とある魔術と科学の虚空書録《アカシックレコード》 作:田芥子慧悟
#EX 女子寮
聖ジョージ大聖堂。そこはイギリス清教の実質的な本拠が置かれる場所。
イギリスとインドは、サン・トメ大聖堂再建以来の深い仲にある。
とは言え、あれは植民地時代のことであり、はっきり言って腐れ縁に近い。別に仲良しこよしという訳でもないのだ。
「相変わらず、妙な口調をしたるわね、サフラニ」
ローラの棚上げ発言に、サフラニは若干キレた。
『そなただけには言われとうないぞ!何じゃ、そのアホみたいな喋り方は?日本人に会ったことがないのか』
「し、心外たるわよ!日本人のチェックはしっかり受けしのだから」
『だとしたら、その日本人はふざけた奴じゃな……』
そこで、ローラがこほん、と咳払いをする。
「で、用件は?」
『
「そのことね……。心配はいらなきことなのよ。人を遣りて、既に終わりているわ」
『そうか。手間をかけてすまぬな、ローラ=スチュアート。本来、あれはこっちの問題じゃ。わらわたちが保護するのが道理じゃろうて。しかし何分、バーラト済教は魔術結社と近すぎる。同盟先とは言え、彼女をシュレーシュタにやる訳にはいかぬ』
それを聞くとローラは不敵に笑んで、
「構わぬことなのよ。
と言った。
『どういうことじゃ』
不安気にサフラニが聞くと、
「願いを聞き入れ、彼女を保護するという恩を売りし内は、こちらの要望も無下にはされぬということよ。義理堅きお前が相手ならばな」
『平気で人の性根も利用する、か……。なるほど。そりゃ、"女狐"と罵られる訳じゃの』
「フフフ……。何とでも言いたるがよいわ」
ローラもサフラニもそれ以上は何も言うことなく、通信を切った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
その頃、
「まじかるぱわーどかなみん……。これが魔術師という奴ですか」
テレビに映るカナミンとかいう魔法少女を見ながら、アカシャは皆に問う。
「何言ってやがるんですか。そんなのはただの創作、本物の魔術師ってぇのは────」
オルソラ=アクィナスは、アニェーゼ=サンクティスの口塞ぎ、失言を封じる。
「ダメですよ、アニェーゼさん。無闇に子どもの夢を壊すのはいけません」
「そうですよ、シスター・アニェーゼ。私もファンになってしまいそうです」
とアンジェレネ。
「ったく、子どもってのは夢見ちまって、羨ましい限りですね」
アニェーゼはオルソラを引き剥がし、言い捨てる。
「あの……「本物の魔術師って」ってどういうことです?かなみんは偽物なのですか?オルソラさん」
「いえいえ、こちらの話なのでござますよ」
「そうですか」
純真なアカシャが誤魔化されたことに気付かはずなどなく、テレビに目を戻す。
「大体、この『
そう疑念を呈したのは神裂火織だ。
彼女は世界に20人といない聖人の1人。おまけに極東宗派、天草式十字凄教の
彼女の言う通り、この『
露出度の高い主人公の衣装、それと、敵として現れるフェティシズム全開の触手系モンスター。
おそらく、R12は固い。
暇を与えないようにという
と、案の定、触手拘束とかいうお約束のイベントが展開される。
「ほほほ、ほら!言ったでしょう!こんなのは子どもが、いや、可憐な乙女が見るようなものじゃありません!」
神裂は顔を真っ赤にして訴える。
「それなら、その子の目は塞いでおいた方がいいんじゃないのか?興味津々だぞ」
「え……?」
シェリー=クロムウェルが指差すその少女は、未だにテレビを凝視している。それどころか、ますます目を輝かせているようにすら見えたわ
「わ、わ、わーっ!見てはダメです、アカシャ!」
神裂は慌てて駆け寄り、華奢な両手でアカシャの目を塞ぐ。
「うー、見えないです……神裂さん」
「見なくていいのですよ、こんなのは。お願いしますから、今だけは見ないでください!あなたは土御門みたいな人になってはいけません!!」
「つちみかど、って誰です……?なってはいけないとは、もしや『ろくでなし』の方ですか……」
「大体合ってます……っ!どこで覚えてきたんですか、そんな言葉」
「日本です」
もう必死だった。神裂も、アカシャも。
片や少女の未来を憂い、片や己の好奇心に駆られ、目を塞ぐ手をどこすの攻防戦に移行した。
神裂は当然のこと、アカシャもそこそこ力が強い。加減された手なら、わりと簡単に押し返してしまう。
「仲良いですね、あの2人」
そんな様子にルチアはちょっと微笑んだ。
「確か、極東宗派は禁書目録の監督役をやっていたと言ってたな」
シェリーがそう言うと、オルソラも笑う。
「あらまあ。それでは、神裂さんはインデックスさんを懐かしんでいるのでございますね」
アカシャのいるその寮は今日も賑やかだ。そして、こらからも。