混入
────『大崩落』
紐育と呼ばれる地域で突如起こった
「何を見ているんだ? クラウス」
スーツ姿の伊達男が、クラウスと呼んだ紅髪の大柄な男に気さくな声をかけた。ふむ、と頷いたクラウスは、持っていた手紙の裏面──送り主の方を伊達男の方へと向けた。
「スティーブン。ああ、久しぶりに
「彼? ──ああ、ホントにやり遂げたのか? あれを?」
伊達男──スティーブンは驚いたようにそう言った。
スティーブンの知る彼は、目の前の大男とは比にならないほど弱々しく、いかにも普通の男だったはずだ。
「そういうことだろう。よく根をあげなかったものだ。全く、私の誇りだよ」
「今の彼を一目見てみたいものだな。君と同じブレングリード流血闘術を修めた彼を」
コーヒーを一口。スティーブンが苦笑をこぼすと、クラウスも少しだけ笑みを浮かべた。
同時に入った着信に、スティーブンがため息混じりに出る。
「──わかった、直ぐに向かう。レオナルドはそこに?」
『ああ、とりあえず遠巻きに名前を見させてるけど、こっちが持つかわかんねー、と!?』
「あと5分待たせろ、ザップ」
それだけ言って電話を切ると、すでに準備万端のクラウスが窓枠に足を掛けていた。
「
「うむ」
事件や異常が隣人。異界と現世が交差する街は、今日もまた外界の治外法権。一国の趨勢を握ろうと、この場では何の役にも立たない。
これはそんな世界で均衡を保つために暗躍する、超人秘密結社『ライブラ』の、その末席に名を連ねるある男を追った記録である。
──日本、東京。
世界有数の都市の座を譲ることなく発展し、魔法社会となった今でも変わらぬ地位はもはや不動。
そこから少し離れた郊外に、その学舎はある。
「兄さんに届いたかな、あの手紙」
身長193cmの、同年代に比べればかなりの長身は目立つ。加えて紅髪ともなれば尚更である。石ともコンクリートとも違う地面に、日本人離れしたその男。その肩に、華やげな花弁が記されていた。
「にしても、差別があるというのは本当らしいね。魔法力云々で差別してたら、あの街じゃ生きてけないのに」
他人が聞けば耳を疑うような言葉を、さも当たり前のように呟く。どこ吹く風というように侮蔑をかわし、男は入学式が行われる講堂に立ち入った。
見れば、前段と後段で違いがあることに気づく。小さなため息を溢し、しかし波風を立てることはないと自身を戒めて、適当な席へ腰を下ろした。兄と違ってそこまで筋肉質であるわけではないが、席の大きさが少々狭苦しく感じてしまうのは仕方ないだろう。そうでなくとも、その容姿だけで視線が突き刺さるのだから。
そして恙無く式は進み、所々危うげなワードを交えた挨拶に感心し、式が締め括られた。
国立魔法大学附属第一高等学校こと一高は、聞くところによればエリート揃いだと言われる。確かにその通りであり、篩にかけられたその面々の力は同年代とは一線を画するものである。
しかし、基準が
「えーと、カード交付は……と」
違和感のない日本語は、従兄譲りの語学力ゆえ。貪欲さでは彼に勝るものの、それ以外は下位互換。しかしそれがコンプレックスにならなかったのは、
「ふむ、A組」
特段興味を惹かれるものもなかった男は、そのまま踵を返し、家路に着く。
──アンゼルス・V・ラインヘルツ。
ラインヘルツ家の血縁にして、ドイツからの留学生。このご時世に珍しく、魔法師としての留学。
ライブラ構成員の末席に名を連ねる、牙狩りの1人であることを、ここに追記する。
──アンゼルス・V・ラインヘルツ
ドイツ人。ラインヘルツ家の近縁でクラウスの従兄弟。ラインヘルツ家の当主などに興味がなく、クラウスの後を追うように牙狩りとなる。奇跡的に『滅獄』の血を有しており、地獄の修練を経てブレングリード流血闘術を修めた。肉体的にはクラウスに遠く及ばないが、クラウスと違って拳、蹴り、武器も使う。右利き。ナックルガードやグローブの他、ブーツなども特注のものを使用している。
クラウスを尊敬しているものの、口調は俗的。顔も怖くない。年齢詐称もない。クラウスを「兄さん」と呼ぶ。
端末や科学技術は外が発展するほどHLも発展してますが、建物などの外観や作りはどうせ壊されるんやでということであんまり変わりません。いっそ壊れてくれた方が作り直しやすいらしい。キャビネット等も当たり前のように壊されるのでほとんど導入されてません。医療技術等は圧倒的にHLが上です。
クラウスの下に従兄弟がいる設定です。養子でも良かったんですが。