Superstar-Z   作:星宇海

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2話目です。


第41話 地から出ずる者

 校庭、さらには校舎で飾り付けを行っている生徒たちの姿を屋上から見ているかのん達。日が傾き、オレンジ色に空染まっている中でも準備を行う両学科の生徒達を見て、恋は呟いた。

 

「こんな遅くまで……」

「学校を盛り上げたいんだよ」

「自分たちが作っていくんだって皆言ってたもん」

 

 みんなの気持ちは1つ。最初の学園祭を盛り上げたい。そのために出来ることは自分たちでやる。一丸となって最初の学園祭を作り上げたいのだと。かのんや千砂都の言葉を聞いて、嬉しくはあったが同時に不安でもあった。

 

「増えるでしょうか? 入学希望者……」

 

 学園祭は学校の雰囲気を体感できる絶好の機会であり、その成功は自然と入学希望者の増加にも繋がる。だが失敗すれば当然……その逆の結果を招きかねない。希望者が増えなければ、学校の運営方針にも影響が及ぶ可能性がある。それがわかっているからこそ、尚更不安を感じるのだ。

 

「正直に言うとわからない。けど、やるしかない。信じるしかない」

「強いのですね。かのんさんは」

「そんなことないよ。ただ、”始まりの瞬間”が好きなんだ。それに……前向きに考えないと出来ることも出来なくなる。どうなるかわからないのなら、まずは信じてやっていくだけだってそう教わったから」

「それは?」

「前にね、始くんが言ってたんだ。それを聞いて確かにそうだって思ったんだ。今ならわかる。先の事なんてわからないし怖いけど、でも……何もしないよりも信じて前に進む方が良いって」

 

 この先、どうなるかわからない。なら怖くて足踏みをしているよりも、まずは信じて行動を起こすことが大事。アイドルフェスを終え、部室の鍵を貰った時に始が言っていた言葉だ。その言葉を胸に、かのんも信じているのだろう。学園祭の成功も、希望者数の増加も。

 

「そういえば始はどこにいるのよ?」

「始くんは……いたいた、あそこ!」

 

 先ほど話題に上がった件の人物の居場所が気になるすみれ。すると千砂都は彼を探し出し指をさした。視線を向けると、どうやら音楽科の生徒達と飾り付けの作業を行っているようだ。

 

「さっき可可が見た時は教室で作業していたノニ!?」

「ま~たなりふり構わず手伝ってんのね。それが始の良いところなのかもしれないけど」

 

 ヘルプで呼ばれているのか、あちこちの作業を手伝っているらしい。呆れつつも褒めるすみれを横目に、恋は駆け出した。何か思い立ったのだろうか。

 

「恋ちゃん!?」

「始さんに言わなければいけないことがあるんですー!」

 

 走り出したていた恋を止めることは、さすがのかのんですらできない事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「重たい……」

「これくらいでへばらない。手伝いに来てくれた夏空くんの方が色々持ってるんだよ?」

「夏空、お前スゲーな。正直見直したよ」

「手伝いだからさ。これくらいはやらせてよ」

 

 音楽科の生徒と共に準備を手伝う始。彼はどうやら、男子生徒の運んできた数倍の量を運んできているらしい。重いと息を上げている横で、彼は軽々と材料の積められた段ボール箱を持っていた。険悪までいった音楽科との仲も回復し、軽口を言いながら作業を行えるまでになっている。

 

「夏空くん、ありがと。後はこいつが運ぶから」

「え、いや勘弁……」

「ね?」

「……はい」

 

 女子生徒に引き摺られていった音楽科の男子生徒を、なんとも微妙な表情で見送ることしかできない始。そんな彼の元へ恋がやってくる。

 

「始さん!」

「葉月さん、練習は良いの?」

「はい。少し時間を貰いました」

 

 恋は先ほど決まったライブの事を彼へ伝えた。本題は違うが、いきなり入るよりもワンクッション置いた方がよいだろうと恋は考えたのだ。

 

「かのんさんたちと話して、私が次のライブでセンターを務めることになりました」

「そっか……そうだよな。なんてたって初めての学園祭! 葉月さんがやらないとな!!」

 

 彼は笑みを見せながら、まるで自分の事のように嬉しそうだった。そう言ってくれると、恋も嬉しくなる。

 

「かのんさんと同じことを言うのですね」

「かのんも?」

「はい。初めての学園祭だから、私にセンターをと」

 

 そっか、と始は再度笑う。この前までこのように2人で話せる関係になろうとは、夢にまで思わなかった。あり得ることのない世界だと思っていた。あれだけ拒否したのに、彼は最後まであきらめなかった。だからこそ……。

 

「……始さん」

「なに?」

 

 だからこそ、母の記録を見つけてくれた彼に……頭を下げた。

 

「ごめんなさい。これまでのこと。私の発言も行動も」

「え? ちょちょ、やめてよ葉月さん、頭下げるとか……」

「いえ、私に謝らせてください。これまでの事、そして……あのようなことを言ってしまったことを」

 

 これまでの事とは無論、スクールアイドル活動に対し、否定的な立場を取り続けてきたこと。そして言ってしまったというのは彼が沼津へ行く前、部室で言われた言葉だろう。

 

「何も知らないのに、勝手なことを言わないでと。迷惑とまで言ってしまいました。始さん、本当にごめんなさい。それなのに始さんは……母が残してくれた記録を最後まで探し続けてくれました。感謝してもしきれません」

 

 始は困ったように後頭部を掻き、少し考えてから一歩彼女に近づく。それと同時に顔を上げてと伝える。顔を上げた彼女だったがその表情には未だ曇っているままだ。彼は既に気にしていないのだが、言った本人は違うということは始だって理解している。

 

「でも俺だって葉月さんの事も、学校の事もちゃんと理解していなかったのは事実だよ。なのに易々と力になろうだなんて……思い上がってた。俺も……ごめんなさい」

 

 具体的に救う力もなく、術もない。そして知らず、ただ助けになろうとしていた。それは見方を変えれば迷惑な存在でしかない。そのことを始も反省していたのだった。

 

「お互いに……謝ってしまいましたね」

「そうだね。なら、お互いさまってことでいい?」

「そうですね。私たち、どちらも悪かったということで」

 

 互いに再度頭を下げ、再び見合うと笑い合った。これまでの対立、互いの後悔はすべて水に流したことを表していた。きっぱりと短く終える方が良いと、始は浩司から教わっていたのた。それを実践したのだった。

 この瞬間、ようやく友人となった2人。すると恋は「そういえば」と彼に向かってもの言いたげな目で話しかけてきた。

 

「かのんさんたちの事は名前で呼んでいるのに、私の事は名前では呼んでくれないのですね……」

「あ、いや……そんなつもりじゃ!?」

 

 そういえばと始は内心頭を抱えていた。確かに恋だけは”葉月さん”と前の呼び方のままだったことを思い出した。それは彼女だって気にするだろう。恋は悲しげな表情で続ける。

 

「やはり私に対しては冷たいのですね……悲しいです……」

「違うんだって! なんかそのままの流れで……的な感じで~……!?」

 

 テンパった様子の始は何かと訳があることを説明しているが、その姿に恋は思わず笑ってしまう。

 

「あははっ、冗談ですよ。始さん、案外真面目なんですね」

「はづ……恋には言われたくない」

「……! かもしれませんね」

 

 これは幾度目か。互いに笑い合っている2人だったが、状況は急変することになる。巨大な地響きが周囲を襲ったのだ。

 

「なにこれ~!?」

「どうなんてんだ!?」

「地震!!」

 

 周囲の生徒達からも、困惑と恐怖の混じった声が聞こえてくる。

 

「始さん!?」

「恋、大丈夫!」

「はい……ですがこれは……」

 

 強い揺れで恋が倒れないように支えている始。彼は周囲を見回すが、目立った異変はない。すると遠くから生徒の声が聞こえてくる。視線を移すとスマホを見ている。どうやら緊急速報メールが配信されたらしい。同時に中継も配信されているようだ。

 

「怪獣か……」

 

 都内のとある場所で地面を揺るがす。そして周辺の地盤を沈めつつ、機鋼の獣神が姿を現した。

 

 過去に起こった亡霊魔導士の企て。マガタノオロチを復活させ、全宇宙を支配するという目論みはウルトラマンたちによって阻止された。しかしその儀式により、密かに魔王獣の欠片ともいえる一部が蘇っていた。とはいえ、微弱な欠片では復活など叶わなかった。だから欠片は長い年月を費やして、地中で怪獣を取り込み続けた。極め付けはデビルスプリンター。ここ最近各地で地底怪獣が地上に姿を現したのは人間の地下開発でなく、この存在が奴らを恐れさせていたのだろう。そしてその欠片は偶然にも、土の魔王獣とよく似た姿を形成した。

 

超弩級怪獣(チョウドキュウカイジュウ)グランドキングメガロス”

 

 鋼の肉体を持つ獣が足を踏み出す度、地が揺れ、世界に恐怖を撒き散らす。辺り一面に炎の雨を降らし、文明を無へと帰していく。それは結ヶ丘も例外ではない。幸い距離は遠く離れてはいるものの、近づかれたらどうなるかなど百も承知だろう。

 

「始さん、早く逃げましょう!」

「恋、頼みを聞いてもらっていい?」

「こんな時にですか!?」

「こんな時だから……恋に頼みたいんだ」

 

 先ほどの優し眼差しは消え、戦いに赴く前の戦士としての顔を覗かせた始。彼は恋に向き直る。そして目を見つめながら話しかける。

 

「俺はストレイジとして、他の人を助けに行く。だから恋が、かのん達を……結ヶ丘の生徒を避難させてほしい。先生もまだいる筈だから協力してね。頼む」

「そんな……私にできるでしょうか……?」

 

 不安に瞳が震えている。恐怖で肩が震えているのがわかる。だから始は手を握り優しく微笑んだ。

 

「できるさ。俺は恋を信じてる」

「……わかりました。なら始さんも約束してください。必ず戻ってくると」

 

 握った手を今度は恋が強く握り返す。それが彼女の強い気持ちだという事は、始にもすぐわかった。

 

「うん。戻ってくる。それに……学校も絶対に守る。学園祭を成功させないといけないから!」

 

 決意を固めた始は、恋の視線を背に受けながら、グランドキングメガロスの元へと走っていくのだった。

 

 

 




地中から姿を現した巨大怪獣、グランドキングメガロス。
どうやらコイツが地底怪獣出現の原因らしい。
大ピンチの俺たちの前に、満を持して俺の師匠がやってくる!
次回、Superstar-Z 「帰ってきた戦士」
ウルトラ凄いぜ!!
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