Superstar-Z   作:星宇海

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お久しぶりです。難産でした。

一昨日、昨日と6thに行ってきましたが心を震わせる曲ばかりで……。


第36話 彼が守った地へ

 長いトンネルを抜ける。車が走れる程度に明るいとは言っても、無意識に体が遮断するくらいには薄暗いオレンジ色は暗かったようだ。窓から移り行く景色を、始はただ無言で見つめていた。それは心を奪われているからなのか、当時の人々に共感したかったからなのか……。

 静岡県沼津市。伊豆半島の付け根西側に位置する海のきれいな街だ。この街はある時を境に、こう呼ばれることとなった。

 

 ”初めて怪獣とウルトラマンが現れた地”

 

 怪獣や宇宙人が創作や噂話程度だった時代と、怪獣頻出期となった現代との狭間に位置する場所。そして……ウルトラマンの奇跡を多くの人々が目の当たりにした場所でもある。当時のことは鮮明な記憶がある訳ではない。けれどテレビで怪獣災害が報道されていた事、そしてウルトラマンが怪獣を倒した事……それらを観ていた記憶がう薄っすらとある。でも身をもって感じたのは、東京にも怪獣が出現し避難勧告が出た時だろう。怪獣とウルトラマンは、テレビの中だけの存在じゃないのだと。

 

「今となってはなんやかんや言われているが、来てみれば案外普通の場所だろ?」

「そうですね。何ら変わりない……みんなが暮らす場所」

 

 何か特別な建物があるわけでもなく、人々の雰囲気が異なっている訳でもなかった。

 しかしそれは見た目的な話である。世界で初めて怪獣が頻出し、多くの被害が生まれてきたことから、どこよりも早く怪獣災害に対する行政関係の仕組みが変化した地であることは確かである。怪獣災害に対する対策や保険関係は日本中、いや世界と比べても先を進んでいるのだ。悪魔の嵐を巻き起こす怪獣や土塊の巨大獣など、出現する度に広範囲に被害をもたらされたことから、怪獣シェルターの頑丈さや破壊後の復興速度等は世界一らしい。

 

「けど、まさか俺がストレイジとしてここに来るとは思いませんでしたよ」

「そうかもな。だが、お前はストレイジとしてだけじゃない。ウルトラマンとしても……だろ?」

 

 正太の言葉に、やや上がっていた口角がきゅっと結ばれる。それも確かに不思議な縁だ。同じウルトラマンとして、彼が守り抜いた地に立つこと。そのような偶然が今、このようにして起きていようとは、誰にも想像がつかなかっただろう。車は街中を進み、住宅街を抜けて海沿いを進んでいく。

 

「当時は防衛隊もなかったんですよね?」

「まあな。本格的に始動したのはアイツが去る直前だったし」

「そんな中……1人で守り切った……」

「ちょっと語弊があるな。ちょくちょく他のウルトラマンも姿を現していただろ?」

 

 記憶を探る。確かにオーブのほかにも、手足にクリスタルを輝かせた巨人や鎧を纏う巨人、青い体の巨人なんかがいたことを思い出す。当時沼津や内浦では総勢7体もの巨人が確認されたのだとか。ビートル隊が結成されていなかった当時としては、彼の心強い存在となっていたのだろう。

 

「因みに、東京でも2体の巨人が確認された」

「つまり9体……凄いですね」

「地球の事情も考えてほしいところだけどね」

「その時……隊長は?」

「……まあ、色々あってね」

 

 何体も巨人が姿を現しているという事は、それなりの脅威がこの星に降り立っていたという事。ゼットとともに戦うようになって、当時の状況が如何に危機的であったのかがわかるようになった。どんな危機的状況でも彼は諦めず……この地を、この星を守り切った。オーブの存在が、始の中でより大きくなっていく。それと同時に……。

 

重たいな

 

 

 

 

 

 

 

 

「始、そろそろ着くぞ」

 

 沼津についてからさらに数分車に揺られ、内浦へと到着した。外に出ると暖かな太陽の光に照らされる。潮の匂いが鼻孔をくすぐり、少しだけ冷たい風が頬を撫でてくるのであった。目の前に広がる景色を眺めるのも一瞬。すぐさま調査準備に取り掛かる。ここに来たのは観光ではないのだから。

 

「始、こいつを使って反応があったら知らせてくれ」

 

 銃身が無く、グリップのみ。引き金部分にモニターが設置されている機械を渡された。SF作品で登場する動体探知機とよく似ている。

 

「使用用途はそれと一緒だよ。ただこっちの方がコンパクトだし、動いてなくても生体反応をキャチしてくれる」

 

 考える事は皆同じらしい。と言うより、正太もその映画を観ていることが驚きだ。有名とはいえ古い映画である事に変わりはない。プライベートを詮索する訳ではないが、結構"そういったもの"が好きなのかもしれない。

 

「……あんな生物がいたら、流石のあいつもお手上げかもな」

「……?」

「なんでもない。ほら、仕事だ仕事」

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「なんだコレは!!」

 

 基地中に晶子の声が響き渡った。始と正太が居ない分、いつもよりボリュームが大きかったのか結衣は体をビクッと振るわせる。随時2人から送られてくる調査データにも目をやるが特に異変もない。目を離しても問題ないだろうと判断して晶子の元へと向かう。

 

「何々、どうした〜?」

「始が入れたのってプリンだよね?」

「昨日の? そりゃ隊長が買ってきたのがプリンだからねぇ」

「じゃあコレ見てよ」

 

 目の前へと出されたプリンに結衣は目を疑った。プリンの半分が茶色に変わっていたのだ。もはや瓶底のカラメルと区別がつかない。

 

「これ……焼きプリンじゃない?」

「プリンが……焼きプリンに……?」

「電子レンジじゃあるまいし……どうなってるんだか」

 

 あり得ない事象に頭を傾けている結衣の視線は、自然とプリンの横にあったサンプルに目を移していた。アルミホイル……によく似た電磁遮蔽・耐熱性特殊フィルムに包まれた物体に。

 

「ネロンガの角……?」

 

 フィルムに包んでもなお、その力を完全に遮断し切る事は出来ていない。つまりそれ程までに力が強力だという事。透明怪獣の角は電気を吸収すると同時に、増幅し放出する器官である。そんなこと……結衣が知らない訳がない。そして同時に思い起こされたのは、バコさんの言葉だった。

 

「意外なものが別のところで……」

 

 バチッ、とまるで電極が繋がったの如く回り始めた思考。それは彼女の中でとある仮説を生み、そして確信へと昇華させた。

 

「これだ」

「結衣、どうしたの?」

 

 意外な使い道は何も機械の部品だけではない。目の前にある巨大生物の器官だって同じこと。人々のライフラインを滅茶苦茶にした存在の一部だが、今度は人々を守るためにその力を発揮してくれる。結衣の信念がそう告げているのだから。

 

「ウインダムを……満腹にさせてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 砂浜へと足を進める。テレスドンの反応は一向に掴めず、そのまま浜辺(ここ)へと来てしまっていたのだった。道中、「ウルトラマンこそが悪魔であり、天使は我々の信奉する……」と当事者からしたら一言二言言わなければ気が済まない勧誘文句が聞こえてきたことがあった。が、強い自制心をもって何とか無視を決め込むことに成功した。ただ、だからこそ気分もより滅入ったのだが。

 砂浜で一息つく。丁度心地よい風が全身を吹き抜けていくと、進展の見えない現状と先の出来事で沈んでいた気分も幾分かはマシになっていった。眩い太陽が海へ反射し、光輝く様はまさに宝石。そして心地よいリズムを奏でているのは波の満ち引きだ。東京や神津島でも海を見たものの、目の前に広がるそれはまた違うものに思えた。

 

「……」

 

 辺りには家族連れやサーファー、釣り糸を垂らしている人等がちらほらと居る。まさしく平和という言葉が似合う光景だ。彼は……オーブはこの景色を守り切った。その事実に改めてその偉大さを思い知る。でも思い知るとそれだけ自分にも……。

 

「ダメだダメだ。今はそんなこと考えてちゃ!」

 

 圧し掛かってくるそれを忘れようと少し離れれば、自分ひとりしかいないような……そんな不思議な感覚に包まれる。

 

「これは……」

 

 目を落とす。すると砂浜には様々な文字……否、チーム名が書かれていた。そう言えば可可に聞いたことがある。沼津、内浦に来たスクールアイドルは砂浜にチーム名を書き記していくのだとか。優勝祈願や新たに始動した故の宣言であったり……チームごと理由はそれぞれらしい。そんな文化が広がり出したのも、ちょうど10年前との事だ。

 ここに訪れ、軌跡を残していくスクールアイドル達。彼女達は一体どんな表情で書いているのだろう。そんな事想像するまでもない話だ。これから待っている事に不安と、希望を持って……だとしても笑顔で書いている筈だ。けど、その終着点が望んでいたものでなかったら。走り出しても途中で躓き、転んだまま終わることになってしまったとしたら。

 

 叶えたい願いを……叶えられなかったら。

 

 最後まで駆け抜け辿り着いたとき、これで良かったのだと……果たして終えることができるのだろうか。そんな迷いが、疑問が……彼の中には確かに存在するのだ。(彼女)の話を聞いたときからずっと。だからこそ知りたい。歴代のスクールアイドル達に。夢半ばで終わってしまった彼女たちに。君たちは後悔をしていないのか……と。

 

「なーに悩んでんの? 少年」

 

 ふと、背後から声を掛けられた。先ほどまで居なかった筈なのに、まるで瞬間移動してきたかのように突如として現れた気配。背後の女性の声に肩を震わせつつ彼は振り返る。

 

「おっと、驚かせちゃったかな? ごめんごめん」

「……あなたは?」

 

 そこに立っていたのは長髪の女性。シンプルな装いながらも、風でロングジャケットがはためいている。

 

「私? あ~、この近くに住んでるんだよ。ここはいつもの散歩コースでね。いつも通り歩いてたら、珍しく浮かない顔した少年がいたからね。心配して声を掛けちゃった」

 

 ニコリと笑って見せた女性。普段は大人っぽいのに、笑った顔にはまだ幼さが残っている。けど、心配とはいえ見ず知らずの人間に声を掛けるとはとても親切な人だ。このような人物は幼馴染の彼女ぐらいしか知らない。

 

「やっぱりわかりますか?」

「まあ、なんとなく。勘、かな」

「ホントですか? すごっ……!」

「私の勘、結構鋭いから」

 

 笑顔を見せた彼女は始に名前を尋ねる。簡単に自己紹介を終え、今度は始から聞き返す。すると彼女は一度視線を外し、再度こちらへ金色の瞳を向けた。 

 

「まあ、フユとでも呼んでよ」

「とでもって……」

「細かいことはいいの。あまり詮索するとモテないぞ? で、本題。始君はさ、一体何をそんなに悩んでんの?」

「モテないって……はあ……」

 

 彼女自身のことはあまり話したがらないようだ。はぐらかすと同時に話題を強引に変えてくるのだから。正直不思議な人物である。それにモテないは余計である。しかしここまで来てしまったら仕方がない。そして始は打ち明けることにした。生徒会長選から始まった一連の出来事。そして明かされた結ヶ丘の歴史を。

 

 




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