「改めまして、兎人族ハウリア長の娘シアと言います。こちらは家族のスフォ。実は…」
話を要約するとシア達、ハウリアと名乗る一部族達は【ハルツィナ樹海】にて百数十名規模の集落をつくり、ひっそり暮らしていた。兎人族は隠密行動の優れているものの、他の部族に比べれば肉体スペックは低いらしく、亜人族の中でも格下と見られる傾向が強いらしい。性格は総じて温厚で争いを嫌い、一つの集落全体を家族として扱う仲間同士の深い種族だ。
そんな兎人族のハウリア族にある日異常な女の子が生まれた。その子は青みがかった白髪だった。しかも、亜人族には無いはずの魔力を有しており、直接魔力を操る術と、固有魔法が使えた。亜人族としてあり得ない子が生まれたのだ。普通なら迫害の対象になるところなのだが、彼女が生まれたのは家族の情が深い種族である。百数十人全員を家族とする種族なのだ。故に、ハウリア族は女の子を捨てるという、選択を持たなかった。ハウリア族でそんな女の子が生まれた同じ時期に狐人族でも真っ白な髪を持つ女の子が生まれた。その子は兎人族の女の子と違って迫害の対象で、赤ん坊の頃に捨てられた。そこに偶然ハウリア族の一人が通り、女の子と同じ境遇の狐人族の女の子を拾い、二人は十六年間コッソリと育てられたが、先日とうとう彼女たちの存在がバレてしまった。
樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】にバレてしまったからには殺されてしまう。それだけ魔物は忌み嫌われている。
フェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海をでたのだ。
行く当てもない彼らはひとまず北の山脈を目指す事にし、未開拓地ではあるが帝国や奴隷商人に売られてしまうよりはマシだ。
しかし彼らの試みはその帝国によって潰れた。運悪く帝国の兵士に見つかってしまったのだ。
女子供を逃すため男達が追っ手の妨害をするが力に歴然の差があり気付けば半数が捕まってしまった。
全滅を避けるため必死に逃げ続け【ライセン大峡谷】たどり着いた彼らは苦肉の策で峡谷に逃げ込んだ。峡谷まで帝国兵も追ってこないだろうと思い、そして彼らが諦めるが早いか魔物に襲われるが早いかの賭けだった。
だが、予想に反して帝国兵は一個小隊を陣取らせ帰ろうととはしなかった。
そうしてる内に、魔物に襲われたが魔物の後ろに回り込み峡谷の奥へ逃げるしかなかった。
「…気付けば六十人以上いた家族も今は四十人程差かいません!このままでは全滅です!助けてください!」
「種族の違う異常な私を家族として迎えてくれた優しい家族なんです!どうか、どうかお願いします!」
話を一通り聞いたハジメは「へぇ」と納得したように頷いた。凶夜もデフォルトになりつつあるニヤニヤ顔を無表情にし黙って話しを聞いていた。シアとスフォはハジメ、凶夜、ユエと同じようにこの世界の例外というやつらしい。
ジッとハジメ見る見上げてくるシアにハジメは真っ直ぐ見つめ返し、端的に答えた。
「断る」
時間が静止したかのような静寂が場を満たす。
ハジメは話が終わったとシュタイフに跨ろうとして、ようやく我を取り戻し物凄い勢いで抗議の声を張り上げるが、ハジメは無視して行こうとする。それでもハジメの脚にしがみついて必死に抗議のしている。
「あなたも助けてはくれないのですか?」
スフォがまだ無表情でシュタイフにも跨ろうとしなかった凶夜に聞く。
「正直、お前が家族を大切にしてる理由は俺にも思い当たることがないわけじゃねー、孤独を埋めてくれるのは家族だからな」
言うまでもなく【鬼】時代、独りの孤独から助けてくれたハジメのことを言ってるのだろう。「助けたい気持ちもある」と凶夜は言う。ならっとスフォは縋ろうとするがそれを凶夜は遮る。
「お前に大切なモノがあると同時に俺にも譲れない大切なモノがある。それがハジメだ、ハジメを守るためならどんなことでもするし出来る、たとえ何かを見捨てる事になってもな」
スフォはその言葉に黙りハジメと話してるシアをみる。ちょうど"未来視"について語っている。そしてやっぱり無視してでも行こうとするハジメに思わぬところからシアの援護がきた。
「……ハジメ、連れて行こう」
「ユエ?」
「……樹海の案内にちょうどいい」
「あぁ、なるほど」
【ハルツィナ樹海】は濃霧により亜人族以外では感覚を狂わされてしまい、必ず迷うと言われている。それ故、自ら案内してくれる亜人がいるのは正直言ってありがたい話だ。
ただ、シア達は多くの厄介事を抱えているため、ハジメは考える。
少し断る方向の風向きが変わったことを敏感に感じとり凶夜が言う。
「どっちにしろ、ハジメの考えていることは遅かれ早かれやってくる問題だろ、ならメリットのある方を選べ。とことん付き合ってやる、相棒」
「……ん。私達は最強」
凶夜とユエの言葉により、背中を押されたハジメは決断する。
「そうだな。その通りだ。使えるものは使う。邪魔をするなら殺す。それだけのことだな」
「んっ」
ユエの頭をポフポフ優しく撫でるハジメにいつも通りの返事をするユエ。ニヤリと凶夜はいつも通りの笑みを浮かべる。そしてスフォの頭に手を乗せ言う。
「安心しろ。助けてやる。大船に乗った気持ちでいろよ」
ポンポンと安心させるような手つきで頭を撫でる。スフォは緊張が解けたかのように涙を溜めるが泣きはしなかった。
「よろしくお願いします」
と頭を下げるスフォだった。そこに残念ウサギが聞いてくる。
「あのーお三人のことはなんと呼べば…」
自己紹介をしていきユエが「……さんをつけろ」と怒って歳上と知ると土下座したり忙しい残念ウサギだった。
とりあえずハジメとユエのシュタイフにシアが、凶夜のシュタイフにスフォが乗る事になり、ハジメはシアに凶悪なものを押し付けられている。と言ってもこちらもシア程ではないにしろナニがとは言わないが当たってる事を気にせずシュタイフに魔力を込めて急発進させていく。
道中、シアやスフォにシュタイフの事やユエが魔法が使える理由、ハジメの武器がアーティファクトみたいなものだと簡潔に説明する。
「え……それじゃあ、お三人は魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると…」
「そうなるな」
「……ん」
「成り行きでなー」
暫く呆然としていたシアとスフォだがシアは突然何か堪えるようにハジメの肩に顔を埋めた。スフォも何か堪えるかの様な気配を感じる。
ハジメ達が情緒不安定だとか手遅れとか言ってるがお互い二人ぼっちじゃなかった事を喜んでいるのだろうと凶夜は想像を巡らせる。そしてそれは見事に当たっていた様だった。
ハジメとユエは何故かまたイチャイチャし出していた。何故だ?と思うもいつものことか…と思考を放棄する凶夜。
「あの〜二人とも私のこと忘れてませんか?ここは『大変だったね、もう一人じゃないよ、傍にいてあげるから』と慰めるところでは?私、コロッと堕ちちゃいますよ?チョロインですよ?なんでいきなり二人の世界作ってるんですか!寂しいです!私も仲間に入れてください!」
「「黙れ残念ウサギ!」」
そのコントを横目で見ながら「ダッハハハ」と爆笑する凶夜の後ろからスフォが声を掛ける。
「私にも言って下さらないのですか?私もこう見えてチョロインですよ?言ってくれたらコロッと堕ちますよ?凶夜さん」
「なんで俺なんだよ、ハジメに言えハジメに。面白くないだろ、俺が」
「いえ?凶夜さんがいいんです。凶夜さんにならコロッと堕ちます」
「勘弁してくれ…」
スフォの思わぬ行動にドキリとする凶夜。ハジメはユエで慣れてるか知らないが凶夜は女の子慣れしてないのだ。心からやめてほしい、どうしたらいいか分からなくたってしまうのだ!
シアは「まずはお二人に名前で呼んでもらいますよ〜」と新たな目標を掲げていた。
しばらくシアが騒いで怒鳴られ、スフォが凶夜にちょっかいをかけるを繰り返していると遠くから魔物の咆哮が聞こえてきた。どうやら相当な数の魔物が騒いでいる様だ。シアが「もうすぐ、父様のいる場所に近いです!」とハジメの耳元で叫んでいる。ハジメはその事に怒るがシュタイフを加速させ三十秒程進んだところでドリフトしながら最後の大岩を迂回した先に、まさに魔物に襲われようとしている幾人もの兎人族がいた。
そんな兎人族を睥睨してる魔物は、飛行型の魔物だ。姿は俗に言うワイバーンの様な姿で鋭い爪に牙、先端が膨らみ棘の付いている尻尾を持っている。
「「ハ、ハイべリア」」
シアとスフォの震える声が聞こえる。ワイバーンモドキは"ハイベリア"というらしい。ハイベリアは全部で六体。兎人族の上を旋回しながら獲物を定めている様だ。
「ハジメ」
シュタイフを降りハジメの方に駆ける凶夜。ハジメはその意図を汲み義手の掌を空に向け凶夜の方に差し出す。そこに凶夜が乗ると同時にハイベリアに向かって投げる。投げる瞬間、
「一人三体な」
と言いながらハイベリアに突撃する凶夜。それに気付きハイベリアが口を開けて凶夜が自ずと入ってくるのを待つが凶夜は"空力"を使い加速すると同時に少し軌道を変えてハイベリアのクビをマチェットで斬り落とす。そして空中で息途絶えたハイベリアの死体を蹴り次のハイベリアへと飛び移る。それを繰り返し空中で三体屠ってしまう。
ハジメの方も兎人族が襲われそうなところを助けながら二体屠っているのを空から眺める。そして最後一体が仲間にやられたのに怒り咆哮を上げる。
「みんな〜、助けを呼んできましたよぉ〜」
「「「「「「「「「「シアっ!?」」」」」」」」」」
そしてシアがハジメの癪に触る事をしたのだろう。ハジメが振りかぶり"シア"を投げる。そしてこちらに飛んできたシアをかわして、自分が置いてきたシュタイフの元へ戻る凶夜。
「いやぁぁぁーー!!」
スタッと空中から戻ってきた凶夜にスフォが唖然としているが放置しシュタイフに跨り、ハジメの方に走り出す。
そこにはちょうど落下してきたシアをキャッチしているハジメの姿があった。
「あふんっ!う〜私の扱いがあんまりですぅ。凶夜さんも避けるし。待遇の改善を要求しますぅ〜。私もユエさんみたいに大事にされたいですよぉ〜」
ハジメも何か思うところがあったのか”宝物庫"から予備のコートを出してシアの頭から掛けていた。それだけでシアは喜び体をくねらせてハジメにゴム弾を発砲されて痛がっている。
そこに合流していくと、兎人族達がワラワラと集まってきた。その中でも真っ先に声をかけてきたのがシアの父親だった。スフォの父親代わりでもあるらしい。おっさんのウサミミなんて誰得と思っていると話が終わったらしくこちらを向いた。
「ハジメ殿と凶夜殿で宜しいか?私はカム・ハウリア。シアとスフォの父でありハウリアの族長をしております。シアとスフォのみならず一族の窮地を救っていただき、なんとお礼を言えば、しかも脱出までご助力してくださるとか、父として族長として感謝致します。」
「感謝は受け取る。だが、樹海の案内と引き換えなんだ。それを忘れるなよ?それよりあっさり信用するんだな亜人は人間族にいい感情はもってないだろ」
亜人族は被差別種族である。実際峡谷に追い詰められたのは人間族のせいだ。にも関わらず、同じ人間族の凶夜やハジメに頭を下げてご助力を受けるという。嫌悪感の様なものがなくてハジメは疑問を抱いた。
カムはそれに「娘達が信用してるのだから私達も信用しなくてどうする」と答え、その言葉に凶夜とハジメの二人は顔を見合わせて同じことを思った。感心半分呆れ半分といった気持ちで警戒心が薄すぎると思っていた。
峡谷を兎人族をゾロゾロ連れて歩く一行、途中、当然のように魔物に出くわすが瞬間紅い閃光が走り瞬殺していく様にちびっ子たちが目をキラキラしてハジメを見る。シアが実にウザい表情で「ウリウリ〜」とちょっかいをかけ撃たれる。その様を凶夜はニヤニヤしながら見ているとこちらに発砲してくるが生憎残念ウサギと違いマチェットで弾く。その様子を見てスフォが凶夜にちょっかいをかけて凶夜が戸惑う。それを見てハジメとユエがニヤニヤする。そんな娘達の姿を見てカムが、
「シアは随分とハジメ殿に懐いて、スフォは凶夜殿かぁ……もうそんな年頃か。父様は少し寂しいよ……だがハジメ殿達なら安心か」
「いや、この光景をみて出てくる感想がそれか?」
「……ズレてる」
「おい、頼むからちょっかいかけるのをやめてくれ」
ユエの言う通り兎人族は少し常識的にズレているのかもしれないというか天然が入ってる種族なのかも知れない。凶夜はスフォのちょっかいに参っていた。
そうしているうちに一行は【ライセン大峡谷】から脱出、出来る場所まで辿り着いた。そしてハジメと凶夜が"遠見"て大峡谷の階段やその奥の樹海を見ているとシアと後ろにはスフォの姿もあり話してくる。
「帝国兵はまだいるんでしょうか」
「どうだろうな」
「そ、そのもし帝国兵がいたら……ハジメさんと凶夜さんは……どうするんですか?」
「どうするってなにがー?」
質問の意図がわからず聞き返す凶夜。ハジメも分かっていないみたいだった。
「相手は帝国兵……人間族です。ハジメさん達と同じ……敵対できますか?」
「残念ウサギ。お前、未来視で見たんじゃないのか?」
「はい見ました。帝国兵を相手するハジメさん達を」
「達……か、だったら何が疑問なんだ?」
「疑問というか確認です。帝国兵と敵対するということは人間族と敵対するという事です。同族と敵対しても本当にいいのかと…」
シアの言葉に周りのハウリア族達もこちらを見ている。そんなシリアスな雰囲気など気にいた様子もなくいいのけた。
「それがどうかしたのか?」
「え?」
と疑問顔を浮かべるシアやスフォ、ハウリア族達に言う。
「いいか?俺達はお前等が樹海探索に便利だから雇った。んで、死んでもらっちゃ困るから守ってるだけで、今後ずっと守ってやるつもりなんて毛頭ない。忘れたわけじゃないだろう?」
「はい、覚えてます…」
「だから樹海探索の仕事が終わるまでは守る。自分のためにな。それを邪魔する奴は人間族だろうが殺す。それだけだ。」
「ヒュー♪ カックいい!」
「茶化すな。……凶夜、俺は自分でもだいぶ前と変わった自覚がある。でもお前は……まだ引き返せる」
「俺は別にお前に依存してるわけでもねー。これでも自分で考えてお前に従うと結論を出してる。それが人間を殺す事になってもだ。なんなら【鬼】時代に人を殺しててもおかしくない暮らしをしてたんだ。今更引き返す道なんて俺にはねーよ」
ハジメは自分の中の信念を凶夜に押し付けるつもりは無かった。それをずっと凶夜に言いたかったが今まで言えずに甘えてきたが、凶夜はその言葉に対して自分で道を選んでると答えたのだ。そんなやりとりをみてカムが
「わかりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ」と話を締め括った。
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