Superstar-Z   作:星宇海

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お待たせしました。
今回も長いので暇なときに読んでください。


第4話 我の名を叫べ

 市街地で繰り広げられているセブンガーとゲネガーグの戦い。そこにウルトラマンが介入する数分前、結ヶ丘の体育館には既に多くの人で溢れていた。誰も彼も怪獣から避難してきた者たちだ。

 

「まさか怪獣がここに現れるなんて……」

「こんな時代だ。どこに現れたって不思議じゃないよ」

 

 日常的に怪獣災害に見舞われるからって、心までがそれに慣れる訳じゃない。怖いときは怖い。それは周りにいる人々や隣にいるかのん、可可がそうだ。

 

「日本には、ストレイジっていう防衛隊があるのデスよね?」

「ああ。って言っても所属は同じビートル隊だけど」

「怪獣、倒してくれマスよね?」

 

 不安そうな瞳で可可は尋ねた。

 テレビで見る怪獣と、間近で見てしまう怪獣の恐怖は桁が違う。巨大な牙や鋭い爪、そして一瞬で灰へと変える熱線。それらに生身では太刀打ちできない。そんな破壊の化身たる存在を目にしてしまえば、不安になるなと言われる方が無理な話である。

 そんな彼女の暗い面持ちを見ていられなくなったかのんや始は可可を励ます。

 

「大丈夫だよ、可可ちゃん! ストレイジなら怪獣をやっつけてくれるよ!」

「うん。日本の怪獣撃破率はビートル隊よりもストレイジの方が多い。まさに大船に乗ったつもりでいればいいんだよ」

 

 そうして可可を励ましていると、誰かの声が聞こえた。聞こえてきた方向に、そして内容に耳を傾けるとどうやら子どもと逸れてしまったらしい。ここでその子を見ていないかと事細かに特徴を説明しつつ訪ねているが、どうやら首を縦に振る人物はいないらしい。声音や表情から母親の焦りは火を見るより明らか。ここにいないのであれば、別の避難所に行ったか。しかし、子ども1人で行くとは思えない。であれば……。

 

「……逃げ遅れちゃったのかな」

 

 助けに行く。そんな考えが始の中で提示された。けれどこればっかりは無理だ。外は怪獣と特空機が戦闘を続けている。迂闊に外に出るということは自殺しに行くのと同じ。そんな勝手で自分の限界も知れないような正義感で動くのはもう……愚か者以外の何者でもないだろう。

 

「誰か見ていませんか!!」

 

 子どもを探す母親の声が、ある時の記憶と重なる。

 

 ────「うちの息子が逃げ遅れて……」

 

 ────「私が探してきます」

 

 ────「父さんは1人でも多く助けなきゃいけないんだ」

 

 ────「いいか始、お前が母さんを守れ……な?」

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」

「始さん?」

「始くん、ちょっと大丈夫!?」

 

 いつの間にか過呼吸になっていたらしい。

 可可やかのんの呼び掛けで記憶の渦から抜け出した始はゆっくりと呼吸のペースを平常に戻していく。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……うん、大丈夫……大丈夫……」

 

 元通りに空気を吸い吐きしているのに、心臓の鼓動は早くなるばかりだ。わかってる。それが助けに行きたいと自分の体が心に……あれこれ考える理性に訴えかけている証拠だということは。

 

「俺は……」

 

 もう時間がない。こんな葛藤をしている間にも戦闘はひどくなるだろうし、それは逃げ遅れた子どもに影響する。

 ちらりと目を隣にやると、子を探す母を心配そうに見つめるかのんや可可の姿が映る。途端、昨日の出来事が頭を駆け抜ける。

 

 そうだった。自分のやりたいことをやればいいと、君はそれでもいいと肯定してくれる人がいた。その行動が素晴らしかったと、尊敬していると言ってくれた人がいた。彼女らが夏空始をそう見てくれた。なら、行かなければ嘘だろう。

 

「始くん?」

 

 一歩前へと踏み出した彼に向かってかのんが呼び掛けた。

 

「……自分の気持ちに嘘を吐くのは今日で……いや、ここで終わりにしようと思う」

 

 そう言い残して始は母親にどこから体育館へ避難して来たのかを訪ねる。道を遡っていけば探し出せるというのが彼の推測だ。順路を聞いた始は、未だ戦いの続く外へと出ていく。彼の眼には、今までのような後悔の色はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

『ホントにウルトラマンだ……でも姿が10年前のデータと違う……ってことは新種!? うぉ~すっごぉぉぉぉぉ!!』

 

 スピーカー越しでさえ、結衣が興奮していることがよくわかる。なにしろ10年の時を経て巨人が地球に現れたのだ。彼女でなくても数多の感情を抱くというものだ。

 

 降り立った巨人はすぐさまゲネガーグと戦いを始める。拳や蹴りをゲネガーグの頭部に食らわせているが、防御はイマイチなようでどうも危なっかしい。

 

「隊長、見てますか?」

『ああ、見てるよ』

 

 正太の声が若干低くなったような気もした。それもそうか。急に来てなりふり構わず戦い始めたのだ。困惑や状況を見極めているということもあるのだろう。

 

「隊長、私もこのまま交戦を続行します」

『やめろ……って言ってやめるお前じゃないよな。だったら、ウルトラマンと共闘しろ』

「で、ですがウルトラマンと一緒に戦ったことないですよ!?」

『誰だってそうだよ。けど大丈夫だ。アイツの戦い方は結構単純だ。難しい動きはしてこないさ。ってか出来ないだろうからな』

 

 たった数秒でそこまで見抜くとは流石隊長、と舌を巻く。けれど感心している場合じゃない。彼らが怪獣と戦っているように、こちらも人々を守るという強い意志がある。任せっきりなんて御免だ。

 

「あなた、味方なのよね。だったらせーので行くわよ。せーの!」

 

 晶子の掛け声とともに拳を突き出す。勿論ウルトラマンも同時だ。それぞれが突き出した拳はゲネガーグに命中。大きく後退させることに成功した。さらにセブンガーが頭部を抑え込みその隙に巨人が攻撃を加える。攻撃に振りすぎる巨人を見て晶子は咄嗟に対応したのだ。

 するとゲネガーグの体が赤く発光。背中や側面から赤い光弾を放ってきた。セブンガーと巨人がよろめく間に、怪獣のブースト。頭部の刃で両者を斬って押し通る。

 

「この……逃げる気!」

 

 晶子はゲネガーグへのマークを外さずに起き上がろうと操縦桿を動かしていると、先に起きた巨人がセブンガーの手を引っ張り起き上がらせてくれた。

 

「……ありがと」

『晶子、聞こえるか?』

 

 異星人にも意外なところがあるんだなとか考えていると正太の声が入ってきた。

 

『怪獣は今、進路を結ヶ丘に変えやがった。今は避難所として機能してるから急いでそこを守れ。俺も現場に向かう』

「了解! ちょっとウルトラマン、私についてきて」

 

 隊長の指示のもと、セブンガーはウルトラマンと一緒にゲネガーグを追跡するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘が行われている真っ只中に来てみれば、警察やらビートル隊の隊員と思われる人たちが勇敢に避難誘導を行っていた。押し寄せる人の波を縫うように抜け、始は母親の話していた避難ルートを逆走していく。その道中で戦闘、そして追跡の様子も勿論見ていた。

 

「あれウルトラマン……だよな? でも姿が違う」

 

 彼の目が捉えているのはまさしくウルトラマンだ。けれど、それは10年前に見た存在とは全く違いように思えた。以前この星に長く留まっていたそれも姿をころころと変えていたが、彼とも似つかない。おそらくは全くの別人なのだろう。巨人の姿については今は後回しだと、始は走るペースを上げる。

 

 こんな危険行動、誰かに見られれば即座に引き止められるなと思っていたが、男子学生1人に目を向ける余裕はないらしい。今回はそれが幸運にも良い方向に働いてくれている。

 

 結ヶ丘からどのくらい離れただろうか。普段は多くの人が賑わっている筈の広場に、少女が1人立ち尽くしていた。先程母親から聞いた特徴とも一致する。彼女は目を真っ赤に腫らし、声を上げて泣いていた。親と離れ、どれほど怖い思いをしたのか……考えると胸が痛い。

 

「おい、大丈夫か……つって大丈夫な訳ないよな。お母さんのとこに逃げるぞ」

 

 少女の手を引き、始は戦闘の渦中にある区画から脱出を試みる。特空機やウルトラマン、そして怪獣による凄まじい揺れのせいもあるが、なんたって瓦礫まみれで上手く走れない。

 

「ちょっとキツイよな……今回ばかりは許してくれよ!」

 

 ここを踏破するのは高校生である始でもキツい。ならば手を繋ぐ小さな子ではもっとキツいだろう。少女を抱き抱えて逃げることにした。

 手を引いてあげた方がこちらの体力的にも良いのかもしれないとも考えたが、正直どっちが正しいかなんて始は考えていられなかった。

 

「っ!?」

 

 途端、継続的な揺れが一瞬にして大きくなる。バランスを崩すもののどうにか耐えた。しかし、背中に伝わる冷たい感触は明らかに”自分にとってマズい何か”を連想させるものだった。

 

 一方で結ヶ丘の避難所を守らんと、セブンガーとウルトラマンは交戦を続ける。特空機の力強い拳や、背中のスラスターでブーストをかけた頭突き。そして巨人の足蹴りがゲネガーグを後退させた時、奴の体が眩く光り始めた。

 さらに悪いことに、巨人の胸元にある水晶が赤く点滅を始めたではないか。

 

「ウルトラマンも制限時間あり!? 資料の考察通りか」

『晶子、怪獣の熱反応が急上昇してる。今は離脱して!』

 

 分析結果から良からぬものを感じ取った結衣の声が響く。しかし、無線で連絡が入る頃にはすでにチャージを終了していたようだ。

 

「まず……うわぁ!?」

 

 横からの衝撃でセブンガーは吹き飛んだ。タックルをかましてきたのは誰でもないウルトラマン。彼も悟り、セブンガーだけでも助けようと動いたのだろう。

 

「やべ……」

 

 怪獣に迸る光は熱として始にも伝わっていた。怪獣のことをよく知らない彼でもわかった。もう只じゃ済まないし、これ以上逃げる余裕もないことくらい。だから始は少女を守るように抱き抱えた。自分の背で幾らかは守れるかもしれない。その可能性に欠けた。

 

『……!?』

 

 一瞬……ほんの一瞬、ウルトラマンが背後に目を向ける。

 

 光が収束し、ゲネガーグが巨大な顎を開く。紫の光線が一直線に飛んでくると同時に、全身から放たれた赤い飛翔弾が降り注ぐ。

 バリアを展開するウルトラマンだったがもって数秒。即座に破られては攻撃を全身に受ける。

 

「がああああああっ!?」

 

 意識がプツリと切れる直前、家族は勿論のことかのんや千砂都、可可の顔がふと浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長!」

「晶子、無事だったか!」

「はい。でもセブンガーは……」

 

 ウルトラマンの行動により命に別状はない。けれどセブンガーはフレームの一部が溶け、おまけに活動限界時間を迎えてしまった。

 

「仕方ないさ。けどまだコイツがある。俺と晶子でなんとしても止めるんだ。

 

 ストレイジに支給される20式レーザー小銃を使い、ゲネガーグへ光弾を撃ち込む。雀の涙程度のダメージしか与えられていないだろうが足止め出来るのであれば可能な限りを尽くす。それが怪獣から人々を守る組織に属する者の務めだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「……い……さい……起きなさい、地球人」

 

 真っ暗な筈なのに、不思議と明るいのは周りに浮かぶ赤や黄色い光球のお陰か。始が目を覚ますと、なんとも奇妙な空間に倒れていた。

 顔を上げる。するとそこには先程の巨人が浮かんでいたために、思わず声を上げてしまう。

 

「私はウルトラマンゼット。申し訳ないが、お前は死んだ」

 

 開口一番に最もインパクトのある台詞を放つ。けれど怪獣の吐く熱線の余波を近くで浴びてしまったのだ。巨人が言うことにも納得がいく。

 

「じゃ、じゃあ俺が守ってた女の子は!?」

「大丈夫だ。私がバリアを張って守ったんだ。ウルトラ焦ったが無事だ」

「そっか……よかった……」

 

 ウルトラマンは全身に光線を受けても尚、始とその少女を守るようにバリアで包んだ。巨人が盾になったことが幸いしてか、始が抱き抱えていた少女まで熱は届かなかったようである。

 

「だがお前は助けることができなかった。重ねていうが本当に申し訳ない。ついでにどうやら、私もウルトラヤバい」

 

 その光線を受けたからか、巨人も死にかけの状態らしい。

 

「ならどうするんだよ。特空機も苦戦してたみたいだし……このままじゃあの怪獣は!」

『1つだけ手がある。私とお前が1つになれば、もう一度戦うことができる。手を組まないか? 私もお前の力が必要なのでございます』

 

 人とウルトラマンが一体化すればこちらも生き返ることができるし、やばい状態にあるウルトラマンも回復できる。Win-Winの関係……というやつか。しかし近くで死んだとはいえ、こちらはまだ15歳の一般市民である。そんな自分にこんな起死回生ともいえる話を持ってくるのかが疑問だ。それに……

 

『あの……言葉通じてる?』

「通じてる通じてるばっちりオッケー……なんだけど、ちょっと言葉遣い変だよ」

 

 若干日本語が変だったので黙ってしまった。どうやらそれが向こう側では通じていないと思われたらしい。というより、それまでも普通に会話していたではないか。

 

『え、マジ!? 参りましたな……地球の言葉はウルトラ難しいぜ……』

 

 今の喋り方を見るに神秘的な雰囲気で話しかけていたのはどうやら演技らしい。取り繕っていた彼の本性が見えた気がしてちょっと面白い。

 

「でも、なんで俺なんだ? もっと適任な人物とかいると思うけど」

 

 一般高校生よりも、戦う状況に慣た人物の方がウルトラマン側にも好都合だろう。そう思わずにはいられなかった。

 

『お前の行動……自分ではない誰かのために動ける姿……ウルトラ勇気があったぜ。俺はそんな人間を死なせたくないし、なによりそういった人と共に戦いたい。もう一度聞く。お前さえ良ければ、一緒に戦ってはくれませぬか?』

 

 そう言われたのなら、自分も喜んで協力したい。ただその前に、始には聞いておくべきことがあった。

 

「アンタと手を組めばあの怪獣を倒して……みんなを守れるのか?」

『ああ、守れる』

 

 目の前の巨人は濁すことなく力強く頷いた。ならば、もう答えは決まっている。

 

「なら……やる!」

 

 始の同意を聞き届けると、巨人は光となって消える。そして入れ替わるようにして始の手には、扇を半分に折ったかのような謎のアイテムが出現した。

 

「なんだこれ……」

『まず初めにウルトラゼットライザーのトリガーを押します』

 

 どこからともなくウルトラマンの声が聞こえ、ご丁寧に説明までしてくれるので言われた通りにこなす。すると前方に光のゲートが現れた。戸惑っていると『そこに入れ』と。口調が滅茶苦茶だと指摘しようとしたが、緊急時につき出かけた言葉を呑み込んでゲートを潜る。

 

「おおっ!? 今度は……って何この2つ……?」

 

 潜るなり今度は腰に青いホルダーが。そして自分の顔が描かれたカードが実体化。次々出てくるアイテムに困惑し続ける。

 

『そのウルトラアクセスカードをゼットライザーにセットだ』

「ああ、そういうね……セキュリティ的なやつか」

 

《Hajime Access Granted》

 

「おおええ!? なんで名前知ってんの!?」

『驚いてる暇はないぞ。次はゼロ師匠、セブン師匠、レオ師匠のウルトラメダルをスリットにセットだ。師匠たちの力が使えちゃう筈だ』

 

 ホルダーから取り出すと、そこには3枚のメダルが。描かれた横顔は、以前地球で確認されたウルトラ戦士を思い出させるものであった。にしても……

 

「師匠いっぱいいるんだな……まあいいや」

『おお、ウルトラ勘がいいな。それじゃあメダルをスキャン────「おい、こんな悠長にやってていいのかよ!」

 

 説明を聞かなきゃ手に持ったアイテムで殴りかかることしかできないが、いくら何でものんびり過ぎないだろうか。長い工程を踏んでいるうちに、守れるものも守れなくなるのではないだろうか。思わず語調を強めにしてしまう。

 

『安心しろって。ここは時空が歪んでるから、ここでの1分は現実での1秒だ』

「あっそう。で、スキャンすればいいの?」

 

 よくできた空間だことで。だがその声で少しは安心した。急ぎつつ、工程を終了させよう。

 

《ZERO SEVEN LEO》

 

 スキャンを終える。すると先ほどのウルトラマンが始の背後に。

 ここで「もう後戻りはできないよな」とか、「やっぱりやめておけばよかった」とか……そういった不安は一切なかった。寧ろ逆にみんなを守りたいという思いが強くなったように感じる。

 

『それじゃあ、俺の名を叫べ』

「名前なんだっけ?」

『ウルトラマンゼット』

「ウルトラマン……ゼット?」

 

 あまりにも気の抜けた声で発したものだったから、ゼットも困惑していた。彼曰く、『もっとグッと気合を入れて叫ぶんだよ!』とのこと。

 

「お、オッケー」

『よし! ウルトラ気合入れていくぞ……ご唱和ください我の名を! ウルトラマンゼェェェット!!

「ウルトラマン……ゼェェェット!!」

 

 がしかし、待機音が響くばかりで何も起こらない。これではただ叫んで腕を振り上げただけじゃないか。バカみたいじゃないかと始は焦る。しかしゼットが小声で最後の説明をしてくれた。

 

ごめん、トリガー。トリガー最後に押すの

「これ?」

そうそれ

「んじゃあ……ゼェェェット!!」

 

 自分がテレビで見つめ、遠い存在だと思っていたウルトラマン。憧れていたその巨人になれるとは思っていなかった。けれど今はそんな状況に高揚感を覚えることはなかった。ただただ、みんなを守りたいという一心で彼の名を叫んでいた。

 

 自分ではない誰か(ウルトラマン)と心身ともに重なり合い、そして肉体が徐々に変化していく。形容するにはとても妙な感覚、そして眩い光りに包まれ外の世界に舞い戻る。

 

 

 

 

《ULTRAMAN Z ALPHA EDGE》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん、この避難所は危険です。別の避難所へ急いでください!!」

 

 結ヶ丘に集まった人々を逃がしつつ、ゲネガーグヘ光弾を絶えず撃つ。けれども怪獣は止まりはしない。それどころか体に空いた穴が鈍く輝きを放つ。

 

「クソ……こうなったら……」

 

 正太がどこかへ走り出そうとした瞬間、ゲネガーグの側面に青い飛翔体が激突。瓦礫を舞い上げて倒れ込んだ。

 

 ウルトラマンが消え、特空機が使えない今……さらなる乱入者が飛び込んできたのかと人々は息を呑む。今日が自分たちの命日だったのかと、絶望の空気に包まれる。

 しかし光の正体が立ち上がった時、辺りは歓喜の声に包まれた。

 

「あれって……さっきのウルトラマン」

 

 晶子は巨人を見上げる。頭部にある3つの鶏冠、青と赤の配色、胸から肩にかけてのプロテクター。所々異なるものの、彼女がそう言い切れたのは胸元にある特徴的なZ字の水晶のお陰だろう。

 

「うおお……マジで変わった」

 

 始はゼットを通して外を見る。今まで見上げていた怪獣や建造物を対等に、或いは見下ろすことができている。

 溢れんばかりの力が内から湧き上がってくる感覚。この力で怪獣を倒さんと、始は視線をゲネガーグに固定した。

 

『息を合わせて戦うぞ、地球人!』

「始だ」

『え?』

「夏空始、それが俺の名前だ。ゼット!」

『一緒にゲネガーグを倒すぞ! 始!!』

 

 突進を仕掛けるゲネガーグを正面から受け止め、拳で突いた。なかなかに鋭い一撃だったはず。けれども怯むことなく反撃を繰り出してくる。無論、こちらだって引く気はサラサラない。奴を受け止め、顎下や頭部、足元といった場所に素早く蹴りや拳を打ち込んだ。

 

(思ったように……いや、思った以上の動きができる)

 

 感覚的に攻撃を繰り出しているのだが、自分が思った以上に素早く動ける。これも、先ほどゼットが語っていた”師匠たちの力が使える”ということなのだろうか。

 

 3連の蹴りを喰らい、数歩下がるゲネガーグ。先程とは違い、素早い連続攻撃ではこちら側が不利だと判断したのだろうか。赤色の光弾を放たんと体内エネルギーを発射口に回す。

 

「『……ッ!」』

 

 ゼットは頭部から光刃を2枚召喚し、光で接続。まるでヌンチャクの様に振り回して光弾を撃ち落としつつ接近。撃ち落とされた悉くが地面で爆発。その煙を突っ切り、ゼットは止まらず攻撃を仕掛ける。絶え間ない青い刃の強襲が奴の肉体を切り裂いていく。

 

『おお、これが宇宙拳法秘伝の神業かぁ……! ウルトラ強ぇぇぇ!!』

 

 ゼットも3枚のメダルがもたらす強大な力については把握しきれていなかったらしく、興奮している様子だった。

 

「それに……すげぇ戦いやすい!」

 

 始のスタイルにも合っているらしく、直感的に技を繰り出せるようだった。

 顎を蹴り上げ、トドメとして脚に力を込める。途端、炎が迸ると同時に急加速で衝突。ゲネガーグを大きく吹き飛ばした。

 

 ゲネガーグは激昂と共に、背のジェットを噴射。普段とは比べ物にならないスピードで突進。推進力に物を言わせた力強さでゼットを巻き込む。

 

「『おおおおっっっ!!!!」』

 

 自重のほかに同じくらいの巨大を持ち上げていというのに、一向に勢いは衰えない。ビルを巻き込み、2体は空へと昇って行く。

 

「離……」

『……れろッ!!』

 

 東京の空でゲネガーグを蹴って脱出。数秒もしないうちに両者の間は開いていく。すると奴も最終手段に出たか。先程ゼットを追い込んだ光線を放とうと力を貯め始めた。

 

「これってさっきの……」

『ああ。けど次は、こっちも撃ち返す!!』

「けどどうやって!?」

『動きを合わせろ始』

 

 胸の前で両手を水平に構えると同時に光が体中を走る。両腕を斜めに開いた時、ため込んだエネルギーが大きなZの字を描いた。

 

 

『ゼスティウム光線ッ!!』

 

 

 左右の腕をぶつけあうようにして十字を組めば、莫大な光エネルギーが放出。ゲネガーグの光線と衝突するが拮抗したのは数秒。始の気合が光線に付与し、さらなる力を与えてゲネガーグを焼き尽くす。燃え盛った怪獣は断末魔と共に地面へ落下し即座に爆散。ゲネガーグの討伐は、ゼットと始の2人で達せられたのだった。

 

 街に戻った平和な様子を一瞥し、ゼットは空へ飛んでいく。青く大きな空にZと文字を刻んで。

 

『始、あの怪獣から散らばったメダルを回収してくれ。アレは宇宙を救う希望なんだ。お頼み申し上げます!』

「え、メダルって他にもあるの? おい、ゼット聞けって!!」

 

 一方的に頼まれ、ゼットは変身を解除してしまう。始が呼び掛ける時には視界が白く包まれ────

 

「ここって……」

 

 目が覚めると、瓦礫まみれの道に倒れていた。

 先程のゼットとの会話を思い出しながら周囲を見回してみると、すぐ近くに2枚のメダルが落ちていた。

 

「これか……メダル」

 

 ホルダーに収納し、避難所へ向かおうとすると人の声が聞こえてきた。

 

『ねえ晶子、さっきのウルトラマン近くで見たんでしょ!? 詳しい情報を聞かせてよ!!!!』

「うるさ……わかった。わかったよ。後でね」

 

 服装を見る限りストレイジの人物だろう。見つかると厄介だなと思いつつ退散……しようとしたが瓦礫の上を歩く音で見つかってしまった。

 

「あなた、こんなところで何やってるの!?」

「あ、いや……逃げ遅れたっていうかなんというか……」

 

 咄嗟に逃げ遅れたなどと言ってしまった。疑われるかと警戒したが、「それで生きてるなんて幸運だよ。次はちゃんと避難しなさいよね?」と注意されるだけで済んだ。

 

「はい。じゃあ俺はここで……」

「ここで……じゃないでしょ。病院行かないと」

「え、いや大丈夫ですって」

「そう言っている人ほど、後で痛い目を見るんだからね」

 

 実は瓦礫の一部が頭に当たっていたり、自覚できていないような負傷をしていた……なんてことはよくある事例だ。彼女の言っていることもよくわかる。

 

(俺、1回は死んでるんだよね?)

 

 そんなこと言える筈もない。

 

「でも、ウルトラマンゼットが助けてくれたんで」

「ウルトラマンゼット?」

「……あ、あの巨人ですよ。胸にZってあったしそう呼んでるだけです」

 

 そうだった。まだあのウルトラマンの名前は誰も知らない。うっかりで怪しまれそうなことばかりである。

 

「そう。でも、病院は行って? いいね?」

「……はい」

 

 嘘を吐くわけにもいかなく、始はその後病院に行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「本日出現した怪獣……えーと、ゲネガーグの断片1番から39番収容完了しました」

 

 ここは怪獣研究センター。討伐した怪獣の肉片などを収容し、研究に役立てるための場所だ。実際、怪獣については人類は知らぬことばかり。さらに宇宙からの脅威も潜んでいる。そういった事情からここで研究し、対抗策や生態系などを明らかにしていく必要があるという訳だ。

 

「うわっ!?」

 

 断片を保存した特殊なドラム缶を荷車で輸送中、倒してしまった男が1人。彼は怪獣研究センターで働く職員だ。

 

「気をつけろよ冠木~」

「すみません」

 

 上司、または先輩と思われる人物に片付けるように言われ、彼は1人に断片を戻し始めた。

 

「なんだこれキモ……」

 

 怪獣の体液なのか、まだヌルヌルとしており不快感が手から伝わってくる。

 

 すると中から”何か”が顔に張り付いてきた。パニックにい陥りながらもその何かを引き剥がそうと藻掻くが張り付く力が強いのかビクともしない。

 しばらく抵抗を試みていた男の動きがピタッと止まる。数秒後、小刻みに振動しながら男は立ち上がり転がったドラム缶の中を覗き込んだ。取り出したのはゼットライザー。そしてに鈍い輝きを放つ鉱石……のようなもの。

 

キエテ カレカレータ

 

 左目を赤く光らせながら男は笑う。いい気分だ、と。

 

 




Z第一話での変身は屈指の名(迷)シーンだと思います。

さて、散らばったウルトラメダルはヨウコ先輩やジャ……蛇倉隊長が持っていましたが今作では違ったりするかもしれません。

そして最後に現れたのは一体何者なのでしょう。なんだかゲームをしそうな奴ですね!
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