一夏に可愛い可愛い言ってたら、いつの間にか恋人になってた件について 作:憲彦
「さ~てと。昼飯昼飯~」
一悶着あったが、午前の授業は全て終わった。と言っても授業らしい授業はほとんど無かったが。とは言えほとんど座りっぱなしで、数少ない男子生徒であるカズマからしたら、ようやく窮屈なアレやコレやから解放される時間が訪れたのだ。入った直後に飛んで教室から出ていった。
「なんか体が重たいな……」
「もう……急に走ったら危ないよ?」
「人の体にしがみついて何してるんだ?」
「声かけたのにすぐ教室出ちゃうからだよ。全然気付かないんだもん」
走って教室を出ようとしたは良いが、腰に一夏が抱きついていた。通りで体が重たいわけだ。ただまぁいつもの事ではあるため、一夏を着けたまま食堂へと向かって歩いていく。
「ほ~。広いな。食券形式か……どれどれメニューはどんなもんかな?」
メニューは和食、洋食、中華と日本人に馴染みのある物をメインにし、ちょこちょこと他の国の料理が並んでいた。何故か地域限定のB級料理もある。カズマの隣で一夏はどれにするか悩んでいたが、普通に腹が減っていたカズマは親子丼の大盛りとソースチキンカツ丼の大盛り、海鮮丼の並盛り、あと布海苔の味噌汁の食券を購入した。
「食べ過ぎだよ!いつも言ってるのに何でそんなに頼むの?!」
「腹減ってんだから良いだろ?食いきれるし」
「それはそうだけど……少しは体に気を遣ってよ」
「ならサラダも注文するか。シーザーいいや」
「減らしてって意味だよ!」
シーザーサラダを追加注文し、手近な席へと腰を掛ける。一応2人以上が座れる場所を確保している。一連の流れを見ていた周りの生徒や料理をしてくれる調理師の人達はドン引きしていたが、本人はなんとも思っていなかった。
「全く……料理人さん達大丈夫かな?」
「あぁ。それは誤算だった……次からは作りやすい物を注文するか」
「なら減らしてあげなよ。明日からは僕がいつも通にお弁当作るからね」
「えぇ~……足りない」
「我慢して!」
自分の料理が完成したのを確認すると、それを取りに席から一度立ち上がる。お盆に乗せて持ってきたのだが、やっぱり量が凄まじい。一夏も呆れている。入れ替わるように一夏が自分の分を取りに行った。
「カズマって細い方なのによく入るよね。そんなに」
「まぁ、今日はな……」
今日1日で結構なストレスに晒されたのは言うまでもない。爆食いしたい気分だったのだろう。
「相変わらずの量だな……」
「お?箒じゃねぇか」
「あ、箒ちゃん久し振り~!一緒に食べる?」
「あぁ。頼んでいいか?他の席が埋まってしまってな」
自分の分を持った箒が声をかけると、一夏が自分の横を開けて座らせた。3人で合わせて頂きますと言うと、早速箸をもって手をつけ始めた。物凄い勢いでガツガツ食べている。
「本当に、化け物じみてるよな……どこに収まるのか昔から気になってたんだが」
「うん。僕もずっと気になってる」
「食っても太らねぇんだよな」
「今、その発言でこの学園にいる生徒と教員の何人を敵に回したんだろうな」
「僕もちょっとイラッとしたよ……」
「そうか。私は気にしないがな」
よく分からん所で器の違いを見せられた一夏であった。いや女子なんだからもっと気にしろよと言いたくなるが、何故か違和感が働かない。イケメン要素の多い女子だからだろうか?
「ここの飯うめぇな。飯時以外にも使いたい」
「メニューは減るが、一応放課後も使えるらしいぞ?生徒は8時半までだが」
「入り浸ろ」
「お金どうするのさ……」
「あ、ラーメン食べたい」
「もう充分だろ……」
「お願いたから、体に気をつけてね?」
会話が終わると、再び食没へと突入した。それはそれは一心不乱に食べ続けた。昼休みの半分を費やして間食した。結局ラーメンは頼まなかったが、それでもかなりの量を食べたことになるだろう。
「は~食った食った。夜は何にするかな~」
「夜もそんなに食べるつもりか?!」
「いや?夜はそんなに食わんが?」
「夜にそんな量食べたらもう事件だよ……」
「さ~てと。寝るか」
「人間の三大欲求の2つを同時に満たそうとしているのが凄いな」
食器を返して戻ってくると、ポケットからアイマスクを取り出してその場に横になった。数秒後には寝息が聞こえてきた。箒は呆れながらも一夏の食器を持って行き、カズマと一緒に居るように言って席を離れていった。
一夏は箒を見送ると、すぐにカズマの近くに移動し、頭を持ち上げ自身の太股の上に乗せる。余りにも慣れた手付きに、それを見ていた生徒達はお互いに親指を立て合って悶えていた。涙を流して崇めている生徒まで出てくる始末だ。
「ふぁ~あ……僕も眠くなってきちゃった…………」
カズマに釣られたか、一夏まで眠くなってきて、軽く目を瞑った。数秒後、普通に眠ってしまう。
「……うぅあッ。あぁ~……目の前に美少女とかなんてアニメだよ」
相手はとびきりの美少女。だが♂である。ふと時間が気になり、腕時計で確認。午後の授業開始10分前だった。
「ヤベ……おい一夏!起きろ」
「ふにゅっ……今何時?!」
「午後開始10分前だ」
「早く教室に戻らないと!……ッ!」
「どうした?」
「脚、痺れちゃった……」
「おいおい」
授業開始10分前までカズマの頭を太股に乗せていたのだ。痺れるのは当然だろう。動けなくなっている一夏はカズマに先に行くように言っているが、こうなったのは自分のせいでもある。しょうがないと思いつつ、背中を向けて屈んだ。
「ほら。行くから早く乗れ」
「え?……う、うん」
素直にカズマの背中に身を預けると、自分に掴まったのを確認すると、すぐに立ち上がり教室へと早歩きで走っていく。何であんだけ食べてるのに普通に動けるのか、理解に苦しむ。
「ふぃ~。間に合った間に合った」
「間に合っとらんぞ。全員もう準備して座っていると言うのに……」
「いや~すまんすまん。寝てたわ」
「そんなことだろうと思った……で?一夏はなんで背負われてるんだ?」
「脚痺れちゃって……ハハハハハ」
「どうせ膝枕でもしてたんだろ?まぁ良いから、速く席に着け」
一夏を降ろすと、すぐに授業の準備をして席に座った。何人かの生徒は鼻血を流していたのは言うまでもない。
そんなこんなで午後の授業は滞りなく終了し、この日の全行程が終わってくれた。
「よし!帰ろ」
「あ、僕も行く!」
全てが終わるとすぐにバッグに教科書やら何やらをブチ込み、帰るために学園の外まで行こうとした。が、出る直前で千冬に止められた。
「2人は今日から寮生活だ。ほら鍵」
「…………俺しばらく家から通えっていわれたんだが?日本政府直々に」
「僕も。送迎と護衛着けるからって」
「あぁ。その辺はもう片付いた。部屋の準備はできたし、必要なものも持ってきたぞ」
「ん?何でキャリーバッグ1つ分なんだ?しかも3日用の小さいヤツ」
「あぁこれお前用だ。一夏用は大きいからな。既に部屋に運び込んでいる」
衣装箱そのまま持ってきたのかと問いたい。確かに一夏の荷物が多くなるのは仕方がない。が、3日用のキャリーバッグに収まる物しかないのはいくらなんでも少なすぎる気がする。
「と言うか誰から渡された?まさか無断で家に……?」
「そんなわけあるか。お義母様がいた。だから用意してもらったんだ。足りないものがあったら週末にでも取りに行ってくれ」
「お義母様ってなんだよ?!」
「まぁまぁ。いずれそうなるんだから気にするな」
因みにこの母親も言う存在だが、これはカズマをここに転生させた神様である。この様に、親と言う存在が必要な時は神様自らがその立場になってくれる。所謂転生のアフターサービスである。
「じゃ、案内するから着いてきてくれ」
キャリーバッグをカズマに投げ渡すと、2人を引き連れて寮の方向へと歩いていく。
「本来ならお前達2人は、政府の要請通りに一定期間は家からの通学の予定だった。その為に専属のSPを数人付けてと考えていたのだが、態々隙の生まれる事態を作る必要もあるまい。ならば多少の無理は承知して、強引にでも2人の部屋を用意してしまえばいい」
「なにやったの?」
「な~に。大したことはない。寮の拡張工事完了まで、今年の入学生で学園から近い者を、自宅からの通学にしただけだ。通学費は学園持ちでな」
「なんか申し訳ないことしちゃったかな……」
「そうでもないさ。自宅からの通学は数は少ないが、どのクラスにも何人かはいる。通学費に関しては特例だがな」
千冬の言う通り、数は全体の3割程度ではあるが、自宅からの通学者はいる。理由は単純に家から近かったり、家庭の事情だったりと様々だが、別に特別と言う程でもない。と言うか、寮生活だと普通にいくらか上乗せした金額を払うことになる。どちらも良し悪しがあると言う感じだ。
「なら良いんだけど……後で謝らないとね」
「なら明日にでも紹介しよう。2人とも話したがっていたからな」
「うん!お願いね!」
「おう。任せとけ。さ、着いたぞ。ここがお前達の部屋だ。一夏の化粧品は棚に並べたし、服はクローゼットに入れてある。冷蔵庫は最低限の飲み物しか入ってないが、学食があれば問題は無いだろう」
「おいおい千冬さんよ~。なんで一夏のもんは揃ってんのに、俺のは3日分の着替えにノートパソコンとスマホの充電器にバッテリー、通帳だけなんだ?」
「渡されたのがそれだけだったんだよ。文句は私にではなく親に言ってくれ」
ため息を吐きつつも、ジャージがあったことに感謝しつつ、自分の荷物を整理し始めた。と言っても、ほとんど整理するものなんてほとんど無いが……
「で?俺のベッドは?」
「……ん?」
「なんてピンと来てねぇんだよ……」
「一夏と一緒に寝れば良いだろ?昔はいつも同じベッドの中だっただろ?」
「ガキの頃はな!!今は色々とアウトだろ!」
「同性同士だろ。何が問題なんだ?」
「問題だらけだわ!」
「カズマ!僕と寝るの嫌?」
「止めろ一夏!色々と不味いからそれ止めろ!!」
慣れているとは言え、ちょっと上目遣いでそう言うこと言われるのは、中々に来るものがあるようだ。
「全くお前らは……どうでも良いが、はしゃぎすぎるなよ?まぁ、急拵えだが、他の部屋より防音性は優れてる。気にする必要はないぞ」
「何にだよ!!」
「さぁな~。あ、避妊はしろよ?ほら避妊具だ」
姉として、そして1人の大人として、この行動は如何な物だろうか……。カズマは思考を放棄した。渡されたものは適当に棚の中に放り込み、ジャージに着替え始めた。
(俺の平穏……何処行ったんだろ)
ハーフタイムで半永久的に休憩中である。
セリフとセリフの間には行間スペース入れない方が良いですかね?
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