一夏に可愛い可愛い言ってたら、いつの間にか恋人になってた件について 作:憲彦
箒に稽古を付けられてからと言うもの、カズマは基本的に放課後はボロボロになっていた。ありとあらゆる方向から飛んでくる無数のBB弾と投擲された大量の竹刀。それにブッ飛ばされる日々。更に千冬がカズマに渡させる専用機の詳しい仕様書を見せてから、箒の攻撃はより苛烈な物になった。
「ほらカズマ!そろそろ避けられるようにならないと駄目だろ!」
「無茶苦茶言う──グブォッ!?」
素振り棒で真横にブッ飛ばされて、見事にノックアウトされた。今日4度目のノックアウトである。
「お~いカズマ~。起きて~。お水だよ~」
一夏が間延びした声をかけながら、水を顔に垂らしてくる。それで目を覚ました。本当に絶望しそうになる。なまじ頑丈な自分の体がとてつもなく恨めしく感じた。
「ほら竹刀。お前に渡される機体は近距離中距離メイン。日本刀型のブレードが2本。レーザーと実弾に切り替え可能な、連射機能に長けたサブマシンガンが2丁、大口径で破壊力のある近接射撃用のリボルバー拳銃が1丁。データ見た感じ、お前は射撃はほとんど問題はない。むしろレベルはかなり高い」
「ゲームで鍛えたお陰だな!」
「パソコンに張り付いてただけでしょ……」
「ゲーセンのガンコンだよ」
「褒められたもんじゃないな……ただお前、昔より体力かなり落ちたよな?剣に関して言えば、私と同じで才能は無かったが基本はできてただろ。今はできないとかそう言うレベルじゃないぞ?」
「まぁそりゃ、一切やってなかったからな。中学の体育の選択は柔道だったし。部活は帰宅部だったし」
「なら仕方ない……試合まであと3日!体力錬成も含めてやれること全部やるぞ!!」
「嘘だぁぁぁあ!!!!」
そんなこんなで迎えた試合当日。カズマは無になりながら自身の専用機の最適化を行っていた。目の下には隈があり、至るところに湿布を張り付けている。ISスーツの肌が露出している部分からは結構な量の湿布が見えていた。
「ボロボロだな。何があった?」
「アンタの愉快な弟と箒のせいだろうが……」
「運動をサボってたお前が悪い」
「帰宅部の中学生なんてそんなもんだろ。俺の体力は一般的なんだよ」
絶賛全身筋肉痛である。それを弄る千冬と、哀れと思う視線を向ける山田先生だった。そんなこんなで最適化は無事に終了。アナウンスでハンガーから飛び出し、規定の位置で待機した。
「あら逃げずに……何故湿布まみれなのですの?」
「色々あったんだよ。色々と」
「えぇぇぇ……」
これには常識に乏しいオルコットもドン引きである。ただまぁ試合の予定を変えることはできないため、このまま進行されることになった。試合開始のアナウンス直後、オルコットはライフルで狙撃。狙いすまされた一撃がカズマの頭目掛けて飛んできた。だが千冬に騙されてやりこんだゲーセンの筐体と箒から鍛えられた今、そんな一撃を貰うようなことはなかった。全速力で地上を走り回っている。
「ちょっ!真面目に戦いなさい!!卑怯ですわよ!」
「うるせぇ!初心者に決闘を挑む卑怯ものに言われたくないわ!!こっちは真面目にやってんだよ!!」
空から降ってくる狙撃を器用に避けるカズマに、鍛えた箒やそれを眺めていた一夏はガッツポーズをした。初撃でやられなかった事に喜んでいた。そして別室でそれを見ていた千冬と山田先生たちも感心していた。
「野崎くんスゴいですね~。あんなに走れるなんて」
「まぁ、アイツは昔から器用なところがありましたからね~。器用すぎて空回りすることが何度かありましたが、今のところそんな兆候もありませんね」
一切の攻撃を受けずに避けまくるカズマ。そんなカズマに業を煮やしたのか、オルコットは4機のビット兵器を展開。様々な方向からレーザーを飛ばしてきた。しかしカズマには関係ない。何故なら既にこれは経験済みだからだ。
(箒のお陰で難なく避けられるな。ありがとう箒。でも二度とお前とは特訓はしないからな)
心の中で感謝と毒を同時に吐き、飛んでくるレーザーを全部避けていく。そして試しに武器の1つであるサブマシンガンを取り出して撃ってみる。実弾とレーザー、両方を試して感覚を掴むと、ビット目掛けて早速撃ち込む。破壊にまでは至らなかったが、一時的に動きを止めることができた。
「あぁ。レーザーモードだと連射は速いけど威力がないんだな。実弾は威力があるけど、反動がキツいし射程もレーザーほどじゃないんだ。じゃあこっちはどうだ?」
しまえば良いものを、サブマシンガンを捨ててリボルバー拳銃を装備。モデルはM500。まぁ単純に巨大化させるならこれだわなの代名詞とも言えるリボルバーが出てきた。初心者に持たせるものじゃねぇだろと引きつつも、正面に来たビットに狙いを付けて撃ってみた。
「わっふぅ!すげぇ」
威力には大満足である。たった1発でビットが爆発四散。木っ端微塵に吹き飛んでくれた。そのまま上にいるオルコット目掛けて、残りの4発を撃ち込む。弾がなくなると銃身を掴んでオルコットに全力投球。武器を投げ飛ばすと言う意味不明な行動に驚き、動きが止まった所に、日本刀型のブレードを抜いて全力で振り抜く。
白式の最大加速と日本刀型ブレードの一撃は、オルコットの専用機ブルー・ティアーズのシールドエネルギーを大量に削り取り、更に墜落の衝撃で残りがなくなり、ほぼ見せ場なしで試合が終了した。
『試合終了!勝者、野崎カズマ!』
「ふぃ~。疲れた」
「武器を投げ飛ばすな馬鹿者!」
「ガハッ!」
ISをしまった瞬間、千冬の拳骨がカズマの脳天に落ちた。武器を捨てたと言う非常識な行動が余程我慢ならなかったようだ。
「でも弾なくなったし別に良くね?ブレードもあるんだし」
「リロードするとかあるだろ……1マガジン分しか弾が積まれてない訳がないだろ。リロードの練習をしておけ」
「へ~い。所で、この専用機の名前何て言うんだ?中央のシールドエネルギー表示してるパネルには白式って出てたけど」
「なんで確認しておかないんだ……仕様書は渡した筈なんだが?」
「武器とコンセプトしか見てない」
この言葉に、千冬は頭を抱えた。言わなかった自分も悪かったのかも知れない。しかしここまで酷いと言うことは予想していなかったのだ。これからその辺は改善していくとして、カズマに専用機の名前を教えた。
「お前の専用機は白式改・弐式だ。今日はお疲れだったな。ゆっくり休んで明日に──」
「ちょい待て待て待て待て」
「なんだ?」
「なんだよ改・弐式って。そもそもの白式も知らんし改も知らん!その上で弐式ってなんだ?!」
「仕方ないだろ。元のコンセプトから変わりに変わりまくったんだ。おまけに代表候補の専用機も同時に建造中と来た。名前にまで頭を回せるわけないだろ。我慢しろ!」
因みに、元のコンセプトは千冬との関係が深く、更には同じ道場に通っていたと言う理由からブレード1本のみだった。しかしそこに千冬がストップをかけコンセプト変更。様々な武装を搭載し、尚且つミサイル系を多くしてとなった所で、初心者の乗る専用機だから安全性とバランス重視じゃね?となり武装を全面的に変更。したところで千冬がカズマのデータを持ってきて、現在の形になった。
以上の事から、変更に変更が加えられたため機体名が「白式改・弐式」となったのだ。
「カズマ~!おめでとう!!」
「グベッ!一夏テメッ!急に抱き付くな!今薄着だし汗かいてんだから」
「え?僕気にしないよ?」
「頼むからもう少し俺の事を考えて行動して欲しい」
「お前ら、イチャイチャするのは部屋でな?ここ、一応人の目があるから」
「は~い!」
「じゃ、カズマ。クラス代表頼んだぞ」
「…………あ」
完全に忘れていたようである。
(帰ってきてくれ。俺の平穏な生活……)
ハーフタイムで半永久的に休憩である。
次回はいつになることやら……
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