一夏に可愛い可愛い言ってたら、いつの間にか恋人になってた件について 作:憲彦
「カズマ~。速く起きないと遅刻しちゃうよ~」
「あぁ。分かったよ」
「ほら!速く着替えて!」
「母ちゃんかお前は……」
「なっ?!ぼ、僕はカズマのお嫁さん……が良い……です…………」
僕っ娘を期待した人には申し訳無い。朝からラブコメを披露しているこの2人。両方とも男である。ベッドで横になり寝惚け眼を擦っているのが野崎カズマ。周りに残念な人間しか居ない可哀想な転生者(笑)である。
そしてこの男を起こしている男?が、織斑一夏。綺麗に透き通ったきめ細かい肌、柔らかそうな唇、艶のある綺麗な黒髪、健康的な細い腕と脚。そしてIS学園の女子制服。情報が多すぎて頭が破裂しそうである。
(なんでこんな日常に……ただ平和で何もない普通の日常を転生の特典として貰っただけなのに、この仕打ちは酷くないか?神様よ……自分が激務だからって俺に当たるなよ……なんでまともな人間が俺の周りには片手の指あれば足りる数しか居ないんだよ……て言うか片手の指でも余るし……)
「ほら寝惚けない!ご飯冷めちゃうよ?」
何故一夏がこんなことになっているか、答えは簡単だ。女装した時にカズマが「可愛い」と言い続けたからである。
植物にポジティブな言葉とネガティブな言葉を浴びせると、ネガティブな言葉を浴びせた方が速くに悪くなると言う実験結果を知っている人は多いだろう。それが人間にも通用したのだ。
いつだったが、カズマの誕生日に一夏の姉とその姉の友人が一夏を女装させて持ってきた。返答に困ったカズマが「可愛いぞ~」と返したら、それが嬉しかったのか、なんか美容に気を使うようになった。変化に気付き「綺麗になったな~」や「肌柔らかくなった?」、「化粧上手くなったな~」とか言うと益々嬉しがるようになり、イベントがある毎に女装をしてカズマに披露するようになった。それに対して「可愛い可愛い」と返していたら、こうなっていた。今じゃ普通にそこら辺にいる女の人より可愛い。何故か身長も途中から伸びなくなって小さいままだし、声も高いまま。それが余計に性別の認識をおかしくしてくる。
「今日は入学式なんだから、速く行かないと電車混むし、着いてからバタバタするよ?」
「はぁ……夢であってくれ。この日常……」
胃に軽い痛みを感じながら、用意された朝食に箸を運ぶ。焼き魚と卵焼き、白米にアサリの味噌汁。昨日の夜に作っておいたキュウリとカブの浅漬け。日本人には嬉しい朝食の筈なのに、作ったのが自分の恋人や将来の奥さんではなく、将来の奥さんを自称している幼馴染みの友達(♂)と言う事実が、精神に重たくのしかかる。
「美味しい?」
「あぁ。いつも通り美味しいよ」
「そっか。良かった!」
(帰ってきて俺の平和……)
残念ながらハーフタイムで休憩中である。半永久的に。
「お~い弟達~!迎えに来たぞ~」
「あ!お姉ちゃん来ちゃったよ!速く行こ!」
「電車関係ねぇじゃねぇかよ!もう少し寝かせろよ!」
「どうしたどうした?お義姉ちゃんが迎えに来たと言うのに何が不満なんだ?」
「おい。なんか文字がおかしくねぇか?」
「間違ってはいないだろ?」
「千冬さんよぉ……間違いだらけだわ!どこからどう見ても!間違いしかねぇよ!どこに正解があるんだ?!」
「もう!2人とも漫才してないで、速く行くよ!」
千冬の車に乗り込み、これから自分達が3年間は過ごす学舎、IS学園へと向かっていく。爆速でタイヤを転がしながら。
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