一夏に可愛い可愛い言ってたら、いつの間にか恋人になってた件について   作:憲彦

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2話目で~す


現実逃避をしないと耐えられないってヤバくね?

 初っ端から意味の分からない事が起こっていたが、まずは野崎カズマが何故ここにいるのかを話す必要がある。

 前回も話した通り、この男は転生者。早い話が別の世界で死んで、神様の力でこの世界に新な命を持って生き返ったと言う事だ。

 そう言った経緯で生き返る人は、必ず特典と呼ばれるものを受け取らなくてはならない。理由は単純で、神様による監視を容易にするためだ。原作に必ず関わらなくてはならない理由もそこにある。

 考えてみて欲しい。えげつない力を持った存在が、神の監視を逃れられるような環境に居て、本来あるべき流れを無視して好き勝手に事を進めることの重大性を。気が付いたら世界消滅エンドが避けられない状況になっている事だってある。

 ただ、大抵の転生者ならヒャッホーと喜び、自分の好きな力を持って転生する。が、この男の場合は前例の無い物を望んでくれた。それが「何もない平穏な日常」だ。別に過去に何かがあったと言う訳ではないが、何故かそれを望んだ。神様としても、他の世界の管理など諸々の事があり激務で死にそうになっていた為、この申し出はかなりありがたい話であり、イベントとか全部無くて良いのかと言う質問にも、即答でイエスと答えた為、なんかのトラブルに巻き込まれることはほとんど無くなってしまった。神様からは

 

「マジで?ISに乗れる以外面白いこと無くなるぜ?まぁこっちは楽だからそれでも良いんだけど」

 

 と言われた。原作開始直前で一番大きなイベントと言えば、第2回目のモンド・グロッソでの一夏の誘拐事件だが、開催地であるドイツで会場周辺を警備していた軍関係者や警察関係者から「怪しい連中が彷徨いている」と言う連絡が決勝戦前に出場者や関係者各位に通達されていたし、何より一緒に行っていたカズマが一夏を人気の多い且つ、カメラの多い場所に連れていっていたと言う偶然が重なり、そんなことは起きなかった。

 

「さ、着いたぞ。荷物を持って教室に行こう。入学式は、終わってるから、私が呼んだから教室に入ってきてくれ」

「えぇ~?入学式は僕たち欠席なの~?ちょっと楽しみだったのに」

「そう言うな我が可愛い()よ。混乱を避ける為なんだ。理解してくれ」

 

 一連の事があり、今日に至ると言う訳だ。

 

「ほらカズマ。早く行くよ?」

「はぁぁぁぁ……」

 

 大きな溜め息を吐いて、道具を一通り手に持って千冬に着いて後ろを歩いていく。考えてみれば、一夏が女装を日常的にするようになってから、そしてここへの入学が決まってから、何が一番精神を安定させていたか。過去を思い返すことである。神様との会話とか、自分が特典を決めたときの会話とか、その辺の事を思い返すのが最近は楽しいと思ってしまう。

 

「さ、ここが2人のクラスだ。私が担任だから、困ったことがあったら遠慮無く言ってくれ」

「織斑先生。体調が悪いので早退させて──」

「じゃ、少し待っててくれ」

「おい待てコラ」

 

 早退させろと言いきる前に、千冬は教室へと入っていく。数秒後、真っ黄色な悲鳴にも近い歓声が響きガラスと壁が震えた。その数秒後にまた同じような声が響いたが、少ししてから入るよう合図が飛んできた。

 

「この2人が、件の男性操縦者だ。この可愛いのが私の弟で、この死んだ魚みたいな精気のない目をしたのが、将来の義弟だ。自己紹介をしろ」

「皆さん初めまして!織斑一夏です!特技は料理と家事全般!カズマとは将来を誓い合った仲です!」

「フォォォォオ!!!可愛い!可愛いぞぉおお!!」

「肌綺麗!髪綺麗!唇柔らかそう!一夏くん!お姉さんとちょっと遊ぼ?!」

「公式よ!公式発表よ!!ヒャッホォォォオ!!」

 

 あまりの発言に、ポケットから取り出した胃薬を何錠か口に放り込み、バリバリ噛み砕いてのみこんだ。神経が繊細な人間なら、確実に気絶していたであろう。

 

「野崎カズマです。心の底から助けてください」

「カズマ。こう言うときは、よろしくお願いします。だよ?」

「心からの本心に決まってんだろ能天気バカが」

「夫婦漫才頂きました!!ご馳走さまです!!」

(さっさとこの学園から帰りたい……帰ってきて。俺の日常…!)

 

 ハーフタイムで半永久的に休憩中である。のっけからゲロを吐きたくなってくる現状に嫌気がしつつも、1時間目と2時間目が終了。この時間は持ち物の確認や学園での生活の説明、生活する寮の説明、学園施設の説明や生徒会によるイベント事等のその他諸々の紹介が行われた。

 そんな時間が終わり、休憩に突入。問題は無かったがドッと疲れが出てきたカズマは机に突っ伏して項垂れていた。そこ行くところ一夏はと言うと、周りの女子と普通にコミュニケーションを取っていた。適応能力が高い。

 

「ちょっと良いか?」

「あ?あぁ。箒か。久し振りだな……」

「あぁ。久し振りだな。……なんか疲れてないか?」

「この状況に疲れないとても?知り合いに合えたのは幸運だが、この不幸を覆い被せられる程だと思うか?」

「それは悪かった。ほら胃薬だ。飲むか?」

「………生理痛の薬じゃねぇかよ」

「そろそろ近いから調整しておこうと思ってな。一応胃痛にも使えるから」

「それ、男の俺に言うか?」

「ん?なんか問題あるか?男だろうと女だろうと知ってても問題は無いだろ。と言うか、男でも知ってないと問題だぞ?流石に周期とか特定するのは引くがな」

 

 最後にお前はそんなことはしないだろうが。と付け加え、隣の席の椅子を借りて座った。

 

「で?一夏は相変わらずなのか?」

「相変わらずと言うか、研きが掛かったな。まぁ、悪乗りして可愛い可愛い言ってた俺にも責任はあるんだがな」

「いや、元はと言えば姉さんのせいだし……と言うか千冬さんも片棒を担いでなかったか?」

「それを言ったら他の周りの人達も片棒担いでたぞ」

「そうなのか……」

「あぁ。まともなのはお前くらいだったよ。お前が転校してから、入れ替わるように転校してきたのが居たが、かなりブッ飛んだヤツだったからな……弾も可哀想なことになって……」

「何があったかは分からないが、お疲れ様だな」

「はぁ……」

 

 箒から貰った薬を飲み込み、また机に突っ伏する。そのまま次の時間まで意識を飛ばして眠っていようかと思ったが、聞き捨てならない言葉が飛んできて、眠るわけにも行かなくなった。顔を上げて箒と一緒に声の発生源に目を向ける。

 

「あなたがみたいなのが男?笑わせないで欲しいですわね。そんな女の真似事みたいな格好で、しかもあんな男が将来を誓い合った仲?ハッキリ言って気持ち悪いですわ!!」




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