスドン。ヤツの目的はなんだったのかは不明だが、今考えるのはそこではない。

 

「セブンガー、お疲れ……」

 

 激闘を制した晶子も、コックピットから語りかける。答えはしないものの、気持ちは通じている筈だ。

 

「あとはお願い。ウルトラマン」

 

 同じく、未だグドンと戦うウルトラマンゼットにも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

『おお! ツインテールを倒したみたいだぞ!!』

「みたいだな。ならこっちも負けてられない……!」

 

 ストレイジの先輩方に刺激された2人は、その闘志を真っ赤に燃やした。

 

《ULTRAMAN Z BETA SMASH》

 

 ウルトラフュージョンし、グドンへ突進。そのままドロップキックを喰らわせれば第2ラウンドの開始である。

 振るわれる鞭を回避……するのでは無く、体で受け止める。そのまま両腕に絡ませ、ジャイアントスイングを決めた。

 

「よし、このまま一気に決めよう!」

『始、そこに短剣がある! あれも使っちゃいましょう!』

「よし!」

 

 走りながら地面に転がっていた短剣を拾う。それはセブンガーが装備していた20式短剣だ。腕が転がった衝撃で飛んできたのだろう。

 何も考えず、衝動的に短剣を握ったゼット。赤い体に目元を覆うようなマスク、そしてその赤い短剣。偶然にも色が一致。短剣を持ち、怪獣へと向かっていくゼットの姿は、何処となく別の戦士を連想させた。

 

「まずいな……」

「……?」

 

 その姿を見た正太は呟く。無論、隣の結衣は疑問符を浮かべている。

 一体何がまずいのだろうか。ここで訪ねたとしても、彼は答えてはくれないだろう。

 

「◾️◾️◾️!?」

 

 悶えつつも立ち上がるグドン。しかし向かってくる赤い巨人の姿を目の当たりにし、ギョッとしたように一瞬だけ動きを止めてしまう。だが生物的本能ですぐさま地面を蹴る。目からビームを放ち、巨人を吹き飛ばそうとするが彼らは止まらない。

 

「喰らえ……!」

 

 

 

 すれ違い様、短剣と鞭が交差する。

 

 

 

 暫しの沈黙。途端、短剣が折れてしまう。戦いのダメージに耐え切れなかったのだろう。

 貰った、と勝利を確信したグドンは眼が光り始めていた。その光線で巨人を貫くつもりらしい。けれどゼットは冷静に。振り向きつつ予備動作を終え、一気に腕を上下に開いた。

 

『「ベータクレセント……スラッシュ!』」

 

 放たれたのは半月型の刃。青白く光るそれは瞬く間にグドンを真っ二つに切り裂いた。

 倒れると同時に噴き上げた爆発。それはこの戦いの勝者が誰なのか、この場で告げているかのようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「学校の為にはならないって」

「そんな……え?」

 

 地底怪獣の騒動が明け、日常を取り戻した。

 忙しなく巡る日々へと戻り、始はかのんと話をしている。無論葉月恋のことで。

 

「始くんはどう思う?」

「学校の為にはならない……なんか引っ掛かるな。そこって普通、もっと個人的な理由がある気がするんだよ。でもその話だとさ、葉月さんの言葉が見えてこないというか……」

「だよね。やっぱり葉月さん何か隠してるんだよ」

「同感……って言っても話してくれる感じじゃ無さそうだけど」

 

 恋が語った言葉には、個人的な感情がないように思えた。いやその個人的な感情を隠しているからこそ「学校の為にはならない」という、学校目線の言葉で隠しているのかもしれない。

 何れにしても、彼女が何故そこまで嫌悪しているのか原因を探る必要があると感じているのだった。

 

「いたいた。始くん、かのんちゃん全校集会始まるよ〜」

「ありがと千砂都」

 

 そうして廊下を渡っていくと、掲示板などに飾り付けなどが施されているのが目に入る。

 

「そういえばさ、始くんのクラスは何やるの? 文化祭」

 

 恋が公約にも書いていた通り、結ヶ丘初の文化祭が控えている。それにより普通科、音楽科ともに張り切っているのだ。ともなれば当然、クラスごとに出し物がある訳だが……始は答えようとはしない。

 

「いや……」

「いいじゃん勿体ぶらなくてもさ〜」

「勿体ぶってる訳じゃ無いんだけど」

 

 頑なに答えない始だったが、さらりと千砂都が答える。別のクラスなのに。

 

「メイド喫茶でしょ?」

「いやなんで知ってるの!?」

「クラスの子から聞いたよ〜。男子は女装するんだって?」

「うわぁぁぁ! 筒抜け!!」

 

 それが答えたくなかった理由である。因みに経緯はクラスの男子がふざけて「メイド喫茶で!」と案を出したら、何故か面白いように進み採用されてしまったからである。しかし一方で「私たちだけメイドの格好は理不尽」という女子からの声もあり、男子は女装することとなってしまったのだ。

 

「へぇ〜、始くんの女装見てみたいかも」

「いやいやホントやめろ! 似合わないから!!」

「だから見たいんだよ!」

「お前……!」

「クゥクゥちゃんとすみれちゃんも連れて行くね!」

「マジで…‥勘弁してくれ」

 

 既に絶望しかない文化祭の話をしながら体育館へ向かい、それぞれの場所へ。

 今日の全校集会は生徒会長の挨拶が主だ。教員の話が終わり、名前が呼ばれた瞬間、誰もが彼女の言葉に耳を傾けた。

 

『それでは生徒会長、葉月恋さん。よろしくお願いします』

「はい!」

 

 凛とした声が体育館に響き渡る。壇上へ上がり、マイクの前に立つ彼女を見上げながら、ふと考えに耽る。そういえばあの後、ストレイジの事については聞かれなかったなと。自意識過剰だったかと思うと少し恥ずかしい。

 

『改めまして、この学校の生徒会長に任命されました葉月恋です。この名誉ある仕事に就くことができ、光栄であると同時に、身の引き締まる想いです』

 

 自分の想いを生徒たちに伝える彼女の姿は、それだけで彼女が生徒会長という役職に相応しいのだと感じさせる。けれど、だからこそかのん達に向ける感情が余計気になってしまうのだが。

 

『私はこの結ヶ丘を地域に根ざし、途切れることなく、続いて行く学校にする為に、誠心誠意努力する所存です。その為に……』

 

 その時、先程までスラスラと呼んでいた宣言が……止まったのだ。数にしてほんの数秒。普通であれば噛んだとか緊張だとかで、到底はよくあることとして処理される。が、葉月恋だからこそ、そうはならなかった。その生じた間に、幾人かの生徒がざわつき出す。当の始も、恋に注目してしまう。すると彼の強化された視力は捉えてしまった。唇を噛み、眉間に皺を寄せる彼女の表情を。それはまるで、何かに葛藤しているようで……。

 

『その為に……最初の学園祭は、音楽科をメインに行う事と決定しました』

 

 あまりにも突拍子のない発言。そして公約違反と言えるそれに、驚嘆の声を漏らしてしまう。そしてそのざわめきは瞬く間に生徒間へ広がっていく。始は再度彼女を見上げる。するとそこには先程までの表情が嘘であるかのように、毅然とした態度で立つ恋の姿しかなかった。

 

 




今年中に恋回を終わらせたい。
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