Superstar-Z   作:星宇海

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5年前の今日、グループ名がLiella!に決定したんですって。
もう5年も経つとか……。


第43話 彼らの想いは結びを迎え……

 

 土塊の巨大獣とウルトラマン達の激闘から数日が経った。

 世界はいつも通りの平穏さを取り戻し、壊された街は忽ち復旧していく。その中に特空機2機の姿があったことは、日本においてはもはや通例となっていた。()()()()()()()()()()()()()()もいるというのだから、人間という生物の適応能力は恐ろしい。それさえも軽いイベント事の一種だと思っている存在が中にはいるのだろう。

 

「隊長は興味ないんですか?」

「興味って何にさ」

「スクールアイドルですよ。スクールアイドル」

 

 自分の椅子に座り、報告書をまとめている正太の横で結衣が訪ねてきた。彼女の恰好が私服という事から、今は非番であることは明らかだ。彼は目を一瞬だけ細めると「まあまあかな」とだけ答える。結衣が溜息を吐いているので、期待していた答えではなかったらしい。

 

「なんですかまあまあって」

「じゃあなんだ。俺が興味あった方がよかったか?」

「いや……それもそれでちょっと……」

「我儘だな。答えようがないだろ」

 

 どのような答え方をしても、結衣から納得の表情は得られないだろう。けど彼自身、興味がないわけでもない。かつて彼女たちが魅せた光の海。それを経てあの世界はどのような高まりを見せているのか……。知りたくないと言ったら噓である。それにこの世界も”彼”が守り抜いたものの一部だ。

 

「それに……俺は見慣れているから」

「……?」

「ほら、早く行け。せっかくの非番なんだろ?」

「はい! それでは私はこれで!!」

 

 結衣はそう言い残し、基地を後にした。因みに晶子は今頃、道場で後輩たちを投げている頃だろう。もちろん訓練の一環としてだ。

 

「けど結衣のやつなんでスクールアイドルの事を……」

 

 聞きそびれてしまった。藪から棒に何故訪ねてきたのか。正太は思考を少しだけ傾けた。その時目に入ったのは、始が持ってきたチラシ。数日前無言で机の上に置かれたものだ。どうして無言だったのかはわからないが。

 そこには注目のステージとのことで、スクールアイドルの記載があった。恐らくこれを読んだのだろう。

 

「これだな……って、そう言えば今日か」

 

 開催日とカレンダーを交互に見て彼はフッと笑う。どうして自分はこんなにも間接的とはいえ、スクールアイドルと関わるのだろうか。そういった類と引き合う運命なのだろうか。その巡り合わせに少しウンザリしてしまう。けどどこか穏やかそうな表情を浮かべ、文章ばかりを見て疲労がたまった目を休める為……彼は瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハッ! 似合ってるったら似合ってるわよ始!!」

「笑いながら言う台詞じゃないだろ……っておい写真はやめろ!」

 

 透き通った青い空の秋晴れ。結ヶ丘最初の学園祭が開かれるにはうってつけの天候だ。普通科と音楽科の共同による準備や地道な宣伝活動によって、当日は多くの人で賑わっていた。外には屋台があり、校舎では生徒が考えた様々な企画を実行していた。来てくれているのは受験校を選ぼうとする中学生、近所の小学生、父母会など。貴重な一回目をその目に焼き付けようと、多くの人々が足を運んできてくれたのだ。

 

「始くんのこんな姿! なかなか見られないからねぇ~」

 

 すみれ、千砂都に揶揄われる始。彼のクラスは冗談半分のメイド喫茶の案がなぜか採用されてしまったのだ。その後なんやかんやクラス内のやり取りがあり、最終的に男女逆転喫茶という着地となったのだ。無論、始も女装をして接客をすることとなった。

 あまりにも似合わないその恰好に、来店早々すみれは吹き出してしまっているのだ。

 

「俺の拳が火を噴くぞ……マジで!」

「なんかホントに出来そうな凄味を感じたわ……」

「出来そうじゃなくて出来るんだっつーの!」

 

 頼まれたソフトドリンクを机に置きつつ、会話を楽しんでいる。恰好については不満しかないが、こうして学園祭をみんなで楽しめているというのは素直に嬉しかったからだ。

 

「こんにちはー! なに飲みますか?」

「はにゃ! え~と……いろいろあるっすね……」

 

 だが話しているだけではいられない。教室に入ってくる人たちの接客も満遍なく行う。その最中、教室にある時計を一瞥。すみれたちの席へと向かった。

 

「俺が言うのもだけど、こんなところで油売ってていいのか?」

「まだ大丈夫よ。それを言うなら始だってそうじゃない」

「俺は客席から見てるだけだぞ?」

「でも始くんだって部員だからね?」

 

 千砂都の視線は、真剣さの奥に険しさを滲ませながら始を捉えていた。一方始は、肩をすくめながら両手を上げ謝るように応じた。

 

「わかってるよ。その時間はちゃんと確保してもらってる」

 

 彼女たちのライブの時間には抜けられるよう、クラスのシフト表を調整させてもらっている。調整の際、他の男子から並々ならぬ嫉視を浴びたのだが。否、今現在もそうだが。後ろの方で黒い靄と赤い目が光っている。

 

「なんか大変だね……」

「もう慣れたよ。それに、アイツらも本気じゃないし」

 

 むしろ始がいるからこそ、かのん達がクラスに来てくれているという面で重宝されているらしい。……クラスメイトの女子曰くだが。まったく、本人からしたらどちらも随分と勝手な話である。

 

「そういえばかのん達は?」

「恋ちゃんと一緒。クゥクウちゃんも一緒に回ってるよ」

「生徒会は見回りをしなくちゃいけないんだって。学園祭なのに大変よね」

「学園祭だからこそだよ。外部の人だっているんだし」

 

 外部の人間も立ち入り、尚且つ生徒の気持ちも浮かれてしまうのが学園祭だ。その中でトラブルが起きないようにする、若しくは仲裁を行えるようにする。それが生徒会の学園祭での役割なのだろう。千砂都の言うように、恋であればそう考える筈だ。でも、彼女は以前までの恋ではない。きっと3人は3人で楽しんでいるのだろうと、始は思っていた。

 

「そうだ、写真をかのん達に送らなきゃ!」

「だからやめろって!!」

 

 

 

 

 

*****

 

 時間は過ぎ、野外の特設ステージを前に人が集まってくる。結ヶ丘の生徒は勿論の事、中学生やその親など、数多くの人々が開始のアナウンスを待っていた。

 

「ライブ始まるけど……見ていかないの?」

「それより私は動画撮影で忙しいんですの!」

「そ、そっか……」

 

 1人だけ逆方向に歩いていくから思わず声を掛けてしまったのだが、どうやら逆効果だったようだ。始は申し訳なさ感じた数秒後、「どうして俺が申し訳なく思っているんだ」と自分の感情に疑問符を浮かべた。

 

《それでは間もなく、結ヶ丘スクールアイドル部の特別ライブを開始いたします》

 

 アナウンスに場の熱が一気に上がる。パチパチと始まりに喚起する拍手の音が止まらない。

 

「結ヶ丘にもスクールアイドルがいるのか!? おい、見に行こうぜ!!」

「うん」

 

 中学生が駆け抜けていくのを横目に、始も観客席でその時を待つ。

 恋が加入し5人となり、同好会ではなく、正式に部として認められた。その最初のライブは今日。最初の学園祭という記念すべきステージで行われる。そう思うとなぜか胸の奥から熱いものがこみ上ってきそうになる。それを鎮めるために目を閉じるが、するとある日の会話が呼び起こされてしまう。

 

「───そうだ」

「───何です?」

「───せっかくだから、やってみようと思って」

「───うわああ……! 可可、やりマス!! この瞬間を夢見てマシタ!!!」

「───”ういっす”じゃ、ダメなの?」

「───スクールアイドルですカラ!」

「───この学校を……歌で結んでいこう!」

 

 5人の右手で結んだ形はまるで星。それが本当の始まりの瞬間だったのだろう。それはまだ小さな輝きだけど、いつか大きな光に変わる。そんな勇気を、希望を感じさせる瞬間だったと始は思っていた。

 

「Song for Me! Song for You!」

 

「「「「「Song for All!」」」」」

 

 空にも届きそうな彼女たちの声。それが始まりの合図。会場のボルテージは最高潮に達し、彼女たちのライブが開園した。

 

 

 

 

 

────Wish Song────

 

 

 

 

 

 花びらが舞い散る中、踊る彼女たち。身に着けている衣装は純白で、所々にそれぞれのパーソナルカラーがあしらわれていた。学校アイドル時代、花が着ていたものを基にしている衣装。恋たちは彼女から受け継いだ想いを、願いを纏い言葉にし、言葉や音色は風のように駆け抜けていく。過去から受け継いだものを、今度は未来へと運ぶために。それぞれが抱いている想いは結ばれ、空へ飛んでいく。

 同時に風は始の体を吹き抜ける。耳に届く歌声に身を委ねながら、彼はそっと瞼を閉じた。生徒会長選から始まった一連の出来事はここに幕を閉じた。

 1人では決して届くことはなかった。皆が悩んで、手掛かりを探り、答えを求めて力を尽くした。そして想いが想い結び、辿りついた瞬間がここにある。

 

「……」

 

 答えを追い求めることを教えてくれたバコさん。沼津で出会ったフユ。そしてこの地を守るために戦った正太、晶子、結衣。そして共に戦うゼット。今は宇宙へと戻っていったゼロ。彼らに、彼女たちの歌声が届いていたら……そう思う。現実的に考えれば、それが叶うはずもないことは分かっている。それでも。だとしても、この歌声がどこかで響いていてくれたなら……。その願いは、彼の胸の奥で静かに息づいていた。

 

「ありがとうございました!」

 

 都会の喧騒をかき消すほどの拍手が鳴り響く。それは目の前に並ぶかのんたちへ向けられた、惜しみない称賛の証であった。始も拍手の輪の中にいた。両手を打ち鳴らしながら、胸の奥に込み上げるものを噛みしめている。

 

「私たちは結ヶ丘高等学校の……」

 

 5人はそっと手を繋ぎ、声を合わせる。それぞれの声が、揺るぎない決意に満ちていた。それは宣言だった。ここから始まる新たな物語の。スクールアイドルとして夢を追い、仲間と共に精一杯輝くための第一声。

 

「「「「「スクールアイドルです!!」」」」」

 

 再度風が吹き抜ける。声は風に乗り、街の喧騒を突き抜けて、高く遠くへと響いていく。

 彼女たちの未来が、今ここから動き出す……そんな確かな予感が胸に灯っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなで写真撮りマショウ!」

「良いわね。記念に撮りましょ!」

 

 可可の思い付きはトントン拍子で進んでいく。カメラだけかと思えば、どこからか三脚まで借りてきたのだ。戸惑う始を他所に手際よく設置を始めている。一体どこから調達してきたのか……と疑問に思う暇がないほど、バハ撮影モードに入っている。ちなみに撮影場所はもちろん、結ヶ丘の校舎を背にした定番の構図でだ。

 

「タイマーセットしたら始くんも!」

「俺も? 俺は────「遠慮とか要らないから!」

「この写真には始さんも必要ですから!」

 

 ここまで言われては仕方がない。始はタイマーをセットし笑顔で待つ5人のもとへ駆けていく。端に並ぼうとした瞬間、かのんに腕を掴まれる。

 

「始くんはこっち!」

「ちょっ!?」

「ほら、撮られちゃうよ」

「嘘、もう!?」

 

 拒否する暇もなく、言われるがままにかのんの隣へ立つ。でもその瞬間、自然と笑みがこぼれた。胸の奥が熱くなり、鼓動が高鳴る。この平和を、この場所を……なによりみんなを守りたい。その想いが、今まで以上に強く心に根を張った。

 

「せーの!」

 

 青い空の下、彼女たちのその数秒は永遠の記録として刻まれた。笑顔の6人。結ヶ丘1期生。この学校最初のスクールアイドルとそのマネージャー。彼らの記録はお手製の額に収められ、部室に飾られることとなった。

 

 だがこれで終わりではない。想いを結び、仲間と駆け抜けていく物語は……まだ始まったばかりなのだから。

 

 

 

 

 

第2章 結び、結ばれ ─完─

 

 

 

 

 

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