Superstar-Z   作:星宇海

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9月一発目の投稿になりました……。


第42話 帰ってきた戦士

 四次元怪獣ブルトンによって吸い込まれたウルトラマンゼロ。彼は今、身動きの取れない状態で様々な時間軸、様々な世界へと飛ばされていた。

 

「このっ……なんなんだよぉぉぉぉ!」

 

 14センチほどの人形の姿に変わってしまう世界。340号が同胞に断罪されてしまった世界。悪魔によって故郷が破壊されてしまった世界。生物兵器や外星人が現れる世界……。あらゆる世界が目まぐるしく変化していくせいで、流石のゼロも情報過多に陥っていた。今自分がどの世界にいるのかも、正直わからなくなっていた。だがゼロも飛ばされているだけではいられない。

 

「クソ、こうなったら……一か八かだ!」

 

 ゼロの体が光で染まる。こんなところで油を売っているわけにいかないのだ。不祥にも弟子を名乗る者に託してはいるが、自分から言わせれば3分の1人前。何が起こるかわからない。それにこの宇宙は、そしてあの地球は……彼が守り抜いた場所だ。そう何度も滅茶苦茶にされるわけにはいかないのだから。出鱈目な力を持つブルトンには、こちらも出鱈目な力で対抗するまで。それはゼロだからこそできる……強引な突破技であった。

 

「ハァァァ……」

 

 輝きのゼロが、神秘の鎧を纏う。

 

「時空と時間を操れるのは……お前だけじゃねぇんだよ!」

 

 白銀に輝くゼロは、右腕の剣を大きく振るった。ブルトンとゼロの力が衝突し合い、全てを純白が支配する。そして数秒後、漆黒の(そら)へとゼロは吐き出された。

 

「うわぁァァァ……!?」

 

 吐き出されたのはなんと月面。受け身を取るには少し無理な体制だったのだろう。何度も砂と岩の地を転がり、体を叩きつけられる。そして岩肌が宙に向かって突き出す山に衝突し、ついに停止した。

 

「……ってぇな」

 

 エネルギーの消耗量が激しいかったのか、ゼロのカラータイマーは赤く点滅していた。彼は伸びていた体を起こし、ついた汚れを払うと同時に目の前の青い星を見た。そこはかつて、魔導士を追って訪れた惑星。そこで彼と出会い、彼が守ろうとする者たちに出会った。彼の中にある誇りは、間違いなくウルトラ戦士のそれであった。そして共闘し、鍛え、遂には星を守り切ったのだ。恐らく今も彼は宇宙(ソラ)を駆けているはずだ。心から心への救難信号を捉えて。自分と同じ悲しみを抱えてしまう者たちを、1人でも生み出さないために。

 

「すまねぇな。またこの星に……厄介事を持ち込んじまって……」

 

 ここには居ない彼へ語りかける。聞こえていなくても、それでも語り掛けたのは……彼との出会いを、出来事を大切にしているから……なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 都内某所。人気のなくなったオフィス。今まで事務作業を行っていた形跡として、乱雑に置かれている資料の山。椅子にかけられたジャケット。そしてまだ湯気の立つコーヒー。加えてボールペンや電卓がそのままである事からも、急いで避難したことは明白だった。

 するとそれらは突如として床にこぼれ落ちる。同時にオフィス全体が傾き、電気が切れていく。さらにそのまま瓦礫となり、グランドキングメガロスの脚に踏まれてしまうのだった。

 

『全機! 目標は依然として街を破壊する怪獣だ。心してかかれ!!』

 

 今回は出動が早かったのか、それとも近辺をパトロールしていたのか。ゼットビートルの小隊が姿を表す。グランドキングメガロスの姿を補足し、操縦桿とトリガーを引く。ミサイルやレーザーが一斉に発射され、目の前の怪獣を爆炎に包む。

 

「■■■■ーーッッ!!」

 

 しかし煩い小蝿を叩くように、頭部の砲門から放たれたのは緑の光線だった。射抜かれてしまえば、爆発が機体を無に帰す。

 

『なんで速さだ……フォーメーションを変えるぞ!』

 

 部隊長の一声に隊形を変え、側面から挟み込むように攻撃を加え攻撃。再度放たれたレーザーやミサイルの爆発が体の至る所で起きるものの、その鋼鉄の肉体に傷は1つもついていなかった。

 

「なんて奴だ……ビートル隊の攻撃にびくともしないなんて……」

 

 走りながらも様子を見ていた始は、その光景に思わず足を止めてしまう。並の攻撃ではヤツの硬い装甲にダメージを1つも入れられない。今までの相手とは一味も二味も違う事に彼は言葉を失う。

 

「あれと似た奴には、オーブも苦戦してたんだ」

「……!?」

 

 隣に来てくれたのは正太だった。そう言えば、当時の中継で見た事がある。同じような鋼の獣にオーブが苦戦していた様子を。恐らくそのことだろう。あの時は確か……鏡のようなもので光線を反射していたような気がする。でも、その時と似たような状況を、行動を……自分がとれるのかと問われれば首を縦に振ることに躊躇いを覚えてしまう。けれど諦めるわけにはいかない。果たすべき彼女との約束があり、守るべき大切なものがあるのだから。

 

「僕が手を貸すとはいえ、気を抜くんじゃないぞ」

 

 一人称が"僕"に戻る時の彼は、始にとって「どこか掴みどころのない青年」に映る。……成程、だからストレイジのジャケットも脱いで来たのか。しかしその掴みどころのない青年の言葉に、表情には経験からくる確かな警告である事が示されていた。

 

「了解。ウルトラマンとして……一緒に止めましょう!」

「僕はウルトラマンじゃ……まあいいか」

 

 お互いが腕を天高く掲げた時、眩い光が辺り一面を染め上げる。

 

《ULTRAMAN Z ALPHA EDGE》

 

 そして閃光が迸り、2体の巨人が姿を見せた。

 

『なんだアイツ!? ウルトラ強そうだぜ……。始、いつも以上に気合い入れていくでございますよ!』

「ああ!」

 

 構えを取ると同時に、両者は地面を蹴る。向かってくる巨人を睨み、グランドキングメガロスは再度巨大な咆哮を轟かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫でしょうか……」

 

 一方、近くの怪獣シェルターに避難してきたかのん達。怪獣出現のすぐ後、生徒たちは恋の誘導で無事に避難を完了していた。皆が不安や恐怖で身を丸めている。しかしそれでも外からの轟音は鳴り響いている。けどそれがウルトラマンと怪獣の戦いの証明であることは、千砂都の持つスマホの画面が示していた。恋も周りの生徒たち同様、不意にそんな言葉を漏らしてしまう。ウルトラマンがいるとはいえ、不安ななものは不安だ。

 

「大丈夫デス! ウルトラマンゼットがいれば、あんな怪獣たちなどイチコロデス!」

 

 可可は彼女の不安を取り除きたいと、自分たちの信じるヒーローが勝つのだと励ます。

 

「そうね。たまに危なっかしい時はあるけど、どんな時だって勝ってきたもの」

「神津島の時だって、赤くなって怪獣を倒してくれていたし」

 

 すみれ、千砂都も同じ意見だ。ゼッパンドンやゴモラと対峙した時、ギリギリの状態から逆転してきた。だから今回だって大丈夫だと。その姿を見てきたの彼女たちが言うと、説得力が増すというものだ。

 

「ウルトラマンはどんな時だって負けない。恋ちゃん、それをまずは……私たちが信じなくちゃ」

 

 どんな時だって諦めず、真っ直ぐに立ち向かっていく姿。よく知っている人物と重なるその姿勢を知っているかのんは恋に投げ掛けた。絶対に勝ってくれると信じること。それが今、ここにいる自分たちが出来ることであると。

 

「っ……そうですね。必ず勝ってくれます。私たちは信じて見守りましょう」

 

 気を強く持った恋は、かのん達と顔を見合う。不安が消えたわけではないが、でもここにいる5人と共有し合えば軽くなる。そして信じるのだ。彼女たちと同じように、今も戦い続ける光の巨人を。

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

「■■■■■ーー!!」

 

 咆哮を轟かせる獣。ヤツから放たれた雷は空間を軋ませ、世界を歪ませる。網目のように細かい隙間を掻い潜り、懐へと潜り込むゼット。すると頭部のランプが僅かに光った。ほんの一瞬。

 

「ッ!?」

 

 途端、放たれた緑色の光弾。直感が叫ぶ。思考よりも先に体が捻じれる。けれどもその熱が肌を焼き、直撃すればどうなるかを予感させる。崩したバランスは足を横に大きく出し耐え忍ぶ。迫る左腕を防御し、胸部を狙って回し蹴り。さらに連続して中段突きを放つ。鈍い衝撃音が響くものの、ヤツは意にも介さない。無感情に、無機質に、無慈悲に反撃を繰り出してきた。

 

「ーーッッ!」

 

 なす術もなく吹き飛ばされる。ゼットの巨体がビルを巻き込み、瓦礫の中に沈む。

 

(一撃であれか……気は抜けないな……!)

 

 オーブシャドウは死角から滑り込み、ゼットを背にするようにして対峙した。2撃、3撃と巨大な剣を薙いで火花を散らす。すると、まるで「こちらにも同じ装備がある」と言わんばかりに、右腕から光の剣を生成して振り抜いてくる。しかし彼は表情を変えず、迫る刃を迎え撃つ。刃と刃が激しくぶつかり合い、閃光が散った。

 

(くっ……重い……!)

 

 馬力が違う。踏ん張る地面が陥没する。……潰される。そう思った瞬間力を逃がす。行き場を失ったエネルギーの刃が道路に突き刺さるのを横目に後ろ回し蹴りを入れる。だが正々堂々とやり合う気はないらしい。グランドキングメガロスの背中にある角は分離し、レーザーを照射する。

 

「何!?」

 

 咄嗟の出来事に反応が遅れてしまう。バックステップで回避を試みるものの、奮闘虚しく四肢を撃ち抜かれてしまった。怯んでしまったが為に警戒が数秒遅れる。

 

「ガッ……!?」

 

 気付いた時には既に遅かった。怪力の左腕がオーブシャドウを大きく吹き飛ばしたのだ。道路を粉砕し転がっていく巨人に追い打ちを掛けんと足を踏み下ろすグランドキングメガロス。そこへゼットが瓦礫を弾き飛ばして加速してくる。

 

「させるかぁぁぁぁぁ!!」

 

 烈火に沸る右脚で蹴りつけた。さらに腹部を数度強く踏みつけ空中に飛び出し反転。頭部の光刃を投擲し、僅かながら隙を作る。ヤツにとっては何ともない攻撃。隙を作れてほんの数秒のみ。だが……それで充分。

 

「隊長!」

「助かった……!」

 

 再び並び立った2体。ゼットは額、オーブシャドウは剣をスパークさせる。駆け抜けていく緑色の光線は同じ緑色の竜巻と一体化する。螺旋状の槍となり、一直線にヤツの胸部へ飛び込んでいく。

 

「どうだ……!」

 

 眼前に迫った攻撃に対し、メガロススパインを十字に合わせ盾を展開した。爆発が起きたが、煙から除くヤツの体は無傷そのもの。生半可な攻撃ではその鉄壁の体は崩れないのだ。

 

「ふざけてんのかよ……アイツは……」

「強力な攻撃に強靭な体。おまけにバリア……」

 

 ただでさえ嫌になるような馬鹿力を振るってくるのに、おまけに強固な体とさらに強固な盾。正太が年甲斐もなく悪態を吐くのも頷ける。だが止まっている暇はない。迫る雷撃を視界に抑えれば、左右に転がり回避。オーブシャドウはエネルギーを丸鋸状に形成し投擲。空中で分裂し、メガロススパインを切り裂かんと飛んでいく。ゼットは再度肉薄し、素早い突き技で確実にダメージを与えていく。

 けれどゼットとオーブシャドウの戦いはまだ序章に過ぎない。グランドキングメガロスから発せられている日常を侵食する恐怖の轟音。それはまだ止んでいないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「結衣、避難はどう?」

『こっちは終わったよ! 晶子は?』

「こっちはもう済んでる。今は地上から攻撃中!」

 

 2体の巨人が戦いを行っている足元では、晶子と結衣が警察や自治体と協力し懸命に避難誘導を行っていた。瓦礫や火花が飛び散り、空が唸る中でも彼女たちは1人でも多くの命を救うため、奔走し続けた。幸いなことに、現在逃げ遅れた都民の情報は回ってきていない。でもそれは万に一つの奇跡。このような状況下では何が起きるかわからない。故に今は後方対応を警察に任せ、地上部隊と合流し攻撃にあたっているのだ。

 地上部隊と共に防衛ラインを再構築。彼女の目は、眼前の巨獣を睨む。

 

『だったら関節部に攻撃を集中させて。推定21万t。関節やられれば動きようがないから』

「サンキュー、結衣。ほら、攻撃を関節部に集中!」

「「「「了解ッ!!」」」」

 

 号令が響く。一斉に放たれる先は関節部。動きを封じるための攻撃。

 吹き飛ばされても再び立ち上がる巨人たち。ゼットとオーブシャドウは、何度倒れても再び前を向く。その姿は、ただの戦士ではない。人類の希望そのものだ。晶子はその背中を見つめながら、グリップを強く握りしめる。彼らと志は同じだ。命を懸けてこの街を、この星を守るというその志は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『「ハァァァッ!!』」」

 

 アルファチェインブレード、シャドウカリバーの一閃が鋭く光る。劈くような嫌な音が伝播した。グランドキングメガロスに目を向けると、僅かに光が漏れていた。攻撃が通った証だろう。

 

「■■■■■■ッッーー!!!」

 

 しかしどうやらそれがヤツにとって、ようやくの合格ラインだったらしい。咆哮で明らかに空気が変わったことを背中に伝う悪寒が教えてきた。緊張が周囲と肉体に纏わりつく。すると……胸部の発光部が徐々に輝きを放ち始めたのが見えた。

 

『これは……!』

「……っ! 始、すぐにシールドを張れ!!」

「はい!」

 

 その光の危険性に気付いた2体はすぐさま防御姿勢を取った。下手に攻撃を止めに入ればモロに喰らってしまうとわかっていたからだろう。彼らの予想通り、チャージはすぐさま完了し、5本の赤いレーザーは鈍い音を立てて放たれた。地面を溶かし進む極太の光束は2体を飲み込み、無音の光が周囲を包む。そして遅れて……音だけが世界を走った。

 

「「ウアアアアッ!?」」

 

 赤くスパークし、即座に巨大な爆発が起きる。放たれた破壊光線”メガロスブラスター”の圧倒的な火力の前にはなんとも無力だった。煙の中から弾き飛ばされて出てきた両者。中身のないペットボトルのように、何度もバウンドして地に叩きつけられる。立つこともできない傷だらけの2人。既にカラータイマーも点滅を始めていた。

 

「クソ……」

『ウルトラ強ぇ……』

 

 勝利を確信したかのように、一歩一歩を踏み締め、着々と近付いてくるグランドキングメガロス。陥没した地面からは様々な破片が飛び散っていく。さらには周囲の建物も浮かせ、再度重力に引かれ落ちていく。膝立ちのまま、構えを取る2体の巨人。戦場で、そして避難所で……その絶望的な状況を見守る人達がいる中、ある声が響く。

 

 

 

 

 

「俺の弟子を名乗んなら、もう少し根性見せやがれ!」

 

 

 

 

 

 ゼット、そしてオーブシャドウに届いたのは数年前、或いは数ヶ月前に聞いたそれと寸分違わぬ声だった。荒々しさの中にも冷静さや優しさを秘めている声がこちらへ届いた途端、安心と興奮に感情が震える。心の揺らめきに浸るわずかな間に、光が舞い降りる。それは輝く……銀河の光。迷いのない眼差しが、眼前の悪魔を穿つ。

 オーブと共に戦いを繰り広げてから時が経ち、マントを羽織る彼は師匠や……父親を彷彿とさせた。多くの多元宇宙でその名を馳せる戦士……ウルトラマンゼロがこの地球に…‥10年ぶりに姿を見せた瞬間だった。

 

『し……師匠!』

「師匠? オイオイ嘘だろ……」

「だからお前を弟子にした覚えはねぇ」

「……嘘だろ?」

 

 突然の再来。雷に打たれたのかと思われるほどの衝撃。ゼットと共に戦う始は勿論のこと、晶子や結衣……戦いを見守るかのんたちですら言葉を失う。目を疑う。あの光の戦士が、再び現れるなんて。

 

「あれって……」

「ウルトラマン……ゼロ……」

「なに……? このドキドキの展開……」

「ウルトラマンが……3人……」

「ゼロったらゼロよ!!」

「あのウルトラマン……テレビで見たことありマス!!」

 

 歓声にも似た声が、戦場を駆け巡る。かつて画面越しに憧れたその光が、今この空のもとに立っている。オーブと共に戦った光がこの空のもとに立っている。誰かが涙を流し、誰かが拳を握った。

 ゼットはその姿を見て、胸の奥が熱くなるのを感じた。無事への安堵に。一緒に戦える喜びに。ゼロは笑みを浮かべ、指を2本立てる。それだけで、オーブシャドウは察した。彼らの間には、あの戦いを越えた絆があるのだから。

 

「俺の心配をするなんざ、2万年早いぜ」

 

 そして彼はどのようにしてあの四次元空間から抜け出したのか、その経緯を説明した。その内容は常識を超えたリスクの連続であった。聞いていた始と黒い巨人は、もう苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「まったく、最悪だったぜ。おまけにウルティメイトシャニングはエネルギーの消耗が激しいから、追いつくにも時間が掛かっちまった」

「相変わらずだね。主役は遅れてくる……ってやつか?」

「お前も随分と立派にやってるじゃねぇか。あの捻くれが嘘みたいだぜ?」

「10年もあれば僕も変わるさ。君は違うみたいだけど?」

「さっきのナシ。お前やっぱり変わってねぇわ」

 

 一見すれば皮肉の応酬。だがこのやり取りの端々には互いを認めある温度が確かに宿っていた。戦友として、そして平和を守りたい戦士としての。その空気の中に割って入るゼット。弟子を名乗る彼は、今こそ己の成長を見せたいと願っていた。

 

『師匠、俺は? 俺は?』

 

 子どものように無邪気でありながら、戦士として真剣であった。

 ゼロはゼットを見つめ、静かに言った。

 

「今から見せてみろ。お前がどれだけ成長したのかをな」

 

 その言葉は、ゼットの胸に火を灯す。認められたい。追いつきたい。そして……守りたい。すべての想いが、彼の体を突き動かす。

 

『うぉぉぉぉ……ウルトラやってやるぜ!』

 

 さすがは師匠と呼ばれているだけあり、ゼットをその気にさせるのが上手い。その一言で、もう一度地面を踏みしめる。体の痛みは弾け飛んだ。今はあの時のように、やられているだけの自分じゃない。共に戦う光の戦士なのだから。

 

「■■■■……」

 

 ゼロの登場に沸く一方で、グランドキングメガロスは一瞬の隙を狙っていた。雷鳴にも似た咆哮が空を裂き、地上部隊が再び警戒態勢に入る。希望は来た。だが、戦いは終わっていない。

 

「……これなら勝てマス! 絶対勝てマス!!」

 

 それは絶望を打ち砕く宣言だった。ゼロがマントを翻し、空へ投げる。同時に巨人たちは地面を蹴ってヤツへ向かっていく。世界に伝達する声。次は絶対に倒れないという気概、必ず守り切って見せるという意思の表れだった。振るわれたヤツの両腕。見据えた2体は側面から回り込む。

 

「合わせろ!」

「そっちが!」

 

 ゼロスラッガーを合体させた大剣ゼロツインソードが閃く。オーブシャドウと攻撃を受け止めた瞬間、2本の刃が同時に振り下ろされる。火花が爆ぜる。それは世界が鳴いていると錯覚するほど。そこへ飛び込んでくるのはゼット。炎を纏った脚が唸りを上げる。

 

『「アルファバーンキック!!』」

 

 直撃。巨体が揺れ、後退する。ゼットと入れ替わる様に、光に包まれたゼロが殴り込む。

 

「ストロングコロナゼロ!」

 

 太陽の如く、強くて熱い真っ赤な光。引き絞った腕から繰り出される拳がヤツの装甲を打ち砕く。先程まで目に見えて効果のなかったヤツが、だ。それほどまでにゼロの力が強力なのがわかる。しかし、その力は決して1人のものではない。彼自身が出会いを経て、絆を繋いだからこそ得た前へ進む力だからだ。

 

『真っ赤に燃える……!』

「勇気の力ッ!」

 

 すかさずベータスマッシュに姿を変えたゼットの攻撃。ゼロにも負けないタックルが炸裂。ふらつくグランドキングメガロスへ、首元を正確に狙った連撃。そしてすかさず首を拘束し、抵抗力を削いだ。

 

「ガルネイト……バスタァァァァァ!」

 

 ゼロの拳から放たれたオレンジ色の熱線が焼き尽くす。ゼットの拳も紅蓮に輝き、続けざまに叩き込む。

 

「『ゼスティウムアッパァァァ!」』

 

 激震。平衡感覚を失い、目視もロクに出来ていない今は絶好のチャンス。攻めへ転じたオーブシャドウの放つ炎の円環は、瞬く間に超弩級怪獣を包み込む。

 

「シャドウフレイムカリバー!」

 

 全身から吹き出す炎。初めて上げた苦悶の声。明確なダメージを与えた瞬間だ。だが再び背中からメガロススパインを分離。四方八方から放たれる無慈悲な光芒。しかし彼らが怯むことはない。強固な意思が、空虚な暴力を凌駕しているのだから。

 

「そういうの、こっちにもあるんだよ!」

 

 月の如く優しい奇跡の青がゼロから発せられる。

 

「ルナミラクルゼロ!」

 

 光のゼロスラッガーを投擲。2つの刃は無数に分裂し、空を駆け抜ける。メガロススパインから撃たれるレーザーを弾き返し、青い軌跡が空を裂く。

 

「ミラクルゼロスラッガー!」

 

 オーブシャドウとゼットが突貫。残ったメガロススパインで盾を展開するものの、2体の前にでは無力。そしてガラ空きの胸部へシャドウカリバー、ゼットランスアローによる斬撃の嵐。火花が散り、またもや後退を余儀なくされる。光を纏った刃たちが、邪悪を断たんと振るわれる。

 

『アローショット!』

「レボリウムスマッシュ!」

 

 光の矢と衝撃波。黒い煙を上げて後退していくグランドキングメガロスへ、オーブシャドウの追撃。大きく薙いだ一撃が、その強固な体に傷を付ける。その瞬間、右膝に火花が散り、動きが止まる。地上からの攻撃と、繰り出される3体の猛攻。それらに関節部が耐えられくなったのだ。

 

「今だ!」

 

 アルファエッジへ戻ったゼットは走る。両腕を蹴飛ばし、胴体を斬りつける。がしかし、思わぬ反撃で後退。同時に武具が飛ばされてしまった。

 

「ゼット!?」

「始!?」

 

 2体の巨人が駆け出す。だが間に合わない。冷たい予感が2人の背を撫でる。

 

「『このぉぉぉぉ!!」』

 

 諦めない。足を後ろに出して踏ん張りつつ、迫りくる腕を見据える。二撃の重量級攻撃を受け流し、右腕を大きく引き絞る。すれば彼らの拳に宿るのは……青い火。真っすぐに、そして素早く、彼らは拳を突き出した。

 

「チェストォォォォ!!」

 

 拳が胸元を捉え青い炎が吹き上がる。拳と炎、二重の衝撃がヤツを貫く。

 

「行け!」

 

 再度ゼットが肉薄する。オーブシャドウから投げられたゼットランスアローを受け取り、傷口へ突き刺した。

 

『「ゼットアイスアロォォォォォ!』」

 

 ゼロ距離で放たれた氷の矢は内部で爆散。体内から凍り付き、遂に動きが止まった。3体の巨人が並び立つ。陽の光に照らされ、爛々と輝く姿はまさしく勇者。

 

『そろそろ決めますか!』

「お前が仕切んな。ったく脅かしやがって」

「言い合いしてる場合じゃないだろ。決めるぞ」

『いきましょう!』

「「ああ!!」」

 

 それぞれが光線のチャージモーションへと入る。前方に輝くZの文字。左腕を横に開くと同時に全身から発せられる膨大なエネルギー。自分の体を中心に展開された巨大な輪。壮観な光景もわずか数秒。3つの叫びが空気を裂き、3つの光が地を走る。

 

「シャドウオリジウム光線!」

「ワイドゼロショット!」

「ゼスティウム───『光線!!』

 

 螺旋が混ざり合い、力を増した光の槍は容赦なくグランドキングメガロスの胸元を貫いた。刹那、巨体は鈍く震え……そして爆ぜる。炎と煙が空へと舞い上がったことが、戦いに終止符である象徴。

 幾秒かの後、静かに空を見上げ、3体はゆっくりと空へと舞い上がる。

光の軌跡を残しながら、彼らは空の彼方へと消えていく。地上に残された者たち、或いは画面越しに見ていた彼女たちは静かに息をついた。……守られたのだ、確かに。この街は。

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

「お前がゼットの相棒か?」

「はい! 夏空始と言います!!」

 

 戦いが終わり、人目のつかない場所でゼロを見上げる始と正太。始はゼロと会うのはこれが初めてだ。だからこそ敬意と感謝は伝えたかった。彼の手には、ゼロのウルトラメダル。いつも力を借りているからこそ、礼を尽くしたかった。

 

「いつも力を使わせていただき、ありがとうございます!!」

「ハハハッ、良いってことよ。気にすんな」

 

 ゼロと始のやり取りに正太も頬を緩める。けど、こちらも確かめたいことがある。

 

「ゼロ、教えてくれ。最近巷で話題のデビルスプリンターってなんだ?」

「ん? お前なら知っていると思ったが……」

「粗方予想はついてる。けど確信がないしな」

 

 正太がデビルスプリンターの事についてノーマークな筈はない。彼も彼なりに情報屋を回って調べてみたが、確信に至る情報は掴むことができなった。けど、あの感覚には覚えがある。かつてその力の一片で大魔王獣を蘇らせたこともあり、”彼”が闇に吞まれるように仕組んだりもした。それらは正太の過ちの1つだ。忘れる筈もない。

 

「俺も知りたいです。ゼットから聞きそびれちゃって」

「え、ゼットから聞いてないの?」

『あ……ウルトラまずい……』

「まあいいさ。俺たちも最近まで確信には至れなかったからな」

 

 デビルスプリンター……それはかつて、光の国の反逆者と呼ばれた戦士……ウルトラマンベリアルが宇宙の彼方此方で暴れまわり、まき散らしていった細胞の欠片。欠片は宇宙から宇宙へと巡り、時には宇宙人の裏オークションに流れ、今も多元宇宙を漂っている。宇宙警備隊は勿論の事、ゼロが出会ってきた別時空のウルトラマン達も対処に当たっている非常に凶悪なもの。それがデビルスプリンターの正体だ。

 

「成程ね……地球(ここ)で起きているきな臭い事件も、ソイツが一端……ってことか」

「かもしれねえな……すまねえな」

 

 度重なる事件の裏にはデビルスプリンターの影がちらついている。核心には迫れないが、かなりの前進だ。

 一方ゼロは、その被害がこの地球にも及んでしまっていることを謝る。別にゼロが悪いわけじゃない。けど、彼とベリアルの間には並々ならぬ因縁がある。だからこそ、人一倍抱えていることもあるのだろう。

 

「しょうがないよ。こればっかりは誰にも防げない。アイツにさえもね」

「アイツって……」

「フッ……ゼロ、君はどうするんだ?」

 

 始には笑みだけで答える。それは返答になっていないと不満そうな彼をよそに、ゼロへと正太はさらに問いかけた。

 

「地球は……この宇宙はお前たちに任せる。始、お前ならゼットと上手くやっていけそうだしな」

「……! はい!! 俺、ゼットと一緒に皆を守ります。デビルスプリンターを悪用するやつから」

 

 ゼロの頷きに、始も笑顔で頷く。その姿にゼロは確信した。”彼”から続く系譜は確かに受け継がれていると。出会ったことはなくても、彼の歩んできた軌跡が……始の中に息づいているのだと。なら大丈夫。さらに今は正太を隊長とした地球人の力もある。ゼット共に戦い抜けると信じることができた。

 

「始。1人で戦おうとするな。時には仲間を頼れ。そして信じろ。それがいつか、お前の力になる」

「……はい!」

 

 ゼロが空へ飛び立とうとしたその時、正太が声を掛ける。

 

「アイツにも会うんなら伝えてくれ。地球(ここ)は必ず守り抜いてやる……てね!」

「ああ。伝えておくぜ」

 

 ゼロはオレンジ色の空へ舞い上がる。小さくなっていく背中は、確かにこの星を託した者のものだった。

 

 そして───

 

『始、さっきのアレって……』

「ああ……あれは父さんがよく言ってたんだ。危ない時や、気合を入れる時にさ。どんな時でも勇気を貰えた。だから咄嗟に出ちゃったのかもな」

『そっか。良いなそれ』

 

 戦いの最中に言った言葉。それは父親から受け継いだものであった。一番最初に憧れた存在の、どんな時でも状況をひっくり返せるような、そんな力強い言葉。彼が結んできたことも、確かに胸中(ここ)にある。

 始は拳を握る。父の言葉。ゼロの教え。ゼットとの絆。すべてが胸の奥でひとつに重なった。空を見上げ、彼は叫ぶ。それは誓いであり、宣言であり……決意の証であった。

 

「チェストォォォォ!!」

 

 

 


 

 どうも、結ヶ丘情報発信部です!

 

 今日は「地球に現れたウルトラマン」について紹介します!

 

 ウルトラマンゼロが再びこの星に降り立ったわけですが、実はゼロ以外にもこの星には様々な”ウルトラマン”と呼ばれる存在が確認されているのをご存じでしょうか。その多くがオーブと共に凶悪な怪獣や宇宙人を倒し、地球の平和を守ってくれたんです。

 

 ウルトラマンタロウの息子にしてトライスクワッドに所属する、ウルトラマンタイガ。

 光の国の宇宙科学技術局所属にしてウルトラ兄弟にも数えられるウルトラマンヒカリ。

 地球の光が生み出した海の巨人、ウルトラマンアグル。

 頭や胸、腕と足のクリスタルが特徴的なウルトラマンギンガ。

 怪獣の特徴や能力を右腕に宿すことのできるウルトラマンビクトリー。

 サイバー怪獣の力を鎧として纏う事の出来るウルトラマンエックス。

 

 ウルトラマンゼロも加え、総勢7体のウルトラマンが確認されました。彼らとの出会いを経て、オーブはウルトラマンとして成長していったとのことです。

 

 また不明確な情報ですが、当時の宇宙には、左腕に炎を模した手甲を着けたウルトラマンも確認されたのだとか……?

 

 それではまた次回に!

 

 

 

 

 

 

 

 

 





エピローグ



「スプリーム……カリバー!」

 宇宙に声が響く。
 幾重にも重なった光輪が収束し、刃から放たれた熱線が怪獣の胸を貫いた。数秒の沈黙の後、火花を散らし、巨体は瞬く間に爆ぜる。黒煙の中から1つ、不気味な結晶体が転がり落ちた。

「やっぱりこれか……」

 結晶を拾い上げ、じっと見つめる。最近は各地で凶暴化した怪獣が猛威を振るっている。その共通点がこの結晶だ。結晶から溢れるその力には覚えがある。何故なら今もその力の一部を借りている。そして過去には呑まれた力。あの時……大事な人を手にかけそうになった記憶が、胸の奥で疼いた。

「よう、相変わらずみたいだな」

 背後から懐かしい声。背後を振り返るとマントを翻したゼロが立っていた。姿は少し変わったが、あの頃と変わらぬ気配がそこにある。

「ゼロさん!? お久しぶりです。でも、どうしてここに?」
「まさしくお前の持っているソイツに訳あってな。……お前も薄々気付いているんだろ? そいつが何なのか」
「ええ。これは─────」

 空気が変わる。再会の喜びも束の間。彼らの視線は結晶へと戻る。語られるのは、かつての巨人が遺したもの。そしてこの宇宙を……地球を覆う新たな脅威。
 遠くで星が瞬く。その瞬きだけが、彼らの話を静かに聞いていた。
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