用事もひと段落したんで、投稿を再開していきます。
突進するネロンガを回るようにして躱し、同時に背中へ鉄拳を叩きこんだ。鈍痛に苦しんでいるのか、ネロンガは吠えて特空機に向き直り、4本の脚で地面を蹴らんとする。しかしゼットビートルによる光弾の雨が阻止。怪獣は首を振って空に雷を飛ばす。
(もう……こういう時はすぐに飛んでくるんだから)
ビートルのアシストを受けたゼブンガー。そのパイロットである晶子は、
普段の怪獣騒ぎでは出撃が遅く、ストレイジが対処してしまう事が殆ど。けども今回はセブンガーの出撃時間とほぼ同時だった。平和を守りたいという想いは確かに同じはずだ。しかし……これも巨大な組織故の宿命だろうか。腐っていく部分が必ずでてきてしまう。それこそ、権力などの所謂”大人の問題”に憑りつかれた上層部の命によって組織は簡単に変わってしまうのである。
今回の出撃も、絶対的な地位を守りたいがためのものだろう。「ストレイジやウルトラマンよりもこのビートル隊が地球の平和を守っている」のだと。
「確かにストレイジはビートル隊からの派生部隊だけど、一緒にされるのも……ね!」
航空戦力へ意識を向けているネロンガ。ヤツの顎下をセブンガーは殴り飛ばす。
その行動の裏にどんな思惑があろうが今はどうでもいい。共闘して人々を守れるのであれば。晶子は操縦桿を今一度強く握った。
「今のところは上手くやれてるみたいだな」
「けどまた透明になられたんじゃ、対処の仕様がないですよ」
統合基地で部下の戦闘を見守る正太。一方結衣は怪獣についての分析を進めている。ウルトラマンゼットと怪獣の戦闘もモニタリング出来ていたため、怪獣の攻撃方法と特殊な能力は粗方掴めてはいる。しかし、掴めたからと言って即対処できるわけではない。周りの景色と同化されたら、攻撃ができない。しかも今は夜。ただでさえ条件が悪い。
「……」
ちらりと正太は端の方に映っているウルトラマンを見る。彼は特空機と戦闘機の共闘を見つめているだけである。胸元の水晶が赤い点滅を繰り返しているため、もはや行動ができないのだろう。
「対処の仕方を知らないのか」
「え、隊長なんですか?」
「結衣、俺たちも現場に向かうぞ」
「もしかしてそれって……」
「あの戦いでネロンガの肉片が落ちてくれるかもしれないだろ? 今後のためにも役立つはずだ」
結衣の目の色が変わる。それはもうおもちゃを買ってもらう前の子どものようだ。
「よっっっしゃー!! そうと決まったならはやく、はやく行きましょ隊長っ!!!!」
「お前今任務中だぞ……」
結衣は話を聞かずに飛び出していく。正太は苦笑しながらも、晶子に注意しつつ攻撃と無線を入れその場を離れた。
「バコさん……調整ありがとー!!」
コックピット内で晶子はストレイジの整備班班長に向かって叫ぶ。無論聞こえないだろうから、帰還してから改めて言うつもりだ。
彼はセブンガーを知り尽くした人物だ。彼がパイロットの細かな要望まで聞き届け、調整してくれたおかげでネロンガとも戦えている。
ビートルの援護射撃がネロンガの体表から火花を散らせる。特空機の拳がネロンガの顔を歪めて地面に伏せさせた。
「前はウルトラマンに助けて貰っちゃったからね。今日はこっちが!」
とどめを刺さんと走り出したが、ネロンガは辺り一帯に放電。ビートルを撃墜し、セブンガーに多大なダメージを与えた。攻めの手が止まった一瞬を突き、ネロンガは地中深くに潜っていく。爆発と混じった土煙が晴れる頃には、既に怪獣の姿はない。
数時間ぶりの静けさを取り戻した地上に、晶子の声が響いた。
「逃げんなよ~もう~!!!」
地団駄を踏むゼブンガーの背後にいたはずのウルトラマンも既に消えていた。
ネロンガによって荒らされた一帯はすぐに非常線が張られた。
「隊長、すみませんでした」
「いいって。透明野郎相手によく戦ったよ。後で作戦会議だ」
正太は頭を下げる晶子を慰めた。今回は彼女に非があったわけじゃないし、相手の特性も厄介だった。苦戦するのも無理はない。それどころか、ゼットビートルの援護があったにしろ撃破一歩手前まで行く健闘ぶりだ。責める部分など見当たらない。
「これがネロンガの……!!」
「それ石っすよ」
「ああもう、これでもない!!!!」
結衣はネロンガのサンプルがどうしても欲しいため、匍匐前進で肉片を探していた。あれば対策も立てられるので彼女の狂った熱意はありがたいのだが。第一、2人はその体で来た。
「俺は、もう少し現場を見て回る。お前は結衣のサンプル集めを手伝ってやれ」
「そうします。あの様子だと帰れそうにないし……」
呆れつつ晶子は結衣の方へ目を向ける。
「どこにあるの~? 出ておいで~ネロンガ~」
「ネロンガが出てきたら困りますよ」
「うっさい。いちいちツッコまんでもわかってるって!」
怪獣研究センターの職員と仲良くやり取りを交わしている彼女の元へ、晶子は走っていく。
「さて俺は……」
晶子の背中を見送った正太。彼は人が見ていないことを確認し、さりげなく現場を離れていくのだった。
*****
「……」
光となって原宿へと戻った始。
どうやら戦闘のダメージは自分にも作用するようで、電撃や打撃を食らった部分がヒリヒリと痛む。幸い、外傷にはなってはいないため街を歩く人々の目を引くことはない。これもゼットと一体化しているお陰だろう。
「はあ……」
ゼットの事、戦闘の事を思い出すとふいに溜息を吐いてしまう。怪獣を倒せなかったこともそうだが、なにより心に迷いや諦めが生まれたからだ。それは宇宙警備隊の使命を果たさんとするゼットの意思を蔑ろにする行為に他ならない。
このことをゼットに話さなくてはと思う反面、言ったらどんな反応をされてしまうのか……とても不安だった。だから今は、彼とは話したくないなと思ってしまう。
「おっと」
途端、誰かが始の肩とぶつかる。
考え事で頭を一杯にし、前方への確認を疎かにしていた自分の責任だ。そう感じて始はぶつかった者が居るであろう方向に目を向ける。
「……あれ?」
けれど目線の先にはぶつかったであろう相手がいない。普段通りに行きかう人々のみ。
「こんにちは」
途端、右肩に人の頭が乗る感覚。背筋を凍らせつつ、始は飛び上がって振り返った。
立っていたのは20代後半の男性。黒いスーツを羽織った男は、笑顔を向けて始を見つめる。先のこともあってか、始は警戒を解かずに挨拶を返した。
にしても目の前の男……どこかで見た気がする。
「こ、こんにちは……」
更にニコリと笑った男は始に話しかける。
「これは仮定の話だ。もし君が見えない相手と出会った時、どう対処する?」
「見えない相手と?」
やけに唐突で、限定的な話だった。明らかに怪しい。このまま逃げ出そうとも思ったが、先ほど”見えなくなる怪獣”と戦ったばかりだからか、彼の話に答えてしまっていた。
「……わかりません。見えないんじゃどこを探せばいいのやら……」
「それだよ」
「……え?」
聞き返そうと始は視線を上げる。すると、目の前にいた筈の男性が”消えていた”のだ。
「あれ?」
「こっちだ」
左側面から声がする。声を辿って頭を向ける。けれど、男を捉えることができない。
「こっちだって」
「……!」
肩を叩かれ、始は向きを変える。けどもまたもや男の姿はない。これは完全に遊ばれている。見ず知らずの男から突然訳の分からない話を吹っ掛けられ、揶揄われているとわかればいい気はしないないだろう。
(なんなんだよコイツ……)
こんなのくだらないと一蹴すればいいのに、始はムキになって男の遊びに付き合っている。
(ぜってぇ捕まえてやる……!)
捕まえて何をしたいのか吐かせてやる。男を捕まえんとする始は、彼が声を掛けてくる前に反応するようになっていった。
そして
「ッ!」
男が肩を叩く前に腕を掴んだのだった。
「あの……! 俺を揶揄って一体何を────」
男は始を引き寄せ、耳元で囁く。
「わかった?」
「おわっ!?」
刹那、視界がぐるりと一回転。気付けば黒い天が目の前に。
「見えるものだけを追うな」
出会った時とは異なるトーンで男は話す。伝え終わって男が去っていく姿をずっと眺めていたが、人ごみに入っていくとすぐに紛れて見えなくなってしまった。
「なんなんだよ……いてぇ……」
背中に走る痛みに声を漏らす。
結局、あの男は何者だったのだろうか。どこかで見た気はするのだが、どうにも思い出せない始であった。
(あいつがね……)
人ごみに紛れて歩き続ける男。彼は確信していた。彼が”あのウルトラマン”だと。証拠として腰には
あとは自分の直感である。先の少年の雰囲気は、なんとなく”彼”に似ていた。真っ直ぐで、自分よりも他人のことを優先するような……。
(ウルトラマンってのはああいった人物を選ぶのかな……?)
地球を去った彼のことが脳裏に過りかけたその時、通信端末が反応した。
拒否する理由はないので、スイッチを入れて答える。すると、絶叫にも似た声がスピーカーから出力された。
『隊長!! ありましたよネロンガの肉片ッッ!!! これで対策も立てられますし何よりも私の研究に────』
「うるさっ!? 結衣お前ちょ……もう少し落ち着け……うるさっ!?」
原宿の街に、声を上げるスーツ姿の男性が現れたのは……言うまでもないだろう。
*****
「はあ!? 歌えない!?」
かのんの家兼喫茶店内に始の声が響く。
怪獣襲撃の翌日。携帯の着信音がアラーム代わりとなって始を起こした。相手は可可で、電話に出るなり「かのんさんが大変デス!」と半ばパニック気味。何が大変なのかはわからなかったが、すぐさま身支度を整えて家を出たのが先程。そしてかのんの家で事情を聴くことになったわけである。
可可が説明するには早朝、2人でランニングをしていた時のことだ。かのんに歌って欲しいと、彼女の歌声を聞きたいと頼んだそうだ。無論、断る理由のないかのんは歌おうとした。けれど……
「うん。歌おうと思っても声が出なかったんだよね」
「……そうか」
「困りマシタ。かのんさん、前は歌えたんデスガ……」
一度歌えたのならばそのまますんなり済むことだろうと思っていた。けれど、彼女に刻まれた”歌えなかった”という出来事とトラウマ、そして彼女が抱え続けた感情は簡単には消えてくれないらしい。
(簡単に克服できればかのんだって苦労しねーよ。なに楽観的に考えてんだよ俺)
「なんか前よりも酷くなってる気がするよ……」
彼女の声音はいつも以上に沈んでいた。
声を掛けようにもこの状況でなんと言えばいいのか。下手に励ますのも逆効果になる。そう思って始は背もたれに体重を預ける。
「フェスで1位を取らなきゃいけないのに……」
「……ん?」
かのんの呟くような声に始は引っ掛かった。
そう言えば、かのんが歌えなくなる時はいつだったか。どんな状況だったか。記憶を引っ張り出して整理していく。すると、ある共通点が浮かび上がる。
「もしかして……」
「どうしたのデスカ、始さん?」
「多分……多分だけど……わかった────「かのんちゃんが歌えなくなっちゃったんだって!?」
始の声がかき消される。入店と同時に千砂都が話しかけてきたからだ。想定よりも音量が大きかったため、2人は体を震わせる。
「ちぃちゃん!?」
「ビックリした~!?」
「千砂都さんも呼んでおきマシタ!」
どうやら可可が呼んでいたらしい。
千砂都はビックリして目を見開く始の隣に座り、同じく目を見開いているかのんと対面する。そして可可が始にしたように、事情を説明するのだった。
「成程……」
一通り状況を理解した千砂都は、納得したように腕を組み頷く。
「ごめんね、ちぃちゃん。このままだとフェスを辞退するように言われちゃうかも……」
この状況のままフェスに出ることになったら目も当てられないことになる。音楽には強い誇りがある結ヶ丘としてはそれを避けたい。すれば恋からも辞退するべきだと言われることくらい、彼女もわかっている。
「でもまだ時間はありマスよ!」
「うん……」
可可の励ましでも効果は薄い。
「千砂都、ちょっといいか?」
「え、うん」
すると始は千砂都を連れて席を離れていってしまった。
「どうしたんでショウか……?」
疑問符を浮かべた可可は、彼らの向かって言った先を見つめていた。
数分後2人は席に戻ってきてかのんと可可に尋ねた。「今から時間はあるか?」と。
用事がひと段落したのとほぼ同じタイミングで、ニジガクやクロニクルD、ギャラファイなどが終わろうとしている……(ニジガクは終わってしまった)
デッカーやスパスタ二期も楽しみです。