とある魔術と科学の虚空書録《アカシックレコード》   作:田芥子慧悟

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幕間②
#EX 女子寮


 聖ジョージ大聖堂。そこはイギリス清教の実質的な本拠が置かれる場所。

 最大主教(アークビショップ)の金髪美女ローラ=スチュアートは護符を介し、サフラニ=マハーラージャと談話していた。

 イギリスとインドは、サン・トメ大聖堂再建以来の深い仲にある。

 とは言え、あれは植民地時代のことであり、はっきり言って腐れ縁に近い。別に仲良しこよしという訳でもないのだ。

 

 「相変わらず、妙な口調をしたるわね、サフラニ」

ローラの棚上げ発言に、サフラニは若干キレた。

『そなただけには言われとうないぞ!何じゃ、そのアホみたいな喋り方は?日本人に会ったことがないのか』

「し、心外たるわよ!日本人のチェックはしっかり受けしのだから」

『だとしたら、その日本人はふざけた奴じゃな……』

 そこで、ローラがこほん、と咳払いをする。

 「で、用件は?」

虚空書録(アカシックレコード)についてじゃ。そっちで回収してくれたのじゃろうな」

「そのことね……。心配はいらなきことなのよ。人を遣りて、既に終わりているわ」

『そうか。手間をかけてすまぬな、ローラ=スチュアート。本来、あれはこっちの問題じゃ。わらわたちが保護するのが道理じゃろうて。しかし何分、バーラト済教は魔術結社と近すぎる。同盟先とは言え、彼女をシュレーシュタにやる訳にはいかぬ』

 

 それを聞くとローラは不敵に笑んで、

「構わぬことなのよ。虚空書録(アカシックレコード)を保護せしめるは、我々イギリス清教の利益にもなりしことだから」

と言った。

 『どういうことじゃ』

不安気にサフラニが聞くと、

「願いを聞き入れ、彼女を保護するという恩を売りし内は、こちらの要望も無下にはされぬということよ。義理堅きお前が相手ならばな」

『平気で人の性根も利用する、か……。なるほど。そりゃ、"女狐"と罵られる訳じゃの』

「フフフ……。何とでも言いたるがよいわ」

 

 ローラもサフラニもそれ以上は何も言うことなく、通信を切った。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 その頃、必要悪の教会(ネセサリウス)の女子寮に入れられた件の少女、アカシャは部屋のテレビに釘付けだった。

 

 「まじかるぱわーどかなみん……。これが魔術師という奴ですか」

テレビに映るカナミンとかいう魔法少女を見ながら、アカシャは皆に問う。

 「何言ってやがるんですか。そんなのはただの創作、本物の魔術師ってぇのは────」

オルソラ=アクィナスは、アニェーゼ=サンクティスの口塞ぎ、失言を封じる。

「ダメですよ、アニェーゼさん。無闇に子どもの夢を壊すのはいけません」

「そうですよ、シスター・アニェーゼ。私もファンになってしまいそうです」

とアンジェレネ。

 「ったく、子どもってのは夢見ちまって、羨ましい限りですね」

アニェーゼはオルソラを引き剥がし、言い捨てる。

 「あの……「本物の魔術師って」ってどういうことです?かなみんは偽物なのですか?オルソラさん」

「いえいえ、こちらの話なのでござますよ」

「そうですか」

純真なアカシャが誤魔化されたことに気付かはずなどなく、テレビに目を戻す。

 

 「大体、この『超機動少女(マジカルパワード)カナミン』?というアニメ。子どもに見せるには少々刺激が強いものではないですか?」

そう疑念を呈したのは神裂火織だ。

 彼女は世界に20人といない聖人の1人。おまけに極東宗派、天草式十字凄教の教皇(プリエスエテス)

 

 彼女の言う通り、この『超機動少女(マジカルパワード)カナミン』というアニメは刺激的だ。

 露出度の高い主人公の衣装、それと、敵として現れるフェティシズム全開の触手系モンスター。

 おそらく、R12は固い。

 暇を与えないようにという最大主教(アークビショップ)の計らいでDVDが持ち込まれたが、どう考えても女性陣に贈るような代物ではない。

 最大主教(アークビショップ)が日本文化に疎いのを良いことに、土御門元春が選出したものであった。

 

 と、案の定、触手拘束とかいうお約束のイベントが展開される。

 「ほほほ、ほら!言ったでしょう!こんなのは子どもが、いや、可憐な乙女が見るようなものじゃありません!」

神裂は顔を真っ赤にして訴える。

 「それなら、その子の目は塞いでおいた方がいいんじゃないのか?興味津々だぞ」

「え……?」

シェリー=クロムウェルが指差すその少女は、未だにテレビを凝視している。それどころか、ますます目を輝かせているようにすら見えたわ

 「わ、わ、わーっ!見てはダメです、アカシャ!」

神裂は慌てて駆け寄り、華奢な両手でアカシャの目を塞ぐ。

 「うー、見えないです……神裂さん」

「見なくていいのですよ、こんなのは。お願いしますから、今だけは見ないでください!あなたは土御門みたいな人になってはいけません!!」

「つちみかど、って誰です……?なってはいけないとは、もしや『ろくでなし』の方ですか……」

「大体合ってます……っ!どこで覚えてきたんですか、そんな言葉」

「日本です」

 

 もう必死だった。神裂も、アカシャも。

 片や少女の未来を憂い、片や己の好奇心に駆られ、目を塞ぐ手をどこすの攻防戦に移行した。

 神裂は当然のこと、アカシャもそこそこ力が強い。加減された手なら、わりと簡単に押し返してしまう。

 「仲良いですね、あの2人」

そんな様子にルチアはちょっと微笑んだ。

 「確か、極東宗派は禁書目録の監督役をやっていたと言ってたな」

シェリーがそう言うと、オルソラも笑う。

「あらまあ。それでは、神裂さんはインデックスさんを懐かしんでいるのでございますね」

 

 アカシャのいるその寮は今日も賑やかだ。そして、こらからも。

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